39話 武者修行のダンジョン
浅草のダンジョンから高円寺のグレイドさん、マリアンさんの所へ行って、RHDという大会が開催される事を知る。
そこから翌日、僕は西東京の国分寺の駅に来ていた。勿論移動手段は安定の電車。
「遅いよ神城君ー!」
待ち合わせの時間より5分ぐらい早く来たはずが、国分寺の駅前にはリオンさんと護君の姿は見えて、僕を待っていたみたい。それを見て僕の足は急いで2人の元へ向かう。
「遅刻してなかったはずだけど、2人は何時から来てたの?」
「あたし15分前には到着してたから!」
僕より10分早く到着のリオンさん。武者修行にめっちゃやる気だなぁ。
「護君は?」
「1時間ぐらい前には着いていた」
この場に最もやる気充分な男が居た。流石にそれは早すぎるよ護君!熱意は昨日聞いて知ってるけど、もうちょっと遅くてもいいからー!
どちらにしても待たせた事を2人に謝り、僕達は国分寺のダンジョンを目指して歩き始める。
「国分寺のダンジョンを実は事前に調べてね、此処ならあたしの収納も役立つと思って今日チョイスしたの」
「ああ、最近は虫とか岩とか食べられないモンスター続いてましたよね」
「ホントあれはダンジョン料理人泣かせよぉ〜」
目的地へ向かう道中、今日のダンジョンについてリオンさんが話す。今回は彼女の収納する食料も調達していく目的も含まれ、食料に出来ないモンスターのダンジョンを避けて、食べられるモンスターだけ出る所を彼女は探していた。
「ランクはD行けるけど、浅草でアイアンシールドの皆に手伝ってもらって結構ヤバかったから、今回はEランクで行く事になったし」
「確かに行けたとしても、未知の領域へいきなり踏み込むのは危険が大きい。それで良いだろう」
同ランクのダンジョンは僕達にとってまだ未知の領域で、護君も行っていない。そこへ3人だけで行くのはまだ早いと、Dランクのダンジョンは今回見送る事にする。
まずは手頃な所で腕を磨くと、ゲームの経験値稼ぎもそういう感じだからね。
話してる内に駅から離れた住宅街まで来ると、周囲とは異なる雰囲気を漂わせる建物を発見する。
8階建てのマンションだけど、そこはダンジョン。スマホにランクE国分寺ダンジョンと表示されてるから確定だ。
僕、リオンさん、護君がそれぞれ目を合わせれば小さく頷く。行こうという合図と共に僕達はマンション内へ踏み込もうとした時。
「あ!」
「え? ど、どうしたのリオンさん。何か忘れ物!?」
いきなりリオンさんが叫んだので、僕達のダンジョンへ入る足が止まってしまう。
「忘れてるよ! はい、神城君。何時ものおはぎ!」
「あ、そうだった……ありがとう」
お馴染みのおはぎが入った包みをリオンさんから受け取る。危ない危ない、これはすっごい大事だ。
「そのおはぎは特別か? それを食べた神城は凄い力を見せてるようだが」
「ううん、普通のおはぎで特別な物も作り方も特にしてないよ?」
普通のおはぎだけど、僕にはこれが不思議と力の源になってるんだよね。何より美味しいから。
とにかくおはぎも持ったし、万全の状態で今度こそダンジョンに踏み込む。
「何か普通のマンションって感じだね……雰囲気を除けばだけど」
護君を先頭にして、僕が最後尾に立つとリオンさんがその間に入る陣形で、エントランスを慎重に進む。
ダンジョンと化した影響か、独特の空気が漂うのをリオンさんが呟く中で敵は現れる。
「ブヒィィー!」
奥から飛び出して来たのは二足歩行で剣を振り回す、豚のモンスターことポークファイターだ。
一気に複数体が襲いかかるも、護君は慌てる事なく剣を鞘から抜き取れば、横に剣を振っての一閃で一体を斬り伏せる。そこから流れるような動きで下から剣で斬ってもう一体を倒す。
「フラム!」
「ブヒィ〜〜!」
残った一体のポークファイターは、僕が後方から炎の玉を飛ばして、その体を燃やしていく。
気の所為か食欲の唆る匂いがしてくるかも。焼いた豚肉って美味しいから、この豚のモンスターも例外じゃなさそう。
