43話 山のダンジョンにある物でアクシデント!?
山岳地帯にある場所だから、ダンジョンもそうなるかと思えば意外とそうでもない。
ランクGと一番下のランクなせいか、シンプルな洞窟タイプだ。でも僕達は今回このダンジョンをただ攻略するだけじゃなく、レアモンスターを狙って倒さなきゃならない。
レアボスが必ず出る訳じゃないというのは、武者修行のダンジョンで分かったから、本当に運が大事だ。
「ブモー!」
そこへ僕達に突っ込んで来るイノシシの群れ。Gランクでよく会うモンスターとして、お馴染みのダンジョンボアーが現れる。
「はっ!」
護君が剣を抜き、向かって来るダンジョンボアーの群れをズバババッという感じで斬りまくり、あっという間にモンスターを一掃。
もうすっかり新しい白銀の剣を使いこなしている感じだ。
「いいねいいね、幸先良く食料ゲット♪」
倒したダンジョンボアー達を、リオンさんは残らず収納していく。あの美味しいイノシシのステーキがまた食べられるのは、僕としても楽しみ。
「んー、出るとしたらダンジョンボアーのレアバージョンとかかな?」
「さあな。会った事が無いからなんとも言えない」
倒したダンジョンボアーの中には、僕が見た限り一際変わったのはいない。やっぱりそう簡単には出ないみたいで、根気との勝負になりそう。
「神城、姫島、提案だがここは二手に分かれないか? ランクGなら俺1人で動けるし、その方がレアモンスターに会える確率が高まるだろう」
そこへ護君が別行動しないかと案を出して来た。ここはランクGだから確かにわざわざ固まって行動するより、別行動で範囲を広げて探す方が良さそうだ。
「じゃあ神城君はあたしと! 万が一レアボス来ちゃったらあたしだけで対応無理だからね?」
僕はリオンさんのボディガード役として、彼女と行動するのが確定。というか僕もお腹空いたら何も出来ないし、むしろ居てくれないと困る。
「今が午前10時……2時間後には此処で落ち合いましょ」
「承知した」
リオンさんが待ち合わせを決めた後、護君は1人駆け出して、レアモン狩りに向かう。
これで僕とリオンさんの2人で、ダンジョン内をひたすら歩く事になった。パーティ結成してから初めて、ランクGダンジョンに挑んだ時以来か。
今回はレアを探す為に、ひたすら道中のモンスターと戦い続けるのみ。
「! リオンさん下がって」
「え?」
通路を歩いてると不気味な雰囲気が漂い、僕はリオンさんを後方へ下げて前に進み出る。
「カカカ……!」
天井から無数の骨がバラバラ地面に落ちて、そこから骨は人形の形に形成。僕達の前にスケルトン軍団が立ち塞がってきた。
ダンジョンボアーだけじゃなくスケルトンも出るんだと、僕がそう思った後にすぐ魔法を発動。
「フラム2!」
「カァァ〜〜!」
スケルトン軍団は出現してすぐ、僕の放つ炎の渦に纏めて巻き込まれれば、全ての骨を焼き尽くして消滅させる。
ダンジョンボアーと同じく、戦い慣れた相手なので今更怯む事なんてない。
「ううん、流石に骨はー……スープとかに使えそうだけど、いらないよね?」
「スケルトン見て美味しそう、とはならないよ」
スケルトンに関してはリオンさんの収納対象外で、僕も食べる気はしない。スープにするならダッシュチキンとか、ポークファイターで充分に美味しいスープとなってくれそうだし。
「あ、レアモンいたっけ!?」
するとリオンさんはハッとレアモンの事を思い出し、今の集団の中に紛れ込んでないかとスマホを確認。
大会期間中は僕達のチーム情報に、レアモン討伐数が表示されるシステムだ。
「いない〜」
僕達アンフィニアーミーのレアモンスター討伐数はまだ0。あのスケルトン軍団の中にはいなかったと判明してしまう。
「ブモーー!!」
そこに休む間もなくダンジョンボアー達が出現。今度は戦う前に姿を見るけど、皆同じに見えて姿の異なるモンスターはいない。
「全然いないじゃんー!」
レアモンと遭遇出来ない文句をぶつけるように、リオンさんが僕の後ろから飛び出して、ダンジョンボアーに飛び蹴りをお見舞い。
後方支援とはいえ流石レベル20。格闘術の鋭さが増してるのか、鮮やかな蹴りの連続で次々とモンスターをノックアウト。
