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16話 それぞれの目標

 僕は自宅近くのコンビニで早めの昼食を選んでいた。



 JTuberになってそこそこ稼げているから、こうして自腹でコンビニ飯を楽しむ事が出来る。あ、ヒレカツの弁当とか初めて見るからこれにしよっと。勿論これだけでは足りないから、菓子パンやおにぎりも2個ずつ買う。



「ありがとうございました〜」



 可愛い女性店員さんの声を背に受けながら、僕はコンビニを後にして適当に座れる場所でお昼を食べようと思った。



「あっ、神城君!」



 そこへ偶然にもリオンさんと遭遇。今日はダンジョンに潜らないオフの日のせいか、黒いキャスケットに黒いノースリーブとショートパンツという、何時もの全身白コーデとは真逆の黒コーデで登場だ。



「リオンさん、奇遇だね」



 というかよく会うなぁ。同じ町内ってせいもあるだろうけど、デパートの時といい高確率で会ってる気がする。



「ホント偶然ー、神城君あたしの居場所分かって移動してない?」



 そんな訳ないし、居場所分かってんの?はこっちの台詞だからね。



「あ、そういえば神城君ってお昼まだ? あたしお弁当作って外で食べようとして場所探してたんだー」



「お昼? 僕も今から食べようとしてたから、何処かで座って食べる?」



「うん、そうしよそうしよ!」



 流石料理人。僕みたいにコンビニ行って買わなくても、自分の手で美味しい料理作れるし。とりあえず公園とか行けばベンチがありそうなので、僕はリオンさんと一緒に公園へ向かう。




 公園には思った通り、空いているベンチがあって近くには家族連れの姿もあって、子供を公園の遊具で遊ばせる母親に子供同士の遊ぶ光景は見てて癒されるし和んでくる。



「にしても神城君、今更だけどそんな食べてよく太らないね〜?」



 リオンさんは手作りの弁当を食べながら、じぃっと羨ましそうにツナマヨおにぎりを食べる僕を見ていた。



 ちなみにリオンさんの弁当の中身はふりかけのかかったご飯、タコさんウィンナー、ミニトマト、一口サイズの卵焼きという可愛らしいピンクの弁当箱の中身だ。



「スキルでお腹空いたりするから、多分それでカロリーとかも消費しちゃって太らないのかな? モンスターと戦ったり体を動かしたりもしてるし」



「ああ〜、それでかぁ。ついでに身長伸ばす栄養面とか飛んじゃってそうなったりして?」



 一口サイズの卵焼きを食べつつ怖い事を言われる。だとしたら大食いスキルのデメリットがまた一つ増えたんだけど?



 身長が伸びなくなります、とか!




 ヒレカツ弁当のジューシーさを堪能しつつ、早々に完食すればデザート感覚でメロンパンを食べる。



 メインを食べた後の甘い物って、めちゃめちゃ美味しく感じて好きなんだよね。これがもう至福のひと時。



「護君が入ってくれたりして、チームらしくなってきたよねあたし達」



 一足先に自分の弁当を完食したリオンさん。メンバーが3人となった事が嬉しいのか、僕に笑いかけて来た。



 大人だけど可愛い少女みたいな笑顔だ。



「確かにチーム結成して全然日が経ってないのに、人が増えてくれたりと幸先良いよ」



「そうそう、このまま本当に無限の軍団になっちゃうかも♪」



 僕達は一緒になって子供達が滑り台で滑る所を眺め、チームがこうなっていったら良いと理想を語っていく。




「そういえばさ、神城君ってどうしてダンジョンに潜るようになったの?」



 僕が最後のクリームパンを食べようとした時、リオンさんからそれを聞かれて食べる手が止まって彼女の方を見る。



「だって今大食いのJTuberグルーとして活動してるでしょ? お金を稼ぐ為っていうのなら、もう手段を得てるし」



 満足行く額を稼げている訳じゃないけど、確かに危険なダンジョンに潜らなくても僕には稼ぐ術がある。その活動に集中して、もっと成功すれば1人で生活していけるかもしれない。



 でも僕はある目的があるので、ダンジョンは避けて通れなかった。



「昔助けてくれた人に……再び会ってお礼が言いたいんだよ」



「昔?」



 リオンさんは勿論知らない。僕が今のスキルを手にする切っ掛けとなった出来事を。



 僕はその事を話し始めた。



「7歳ぐらいの時にね、両親が突然行方不明になって1人で家に暮らしていたんだよ」



「え、7歳で1人……!? 両親が消えたってどういう事?」



 過去を話し始めるとリオンさんは驚く顔をみせる。普通7歳で両親がいなくなって、そこから一人暮らしとかそうそう聞かないだろうから無理もないか。



「何で消えたかは10年以上経った今も分かってないんだ。7歳の子供だった僕の出来る事は限られてて、家の中の食べる物が無くなると外に出たんだけど、何も出来なくてただ歩くしかなかった……」



 当時の辛かった幼い頃の記憶が頭の中で蘇りながらも、僕は話を続ける。



「それでもうお腹が空いて限界で倒れそうってなった時、黒フードの人に助けてもらったんだよ」



「黒フードの人? 名前とか性別とかそういうの知らないの?」



「うん、ただ命の恩人なのは間違いない。僕に食べ物をくれたり、このスマホも託してくれたからね」



 今も忘れない黒フードの人物。あの人がいなければ僕は今、この場にいなかったかもしれない。



 この大食いスキルと出会う切っ掛けを作ってくれた人で、何者でどういう人物なのかは今も全く分かってないけど、今の世界について何か知ってるような感じはした。



 その人に会って再び話したい、会ってちゃんと助けてくれたお礼を言いたい。僕がこのスキルを完璧に使いこなして東京だけでなく、全国各地のダンジョンを巡れるぐらい強くなればまた会えるかもしれない。



「僕がダンジョンに潜る理由は特に大きな目標とか無いけど、それが僕にとって最大の目的かな」



「何処の誰か分からない謎の人物かぁ……何か雲を掴むような話でロマンに溢れてそうだね?」



 話を聞いたリオンさんの目が楽しげに光った気がした。



「あたしも付き合っちゃうよそれ! 目標は凄腕のダンジョン料理人になる事だし、あたしも良い修行になると思うから!」



「え、ええ? 僕の目的なんだけど付き合わせていいの?」



「だってあたしがいないと神城君、お腹空いて倒れちゃうじゃない。あたし以外誰がキミの面倒見れるの?」



 それを言われると弱い……!確かに僕はお腹空いたら何も出来なくなるし、リオンさんの力は絶対に必要で欠かせない。彼女がいてこそ初めて最下層に辿り着けたし、ボスも倒す事が出来た。



 むしろこっちからお願いしたいぐらいだ。こんな頼れる仲間は他にいない。



「じゃあこれからもよろしくで、話が纏ったし行こっか♪」



「え?」



 急に立ち上がったリオンさんに腕を引っ張られ、僕は何事!?と困惑した表情を浮かべる。



「一緒に冒険するからにはもっと神城君強くなってもらわないとー」



 え、この流れは今から僕って地獄のスパルタ特訓でもやらされそう?今これってそういう流れになってない!?



「あ、あの? 出来ればお手柔らかに……」



 巨大イノシシに突進されたり、高レベルの戦士とタイマンで戦ったりと、最近大変なバトルが続いているから軽めの特訓が良い。僕はせめてもの、ささやかな抵抗で望んでいた。



「善は急げって言うし、さぁさぁ行こう〜!」



 そう言うと、リオンさんは席を立って僕の手を握って引っ張る形で移動を開始。



 ホントに僕何処に連れてかれるのー!?

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