「そのまま食べちゃ駄目だよ? ちゃんと消毒をしてから食べないと」
心の中を読まれたのか、リオンさんは僕にそう言い聞かせてから少し久々となる収納スキルを使い、倒したポークファイター達を回収していった。
「うーん、やっぱり食べられるモンスターだと良いね〜♡」
虫の時と違って今回リオンさんは活き活きしてる。やっぱり食料を収納出来るのと出来ないのじゃ、大きく違ってくるんだなぁ。
「確か外から見た限り8階建てだけど、フロアボスは一番上かな?」
「さあな、それは進んでみなければ分からない」
「ん? あ、ちょっと待った」
護君が先に進もうとした時、僕はエントランスにある物を発見して呼び止めた。
「エレベーターあるよ。これで一気に最上階まで上がってボスへ一気に辿り着けるんじゃないかな?」
「え〜? これ動くのかなぁ。何か怪しそうじゃない?」
僕が見つけたのはエレベーター。動きさえすれば途中の場所を通らず、ボスがいるかもしれない最上階へ行けそう。
ただリオンさんの言う事も分かる。確かに怪しい雰囲気が何か漂うし、トラップの可能性がありそう。
「怪しいなら触るな、止めておけ」
リオンさんと同じく護君も怪しいと思い、スルーを推奨してくる。此処は2人の意見を尊重して、先を急いだ方が良いか。
そう思った時、エレベーターは動き出していて、表示が3階から1階へと下がって来ている。
到着したと同時に扉が開くと……。
「ブヒィィィ〜〜!」
そこから黒いポークファイターが現れた。さっきのポークファイターは白だったから、それの黒バージョンか。
「黒いのはポークウォリアーだよ! ファイターより強いみたい!」
リオンさんが下がりながら、モンスターについての情報を教える。ポークウォリアーの数は2体だ。
「フンッ!」
「ブヒッ……!」
ポークウォリアーが剣を振るうより、素早く護君は横薙ぎで一刀両断。もう1体にも飛びかかって、剣を振り下ろして電光石火の2体撃破。
やっぱり修行とあって張り切ってるよ護君。今度は僕が魔法を使う間も無くて終わっちゃったし。
「地道に最上階まで上がるしかなさそうだな」
流石に勝手に動くエレベーターには危なくて乗れない。
護君の言葉に僕達は頷くと、地道に階段を登って先を目指す。
「ん? 階段ここで終わりかな?」
2階に到着すると、それより上の階段が無い。見たところ他の階段も無さそうに見え、僕達は2階のフロアを探索する。
「ブヒィィィーー!」
「ブーーー!!」
そこにポークファイターの群れが現れ、僕達の前に立ち塞がって来た。やる気充分な相手を避けては通れない。
「はっ!」
ただこっちにはそれ以上にやる気溢れる人物が居た。護君が床を蹴って真っ先にポークファイター達に向かい、次々と一刀で仕留めていく。
護君の力も勿論あるけど、あのギャル鍛冶職人ことルナちゃんの作った白銀の剣が、余程護君と上手く相性合ったせいもあるのかな?
とりあえずいくら武者修行とはいえ、護君だけに全部任せる訳にもいかないから、僕も雷魔法で少し手伝う事にする。
「これで全滅みたいだね」
僕達の倒したポークファイターを収納しながら、リオンさんは周囲を見てモンスターがいない事を確認。
「わっ!?」
「きゃっ!?」
いきなり僕達の上がって来た階段の方からゴゴゴゴ、みたいな何か動くような大きい音がして、僕とリオンさんは揃って驚く。対して護君は何が起こったのか、真っ先に飛び出して様子を見に行っていた。
僕達も後を追って階段に戻ると、そこにはさっきと明らかに違う姿を見せている。さっきまで無かったはずの上へ向かう階段が出現していたんだ。
「上への階段はどうやらフロアのモンスターを倒せば、現れる仕組みになっているらしい」
「ああ〜、そういうシステムかぁ。ビックリした〜」
護君は冷静に状況を理解して、リオンさんはまだ驚いているのか左胸を押さえたまま。
全部モンスターを倒さないと、先に進めないシステムのダンジョンか。また変わった所に来ちゃったなぁ。




