18話 初めての3人パーティでダンジョン探索
護Side
神城明弥という小さな魔法の使い手。
そいつがレベル6と決して高くないレベルでレアフロアボスモンスターを倒し、その力を確かめる為に挑んだ俺にも勝利した。
直に見て分かった身のこなしに反射神経、あれは短い期間で身に付く物じゃない。長い年月をかけて体に覚えさせた物だ。
自分より明らかに体格やレベルで劣るはずが、それを覆していく神城の強さをもっと間近で見てみようと思い、俺は彼らのチームであるアンフィニアーミーと呼ばれる集まりに加わる。
今より更に強くなり、俺が妹の立樹を守る為に。
「ふあ〜、兄さんおはよう〜」
「ああ、おはよう」
俺が家で朝食の支度をしてる間、立樹が起きて来た。
まだ眠気が覚めきっていないのか眠そうな声で、顔も今にも寝そうな雰囲気で寝癖がついていた。しっかりした妹だが結構抜けている所がある。
「今日はトースト? 和食派の兄さんが珍しいね」
顔を洗って身だしなみを整えてきた妹が、テーブルに並ぶトーストや牛乳にハムエッグを見て珍しそうな顔で見てきた。
確かに俺は和食が好きだが、別に洋食が嫌いという訳じゃない。そう妹からは思われてるかもしれないが、俺だって普通に色々食べたりするんだ。
「今日は時間が無くてな……この後すぐに出る事となってるんだ」
「ああ、そっか。昨日兄さんスマホで神城さんと話してたよね?」
立樹に聞かれていたか、まぁ隠す程の事でもないから構わないだろう。
昨日神城から連絡が来て、明日予定が無いなら一緒にダンジョン潜らないか?と誘いがあった。誰かにそういった誘いを受けるのは随分と久々だ。
予定と言えば1人でダンジョンに潜る事で、目的が一致していたので俺は彼の誘いを受ける。近くで神城の戦いを見るチャンスでもあるので断る理由など無い。
なので何時もより時間が無くなってしまい、簡単な朝食を用意するので手一杯となる。育ち盛りの立樹を思えばしっかり食わせたい所だが、今日の所はこれで我慢してくれ。
「あの2人がいてくれるなら安心だね、兄さんを任せられるから!」
「俺はそんなに頼りないか?」
「だって強くても兄さん1人じゃ危ないと思うし」
それに対して俺は妹に返す言葉を持ち合わせていなかった。
パーティを組んだ時期もあったが、色々あって組む事が出来なくなりソロで俺は戦い続けた。
幸い俺のスキルは俗に言う当たりスキルのようで、剣豪と呼ばれるスキルを授かっている。
スマホのAIの説明によれば剣豪はレベルが上がりやすく、剣で戦って熟練度が上がれば様々な技が習得出来るらしい。剣道をやっている俺には肌に合うスキルだ。
俺のやる事と言えばレアフロアボスモンスターを探して狩る事。それを俺は主に1人でダンジョンを周回し続ける日々、繰り返し行って来た結果レベルは26となっていた。
しかし神城に負けてこの程度のレベルと強さは、まだまだ甘過ぎたと知る。俺はもっと強くならなければならない。
「じゃあ行ってくる」
「兄さん気をつけてね!」
妹に見送られて俺は自宅マンションを出て、神城と姫島の待つダンジョンへと急ぐ。
確か今日は東中野にあるFランクダンジョンに行くとの事だ。ずっと1人で戦って来たから、パーティでの戦いに慣れるには丁度良い手頃な場所だろう。
電車に乗って東中野へ向かい、その駅で降りて南の方へ歩く。まだ朝早くの時間帯なせいか人通りは少ない。おかげであまり好きじゃない人混みの中を歩かずに済む。
駅から歩いて5分といった所か、他の建物とは明らかに違う禍々しい妖気のような物を纏わせた洞窟が見えた。
念の為にスマホで位置を確認すれば、Fランク東中野ダンジョンと出ている。此処で間違いなさそうだな。どうやら2人はまだ来ていないらしく、俺は洞窟を背に目を閉じて待つ事にした。
「あ、護君もう来てたー! 速いね!?」
騒がしい聞き覚えのある声がしたので、俺は目を開ける。思った通りそこには神城と姫島の2人が、ダンジョンへ駆けつける姿が見えた。
「早く来たつもりだったけど、ごめん。待たせちゃった?」
「いや、1分待っただけだ」
この時、俺は神城の装いがこの前と違う事に気づく。右手には神城の身の丈ぐらいある杖のような物が握られていた。
「装備を整えたのか?」
「うん、防具とか何も無しじゃ危ないからってなって2万で魔法使いの装備一式を揃えてもらったんだ」
神城は初めて会った時、武器のような物は何も持たずだったのはハッキリ覚えている。確かに低レベルのダンジョンなら装備無しで魔法使いは魔法で押し切れそうだが、レアフロアボスモンスターは別だ。
何の装備も無しで、ソロで討伐したなど信じ難い話だろう。しかし俺に勝った実力を思えば納得がいく。
新たな装いの神城か……興味深い。その力を近くで見せてもらおうか。
「先頭は護君、お願い出来る?」
「無論そのつもりだ」
ダンジョンへ潜る前に陣形を決めておく。姫島に言われるまでもなく、先頭を俺は行くつもりでいた。
強いとはいえ神城は魔法使いで本来後方の職で、姫島はサポートがメインで前線には不向きな2人だ。
ならば前衛に最も適した戦士である俺が行くしかないだろう。
「じゃあ最後尾は僕でリオンさんが真ん中、でどうかな?」
「うん、賛成!」
「それがベストだな」
モンスターが礼儀正しく全て正面から来るとは限らない。
時として奴らは不意討ちも仕掛け、俺達に大打撃を与えてくる事もある。特に上のダンジョンへ行けば、そういった知恵の回るモンスターも出て来るらしい。
Fランクも油断は禁物だ。特にレアフロアボスモンスターともなれば、そのタイプが出てきても不思議じゃないだろう。
「よし、これで新生アンフィニアーミー出陣と行きますか! さ、お先にどうぞ!」
張り切っていた姫島だったが、ダンジョンは俺が先行して入る。
ソロではないパーティでの探索の始まりだ。




