20話 3人パーティで初めての休息
リオンSide
んもう〜!このダンジョンどうなってんのよ!?
食べられそうな食材とか無いし、モンスターは昆虫系しかいない!料理人にとって相性最悪なダンジョンじゃない!
あたし虫嫌いだし、食糧庫に収納したくないこんなの〜!
「はっ! ふっ!」
「フラム2!」
護君が剣で片っ端から洞窟アリ達をズバババッと、どんどん剣で斬っていくのに対して、神城君の方は炎魔法で大勢の虫モンスターを一気に焼き尽くしていく。
強い仲間が2人って頼もしい!
軍団と言えるぐらいに虫のモンスター達が沢山いたはずだけど、神城君と護君の手によって急激に数が減らされている。
あたしも格闘術の心得があるから戦えるけど、正直言えば虫には近づきたくない。ダンジョンに潜る冒険者としてそれはどうなんだって言われそうだけど、苦手なもんは苦手なの!
1人で潜ってこんなのと遭遇してたら、もう地獄でしかないから!
「ふ〜、もうこれで全部かなぁ?」
「こっちは全て終わった。どうやら向こうは全滅のようだ」
神城君と護君でこのフロアの虫モンスター全てを倒したらしく、あたしから見れば2人が輝いて見えた。
「此処が地下4階でボスがいない。だとしたら次辺りがフロアボス……ね、今のうちに此処で休憩にしない? 神城君とかそろそろお腹空いた頃だと思うし」
「あ、それ言おうと思ったんだ。お腹空いて来ちゃって……」
よし、グッドタイミング!
神城君がお腹空いちゃったら本来の力が発揮出来ないから、こういう休息は本当に大事になってくる。それに疲労っていうのは護君みたいに平気そうでも、知らない間に溜まっちゃうしね。
「この前ダンジョンボアーを多く収納したから、イノシシステーキにする?」
「ううん、今日は猪肉使わないよー」
確かにその素材は多くあるけど、甘いね神城君。同じ食材ばかりしか使わないと思ったらそれは間違い!今回は新たな料理を振舞っちゃうよ♪
あたしは自分の背負う荷物から調理器具を取り出し、ダンジョン内での調理環境を整える。
確かこの前市場で良いの仕入れられたから、今日はそれを使ってこうかなと、あたしは収納の力を発動させて異空間から一つの食材を取り出した。
それはダンジョンに生息する魚、アントロフィッシュ。と言っても丸々一匹じゃなくて、その切り身だけどね。本体はもっと大きいらしいから。
事前に作って来た酢飯を収納から取り出し、異空間で保存出来る利点をフル活用して、あたしは切り身を包丁で切って我流で簡単に寿司を握っていく。
勿論解毒魔法で消毒済みだからね?
「完成〜!あたしお手製のアントロフィッシュの握り!」
「アントロフィッシュ……洞窟に生息して、トロのような食感で寿司職人の間で人気の高まっている食材か」
護君はあたし達より色々なモンスターと戦っているだけあって、その存在を知っていた。
彼の言うようにダンジョンが出現して、時が経つとモンスターを美味しい食材として活用する事が増えたり、このアントロフィッシュもその一つなんだよね。
今は安く仕入れられるけど何時高騰するか分かんないし。
「いただきまーす」
神城君が真っ先に手を伸ばして、アントロフィッシュの握りを丸ごと味わう。
「……美味しい!これ本当にトロの握りみたいですっごい美味しいよ!」
「美味い……良い味だ」
美味しく味わってくれてる神城君。続いて食べた護君の口にも合ったみたいで、これはもう大成功ね!
あたしも一貫食べてみれば寿司の中トロに近い食感で、寿司の旨味が口の中で広がって幸せになる。これが寿司職人の握った物なら、もっと絶品になると思うけど充分美味しい。
とにかく存分に戦った神城君と護君の2人には、充分な英気を養ってほしいつもりで作った。
この2人がやられちゃったら同時にあたしも終わっちゃうし、彼らには頑張ってもらわなきゃね。
護Side
ダンジョンでの食料は手軽に持ち運べて、簡単な物で良いと思って味には拘らなかった。しかし美味い寿司を食べて不思議とまた戦える気持ちによりなってくる。
今までの味気ない携帯食でこうはならなかったな。
「やっぱりお寿司って美味しいなぁ〜」
しかし神城はよく食べるものだ。俺より多く食べたりしてるにも関わらず、何故あそこまで体が小さいのか不思議でならない。
だが小さくても彼は強かった。先程俺と昆虫モンスターの集団を討伐した時、広範囲の魔法を使い分けて敵の数を一気に減らしていた。
おかげで俺の方は楽をさせてもらい、悪いと思う。
こんな事……以前組んだパーティでは考えられなかったな。
「此処が虫となると、フロアボスも虫系かな?通常でもレアボスでも」
「その傾向はあるかもしれない。まぁ全く違うタイプが出る可能性も無論あるが」
神城が言うようにダンジョンに出るモンスターの種類、それによってボスが同じタイプというのはよくある事だ。
低ランクのダンジョンなら特に可能性は高く、今回は高い確率で昆虫系が出ると見ていいだろう。
「うええ……もう虫嫌なんだけど、食材に出来ないし〜」
先程から姫島は虫だらけの場所に文句が多くなってきている。
「後少しで終わるから、リオンさん頑張ろ?」
「うん、終わると思いたい〜!」
神城の励ましでこの場はなんとかなりそうだな。今俺達がいる場所は地下4階で、このランクのダンジョンならそろそろ最下層となってもおかしくない。
しかし5階で終わりという保証は無いので、それ以上の深さへ潜るのも覚悟した方がいいだろう。
姫島にとっては地獄だろうがな。
休憩を終えて俺達は再び行動を開始。変わらず先頭に俺が立って、先を進むやり方に変更はない。
此処が地下5階か。今回は一本道となっているようで、敵の気配も感じられなかった。
それでも何が起こるか分からないダンジョン、俺は周囲の警戒を怠らず一本道を歩いていく。
「!ここは……!」
通路を歩いた先には広い空間があって、そこは神殿のような雰囲気と作りのフロアだ。
間違い無い、此処がフロアボスのいる場所。奴らが出る場所は決まってこういうフロアなのは散々見てきた。
俺は剣を鞘から抜くと身構える。今までの傾向からして、フロアボスはこれから現れて俺達に襲いかかるはずだ。
「ギギギ……!」
奥の方から何か聞こえてきた、虫のモンスターと似たような鳴き声。
しかしそれよりも声は大きく聞こえる。
「ギギィィーーー!!」
「キャーー!?」
その姿を見た姫島の悲鳴がフロアに木霊していく。
目の前に現れたのは巨大なカマキリを思わせるボスで、途中で出て来たソードマンティスの剣のような腕より大きく太い。
両腕に大剣を抱えているような物だな。
「お、大きい!?これってもしかして……!」
「ああ、どうやら当たりのようだ!」
大型のフロアボス、間違いない。神城も気づいたようで俺もそうだと確信する。
こいつはレアフロアボスモンスターだ!
次回は3人それぞれのSideがあります。




