14話 圧倒的不利!?魔法使いと戦士の決闘
マンションの外に出て来て、近くの駐車場で僕と護君は向かい合う。
僕らの他にもリオンさん、甘利、立樹ちゃんがいて皆心配そうに見守っている。誰も僕の実力を見せろという護君を止められず、こんな状態になってしまう。
クールそうだけど結構血の気が多いというか、本当何で僕が彼の誕生日の日にこうなっちゃったんだろ?まさかこれが誕生日代わりになるのかな?
「兄さん! 2人で危ない事は駄目だよ!」
立樹ちゃんは心配になって、兄を止めようと声を掛けた。良いぞ立樹ちゃん、その調子でお兄さん止めてくれると凄くありがたい!
「大丈夫だ。力を見るだけで、剣も峰打ちで行く」
止まってくれないし、誕生日で大人しくケーキ食べて祝われれてほしかった。何でそんなやる気満々なんだよ……!?
「どうしてそこまで僕の力を知りたいの? 僕はただのレベル6だよ?」
ちなみに僕は此処に来るまで、スマホで彼のレベルを見ている。
26だ。
僕どころかリオンさんの倍以上のレベルで普通に勝てないよね!?しかもこういう一対一じゃ魔法使い不利で、戦士系は有利だろうし!
「だが倒したんだろう? レベル6で何故それが出来たのか、お前の力の秘密を解き明かせば……俺は更なる強さに近づけるかもしれない」
僕の目の前に映る彼の真剣な顔つき、何の冗談でもなく護君は大真面目に僕と戦うつもりで、今より強くなろうと望んでいた。
鬼気迫るような目に僕は圧倒されそうになる。あのレベル18のチンピラ2人が可愛く思えるくらいだ。
「……開始の合図を出せ、料理人」
「 え、あ、あたし!? 分かった……!」
勝負の開始合図を護君はリオンさんへと振る。いきなり始めようとはせず、ちゃんと合図付きでやってくれるのは正々堂々とした所がある。
「お兄ちゃんー! ケガしないで気をつけてー!」
甘利からの声援が飛んで来て、僕はやるしかないという状況を改めて理解。
病院送りとかになったらしばらく動画撮れないし、病院代も結構かかりそうだから本当にケガは避けたい!
「では、えー……両者準備はいい?」
「ああ」
「……うん」
もう覚悟を決めるしかないみたいだ。リオンさんの確認に僕と護君は頷く。
「 勝負……開始!」
「ふっ!」
「わっ!?」
リオンさんが開始の合図を出すと同時に、先手必勝と護君が跳躍してくると僕に向かって剣を振り下ろす。
それを咄嗟に僕は後ろへ跳び退いて、剣の直撃を避けた。ちょっと本当にそれ峰打ち!?上からたたっ斬ろうとしてなかった!?
とりあえず攻撃は受けたくないから、どうにか逃げ回る!戦士と真っ向からやって勝てる見込み無いし、何より僕の身が危ないから!
リオンSide
岸川護君の誕生会によるクエストから、まさかの男の子同士の決闘みたいな事になるなんて思わなかった。
あたしは2人から離れた場所で甘利ちゃん、立樹ちゃんの女の子3人で彼らの戦いを見守っている。というか冷静に見えて勝負したいとか力が見たいとか、護君って案外喧嘩っ早い性格してる?
護君は神城君がレアなんとかモンスターを倒したと聞いて、挑んで来たっぽいけど確か通常ボスより強めなんだっけ?
てなると神城君ってレベル5だったけど、すっごい強いって事じゃん。
現にあのダンジョンの道中やレアボス戦で、神城君は一発も攻撃を食らっていない。彼の反射神経と身軽さがそうさせてるのかな?そういえばあのチンピラ2人が潜んでた事も分かったみたいだし、危険察知能力も高いんだよね。
そして神城君は今も護君の繰り出す剣に対して、距離を取ったり跳んだりと躱し続けている。
彼は大食いで避けるのが上手い魔法使い。とりあえずケガだけはしないでね!?
