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人間魔王降臨!? 初めての成敗!!

 昔から魔界と人間界、二つの大陸が合体した国「アドラー」があった。

 魔界の魔王は人間を滅ぼそうとし、人間は魔族を滅ぼそうとした。魔族と人間は何千年も争いながら生活していたが、一向に勝負がつくことはなかった。

 そのせいもあって、当時は人間と魔族は共存出来ない種族となってしまったのだった。だが、とある魔王と国王がある年に謁見しまさかの仲良しさんになる世紀の大事件が起きた。そのおかげで人間と魔族の協定「平和協定」が結ばれて人々と魔族は争う事をやめたらしい。


「そんなお話を聞いたことがあったが、平和協定を定めた人が先代の魔王様なんて誰が知るんだろうな」

「少なくとも、最近の世代の人しか分からないと思いますよ。それに、その魔王様が亡くなり、今では人間の貴方が魔王であるなんて誰も知らないんですから」


 黒髪の男と白い髪の女が大きめの部屋の中で対面しながら話をしていた。

 白い髪の女は背丈は男より少し小さいが、髪の白さを引き立てる様に、体全体は褐色であった。世に言うダークエルフである。

 黒髪の男は彼女の言う事を肯定しながらも、だが、という否定の言葉を使いながら話をする。


「俺が魔王になったならば人間と魔族の共存を助けなければならない。ヴェラ姉さん、ぶっちゃけ魔王とか嫌なんだけど」


 ヴェラ姉さんと呼ばれた彼女は苦い顔をしながらも嫌な顔をした彼に対して答えを返す。


「魔王様。その呼び名はおやめ下さい。それに、何をおっしゃいますか! 私は先代の魔王様が亡くなり、貴方が魔王に選ばれた瞬間、仕方なく貴方の部下であり、仕方なく僕になったのです。そのような態度で現魔王としての威厳が掴めるとでも?」

「ま、まぁ、そう怒らないでくれ。というか本音が酷いな!? まぁ、俺にとってはヴェラは姉と変わらない。俺を魔界で拾ってくれた先代魔王と、奇跡的に微々たる魔力を持っていた俺の魔法の訓練をしてくれたヴェラ姉さんは家族も同然なのだ」

「魔王様……それでも、貴方にはこれから威厳というものを見せていただかねばなりません。人間を滅ぼそうとするも、人間と共存しようとするも、貴方様次第。魔王様の一言で、魔界全ての魔族が動くのですから」

「分かった、分かった。相変わらず態度が固いな」


 魔王様と呼ばれた彼はヴェラの堅苦しい口調に飽き飽きしながら右手の薬指に付いている指輪を見た。

 この銀色の指輪は特に力は無い。強いて言うなら所有者の指の大きさに合わせて調整されるくらいである。後、指輪に刻まれた名前が大きく表示される事くらいか。

 だが、この指輪はつけた瞬間、魔界の魔王となる。先代どころかかなり昔の魔王から受け継がれた指輪なのだ。その証拠として、指輪を見せびらかすと、細い輪の部分が広がり名前が表示される。


『Satan 小山・クロスロード・美優』


 試しに男がヴェラに向けて「魔王の指輪」を見せると、そう名前が書いてあった。彼の名前は小山・クロスロード・美優。先代魔王であるヴィクトル・クロスロードに代わって現在魔王の地位に着く人間である。


「所で魔王様、今日は単独で人間界に出かけるというのは本当でしょうか?」

「本当だ。俺は魔王であり、人間だからな、平和協定のためにも人間界の事も知っておく必要がある」


 しかしと、少し焦りながらヴェラは話す。魔王たるものが無闇に外を出歩き、ましては暗殺されましたと言われたら血も涙も無い。ヴェラにとっては魔王だが、人間。肉体的にはすぐに老いるし、死ぬ事も分かっていたからである。


「案ずるな、夜に歩けば人混みもない。先代魔王とヴェラに鍛えてもらっているから何とかなるだろう」

「そ、それでも……」

「それとも何だ? 魔王の俺が簡単に死ぬとでも言うか?」

「まぁ、そうですね」

「あれ? そこはそ、そう言うわけでは……とか言って俺の強さを認める感じじゃないの?」

「魔王様はバカな人間ですので」

「ど正論でしたね」


 ヴェラの正論にため息を吐きながらも何とか言葉で説得した美優は、人間界に足を運ぶのだった。


 ☆


 ストレートにものを言うと、人間界と魔界の違いは種族と土地くらいである。人間界は普通に道があり、歩いてるのも人間。たまに獣人族など人型の魔族が歩いたり、働いたりしているのを考えればそれほど多少は平和協定が効いてくれている証拠である。

 対して魔界は地面が溶岩などの影響もあり黒く、歩いてるのもほぼ魔族である。強いて言うなら、人間は住みづらいし、魔族に殺されるのを恐れて未だ魔界にいる人間が美優くらいである事だ。

 ふと、美優が橋を渡っていると後ろから声が聞こえた。


「ねぇ? 貴方人間?」

「ん? あぁ、まぁな。一応魔法使いだ」


 肩に掛かるくらい長い金髪の髪。背は美優より少し低く赤眼の童顔。黒いドレスのようなもので身を包み、人間から見ると美少女。彼女の問いに美優は魔王とは言わず正体を隠して魔法使いと言った。彼の言葉に少女は少し笑いながら……


「殺していい?」

「は?」


 瞬間、美優の体の近くに少女が迫る。美優は驚きながらも右足で地面を蹴り身体を左に持っていき避ける。

 彼女は避けた美優の方を振り向くと詠唱を開始した。


「わたしに宿し光よ、今この人間を亡き者にしろ」


 詠唱。即ち魔法である。魔法を使うには詠唱をしなければならず基本的には詠唱無しでは魔法は発生しない。杖を使う者もいるが、あくまで威力を高める補助のような者であり、実際出すには詠唱が必要である。

 少女の手から光の剣が飛び出すと美優目掛けて一直線に飛んできた。確実に座り込んだ彼の心臓を狙ったので、勝負あったかと思ったが……


「えい!」

「へ? あ……ああああああ!!!?」


 彼が両手を出して言葉が聞こえた瞬間、自分の肩に何かが突き刺さった音と痛み。左肩を見るとそこには自身が彼に放った光の魔法が突き刺さっていた。急な痛みに声をあげる少女だが、彼が立ち上がったのを見て警戒をする。


「危ねぇな、何で人間を殺しにかかってんだよ?」

「あ、貴方今何したのよ!? って痛い!? 痛たたたた!!」

「反射したけど?」

「は、反射? 確かに反射魔法はあるけど……ま、まさか無詠唱!?」

「とりあえず話は後だ。剣抜くぞ」


 彼女が何かを言う前に、美優は彼女から剣を抜き、すぐにヒールで回復させた。そこで彼女は気づく、彼が魔法を詠唱していないことに。

 無詠唱魔法。人間界では1人か2人いるかいないかの数で魔法を詠唱無しに使えるものがいると聞いたことがあった。

 魔法を使うものにとってどんな属性であれ詠唱は絶対。だが、無詠唱魔法を使える彼を見ると彼女は恐怖した。この男、自分より強いと。しかしながら男は自分の魔法が突き刺さった肩を治すことに疑問を隠せない。


