13話 凄腕剣士に目をつけられる
「何故お前が俺の家にいるんだ」
あの時の戦士こと、岸川護は僕へ厳しい目を向けて来る。その目が怖く見えたのか、甘利が僕の後ろに隠れていた。
これヤバい展開じゃない?なんか誤解を解かないと、僕が今度はあのチンピラ達みたいにしばかれそうな感じだよ!
「待って兄さん! 私が依頼して家に入れたの! 今日兄さんの誕生日で、それで私だけじゃ準備が大変で友達の知り合いにお願いして……」
そこへ立樹ちゃんが兄の前に出て来て、事情を説明してくれた。
「……クエストか」
妹からの話を聞くと兄の護君は大体把握したらしく、僕に剣を向けるという事は無くなったらしい。助かったぁぁ〜!今絶対僕の事斬ってやるとかで睨んでたっぽいし!
「なになに、どうしたの〜……ってあの時のイケメン戦士ー!?」
そこへリビングの方で騒がしいのが気になったか、リオンさんがキッチンから歩いてきて、彼の姿に大きなリアクションを見せていた。
僕がいるなら彼女もいるだろうと思ってたのか、護君はリオンさんの姿を見てもノーリアクションだ。
「で、妹の立樹ちゃんにあんたの誕生日を祝ってほしいと頼まれて、料理作ったり飾り付けしてたって訳」
改めてリオンさんの口から今回のクエストについて、護君へと伝えられた。話を聞く彼の顔に変化は一切なく、冷静沈着って感じかな?
「もう〜、ビックリした〜! 何か襲って来るのかと思ったよー!」
ようやくこの場が安全だとなって、甘利はホッと安心しているみたいだ。睨まれた僕も同じ事思ってたから、その気持ちは凄く分かる。
「そんな事しないって! 兄さんは優しいから大丈夫、誤解されやすいだけで……」
立樹ちゃんからすれば護君は厳しくもあるけど、優しい兄か。そういえば僕達をあの時助けてくれたし、そのお礼をちゃんと言っておかないと。
「えっと護君。Gランクのダンジョンで僕達の事を助けてくれてありがとう」
「だから助けた覚えは無いと言った。通行の邪魔だったからそうしただけだ」
うーん、譲らないなぁ。それとも素直になれないツンデレ系とか……とりあえず本人に聞こえたら、マジで斬られそうだから言わないけど!
「じゃあ話も纏った事だから、あたしの作った和食で夕飯といきますか♪ 皆並べるの手伝ってー」
リオンさんは彼が好きだという、和食の料理を作り上げたみたいなので、パンッと両手を叩いた後に夕飯の準備に入る。
そういえば僕もお腹空いたから、どんなのが出て来るか楽しみにしてる。っと護君の誕生日だから彼の分食べたりとかしないように抑えないと。
リビングにあるテーブルの上に豚の角煮、冷奴と彼が好きだという料理が並べられていた。好物でも流石にそれだけでは誕生日として寂しいので、色々な種類の天ぷらに寿司まである。
ヤバ、見てるだけでもうお腹減るよ!リオンさん和食の料理店とかやれそうじゃん?こんな短い時間で此処まで作れるなら。
「じゃあ、いただきまーす♪」
それぞれ食事の準備が整い、お腹が減って我慢出来なかったのか、甘利が護君より先に赤身の握りを口に入れる。
「美味しい〜♡ リオンさん料理の天才だ〜!」
「……美味い。これは中々良い」
甘利が幸せそうに寿司を味わう側で、本日の主役である護君が豚の角煮を箸で一口食べると、表情は変わらないが美味いと思ってくれたようだ。
無愛想だから喜んでるのかどうか分かり難いけど、まぁ美味いって事は喜んでるって事で良いよね?
というか僕もいい加減お腹空いたから、海老の天ぷら行こうっと。う〜ん、天ぷらサクサクで海老と文句無しのマリアージュ!美味い!
豚の角煮もすっごい柔らかくて蕩ける!高級な料亭とか行ったことないけど、そういう所に出てもおかしくないようなレベルだと思う美味しさだ。ちょっとこれマジで止まんないって、今のうちに謝っておこうかな。
護君ゴメン、あまりに美味しいから調子乗って食べ過ぎる可能性出て来ちゃった。
「ふぅ〜、ごちそうさまでした!」
あらかたテーブルにあった数々の和食を完食して、甘利は満足すると手を合わせて満腹のようだ。
「私が作るより全然美味しい……リオンさん、迷惑じゃなければ今度料理を教えて欲しいです」
「全然良いよー、むしろその年から作れるのは凄くて偉いと思うし、教えたらあたし超えられそうだなぁ〜」
立樹ちゃんはリオンさんの料理の腕を凄いと思い、教わりたいとなっていた。そのリオンさんはご機嫌な笑顔で、今度一緒に作ろうかと約束を交わす。
「……あんな美味い豚の角煮は初めてだ」
「うん、分かる。すっごい美味しかったよね」
護君が呟いた事に僕も反応。豚の角煮が絶品だった事にはもう完全同意で、僕も人生で一番美味い豚の角煮を味わった気分だ。
「あ、実を言うとあれ角煮だけど豚じゃないんだよねぇ」
「え?」
「……?」
それを聞いて僕と護君は一斉にリオンさんを見る。ちょっと待って?実は変なゲテモノ料理でした、なんていうのは無いよね?子供も食べてたから無いとは思うけど心配になるよ!?
「ほら、あったじゃん? 神城君が倒したダンジョンボアーのすっごいでっかいバージョンのボス。あれの肉を収納からちょっと出して使ったんだよね」
それを聞いて僕の頭の中で、ブモォォォー!という鳴き声が再生されると共に思い出す。
僕に突進しまくってきた巨大なイノシシの親玉。あれの肉を使って豚の角煮に近い感じにしたんだ。正直スリルあり過ぎなボス戦で、あまり思い出したくなかったけどあれが絶品の肉になるとは。
凄い美味しくいただけました。
「待て、今……なんて言った?」
「え?」
急に護君が鋭い目つきをリオンさんに向けていた。
え、急にどうしたの?まさかイノシシ肉はすっごい嫌いで、知らない間に食べさせられてキレた!?
「あそこに出るフロアボスは通常なら色違いのボアーで、巨大なボスは出て来ない。お前達がそれを知っているという事は、会ったのかレアフロアボスモンスターに」
「レアフロア……?」
何か聞き覚え無いのが出て来たけど、レアフロアボスモ……長過ぎるからレアボスでいいや!
「なんなの?その、レアボスモンスターってのは」
僕が聞こうとしていた事を、代わりにリオンさんが聞いてくれた。
「通常では出会う事は無いが、極稀に起こる。そのフロアのボスよりも強いモンスター……それがレアフロアボスモンスターだ」
よく略せずスラスラ言えるなぁと感心してしまう。僕がそんな呑気な事を考えてると、護君の鋭い目が僕に向いてきた。
「あの時お前達がダンジョンから出て来たのは、そいつを倒した後……という訳か」
うん、正解。倒した後だけど、キミは何で僕を睨んで来るのかな?
「倒したのはお前か小僧?」
「え、そう……だけど」
リオンさんの協力あってだけど、僕の魔法で仕留めたからそうなると思う。
ていうか小僧って僕一応キミより年上だよ!?
「倒したその力が見てみたい。表に出ろ」
護君は立ち上がると僕に外へ出るように促す。
和やかなクエストで終わるかと思ったら、何これ?どう見てもさ、決闘するような流れになってるよね?