明弥Side
はぁっ……!僕は何時まで躱し続けなきゃなんないの……!?
此処までなんとか護君の剣を躱し、ダメージは受けていないけど代わりに動き続けてスタミナの方がヤバくなってきた。
戦士の護君はしつこく僕を追いかけ、縦や横へと剣を一閃してくる。疲労の気配無くてまだまだ元気そうで、親玉ボアーとの戦いを思い出す。
でもそのレアボスと違うのは、護君の場合は自滅のような行動が無く、隙が見当たらない。
相手は僕と同じ生身の人間。しっかりと思考を持っていて、対策してくる可能性が高い。早くこの状況をなんとかしないと、僕がしばかれて病院送りになりそうだ。
「どうした! 仕掛けて来ないのか!?」
こっちが全然攻撃せず、躱してばかりなのに対して護君が仕掛けて来いと言ってくる。
さっき周囲を確認したけど、此処は駐車場で止まってる車が結構あった。これでフラムとかで流れ弾になって、ガソリンに引火とかしたら大惨事になってしまう。
それで僕が放火魔となれば人生ジ・エンド。この駐車場という地形に加え、僕の攻撃が主に炎魔法なので仕掛けられない。
チャンスがあるとすれば、彼が跳躍して飛び込んで来た時だ。この時なら空に向かって放てるから、車に当たる確率は低くなってくる。その時を狙って、チャンスを伺うしかないね。
すると護君が左足で地を蹴って跳躍、ジャンプ攻撃が来た!
「フラム!」
僕は左掌を護君へ向けると、炎の玉を飛ばす。空を舞って自由に動けない今、彼にこれを避ける方法は無いはずだ。
「おおおっ!!」
ザンッ
でも思惑通りには行かなくて、護君は驚く事に僕のフラムを真っ向から両手持ちの剣で振り下ろすと、炎の玉を真っ二つに斬って消滅させる。
嘘ぉ!?そんなんアリ!?剣で炎斬るなんて聞いてない!
「うわっ!?」
僕は驚きながらも後ろへ跳び退こうとするけど、護君がコンクリートの地面に剣を叩きつけた剣圧による衝撃波で、体が後方に吹き飛ばされ、仰向けに倒れてしまう。
「お兄ちゃん!」
甘利の心配するような声が飛び、僕は立ち上がると護君が真っ直ぐ迫って剣を振ろうとしていた。
「ブリッツ!!」
僕は咄嗟に新しく覚えた魔法、ブリッツを使う。この時の考えなんかもう何も無く、本当に咄嗟に出たという感じだ。
両掌を護君へ向けると、そこから小さな雷の矢のような物が素早く飛び出る。
瞬きする間もなく、雷の矢が護君の振ろうとしている剣に当たった瞬間。
「ぐおおおっ!?」
剣を伝って本体の護君へと行ったのか、雷魔法が彼にダメージを与えていく。
電気は金属を通すせいか炎のように、剣で振り払う事は出来なかったみたいだ。
「ぐっ……」
「兄さん!」
兄が雷魔法を受けて右の片膝をつく姿に、立樹ちゃんの心配する声が聞こえる。何かこっちの方が悪役っぽくなってきたかなこれ……。
「……軽く、だったよね。もう良いでしょ?」
「……」
僕は彼に駆け寄ると、勝負はもういいだろうと告げる。正直言うと避ける体力が限界近くて、終わってほしいと思った。僕は戦いで出来る事は出し尽くしたつもりだから。
「あのレアフロアボスモンスターを倒した力、本物らしい……俺の負けだ……」
終わるどころか護君は自らの負けを認めてきた。いや、勝ち負けじゃなくて軽く力を見るとかだったはずだけどね……?
というか僕レベル26の格上に勝っちゃった!?相手すっごい強い事は間違いないのに!
彼の装備が雷魔法に滅茶苦茶弱くて、それが上手く決まってくれたおかげかな?とりあえず無事に終わってラッキー!
次はリオン視点の回です。