「ほら、治ったぞ」

「ど、どうして殺さないの?」

「理由を聞いてからだな。平和協定を無視するとかなら成敗するけど」

「せ、せいばい?」

「倒すってこと。俺でいいなら話くらいは聞くが?」


 何ともお人よしだと少女は思ったが、恐らく逆立ちしても無詠唱魔法使いには勝てそうにないので渋々着いて行くことにしたのだった。


 ☆


「なるほど、お前は吸血と人間のハーフなんだな」

「そうなのよぉ! だからみんなからいじめられてぇ! 人間を殺せば、わたしをぉ! 認めて……うわぁぁぁぁぁぁん!!」

「泣くなよ」


 美優が彼女の話を聞くと何とも殺しづらい話をされた。酒を少しばかり飲んで酔っ払った彼女の名前はアリサ、人間の父と吸血鬼の母から産まれたハーフだった。

 だが、人間界と魔界の国境線に位置する吸血鬼の里では純粋な吸血しか歓迎されず、力も強くなかったため虐められる日々。悔しかったら殺しの一つでもしてみろと言われ、泣きながらも嫌々人間を殺そうとしたらしい。因みに人間とのハーフもあり血を吸わなくても生きていけるし、日光に当たっても他の魔族や人間よりも暑さが強く感じるくらいでそこまで生活に支障はないという。


「それで、俺を襲ったのか」

「そうなのぉ! でも何なのよ貴方! 強すぎるにも程があるわ! わたしも強くなって……づよぐぅぅぅぅ!!」

「だから酔いながら泣くなよ」


 何とも恨めないし、殺す気にもなれない。寧ろ愛おしさが勝った。だが、彼女は少しばかり静かになると、美優に言う。それは、自分がどのみち殺されるという事であった。

 未遂とはいえ平和協定に反して人間を殺しかけた魔族。美優が許しても、決して世間は許さない。美優が告げ口の一つか憲兵にでもバレていれば彼女は終わりだ。そう言いながらまた泣き始める彼女に美優は話をする。


「じゃあ、俺の家来るか?」

「うぅ……グスッ……って、え? ど、どういうこと?」

「実は俺は秘書を探してるんだ」

「ひ……しょ?」

「通じないのか……えっと側近って言えば分かるか?」

「そういう、事ね。というか貴方そんなに偉いの? もしかして貴族か何か?」

「い、いや、魔法使いとして手伝ってくれる人を探していてな……お前で良ければどうだ? 勿論頷いてくれたら今回の件は俺から何も言わないし、仮に人間界の憲兵に誰かが言ったとしても誤魔化せるからお前は死ぬ事無い」


 死にたくは無いのだろうと美優がアリサに聞くと彼女はそりゃそうだと頷いた。同時に、いつか強くなって母親のようになりたいと夢も語った。


「母親はそんなに強いのか?」

「強いもなにも、元々里の長よ。もう病気でパパもママも死んじゃったけどね……」

「そうだったのか……なら尚更放ってはおけん。アリサ、俺の元に来い。この俺がお前を引き取って、鍛えてやろう。俺が姉さんにされた様にな」

「お姉さんいるの?」

「あぁ、ダークエルフだけどな」

「だ、ダークエルフ!? どうして人間嫌いで少数民族のダークエルフなんかと知り合いなの!?」

「家来れば分かるさ。一緒に生活してるから」

「こ、恋人同士なの?」

「姉と弟だよ。家族みたいなもんだ……」


 話しながら美優は気がついた。家に彼女を連れて行くと言うことは、自分が魔王だとバラすことだと。だが、気づくのが遅く時すでにアリサの心は揺らいでいた。


「わ、分かったわ。貴方に着いて行く」

「い、良いのかなぁ?」

「え? なによ、貴方が言ったんじゃない」

「し、知らない人にはついて行っては行けないぞ?」

「だから貴方が誘ったんでしょう!? わたしは人間でもあるけど、吸血だから仮に貴方に襲われたとしても多少は何とか……な、ならないわね」


 2人は黙る。だが、すぐに美優は溜息を吐いて、ついてこいと誘った。結局、その日美優はアリサという吸血鬼を誘ったのだが、夜も遅かったので空いている宿で一晩過ごす事になる。


「ねぇ、貴方って……名前なんて言うの?」

「俺はみ……み……ミユ・ルマンドだ。ミユでいい。俺もアリサと呼ぼう」

「み、ミユ? それは良いけどルマンドって変な名前ね。というか、貴方さっきから普通にシャワー浴びてベッドで横になっているけど何か無いの?」

「何かって何だ?」

「そ、その……こ、興奮しないのかしら?」

「興奮? 新しく仲間が増える事に対してならしてるけど……」

「そうじゃなくて!!」


 アリサは美優に答えた。簡単に言うと自分に欲情しないのかという事である。吸血鬼と人間のハーフという事もあり、魔族側からも、人間側からもそういった性的な眼をされる事が多かったらしい。自分で言うのもアレだがと前置いて話したが、美優は少し笑って答えた。


「まぁ、お前にその気があるなら俺は興奮するだろうな。だが、今の俺とお前はビジネス関係だ。まだ、絆は存在しないからそういうのは早すぎる」

「びじね……何?」

「仕事仲間って事だ。そうだな、アリサが俺に本気で惚れるなら考えてやっても良い」

「なんかムカつくわねそれ」

「それに、ウチのダークエルフは可愛いのに服着てない感じに近いから慣れた」

「あぁ……ダークエルフなら仕方ないわね……」


 もしかしてすでに襲っているのかとアリサが聞くが、首を振って否定した美優である。


 ☆


 その翌日の事である。美優に連れられたアリサは驚愕した。なぜなら人間である彼に連れて来た場所が何を隠そう魔界だったからである。


「ここが俺の家がある所だ」

「ね、ねぇ、ここって魔界じゃ……」

「よし、俺の家はあれだから案内する」

「ね、ねぇ、あれって魔王城……」

「レッツゴー」

「ちょ、ちょっと!? 答えなさいよ! 貴方何者なの!? ねぇ! ミユ!?」


 移動完了。待っていたのは側近であるヴェラだった。


「おかえりなさいませ魔王様。人間界はいかがでしたか?」

「夜だから人は少なかったが、久々に居酒屋で一杯やったら美味かったぞ」

「え!? ダークエルフってヴェラ様!? あ、あの魔王様世話係で最強の側近であるヴェラ様!?」

「魔王様、こちらの女性は?」

「アリサ。吸血鬼と人間のハーフなんだが、訳あって俺の側近になる」

「ま、魔王様!? ミユ、貴方魔王なの!?」

「お待ち下さい、側近を増やすおつもりですか?」

「だって、俺が魔王になってからみんな辞めちゃったし。書類整理で苦労してるから助けてくれと嘆いてたのはどこのどいつだったかな?」

「うっ……ですが……」

「無視しないでよ!! ミユ! 貴方ちゃんとわたしに説明する準備は出来ているんでしょうね!!」

「俺魔王小山・クロスロード・美優。ヴェラは側近だ。そしてアリサは俺の2人目の側近候補としてヴェラの指導の元書類整理でなどをしてもらう。分かったか?」

「情報量めちゃくちゃよ!! しかも人間の魔法使いって何だったのよ!?」

「人間界で魔王って言える訳ないだろ」


 美優の言葉に返す言葉がないアリサ。同時に1人より2人で仕事を回せるという事と、魔王が勝手に側近候補を連れて来た事に対して頭を悩ませるヴェラ。これから起こるのはとりあえず面倒な事だと、ヴェラ、アリサはそれぞれの思惑でそう考えたのだった。対して美優はなんとかなるだろうとお気楽街道まっしぐらであった。


