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 俺と仮面の勇者が話していると、解呪出来ないと怯えるて絶望していたルルカの顔が色っぽく赤くなっていく。


「はぁはぁ……リルアさんなんだか身体が熱いです。それにぼーっとするというか、不思議とリルアさんがかっこよく見え……」


 呪いの代償というのは色々ある、殺人衝動に破壊衝動、幼児退行や記憶障害だったり、珍しいものだと筋トレを強要してくる喋る呪いがあったりする。

 そしてルルカが掛かっているふたつの呪いの代償は、一時的な性格の変更と発情。

 発情に関しては言わなくても分かるが、性格に関しては俺が見た資料通りだとめんどくさい事になる!


「こい!リリス」


 だんだんとこっちに来るルルカを横目に召喚魔法を使い、今この状況に適した生命を呼び出した。


「はーい、今日も可愛いリリスちゃんここにトージョー、マスターマスター、今宵はどんな御奉仕がよろしいかにゃ」


 ニヒヒと笑う危ない格好の少女が現れる。

 こんな性格だが、一応精霊と呼ばれる種族で、リリスは闇の上位精霊、自称愛と性欲を司る精霊らしい。

 精霊に実態はなく、上位精霊のみ体持ち言葉を喋れる。

 また死という概念はなく、例え身体が滅びようと同じ姿同じ力を持って生まれ変われるため、傷つけるだけで殺してしまう呪いとは相性がいい。

 今この場面では最適な存在であるのは間違いないが、誤解しないで欲しい、暗殺や護衛などが仕事となる都合、複数の精霊と契約が必須であり、リリスも仕事のために契約した精霊の一体だ。


「うるせぇ、お前の相手はあっちあの天使だ」


「ニヒヒ、これまた可愛い天使だね、なんだか甘い匂いがするにゃ」


「呪いの代償だ、効果は発情と甘えん坊になることだ。発散できるまであっちの世界で遊んでやれ」


「むぅ、マスターが来ないのは残念だにゃ、でも天使が堕ちるのは見てみたいから頑張るにゃ」


 リリスがルルカを捕まえ、バハハーイと居なくなった空間はさっきまでうるさかったのが嘘のように静かになった。

 しばらくの静寂の後、最初に喋りだしたのは仮面の勇者だった。


「面白い子だね、見た感じはハレンチだけど、あれは闇の精霊かな」


「ああ、あんなんでも一応上位精霊、国ひとつ滅ぼそうと思えば簡単に滅ぼせる」


「それは恐ろしいね、でも大丈夫かい?」


「ああ、知ってると思うが精霊は死んでも蘇る、そこは心配しなくていいぞ」


 なんでも知ってそうな感じだが、そこを心配されているとは思わなかった。

 ふと仮面の勇者の方を見ると、なぜだか仮面越しでもわかるくらいに赤面していた。


「ぼ、ボクが心配しているのは違くてね。そのあれだろ、子供っていうのはキスしたらできるのだろ、あの子にはまだ早いというか、なんというか…………」


 撤回、こいつどこか常識がおかしい、こいつの親はどうやって育てたんだ、そっちの知識を避けるにしてもコウノトリとかにするだろ普通。


「はぁ、それに関しては俺からはノーコメントだ、後で自分で調べな。それよりもここに来た理由は俺たちに元へ来ただけじゃないだろ、助けに来たっていたが」


「そ、そうだったね。えっと君たちはおそらく行く場所に困ってるんだよね、だからこれを渡しに来たんだ」


 そう言って仮面の勇者が取り出したのは、魔法陣が書かれた1枚の紙だった。

 スクロールと呼ばれる高級品をパッと出すあたり、誰かに頼まれたか、金持ちか。


「【転移】のスクロール、君がよく知っている王様の人から頼まれてね、行先は確か玉座と言ってたよ」


「あいつ、天才か?」


「そうでしょうね、魔法や魔術を紙に落とし込む技術革命起こして、誰でも使えるようにした大天才だからね、特に転移の魔法陣は彼の代表する作品だからね」


 誰でも使えるね、間違いはないが値段が庶民に優しくないんだよな、まぁ量産体制は整えてるとは言ってたけどよほどの事がない限りしばらくは出さないだろうな。

 全知全能の王様ジンジャ、小国を世界一の大国に育てた政治家。

 あらゆる国からの侵略を跳ね除け、戦った戦争は全て勝利した大英雄。

 魔術界隈に革命を起こして魔法という技術を進展させた魔導王。

 どんな技を使ったのか、自らの体を改造して不老不死となったとかいう噂もあるし、色んな意味で世界の中心にいる人物で魔界や天界にも名を刻んでいる人物。

 一応俺の師匠の1人でもある、そんなあいつが俺にスクロールを渡すなんて何の用だ?

 ダメ元で仮面の勇者に聞いてみるか。


「何か聞いているか?」


「いや、何も聞いてないよ。ボクもびっくりだったよ、突然目の前に現れてから『君、リルアの居場所知ってるよね、これを渡してきて欲しいんだけど』って言われて返事する前に消えたからね、だからボクは何も知らない」


「なるほどね」


 なんの要件も伝えずにただただお願いして消える辺り、あいつらしいっちゃらしいが、この仮面の勇者とあいつ知り合いなのか?


「何が言いたいか顔に出てるけど、そんな疑わなくても、王様とボクは知り合いだよ」


「そんなに分かりやすく出てたか、それよりもどうするんだ?」


「どうするって?」


 なんも理解してないようで仮面の勇者は首を傾げる。


「このスクロールに2って書いてあるだろ、これは1度の発動に運べる人数なんだ、俺はルルカを連れてかなきゃ行けないし、そうなるとお前はここに残される事になるのだが……」


「あっ……」


 やっと理解したのか仮面の勇者は深く考え込む仕草をした。

 しばらくの沈黙のうち、深くため息をした仮面の勇者が震えながら俺の肩に手を置いて、泣きそうな声で言った。


「な、何とかなると思うよ、暗いし虫が怖いけど任せて」


 力なく立てられた親指が本当に怖いのだなと伝わる。

 虫嫌いな勇者とはこれ如何に、まあ年相応な感じがするから可愛らしいがな。


「マスター、お待たせしたのにゃ!」


「うぅ……死にたい……お嫁にいけない……」


 仮面の勇者との話が終わってすぐ、肌ツヤが何倍にも増して良くなったリリスと涙でぐちゃぐちゃなルルカが戻ってきた。

 ルルカを宥めながら今までの話と今後の行動を伝えた。

 幸い目標にしていた知り合いも転移先の王国にいるので、ちょうどいいタイミングだろう。


「それじゃ行くぞ、【転移】発動」


 万が一失敗した時が怖いから、ルルカに抱きついて貰いながら紙に魔力を込める。

 ちゃんと発動したのだろう周囲に魔力が漂い、視界が白く染った。


 

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