25話 大企業への訪問
僕達は電車に再び乗って、秋葉原までやってきた。
オタクの集う場でアキバとして知られ、僕も何度か此処には足を運んで少しは慣れている。ダンジョン出現前から多くのゲームやアニメの広告が目立ったりしたけど、今もデカデカとあるんだよね。
そこは絶対ブレない、流石アキバ。
何処よりも武装した人達が普通に歩いていたりと、個性的で目立つのが山程いて僕達は地味なぐらいだ。
「あ〜、折角アキバ来たから何か漫画とかラノベ買っていこうかなー?」
リオンさんは純粋にアキバを楽しもうとしている。護君が此処に来た目的について、多分忘れてそう。
「護君の行く所が先だからね? えーと、確か……」
「検索はいい、俺が案内する」
僕がスマホで場所を検索しようとしたら、それより早く護君が歩き始めていた。
それに僕とリオンさんが続き、アキバの街中を歩く。やっぱり僕達に視線を向けるのは誰もいない。
だって普通に重装騎士がガシャガシャと音を立てて歩いたり、半裸の男の傭兵が大剣を担いで歩いたり、露出度の高い薄着のお姉さんが歩いたりと目立つ人ばかり集ってるから。
僕達もその光景の一部に溶け込み、護君が先導して目的地まで案内してくれる。
駅から歩いて数分、周囲の高層ビルより一際高い建物が聳え立つように僕達の前に現れた。
此処がダンジョン攻略の為に、ダンジョン解明の為に作られた大企業ラビリントカンパニー。
「あたし達にとって強い味方でCMでもお馴染みの会社に来るとは思ってなかったなぁ」
「剣も防具もアイテムもお任せ、とか動画の広告でも山程流れてたからね」
僕の言った3つに加えて、ダンジョン向けに作られたスマホの会社としても知られてる。
本当に広く手がけてる会社なんだよね。
すると僕達が話している間、護君はもう建物の中へ入ってるのが見えた。
僕とリオンさんも護君を追って、自動ドアを通りラビリントカンパニー内へ入る。
中は広くて真っ白な空間が広がっていた。
掃除がすっごい行き届いてそうで、ピカピカキラキラって効果音が出てもおかしくないぐらいの清潔感。
社内に社員らしき人が行き来したり、僕達みたいな武具を付けた人が受付と話す人もいて、僕達の姿は此処でも珍しくないようで何の注目もされていない。
「会社に来たけど護君どうするの?」
「此処から3階に上がって、そこのモンスターデータを集める社員にデータを提出する」
これから何処に行くのか護君に聞けば、行き先を説明した後に護君は再び歩き始める。
僕達も後に続けば階段で3階に上がっていった。
「ようこそモンスターラボへ、室長の咲坂と申します」
3階に辿り着くと、そこには多くの社員がパソコンと向かい合う。ひたすら何かのデータを打ち込んでて、仕事に集中してる感じ。
僕達に応対してくれる人はメガネをかけた女の人で、黒髪をアップで1つに纏めて黒スーツをビシッと着こなし、まさに仕事の出来る知的な女性という第一印象。
「このデータを提出したい」
護君が前に進み出ると自分のスマホを取り出し、例の巨大ソードマンティスの画像を見せる。
「これは……」
一度メガネを指で上げる仕草を室長さんがすると、画像の方に注目していた。
「大きさを比較して通常個体のソードマンティスと比べ、明らかに大型で東中野のダンジョンではデータに無いモンスター……レアフロアボスモンスターで間違いありません」
モンスターの専門家から公認をもらい、正式にレアボスと認められる。通常ボスより強いレアボスに勝てるぐらい、僕のパーティって凄いんだと実感が湧く。
「では、振込先は何時も通りの口座でよろしいですか?」
「……いや、少し待ってほしい」
報酬を贈ろうとした時、護君はそれを一度止めて僕達と向かい合う。
「俺一人が受け取る訳にはいかない。今回あのボスを倒せたのは神城、姫島がいたおかげだ。報酬は山分けにしよう」
「良いの?」
「それだけの働きをしたんだ、当然だろう」
リオンさんの言葉にも迷いなく頷き、護君は3人での山分けを提案。妹さんと2人暮らしでお金は必要なのに、そこはきっちりしてて真面目な護君らしい。
「じゃあ均等に分けよっか。って言ってもどれくらいになるのか、あたし達まだ分かってないけど」
「これぐらいだ」
「……え」
リオンさんや僕がレアボスを討伐して、それをデータとして提出した時の値段がどれくらいか分からないので、護君はスマホでその金額を見せた。
そこには目を疑うような高い金額。これって僕が動画で得てる収益より全然高いじゃん!?