 ☆

 とある日の夜。美優はまた人目を盗んで人間界に遊びに来ていた。アリサとヴェラの3人で事務処理をある程度行えたという事、アリサが少しばかり仕事に慣れてくれたのもあり、自分の使命として人間界を訪問した。今頃ヴェラとアリサは焦りながら探している可能性がある。

 朝に行ってもいいが、人混みが苦手なのもあった美優は基本朝にあまり行きたくない。よって、前にアリサと飲みに行った酒屋で飲む事にした。もしかしたらひょんな事から何かしらの事件をコソコソ噂する者もいるかもしれない。彼は入り口に入るなり席に座ると少しばかり向けられた視線が多くなった気がしたが、人も少ないから新しく入り口から入る客が何者なのかという感じで見ているのだろうと気にしなかった。


「一杯頂いてもいいか? ついでに何かツマミが欲しいんだが」


 美優の言葉に頷いた店の店員。少しばかり料理が来るのを待っていると、ふと、声が聞こえた。


「に……人間?」

「うん? お前は……」


 声の方を見ると、獣人族が白いフードを被ってこちらを見ていた。顔こそ人間と同じ顔だが、人間とは違い耳が頭の上についており、金色の眼。髪色は赤みがかった色で背中くらいまで届く長髪。手を見ると鋭い爪がついていた。

 美優が彼女を見ると手を少しばかり震わせていたが、恐らく人間が夜に1人でここにいる事が割と珍しいのかと適当に予想した後、彼女を見てそっと自分の隣の席の椅子を引いた。


「な、何?」

「どうして俺を呼んだのか分からないが、これも何かの縁だろう。俺の隣で飲むといい、奢るぞ」


 彼女は少し悩んでから、辺りを見回して、恐る恐る席に座った。料理がちょうど届いたので、一緒に摘もうと言いながら美優はサラッと自己紹介をした。勿論、ミユ・ルマンドと名乗ってだ。彼女の名前を尋ねたところ、カタリナだと名乗ってくれた。


「カタリナか、獣人族では主流の名前なのか?」

「うん……というか、人間である貴方のルマンドの方が珍しい」

「ははっ、よく言われる」


 よく言われると言ったのは嘘だが、アリサにあった時も、自己紹介すれば美優の名前に興味を持った。彼からすれば適当に作った名前だが、「アドラー」という国においてはミユもルマンドも全く聞き慣れない名前であるからだ。


「まぁ、さっきも言ったが、俺は人間の魔法使いでな。偶々ここに飲みに来たのだ」

「そう、なんだ。でも、ここは魔族達の酒場だよ」

「え? そうなのか?」


 カタリナ曰く、ここは魔族達の酒場。別に人間が来ては行けないという決まりはないが、人間界で生活している魔族が集まり会話をするのによく使われているらしい。

 なんでも、人間界で生活していても少しばかりはぐれもの扱いされる事があるため、こうして他の魔族達と集まって飲むのだと、彼女は言った。


「だから、お前含めて俺を見る目線がかなりあったのか」

「そうだと思う。ところで、貴方は魔法使いなんだよね?」

「ミユでいい。まぁ、そうだがどうかしたのか?」

「私に魔法を教えて……」

「おい、人間。ここはお前の居場所ではないぞ」


 カタリナが言い切る前に、美優の席の近くに来たリザードマンらしき男がメンチを切って来た。美優は酒の場だからと許しを請うがリザードマンは聞く耳を持たない。


「別に人間が入っちゃダメなんて決まりは無いのだろ? 暴れたら迷惑になるからやめてお……」

「出て行け人間!」

「うおっと!?」


 リザードマンが美優の机を叩く、その衝撃で美優は後ろに少し飛ばされたが、バク宙でなんとか着地をした。危なかったと少し自分を落ち着かせるが、魔族はそのまま殴ってくる。


「くらえ人間がぁ!」

「危ねぇ!?」


 間一髪拳を止めた美優。対してリザードマンは眼を見開いた。美優が腕では無く、正確にいうと手の甲でパンチを受け止めたからである。人間にこんな力があるのかと魔族は考えて、一歩下がると詠唱を開始した。


「我が身に宿る水よ! 今この人間を追い払え!」


 魔族が手を美優に構えると勢いよく水流が発射される。美優は一歩前に出てから拳を握り、その水流に向かって……


「ホワッタァァ!」


 グーパンを一撃放った。拳と水魔法がぶつかった瞬間、水が消えてなくなる。戦っているリザードマンとそれを見ていたカタリナは目を開いて驚いた。魔族側は何かの間違いかと、もう一度水流を複数回放つが、美優は拳で殴り飛ばして水流を消して行く。


「うらぁ!」

「アタァァ!」

「ふん!」


 そんな声と共に殴り飛ばしてリザードマンが出す水流を消しまくる美優。リザードマンはさらに驚きながら彼に対して疑問の声を投げる。


「俺は人間の魔法使い。ミユ・ルマンドだ。お前の水魔法くらい相殺できるぞ。頼むから大人しく酒を飲ませてくれ」

「ふざけるなぁぁぁぁ!!」

「チッ……いい加減にしろやこのすっとこどっこい!」


 そう言った彼はすぐに距離を詰め、リザードマンの顎に全力でアッパーカットをかました。だった一撃ですぐに後ろに飛びながら大の字で床にぶっ倒れ、気絶したリザードマン。対して彼は他の魔族に早く帰らせてやれと言い放ち、すぐにカタリナの隣に倒れた椅子を置いて座った。他の魔族はリザードマンを連れて帰っていく。

