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23話 鍛冶職人との出会い

「護君、傷は大丈夫?」



「姫島の回復魔法を施してもらったおかげで随分マシになった」



「慣れない回復魔法のせいか疲れたけどねぇ……!」



 斬られた護君の左腕には包帯が巻かれて、出血は止まっている。



『レベルアップしました、ソメイユを覚えました、フロストを覚えました』



 僕のスマホからレベルアップを告げる通知。え、最近6に上がったばかりなのに速い!?途中のモンスター倒したりしたから、経験値が蓄積してったのもあってボスで上がったって感じ?



 とりあえず嬉しい!魔法も2つ覚えたし、えーとフロストが氷魔法でソメイユが相手を深い眠りに誘う魔法……攻撃以外の状態異常を起こすタイプは初めて覚える。



 レベル7とラッキーセブンだからサービスしてくれたとか?



『レベルアップしました』



 そこへ護君の持つスマホからもレベルアップの通知。彼はもう26と高めのレベルだけど、やっぱレアボスの経験値って大きいんだなぁ。



『レベルアップしました、レベルアップしました、レベルアップしました』



「え? え? あたし一気に3レベル!?」



 続けてリオンさんのスマホから連続で3度の通知。13だったレベルが一気に16と、上がりの遅い僕には心底羨ましい上がり方だ。



 僕のレベルが上がり難いってスキルのデメリット無かったら、こんなふうにきっと上がったよね。




「とりあえずこれは食材に出来ないし、倒したって事で記念撮影だけしとこっか。」



「ああ、俺もそれはやらなければ。討伐した証拠が必要だからな」



 リオンさんと護君はスマホを片手に、巨大ソードマンティスをパシャッと撮っておく。レアフロアボスらしいから討伐した証拠として記録。そこに僕を前に立たせてリオンさんも入って自撮りしたりと、記念撮影が進む。




 すると護君が急に自分の剣を使い、巨大カマキリの大剣のような腕を一本採取していた。



「それどうするの?」



「珍しいボスの腕による素材だ。特にこいつの剣は実際受けて鋭いと感じたから、知り合いの鍛冶職人に持っていけば良い剣にしてくれるかもしれない」



 ダンジョンが出来て様々な武器や防具が出回り、それを鍛えたりする鍛冶屋といった職人が活躍する今のご時世。



 護君は転んでもタダでは起きないみたいで、自分を苦しめたボスの腕を武器に加工させるつもりだ。



「この剣も長く使い続けてそろそろ寿命を迎える所だった。名残惜しいがな……」



 色々思い入れがあるみたいで、護君は自分の剣を持って見つめていた。そこに僕は遠慮なく雷の魔法をガンガン当て続けたから、申し訳ないなと思ってしまう。



「レアボスの素材を使うんだから強そうな剣が出来そうじゃない?」



「それは剣が出来てからでなければ分からないな」



 強そうな武器が出来そうとリオンさんの期待が膨らむ中、護君は斬り落とした巨大ボスの腕を右手で持つ。こういった素材を持ち歩くのは元の世界だと絶対目立つけど、今の世界なら珍しい事じゃない。