総取りしたら高級自動車が買えちゃうぐらいで、大きな声じゃ言えない額だ。
「ええー、ちょっと待って……? あのイノシシのデータ撮っとけばそんぐらい行けたって事? 角煮して食べてる場合じゃなかった〜」
リオンさんはその場でへなへなと崩れ落ちて座り込む。
僕も抱いてる気持ちは一緒だった。あれもレアボスのはずだし、美味しくバクバク食べちゃったよ!
とりあえず今回の高い報酬は貰えるから、食べちゃったあれについてはもう切り替えるしかない。
「これで護君の用事は終わり?」
「ああ、終了だ」
僕達は再び1階のフロアに戻り、護君の用事が今回で全て終了した事を確認。
「あー、もうこうなったら漫画とラノベ買ってスッキリしよ!」
リオンさんはまだイノシシの件について引きずっているみたいで、それを忘れる為にアキバを堪能しようとしていた。
「では俺は先に帰る。っと立樹にちゃんと連絡しないといけないな」
護君はスマホでメッセージを立樹ちゃんに送る。折角アキバまで来たし、僕も甘利にお土産でも買ってこうかな。
甘利の事だからラブコメの本とかリクエストされそうかも。
その時、外に出ようとしたら1階にいた社員達が慌ただしく入り口の左右に並ぶ。ドラマとかお偉いさんを出迎える時とかこんな感じかな?
誰か来るのかと思った時、会社の自動ドアが開かれる。
「「お疲れ様です! 神崎社長」」
社員達が一斉に頭を下げる先には、その間を優雅に歩いて通る1人の男。
「やあ、わざわざありがとう」
白スーツに身を包む短めな金髪の長身男性。いかにもイケメンという感じの男で、笑顔を振り撒く辺りは同じイケメンでも護君とまた違うタイプだ。
とりあえず僕とは何もかも住む世界が違うと、それは確実に言える。
「わぁ〜、まさか神崎白矢社長を生で見るなんてね」
「CMとか雑誌とかでしか見た事無かったなぁ。ダンジョン攻略の先駆者で新時代を築き上げたって紹介されてるの見たぐらいで」
僕もリオンさんも突然の有名人との遭遇で、結構驚いていた。それぐらい神崎白矢という人物が有名人なのは皆知っている。
「……」
気の所為か社長の側近っぽい、黒髪のオールバックでメガネをかけた男が僕達を見ている気がした。何か気に障るような事でもしたかな?
気難しいイメージがある彼はすぐ前を向いて、神崎社長と共にエレベーターへ乗って上に向かう。
これで目をつけて何か因縁つけられたりしたら嫌だなぁ。僕は何も起こらない事を願って、リオンさんと護君と共にラビリントカンパニーを出る。
「さっき、あの少年達の事を見てなかったかいコウマ?」
「……いえ、特には」
上へ昇るエレベーター内で、神崎白矢と側近の男が2人きりで会話を交わす。
「ただ……他には無い物を感じましたので」
「そうか」
「ダンジョン全てを解明する切っ掛けとなりうるのか、楽しみだな」
その口元に神崎は楽しげな笑みを浮かべる。この世界に存在するダンジョン、全てが解明された時に何が起こるのか。その為に彼は動き続ける。