 酒が倒れてしまったので、勿体無いと言いながらも追加注文はせずにカタリナに向き合った。


「悪いな、邪魔が入った。それで、俺に魔法を何だって?」


 何事も無かったかのように振る舞う彼にさっきから驚いてばかりの彼女だが、何かを決意しながら聞かれた事に答える事にした。


「私に、魔法を教えて欲しい」

「魔法? なんでまた魔法なんか……」

「私は獣人族。だけど……魔法使いになりたい」

「へぇ、珍しいな。獣人族は肉弾戦が強い事で有名なのに」

「小さい頃から……魔法に憧れていたから」

「なるほど、夢を持つのはいい事だ。お前は何になりたいんだ?」

「獣人族最強の魔法使い……魔王すら滅ぼせる最強の存在。魔法の王に……私はなる」

「それは夢じゃなくて野望というのでは?」


 カタリナの言葉に恐怖した美優だが、1つ息を吸って、分かったと答えた。あっさりと許可されて戸惑うカタリナだが、美優は俺の仲間が鍛えてやるとはっきり伝えた。


「俺の知り合いに、最強の闇属性魔法使いがいる。そいつから魔法を学べばいい」

「でも、私は土属性」

「それでもだ、基礎くらいなら学べる。応用はお前の土属性魔法の使い方次第だがな」


 この世界の魔法は火、水、風、土、闇、光、無属性の7種類。この大陸の魔法が使える人達を全て魔法使いと言われるが、基本的に詠唱を唱える事で、自分の適性にあった無属性プラス残り6種類のいずれか属性魔法を使える。

 厳密には全ての魔法使いは全属性使えるが、彼女の場合、土属性は人間どころか魔族を殺せる威力であったとしても、火や水などは生活で使えるくらいの小さな火やコップ一杯ほどの水を出せるくらいまで威力は落ちてしまうのだ。よって、無属性は固定だが、後一つは6属性のうち適性で決まる。


「分かった、やってみる。貴方みたいに無詠唱になれるように……頑張る」

「な、何のことかな?」

「惚けないで。貴方……ミユはさっきのリザードマンと戦った時、無属性魔法の身体強化した拳で水魔法をかき消した……フリをした」

「ほう、それで?」

「厳密にいうと拳に身体強化をつけてはいたけどそれと同時に水魔法で出した水を拳に巻きつけて相殺した……勿論詠唱無しで」


 一瞬で彼女に先ほどの戦闘で起こった一部始終どころか全てを見切られた美優。誤魔化す事も悪いと思ったので、肯定した。


「まぁ、無詠唱は認めるし、無属性の身体強化したのも認める」

「適性魔法は?」

「水属性」

「嘘、もう一つあるはず。何?」

「えっと……や、闇?」

「嘘、まだある」

「い、いや流石に1人1属性だから……」

「嘘」

「1人で2つだけでも珍しいと……」

「嘘」

「あ……えっと……全部です」


 もう、驚く事も疲れたカタリナである。無詠唱で無属性プラス2属性魔法だけでも珍しいのにこの男は全属性と来たものだ。ひょっとすると今自分が目指す人はこの人なのではと、変な確信を持ってしまいそうだ。対して美優はもうどうにでもなれの精神で、彼女の問いに答えるのだった。


 ☆


「そんな訳でヴェラ、鍛えてやってくれ。書類整理と魔法をな」

「また仕事増やす気ですかバカ魔王様」

「本当に……魔王様だったんだ」

「ちょっとミユ! 貴方わたしの身体に興味ないって言ったのはこういう事だったのね! ムキー! 大体何なのよこの無駄に可愛くて胸も大きい獣人族は!」

「可愛いって……照れる。貴方も可愛いよ、吸血鬼さん?」

「身体のこと言ってるならぶっ飛ばすわよ!」

「顔」

「ま、真っ直ぐ過ぎない?」

「とりあえずムキーって言葉にする人初めて見たし、そういう目で誘ったんじゃないし、何で俺怒られてるかもわからないし」

「魔王様はアホでいらっしゃいますか?」

「何でヴェラはそんなに俺を貶すんだ?」

「私の仕事増やすからです。後、人間」

「泣くよ?」

「魔王なのに……泣くの?」

「泣けませぇん!」


 魔界内の魔王城にてヴェラから怒られ、アリサから怒られ、カタリナが冷静に言葉を返す状況が続いた。カタリナはクールな性格だが、全く話さない訳ではなさそうで、お互いに自己紹介を済ませると魔族同士仲間意識があるのか割とすぐに仲良くなってくれた。

 魔王である美優は仕事を増やすなとヴェラに怒られた挙句、仕事放っておいて人間界に遊びに行った罰として書類整理を倍以上する事になったが。


「そういえば俺明日出かけるから」

「おい貴様、いい加減にしろよ人間」

「ヴェラ姉さんマジでごめんって、ただ、明日は本気で大事な事なんだよ」

「訳を話してから決めようか人間」

「明日みんなで魔界を観光ついでにパトロールをだな……頼むから闇魔法を出さないでくれ!?」

「闇よ、この愚かな人間に鉄槌を下せ」


 美優の言葉にブチ切れて、初めて出会った時の口調になったヴェラを宥めながら話を続ける。勿論ヴェラの闇魔法を頑張って相殺しながらだが。

 アリサとカタリナは敬語を使い続けて温厚だったヴェラの怒りにこれから怒らせないようにしようと恐怖した。また、初めて見てでも分かる程とてつもない魔力量と威力もある彼女の闇魔法を、同じ闇魔法で頑張って相殺する美優に対してもコイツ人間じゃないと思う2人である。


「痛い!? お前マジで突き刺して来やがったな!?」

「黙れ人間! 貴様どれだけ私を愚弄すれば気が済むんだ! 何故魔界に観光する必要がある?」

「だから、俺が魔王になって三ヶ月くらいなんだから魔界の事を知らないんだって! そのために見回って住民に何か事件が無いか調べに行くって……言ってんだろうがこの分からずやぁ!」

「ガッ!?」


 美優の拳がヴェラの頬を掠めた。掠めたというと皮一枚を思うかもしれないが、美優の身体強化魔法もあり、そこそこヴェラの痛覚に届いたので、彼女は少し大人しくなった。


「はぁ……頼むよ姉さん。少し何か無いかと住民に聞いたら帰るからさ、帰ったら書類整理と掃除やるから。許してくれ、頼む」


 そう言ってヴェラに頭を下げた美優。他の2人は魔王が頭を下げた事に愕然としたが、冷静になったヴェラは大慌てで彼の謝罪と頼みの姿勢を止める。同時に魔王が簡単に部下に頭を下げるなと叱ったのだった。


「全く……少しだけですよ」

「あぁ、ありがとうヴェラ」


 ☆


「おはようございます、ミユ・ルマンドです。さぁ、始まりました今回の企画、魔界に行ってミユのコーナーです」

「何よそれ?」

「俺の故郷で流行った動画だ」

「どう……が?」

「魔王様は時々訳の分からない単語を言うので気にしないで下さい」


 そんな事よりも魔王という名前をあまり声に出すなと魔王である美優はヴェラに注意する。クロスロードと言う名前は魔王以外に存在しないため、人間界でも魔界でもその名を口にすれば魔王がここにいると分かってしまうのだ。