「折角だから試そ! 波動脚!!」
リオンさんの新技が発動すると、回し蹴りのモーションに入るその右足に青いオーラが僕の目から見えた。
「ブモーーーー!」
波動脚を受けたダンジョンボアーは凄まじい勢いで吹っ飛ばされ、壁に激突すればそれを破壊して、壁に大きな穴を作る。
「あら〜、結構凄い技かもこれ……」
技を繰り出す本人が驚く程の破壊力。これを見て僕はリオンさんが武闘家になったら、強いんじゃないかと思えてしまう。
「うーん、思ったよりレアモンって出ないねー」
「やっぱりレアだから、簡単には出てくれないよ」
リオンさんと話しながら僕がスマホで時間を確認すると、時刻は午前10時半。モンスターを倒しても出るのは通常ばかりで、レアは全然出ない。
こうなると護君が1体でも倒してるのか、それが重要になってくる。
「お腹は大丈夫?」
「まだ減ってないから」
僕のお腹はまだ鳴らない。空腹が襲いかかる気配は無くて、このまま続行出来そうだ。
結構潜ったりして、歩いて深い所まで僕達は行ったかな?レアモンを探してひたすら歩き続けていた時。
「あ、湖!」
広い場所へ出ると僕達の前に大きな湖が広がっている。
「ダンジョンの地底湖って所かな? すごーい……」
目の前の湖を見ていてリオンさんは何かに気づき、僕も気がついた。普通の湖にはまず無いであろう物に。
「これ、湯気が立ってない?」
「うん。どう見ても湯気っぽい……て事はこれ、湖じゃなくて大きな温泉?」
広大な湖からは何故か湯気が立って、試しに水面へ手を軽く入れてみれば丁度良い熱さの湯。冷たい湖ではない事がすぐ分かる。
「へぇ〜、ダンジョンに温泉とかあるんだぁー」
興味深そうに水面を覗き込むリオンさん。すると僕の方へと振り返ってきた。
「温泉入っちゃう?」
「え!?」
突然の提案に僕は驚いてしまう。リオンさんが温泉に入ると言い出して、妄想したせいかもしれない。
「あ、勿論あたし達別々だよ!?」
それは当然そうなる。僕もリオンさんも大人の男女で、一緒に入る事は出来ないから。
「じゃ、じゃあ僕はあっち行ってるからリオンさんごゆっくり!」
恥ずかしくなった僕は足早にその場から離れ、リオンさんが1人で温泉へ入れる環境作りを最優先。
「はぁ〜……ん?」
離れた場所へ移動すると、その目の前も温泉が広がる。さっきと同じように湯気が立ってるから間違いない。
これを見た僕は周囲に誰もいないのを確認して、温泉に入る事にした。
リオンさんの入浴がどれくらいかかるか分からないし、僕が入って待たせるのも悪いから。だったら向こうが温泉を楽しむ間に入った方が手っ取り早いはず。
「気持ち良い〜〜……」
着ている物を全て脱いでから湖に入ると、僕の足がつくぐらいの場所で温泉を楽しむ。
丁度良いお湯でダンジョン内を歩き回り、疲れ気味の足に染み渡って凄く気持ちが良い。解放的な空間での入浴は自宅で入るお風呂とは全然違う。
まさか此処で温泉に入れるとは思わなかった。場所覚えてまた入りに行こうかな?
「さっきは驚いたなぁ……」
リオンさんが温泉入っちゃう?と言った言葉に、正直僕はドキッとしてしまう。
一緒に入る?と一瞬勘違いして、リオンさんの入浴シーンが頭を過ぎっていた。そりゃ僕だって男だし、普通に興味あるから思っちゃうよ。
リオンさんって優しいし料理上手いし、それに美人でおっぱい大きくて……いや、何考えてんの僕。温泉入っておかしくなった?
こういう妄想は此処で終わろうと、僕は温泉を楽しむ事に専念。
「はぁ〜」
今懸命に戦っている護君には悪いと思いつつ、少しだけ休もうと自分を甘やかし、温泉の心地良さに浸り続ける。
この時、僕は気が抜けていたのか近づいて来た相手に全く気がついていなかった。
むにゅっ
突然僕の顔を暖かくて、柔らかい物が包み込む。
それは僕の心地よさを加速させる物で、このまま何も考えずに全てを委ねてしまいたい。
だが、次の声で僕を包んでいた物の正体に気づかされる。
「え? か、神城君?」
「!!??」
その声は紛れもなくリオンさん。僕が見上げると彼女の顔が間近にあって、今僕の顔を包んでいるのはリオンさんの豊かに実った胸……その谷間だ。