 この前とかでっかい斧を肩に担いで歩く人が普通にいたからね。



 リオンさんの言うように今回のフロアボスはレアボスで、簡単には出会えないモンスターだ。それなら凄い武器が出来るのでは?と僕も期待が膨らんでくる。



「よし、じゃあこんな虫だらけのダンジョンから早めにおさらばよー!」



 確かに最深部まで来てレアフロアボスも倒したので、長居は無用だ。僕達は休憩を挟み、体力を回復させてからダンジョンの外を目指す。



 僕だけはリオンさんの作ったご飯食べてお腹を満たしたけどね。




「出られたぁ〜」



「あー、外の空気が美味しい!」



 途中で出て来る昆虫モンスターを主に僕が倒して、どうにか外に出る事が出来た。僕もリオンさんも揃って外の空気を味わう。



「じゃあ俺は知り合いの鍛冶職人の所へ行く」



「待って待って護君!」



 護君が大きな素材を抱えて1人で向かおうとした時、リオンさんが彼を呼び止める。



「折角だからあたしと神城君も付き添うよ。鍛冶職人が仕事してる所とか見た事無いから、ね?」



「え?ああ、うん」



 トリートで傷を塞いだとはいえ、まだ完治していない護君が心配なのか僕も巻き込んで、リオンさんは鍛冶職人の所へ付き添うと言い出す。



 魔法使いをやってるせいか武器や防具の手入れとか、縁が無かったから僕も鍛冶職人の仕事というのを見た事が無い。それに護君も万全じゃないし付いてた方が良いかもね。



「……好きにしろ」



 つまり来て良いって事だね護君?



 僕とリオンさんは護君の行き先へ一緒に向かう。





 行き先は意外に近くで東中野の隣にある中野。時間も経過して人通りがグンと多くなって、皆急ぎ足で行き来している。誰も護君が巨大ソードマンティスの腕を持ち歩いてる所は、何も気にしてない感じだ。



 大きな駅前から少し歩いて路地裏の方を行く。流石に辺りは薄暗くて、あれだけあった人通りが此処では一気にいない。



「うーん、なんていうか一見さんお断り!みたいな頑固職人のおじさんがやってそうな場所っぽくなってきたね?」



 僕の隣を歩くリオンさんがこそっと僕に伝えてくる。



 確かに商売の事を考えると人目につき難くて、限られた人しか入ったら駄目みたいなイメージが強いかもしれない。



 護君は真面目だから頑固なおじさんとかだったら、そういう所を気に入ってそうかも?



「此処だ」



 護君が建物の前で止まると新しめの看板が立て掛けてあって、そこには鍛冶屋ファッブロと名前が記されている。ファッブロの意味は知らないけど、鍛冶屋って出てるから此処で間違いなさそうだ。



 護君がドアを開けて中へ入ると、僕とリオンさんもそれに続く。



 店の中は意外と広く、壁には多くの剣や斧に槍と様々な武器が飾られていた。この辺りはグレイドさんとマリアンさんのお店に似ている。



「おーい、親父さんいないかー!?」



 店内には特に店員らしき人が誰も立っていなくて、カウンターの方にも誰もいないので護君が奥の方へ呼びかけてみた。




「あーい、ゴメン〜。ちょい作業に夢中になっててさ〜」



 店の奥から出て来たのは、僕やリオンさんの思い描いていたイメージと全然違う人物。



 緑のつなぎ服を着ている小麦色の肌をした女性で、年は20代くらいかな?銀髪の長い巻き髪をしててギャルっぽい感じがする。



「あ、聞いた声かなと思ったらマモ君じゃない〜。なになに? 私に会いたくなっちゃったとか!?」



 彼女は護君を知っているみたいで、あだ名っぽく彼の名を口にして近づいて来る。護君と結構身長差があって20cmはありそう。



「新しく剣を作ってもらいに来ただけだ……親父さんはどうした?」



「パパならギックリ腰になって寝ちゃってるから私が代理だよ」



 護君はため息をついてから彼女に用件を伝え、店の店主の所在を聞く。どうやら彼女は店主の娘みたいで代理の鍛冶職人らしい。



 まさかこんなギャルっぽい人が鍛冶職人とは……人は見かけに寄らないと言うけど、これは想定外だ。



「おや、新顔もいるね? 私は鍛冶職人の木槌瑠奈(きづち るな)。ルナで良いよ? このお店共々よろ〜♪」



 ルナと名乗る女性は軽いノリでピースを決めて挨拶する。多分ギャルピース?その辺り分かんないけど。



 とりあえずかなり個性的な鍛冶職人というのは充分理解出来たかな。

次回はリオン視点となります。

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