「今の俺はミユ・ルマンド。人間の魔法使いだ」

「無詠唱……魔法使い」

「カタリナお黙り」


 魔法使いは普通の職業の立ち位置でもある。魔法を使って他の家の掃除をしたり、薬を作って病を治したりする事で生計を立てている職業である。


「そういえばミユってどんな魔法使えるの? 前は無属性の反射しか見てないけど」

「全部」

「はい?」

「全部」

「はい?」


 美優の言葉に何度も聞き返したアリサ。彼の代わりにヴェラが答える。


「先代の魔王様が全属性を扱えたので、このお方も使えるのです」

「え? でも人間よね?」

「先代魔王から一週間毎に属性変えて魔法を使えないと殺すって言われたからやった」

「無茶苦茶じゃない……」

「もう、人間じゃない……よね?」

「人間だよ、魔族から魔法を教えられた魔法使いだ」


 ただ、それだけなんだと美優はしみじみ語るが、2人からすればただの人間が全属性の魔法を無詠唱で使えるのはこの男しかいないのではと思っている。


「とりあえず、住民から話を聞こう。俺はヴェラに魔王の命令で平和協定の一環として仲良くしてもらっている人間の魔法使い。アリサとカタリナはヴェラの友人だ」

「かしこまりました魔王様」

「アウトだ馬鹿野郎」


 俺の事は美優と呼べ、俺はヴェラ様と呼ぶ。そう言って少しばかりヴェラ達をミユと呼ばせる訓練をしてから街を歩く。様と呼ばれる事に不服だったヴェラも何とか宥めた。


「ほう、なかなかのどかな村だな」

「ここは割と魔界にしては平和で村の人も優しいと評判です」

「わたしもたまに1人で来た事はあるけど、いつも通り平和よね」

「ここ、良い街だよ」

「あら! そこのべっぴんさん達! アトラ焼き食べないかい? 今ならオマケしとくよ?」

「べっぴんだとよ、3人とも」


 私達はみんなと同じ魔族だとヴェラは言ったが、魔族から見ても好みの顔しているのだろう。3人とも魔界ではかなり珍しいダークエルフや吸血鬼、よくいる獣人族ではあるが魔族から見ても人間から見ても好みの顔や身体つきである。俺の故郷ではそんな人間と人外のカップリングがあったと美優が言うが何も通じなかった。


「か、かぷ……リング? 指輪ですか?」


 いつもの癖だと謝りながら美優はヴェラに苦笑いをする。とりあえずここまで褒められたからと、美優はアトラ焼きを数個ほど買った。3人は自分の食べ物くらい自分で払うと言ったが、元々連れ出したのは自分であると言った美優はそのまま代金を払った。


「魔王様に奢って貰うとはなんたる不覚……」

「今はただの魔法使い、ミユ・ルマンドに奢られたと思え。魔族から見て下等であるただの人間に奢って貰うと思えば、何も感じないだろ」

「そういう話では……」

「まぁまぁ、ヴェラさん。この人聞く耳持たないわよ」

「こいつの言うとおりだ」


 そうして、ヴェラの溜息を無視しながらも美優は店の人に何か魔界で変わったことがないかと聞いた。店の店員である彼女は少し考えながら口を開く。


「そういえば、とある一家が殺された話って知ってる?」

「何、殺された?」


 彼女の話では、最初は人間界で人間の家族が何者かによって殺された事件が最近あったという。犯人は分からず警備隊も動いてはいるが、家が燃えたため証拠は掴めずまだ犯人を探しているらしい。最初はそんな噂だったが、近くで魔界の住民もその被害にあった者がいると情報が入ったと彼女は言った。


「ところで、その人間はどなた? あの魔王様から選ばれた側近であるヴェラ様と一緒にいるなんて……」

「あ、ああ。俺は人間魔法使い、ミユ・ルマンド。吸血鬼のアリサと獣人族のカタリナは友達でな、旅をしていたのだ。そこで、人間が魔族と仲良くしているのを目撃した魔王様が、彼女……ヴェラ様を派遣してどうして魔族とここまで仲良くなったのか話を聞いてこいと、彼女に命令したそうだ」

「え? ミユはそんな話し……ムグッ!?」

「どうやら、平和協定の知恵になるかもしれぬと考えたそうで……ヴェラ様も心優しいのでな、人間を嫌っていると話してはいるが、なんやかんや俺の話を聞いて下さるのだ」

「なるほど、そういう事だったの。魔王様が就任なさって平和協定を結んでから、平和になったわ。最初は驚いたけど、私も殺したり争うのが嫌いでね、この決まりが出来て本当によかったと思うわよ。戦争で魔族を殺した人間は確かに許せないところもあるけど、貴方みたいに話がわかる人は嫌いじゃないしね」

「ありがとう。俺も、話が分かる魔族とは友達になりたい」


 アリサの口を自分の手で塞ぎながら店員と話をする美優。アリサも事の事情と設定を理解したのか、軽く美優の手をポンポン叩いて離してもらった。目線でゆっくりと理解した事を彼に伝えて、彼の後ろに下がる。


「と、ところでミユ。貴方人間なんだからこの事件知ってるんじゃないの?」

「いや、俺も知らないな。旅をしていてもそんな話は入って来てない。逆に、みんなはどうだ? 魔界でも起こっているのなら誰か知っててもおかしくないと思うが」

「残念ですが、私は分かりかねます」

「わたしも知らないわ」

「聞いた事……無い」


 美優含め魔王軍4人全員が知らないと答えた。店員の彼女が、最近入った話だから仕方ないのではという言葉を皮切りに、少し考えながらもこの件に関しては一旦保留という事で話はついたのだった。


 ☆


 その翌日、美優は人間界のとある閑静な家をノックして入っていった。中にいたのは1人椅子に座って新聞を読んでいる60代ほど初老の男性。だが、美優が目にしただけでもとても威圧的で貫禄がある男性だった。

 彼は、美優を手招きした後、片方の椅子に彼を座らせて、言葉を吐いた。


「久しぶりだな、現魔王」

「お久しぶりですね、国王様」

「よせ、儂はただの隠居ジジイ、ロディオン・レフだ」

「俺もただの人間魔法使いミユ・ルマンドです」

「魔界の時は聞いたことのない知らぬ名だ。造語か?」

「はい、ミユとお呼び下さい」

「ならば儂のこともロディオンと呼べ」

「爺って呼んで良い?」

「構わない」

「良いのかよ」


 美優が会って不敵に笑い話をする男はアドラーという国の人間界現国王陛下、レオニード・レフである。彼と美優があったのは数年前の魔界まで遡る。

 先代魔王との平和協定のため魔界に来たレオニード。そこで出会ったのは、無詠唱で全属性の魔法を使い、オマケにアドラー大陸に存在しない謎の激うま料理を作る美優であった。

 ただの人間が魔界にいる事自体驚いたので、レオニードは先代の魔王であったヴィクトルと3人で美優の料理を食べながら彼の話を聞く事になったのが出会いである。今ではこうしてお忍びで話す仲だ。


