47話 ダンジョン争奪戦
「お兄ちゃん朝だよ!」
「むう〜」
2階の自室で僕が心地良い睡眠をベッドで堪能していたら、甘利が勢い良くドアを開けて、僕の被る布団をゆさゆさと揺らしてくる。
どうやら今日の朝、一番の安らぎを味わえるのは此処までらしい。
「お寝坊さんだなぁ〜、リオンさんと護さんはもう起きてるよ?」
「早いって……とりあえず着替えるから部屋出て」
妹に自分の着替えている所を見られるのは恥ずかしいので、僕は甘利が部屋を出てから寝間着から何時もの装備に着替え、1階の喫茶店へ降りていく。
「遅いよ明弥君ー」
「ああ、ごめんリオンさ……え? 名前?」
「いや、此処神城の人ばっかりだから紛らわしいでしょ神城君だと」
降りてきた僕にリオンさんから名前で呼ばれ、正直眠気が飛んでいった。
昨日あんなハプニングがあって、それもあってかリオンさんに明弥って呼ばれると、結構ドキッてなる。
「? 明弥君どうかした?」
「あ、いや。何でもないから……」
「うーん、朝から熱いやり取りを見せてくれるねぇ!」
そこへ実に楽しげな笑みを見せる高大叔父さんが、僕へカフェオレとカツサンドを運んで来る。
未だに仲を勘違いされっぱなしで、今のやり取りは見せたくなかった。大会後に甘利共々からかわれそうな未来が、鮮明に見えてしまう。
「それじゃ今日も、また奥多摩の方に行ってみましょうー♪」
リオンさんの提案に僕も護君も賛成すれば、再び電車で奥多摩へと向かう事となった。
昨日の感じでまた2体ぐらい狩れれば良いけど、運が急に悪くなって0終わりも充分可能性がある。
だからと言って闇雲に、都内の栄えてる場所を行っても定員オーバーを食らう。
となれば昨日の良いイメージ、勢いを保って奥多摩を攻めるのが良いかもしれない。
僕達は昨日と同じく、電車に乗って奥多摩へ。
2度目ともなれば移動も実にスムーズだ。
「(あの温泉のあるダンジョン、あそこでリオンさんと……)」
「明弥君、顔赤いよー?」
「え? あ、いや……朝風呂浸かり過ぎたかなぁ?」
電車の中でリオンさんに、ぼくの顔が赤面している事を指摘されてしまう。
昨日の温泉で遭ったハプニングを思い返していた、などと正直に言えるわけがないので、そこは誤魔化しておく。
ヤバいヤバいヤバい、全然集中力が今日欠いてるかも!?
いくらリオンさんの裸が凄い刺激的だったからって、止めろよ僕!
思わずバチバチと自分の手で両頬を叩き、気合を入れ直させる。
魔法は集中力が命、これを欠いたら空腹じゃなくても不安定で失敗するからね。
自分の欲望、妄想と戦っている間に電車は奥多摩に到着していた。
「昨日と比べて他の冒険者の姿はあるな」
奥多摩駅に到着すると、護君が真っ先に冒険者の集団を見つけ、昨日よりもそういった人が多く見られる。
僕達と似たような考えの人が増え始めてきたか。
ひとまず僕達は昨日行った、例の温泉があるダンジョンへ真っ先に急ぐ。
ビーー
『定員オーバー、ダンジョンに入れません』
「えー!? 駄目なの!?」
昨日の山の方にあるダンジョンに辿り着き、入ろうとした僕達の前に立ちはがったのは警告音。
自動的に透明の壁が現れ、そこから先の立ち入りを許さなかった。
その証拠にリオンさんがどんなに頑張って入ろうとしても、そこから少しの侵入も出来ていない。
ううん、そんなに甘くないかぁ……。
「とにかく他を探そう」
護君はすぐに切り替え、他に入れるダンジョンがあるのか先陣を切って探しに行く。
緩やかな山道、初心者の登山コースを歩いて探す。
これが上級者コースなら、ダンジョンを探すどころじゃなかったかもしれない。
「あったー!」
登山コースを少し進んだ所に、ダンジョンの雰囲気漂う洞窟を発見。
やっと見つけたと、僕達が入ろうとした時。
「待ちなぁ!」
野太い男の大きな声が山の中で響き渡り、僕達は振り返る。
そこには重装備で身を固めた者達が、目の前に立っていた。
「そのダンジョン、俺達に譲ってもらおうか? 痛い目に遭いたくなかったら失せな!」
リーダーらしき男は大きな斧を担いで、かなりの怪力を持ってそう。
僕達の事を弱そうと見て、脅してダンジョンに行く権利を強奪する気か。
「まさか、この人数で勝てるとか思わねぇよな……ガキ共」
何時の間にか僕達は鎧を纏った集団に包囲されている。
これ、ひょっとして結構不味い事態になってきた!?




