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第20話 初めてのクエスト

リーゼロッテの依頼を受けたハジメは、ルークと2人で暗黒の森林(シュヴァルツヴァルト)に向かう!

何故か、彼女は一拍置いてから要件を話した。彼女は焦らす癖がある。わざとなのかそうでないのか、それは誰にも判らないが、人のことなんていざ知らず、自分の調子で悠々と話す。

ぼそっと言う。

「落とし物を探してほしい」

突拍子もない依頼に思わず繰り返す。

「落とし物?」

彼女はこくりと頷き続ける。

「以前、暗黒の森林(シュヴァルツヴァルト)と呼ばれている森の中で指輪を落としたの。それで貴方には、その落とした指輪を探してきてほしい」

これを聞いて最初はほっとした。変な化け物と戦うよりはマシだと思ったからだ。しかし、彼女から詳しい話を聞いてすぐに間違いだったと気づいた。

その森は直径10kmの円状に広がっているらしい。そして彼女は森の中腹で指輪を落としたと言う。これだけでも難儀な話だが、他にも問題はある。俺が危惧していたことだ。その森にはやっぱり化け物共(モンスター)が多くいるらしい。

俺は話の全貌を聞いて頭を抱えた。

(俺1人で? いやいや、無理に決まってる……。けど、アリシアは仕事中だから頼れないし……)

1人悩める俺に、リーゼロッテがさも当たり前のように言った。

「なら、貴方のお友達にお願いしたら?」

「お友達……? いや、俺には友達なんて呼べる人は1人も……」

そこで脳裏をよぎったのは前世での記憶だった。

場所は学校、時刻は昼ごろ。他のクラスメイト達は、複数のグループを作って仲睦まじく談笑しながら弁当を食べている。そんな中で、俺は1人で細々と弁当を食べている、そんな光景を思い出した。

「友達なんて……いないよ……」

彼女は先ほどと変わらない調子で言う。

「ルーク、ルーク・ハルトマン。少なくとも彼は貴方のことを友達と思っているみたいよ」

その台詞を聞いた瞬間、ハジメは目を見開きリーゼロッテの七色の瞳を見つめる。

彼は確かめるように、絞り出したような声で言う。

「ほんと……?」

彼女は無言で頷く。

そこに言葉は存在しない。しかし、ハジメはそれを確かなことだと認識した。

相手を納得させるのに必要なことは言葉ではない。想いを含む眼差しがあれば十分だ。

「判ったよ。ルークにも頼んでみる」

彼女はまた頷いた。


そして俺は店を飛び出した。ルークを探して街を駆け回る。

その最中で、依頼の詳細をまとめてみる。

まず目的はリーゼロッテの白銀色の指輪を見つけることだ。そしてその指輪には多少の魔力が篭っているらしく、それが見つけるヒントになり得ると言う。ただ、広い森の中で小さな指輪を見つけるのは、かなり難しいと思う。それこそ砂漠で針を見つけるようなものだ。

それに加えて、森には多くの魔物(モンスター)もいる。

そんなふうに考えを巡らせていると、偶然にも、お馴染みの場所に辿り着いた。


ーーー意志の集(ヴィレゼーレ)ーーー

中に入るといつも通りの賑わいを見せていた。

「ハジメさん、こんにちわ」

メグが明るい笑顔で俺を歓迎してくれた。彼女の明るい笑顔に安堵しながらも質問する。

「メグ、ルークがどこにいるか判る?」

俺の質問に対して、彼女は腕を組んで思案しているような素振りを見せる。

「そうですね……」

「おそらくアダー不動産店だと思います」

アダー不動産店とは、俺とアリシアが以前行った感じ悪い店主がいる店だ。

俺が嫌そうな顔をするとメグが笑う。

「無愛想で接しにくい人ですよね」

「うん、そうだよね」

俺も苦笑する。

「昔は違ったらしいんですけどね」

「そうなんだ」

俺は心底意外に思った。けれどそれ以上の詮索はしなかった。人を変える理由は幾つもあるだろうけど、必ずしも良い話とは限らない。

「まぁ、とりあえず行ってくるね」

「はい! お気をつけて!!」


ーーーアダー不動産店ーーー

俺が恐る恐る店内に入ると、そこには誰もいなかった。

「あの〜すみません……」

返事は返ってこない。

狭い店内を歩き回ってみても誰の気配をない。

(誰もいないのかな……?)

俺が帰ろうとした瞬間、誰かが俺の肩を掴む。

「うぁぁぁ!!!」

俺が情けない声をあげてその場に尻餅をついた。

「あっははは!!! 何ビビってんだよ!!」

アイボリー色の髪をする青年が、声高らかに笑っている。

「ルっルーク!?」

「よぉ、ハジメ何しにきたんだ?」

これはいつもの調子で爽やかな朝のような笑顔をしている。

「実は……」

ーーーーーー

俺はリーゼロッテの依頼を彼に話した。

彼は俺が話している最中は黙って聞いていた。そして話終わると彼は言う。

「なるほどな! つまり宝探しみたいなもんだろ!?」

「へ……? まぁ、そう言うことになるのかな?」

「俺、そうゆうの好きなんだよ! いいぜ一緒に探すか」

彼の黄色の目はいつにも増して輝いていた。

ひとまず彼が手伝ってくれることになったのは良かった。

「てか、即決だね」

「おう」

「忙しいんじゃないの?」

目と目が合った。すると彼は俺の背中をバンッと叩いて言った。

「なーに言ってんだよ! 俺はダチの頼みは聞く主義なんだよ」

「お前……本当に良いやつだよな……」

彼が驚いた声を上げる。

「わぁ、ちょいちょい、何泣いてんだよ!」

「俺は心を動かされるとすぐに泣いちゃうんだ」

思い返せば、フォルトゥナと出逢った時も、アリシアと出逢った時も泣いていたな。

この時の彼の表情はと言うと、心なしか嬉しそうに見えた。

「お前は熱い男なんだな。やっぱり俺達は似てる、仲良くなれそうだぜ」

「うん、確かに」


ーーー暗黒の森(シュヴァルツヴァルト)ーーー

俺は少し前を歩くルークの後を尾いて行く形で歩みを進めていた。

「なんか暗いね……」

「ああ、そうだな」

森は真昼時だというのに薄暗かった。高い木々が日光を遮っているせいだ。不気味な雰囲気に萎縮しながらも依頼を受けた手前簡単に引くことは許されない。

ビビり散らす俺にルークが言う。

「だーいじょうぶだぜ! 俺はつえーから」

俺はこれがフラグにならないことを祈りたい……。

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