「ひと勝負せんか?」

「是非とも」


 そんな会話をして、2人はチェスを開始した。駒を動かしながら、近年の出来事について話をする。


「人間界で人殺しだそうで、魔界にも同じ事が起こってます。何か知りませんか?」

「普通に話せ。今は若造とジジイじゃ……儂は何も知らなかった」

「あ、そう? 魔族の商人が言ってたから人間界にもいるかもしれないと思って聞いたんだが」

「儂は何も知らぬが、そのような報告はこちらでもあった。その時に人間と魔族が被害のあった人間がいた家にいたと、そんな話もあったな」

「なんと……まさか、魔族と人間が協力をして殺しをしているのか?」

「まだ分からんが、可能性は大きい」


 恐らく、平和協定反対勢力のものかもしれないとレオニードこと隠居ジジイのロディオンは言った。平和協定を結んだのは先代魔王の時である。先先代、つまり美優含めてから二つ前の魔王の頃までは戦争をしていた。

 その中で、仲間の魔族や人間を殺された者もいる。だからこそ、今更平和協定を結んだと言っても、こうして殺しをする者も少なくは無い。


「まだ、完全な平和とは言えん。序の口というやつだ」

「だろうな。だが、そんな奴らを野放しにもしておけん。爺、俺はその者達を成敗するぞ」

「魔族はいいが、人間はどうする?」

「もう1人のお前に預ける。罪状くらいは分かるだろう、レオニード」


 国王陛下にお前と言えるのは貴様くらいだと笑ったレオニード。そして、一つ聞く事にした。


「魔王が人間の肩を持ってもいいのか?」

「その魔王様がどうしようもないくらい人間なんだから仕方ないだろう」

「ふん、相変わらず不思議な若造だ」


 そう言った彼だが、すぐにチェス盤に目を向けて焦り出した。美優がすでにチェックを入れていた事に気づいていなかったのだ。


「ま、待て!? お前いつの間にチェックを!?」

「事件に目が眩み、目の前の勝負事も忘れたか? 前のターンで詰んでいるぞ?」

「ちょ、待て、落ち着け、話せば分かる!」

「落ち着くのはお前だよレオニード。ただのチェスでそこまで熱くなるな」

「ここでは儂のことはロディオンと呼べ!」


 結局、レオニードことロディオンは再試合を言い渡すものの、何回か美優に軽く詰まされて終わったのだった。


 ☆


「そんなわけで、人間界にも同じ事件が起きたことは事実だ。さらには魔族と人間が協力しているかもしれん」

「そんな事情があるなんて、世も末ね」

「仕方ない、平和協定は結ばれたばかり」

「世も末さだこさんだな」

「魔王様は何をおっしゃっているのですか?」


 美優渾身のネタにも意味がわからんとツッコミを入れたヴェラに彼は少し凹んだ。美優は色々な言葉を知っているが、あまり伝わらない。少し凹んだ美優を見て、アリサは1つ指摘した。


「そういえば、わたし達が喋りながら食べているこれ何かしら? とっても美味しくていっぱい食べちゃうわ」

「俺の作ったカップケーキ」

「カップ……けーき?」

「お菓子だ」

「というかミユが作ったの!?」

「魔王様は自分のお食事やお洗濯などは自らやってしまうのです」

「自分の事くらい自分で出来る。魔王であるが介護では無いからな。やって貰うのは書類整理と一緒にお出かけくらいだ」


 美優を見たアリサとカタリナは驚きながらもカップケーキに手をつけた。魔王や国王は絶対的地位の位であるため、ご飯を自分で作る事はアドラーという国に隕石が落ちて滅びるくらい可能性が無い。

 食事や洗濯、掃除に関しては必ずメイドや使用人が行い、自分でやるのはたべるとか、風呂に入るなどの行動くらいである。


「貴方本当に魔王なの?」

「部下になる予定の奴らはヴェラ以外みんなどっか行ったし。先代魔王が死んだ事で、みんな解散したんだよな。俺の使用人募集もまだしてないから、ヴェラとアリサとカタリナだけだ」

「でも、私達は……何もしてない」

「書類整理と掃除してくれているだろう? 何もしてないわけでは無いさ」

「意外ね、使用人やメイドって言うけど、裏では主人の性処理係がメインなのに」

「流石に国王もそんな下衆はしないだろ」

「貴方にも言ってるんだけど?」

「すると思うか?」


 美優の問いに全員が無いと首を振る。その気になれば性処理どころか生殺与奪すらも可能な実力だと言う事はアリサやカタリナも知っているからである。美優は一口カップケーキを食べながら、それは絶対しないから安心しろと笑ったのだった。

 そこから少し経った後、またもや人間界で一家惨殺の件が国王であるレオニードから美優の元に入って来た。美優はすぐさま3人の仲間を徴収して作戦会議をする。


「人間界の一家がまたやられたそうだ」

「魔界ではそのような話は聞いていませんが、人間界は無事なんでしょうか?」

「今、向こうの警備隊が調べている。やはり魔族と人間が共闘して犯罪を起こしている事は事実らしい」

「家は燃えたはずでしょ? どうして分かるの?」


 アリサの言葉に美優は事件後、黒く焦げた被害者の傷跡を確認したという趣旨を話した。どうやら人間では持つ事があり得ない斧のような物で1切りされた跡を警備隊が見つけたらしい。その趣旨を伝えると、アリサは納得した。

 カタリナも今の平和協定には穴があると言う通り、平和協定は先代魔王ヴィクトルが作った協定である。尚且つ時も浅いからこそ反対派の勢力がいるのだと指摘した。


「それで、どうするつもりですか? 魔王様」

「決まっている。成敗しなければ事は止まらんぞ」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ」

「どうしたアリサ」

「貴方魔王なんでしょ?」


 アリサの言葉に同意した美優だが、その意味がわからない。すぐにアリサから理由を聞かされるが、その内容としては魔王がただの人殺し事件に首を突っ込むのかと言う事であった。

 魔王とは魔族の長であり魔界の全てを支配下に置く絶対的主君。美優の話から先代が死んだ後魔王軍は解散して人手不足ということもあり、この一件に関してわざわざ首を突っ込まなくても人間界で片付けられる事だとアリサは指摘する。


「確かにアリサの言う通りでございます。人間界には勇者や国王陛下もございますから、人手不足で魔界をあまりご存知でなく、そもそも魔王として100%不完全な貴方がわざわざこの件に手を出すよりも、もう少し優先することがございましょう?」

「え? ミユ……魔王になったばかりなの?」

「前から言っていただろう……就任してから1年も経たん。確かに2人の言うことはまっこと正しい」


 だが、と一言置いて美優は続ける。美優は魔王として1%すらも自覚はなく、行動もしていない。魔王の味方もこの3人のみでヴェラ以外はほぼ初対面で連れてきた者である。それでも、この事件を見過ごすわけにはいかなかった。美優は魔王の前に人間である。魔族と人間の味方である。


「先代から頭下げられたから魔族も平和協定も大切にしたい。だが、俺は人間だ。後にも先にも種族は変えられない」

「人間が殺されているのに、同じ同族として見過ごすわけにはいかん。お前らの言うこういう小さな事件がいつか災害になる時だってあるんだ」

「ついてこれない奴は帰っても構わない。俺は行く、散々考えを言ってくれて大変申し訳ないが……」

「悪いな、俺はどうしようもないくらい人間で、どうしようもないくらい魔王なんだ」


 そう、はっきりと伝えた。3人は少し黙ったが、アリサだけは頷いて声をかけた。


「ま、まぁ、わたしは貴方について行かないとどのみち殺されるからついていってあげるわ」

「どう言う事ですか?」

「わたしこの男を殺そうとしたから、ミユが警備隊に訴えれば殺されるまで行かなくとも牢に閉じ込められるのは目に見えてるし」

「は? 貴方魔王様に手を出したの?」

「無詠唱反射魔法でわたしの魔法跳ね返されて肩貫かれたけどね」

「魔王様、それは本当ですか?」

「ああ。だが、俺は訴える気ないぞ。訴えても独りぼっちに変わりはないからな」


 証拠も無いしなと、美優は鼻で笑いながら改めてみんなに顔を向けた。改めて、一緒に来るかと一言訪ねる。3人は顔を少し見合わせながら、新しい魔王の力を試すかと考えたのもあり今回に関してはついて行くことを決めた。


「でも、人間と魔族が共闘してるならどっちで裁くのよ?」

「人間は気絶させて国王に引き渡そう。魔族は……まぁ、好きにしろ。俺は殺さんがな」

「殺さないの……?」

「カタリナ、俺は人間と魔族の味方だ。殺すだけではただの恐怖政治。気絶させた魔族は牢に入れておいて、その後のことは後ほど考える」


 島流しも考えたが、などと美優が言ったが誰も知らない言葉であるため保留となった。それならば、みんなの優しさに甘えさせてもらうと言った後にふと、美優はヴェラに疑問を投げかける。


「なぁ、ヴェラ姉さん。もしも人間と住むなら何処に住みたい?」

「魔王様、姉さんと呼ぶのはおやめくださいと……って、人間と住むならですか?」

「ヴェラさんと逃避行でもするの?」

「いや、そんな話じゃないが……お前達なら何処で住みたい?」


 確実に仲が良い事を仮定においてだと言った美優の言葉に、三者三様で静かなところや、平和なところ、衣食住がある場所など、様々な意見が出る。美優は話を聞きながら言葉の真意を口にした。


「なぁ、もしかしたらさ、その罪人達もしかしたら人間界にいねぇかな?」

「どういうことですか?」

「平和で静かなとこで身を隠すなら魔界より人間界かなって。罪を犯しても魔族なら重い物運んだり出来るから証拠とか最悪隠せるし、人間界での事件も魔界より多いしさ、可能性としてはこっちに傾くんだけど……」

「確かにミユの言う通りその可能性は高いわね。でも、証拠とか無いわよ」

「だからさ、もう一度聞いてくるわ。人間界行って」

「誰にお伺いを立てるのですか?」

「人間界のトップオブザジジイ」

「はい?」

「ミユの言葉、本当によく分からない……」


 美優の一言に呆れるヴェラと理解不能のカタリナ、そして何度も誰だと聞き続けるアリサがそこにいた。


 ☆


「黒いマントを被った奴らが森の奥に走っていったなんて、そんなベストタイミングがあるのかよ」

「儂は見とらんが、そう言った者がいるのだ。お前の言う通り、アジトはここ人間界にあるかもしれん」


 現国王兼隠居ジジイ、ロディオンことレオニード・レフは美優にこう言った。あの事件の後警備隊が調査したところ事件が起きた村の住民からはこのような発言をしたのが2名ほどいたと言う。美優は彼に対して自分の意見を言ってみたが、どうにも当たりである可能性が増えた。


「それで、どうするんだ魔王」

「ミユ・ルマンドだって。とりあえず俺の仲間には人間は気絶させて国王陛下に引き渡す話してるからそっちは任せる。魔族は俺が裁く事にしよう」

「そうか、儂はついていけば良いか?」

「いや、俺人間だから警備隊に預けても違和感ないだろうし、そのまま俺達で出るよ。国王陛下はそこで待機な」

「国王に向かって待機しろと命令するのはお前くらいだ」


 仮にも国王陛下である彼の言葉に苦笑いをしながら、少しお辞儀して答えた。宜しくお願いしますと口には出していないが、美優のお辞儀から言葉を予測した彼は構わないという1つ落ち着いたような威厳のあるような、そんな声で制した。


「ところで、死体は見たか?」

「ああ、なんとも可愛らしい奥さんとカッコいい旦那さんだったな」


 聞くとその家族は村の中でも1番の美男美女であったらしいとレオニードは答えた。夫婦の中も良好で、お互い若いのもありこれから道が増えていくといったそばからこの事件である。


「女の方は焼け跡から運ばれてたけど服も脱がされてた、恐らくだが……」

「人間どもが女を犯したのち、惨殺して燃やしたってところだな……許せると思うか?」

「何で俺に聞くんだよ、許せるわけないだろ」

「人間でもお前は魔王だろ。一応聞いただけだ」


 そうして2人の決意が整った後、美優は会話を切り出した。


「そこら辺にアジトがあるなら、今日の夜奇襲だな。魔族は夜に動く者が多いし、事件を起こすなら夜だろ」

「分かった。死ぬなよ、美優」

「初仕事で死んでたまるか。そっちは任せたぞレオニード」

「ふん、何が貴様を動かすのかわからんが儂の味方なら頑張れよ」

「何が俺を動かすかなんて決まってるよ」

「俺は人間で、魔王だからな」


 そう言って、美優は開いたワインボトルをコップに入れて飲み干し、まだ残っているボトルをレオニードの座る机において、ドアを開けて去っていった。彼が隠居している家の中での出来事である。


 ☆


「よぉリーダー、次のターゲットは誰だ?」

「そうだな……まだ決めてないがそろそろ魔界を襲おうか」


 人間の男と魔族の怪物は話していた。次の目的地は魔界であると言った怪物に対して彼は少し不満そうに声をかけた。


「なんだよつまんねぇな。人間の女を好きに出来るチャンスだと言うからお前に協力してやったのによ」

「文句言うな、この前ヤらせてやっただろ。それに、俺達はまだ足りねぇんだ。本当の目的は平和協定なんてクソみたいな決まりなんてぶっ壊してやる。そう言う事なんだよ」

「それに関しては同意だな。あんな協定なんで国王が結んでんのかマジで分からん」


 魔族は平和協定反対派であった。元々彼の目的は、人間界と魔界の両方を襲う事でどんな顔かはわからないが、国王や魔王に不満を抱かせた国民が暴動を起きるのを狙う。ただそれだけである。


「それにしても、よく20人ほど集めたな」

「本当はもう少し欲しかったが、少数で動けば見つかりづらいだろう? 人間共は5人くらいだが、魔族は15人。警備隊も目星はついてないと思うが、念のために明日場所を移動する」

「もう移動するのか?」

「転々とすれば見つかりづらいからな。これから全員を呼び出して移動の準備をしよう」


 不敵に笑った魔族のオークは屈強な装備を身に纏った人間の男と話す。男は釣られて笑い出しながら、次のターゲットを決めるかと声をかけた、その瞬間だった。


「貴様らのこれから行く先は、もしや血の池地獄か?」

「誰だ?」

「俺が案内してやってもいいぞ? 地獄へようこそってな」


 オークと男が振り返ると、そこにいたのはポケットに手を入れながらゆっくりと彼らの元に歩いてくる1人の男。オークと人間の男が少し身構えると、男は声を出した。


「俺は人間魔法使い。ミユ・ルマンドだ」

「ただの人間が何のようだ?」

「貴様らの悪事、全て露見した。人間の女をレイプして、魔族と人間を無差別に殺し尽くした挙句、家を燃やして証拠を消すとは断じて許しがたい!」

「許しがたい? ただの人間が俺たちを追い詰めたと思っているのか?」

「落ち着けオーク。俺がこの人間を可愛がってやる」


 オークと話していた男がミユと名乗った人間の前に立ち、汚い右手で彼の顎を持った。意外にも顔は整っている方だと思った男は最悪殺すか、男の性奴隷としても売れると考える。その瞬間、男は一瞬視界が揺れたのを見た。何が起こったのかと考えたが、すぐに視界が真っ暗になり、そのまま床に叩きつけられた。見ていたオークはかなり驚きながら声を上げる。


「き、貴様!? な、何をした!?」

「アッパーカット」

「は? あ、アッパー……ええい、なんだそれは!? 貴様ただの人間ではないな、何者だ!」

「そうかい、そんなに知りたければ教えてやろう」

「お前らみたいなドブネズミがいるならこのアドラー国は地獄だ。先代からもらったこの指輪の存在。よもや忘れたとは、言わせねぇぞ!」


 少し怠そうにため息を1つ吐き、長々としたセリフを言いながら、ミユは右手の薬指をオークに見せつけた。その瞬間右手にはめていた指輪が少し光り、文字が空中で浮き出す。


『Satan 小山・クロスロード・美優』


 この文字が出た瞬間、オークは目を見開いて大声で魔王様と叫びながら片方の膝をつく。


「な、何故こんなところに魔王様が……しかも人間の!?」

「オーク、並びにそれに加担した魔族、人間。貴様らの悪行断じて許しがたい。潔く首を切れ」

「だ、誰が首など……お、お前達! 侵入者だ! 殺せ!」


 すぐさま立ち上がったオークの叫びに10人以上の人間と魔族が美優を囲む。オークはここにいる魔王を偽物扱いしながら殺し尽くせと命令した。

 そんなオークにファイティングポーズを取り、やむを得ないと一言。そして、死闘開始。


「死ねぇい!」

「うらぁ!」


 飛びかかって剣を振り回してきた魔族の腹部を1発ぶん殴りながら、次に迫る敵を左足で蹴り上げる。美優は魔族相手に殴り合いを開始した。

 約二、三発殴ったところで1人ダウン。明らかに人間の技ではないが、先代魔王から鍛え上げられたとすればよくある事だ。

 怯んだ魔族を睨みつけながらジリジリと距離を詰める。次に、人間の1人が美優に盾と剣を持って近づいてくるが、一撃右足で蹴りを入れれば盾は粉々に砕け、そのまま上げた足を踏み込んで顔面に右ストレート。

 完全に拳と蹴りの生身で立ち向かい、睨みつけてくる人間魔王美優。対して次々とダウンして行く仲間を見ながら少しばかり躊躇うオーク。少しすると後ろから短い悲鳴のようなものが聞こえてきた。ふと、後ろを見るとそこにいたのはダークエルフ。美優の前、先代のヴィクトル・クロスロードの時から仕えていたヴェラがオークの従えた魔族2人の首をすでに切り落としていた。


「魔王様、勝手に行かれては困ります」

「見張りは任せると言ったはずだが?」

「見張り4人の内2人殴り飛ばした貴方は私達に任せる気ゼロでしょう?」

「後2人はどうした?」

「アリサとカタリナが魔法で」

「残りの見張りは人間だったと思うが気絶させたでいいんだよな?」

「さぁ?」


 ヴェラの言葉に戸惑うしか無い美優。しばらくして、金髪の吸血鬼と赤髪の獣人族が魔王の元に参上した。


「人間1人も殺せない光魔法使いの欠陥だらけ人間吸血鬼ならここに居るわよ」

「アリサに同じ……土魔法の完全な獣人族だけど……」

「でかした、ありがとう」


 そう言った美優は再びオークを睨みつける。怯みながらも出した言葉はヴェラの名前だけである。


「ヴェ、ヴェラ! き、貴様は先代のヴィクトル様の側近だろう!? なぜ人間の肩を持つのだ!」

「さぁ? でも、お前は殺すに値するほどの底辺俗物だよ」

「ヴェラってさ、本当に昔から俺のこと嫌いだよな」

「人間は嫌い。貴方もわかってますでしょう?」

「悪いな、俺は人間魔王なんですよ」


 2人が話しているのがチャンスだと思ったのか、オーク以外の人間や魔族が再び魔王の軍に襲いかかるが、美優から殴られて、ヴェラに闇魔法で身を消失され、アリサの光の剣で刺されて、カタリナが地面を割って奈落に落とす。結局劣勢になったのは孤独になったオークである。


「魔王、こいつどうするの?」

「ヴェラ、成敗頼む」

「殺していいのですか?」

「人間は気絶させろと言っただけだ。俺自身は殺さないと言ったが、後はヴェラに任せる」

「ふざけるな! あの人間さえ殺してしまえば!」


 そう言ってオークは全力で美優を殴りに行く。美優はヴェラを手で制して前に出ると、左手でオークの拳を止めた。目を見張るオークの目の前に現れたのは残った右拳。顔面に美優の右ストレートが決まる。美優がヴェラに顎で指示を出すと、ヴェラは闇魔法でオークの首を掻き切った。血は流れたが、人間の美優含めて誰も何も言わない。そのままオークは絶命したのだった。


 ☆


 オークなどの死んだ魔族はカタリナの土魔法で埋めた。それ以外の魔族に関しては牢に閉じ込められ、人間達は国王に引渡しの元そのまま斬首となった。


「約束は果たしました。国王様」

「あぁ、よくやってくれた。礼を言う」

「まさか全員斬首とは思いませんでしたけど」

「1人殺すならともかく、奴らの罪は多いからな。こうするのも国王である儂の責務だ」


 それよりも、お前は平気かと国王であるレオニード・レフは美優に聞く。正直魔族が殺される場面はそこまで多く見てはいないのでトラウマになる可能性もあったが、美優は魔王として潰れるわけには行かなかった。そんな彼に国王としてレオニードは言う。


「王とは全てを支配下に置く。楽しい時も悲しい時も辛い時も……むしろマイナスが多いだろうな。だが、それで潰れるなら儂は貴様を叩き斬る。魔族の王はへなちょこ人間だったと後世に伝えてやろう」

「そうだな……そうならんためにも、頑張るさ。爺、少し飲みに付き合ってくれ。俺が奢る」

「ふん、愚痴など言ったら承知せんぞ」


 そう言って、小山・クロスロード・美優とレオニード・レフは人間界の夜の街を歩く。人間魔王と人間国王のアドラー国、平和協定評判記はここからである。

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