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魔法少女のプロデューサー  作者: 立花KEN太郎
第1章 結成の前奏曲 Prelude of formation
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第3話 『First, go straight ahead』

「変身」


 俺は左脇を閉めて肘から先を垂直にし、右手で左腕の『起動器(デモクリト)』に触れた。


 …………………………。


「変身」


 …………………………。


「変身。変身。変身」


 …………………………。


 知ってた。


 俺は即座に、黄色い顔を青くするレンタを抱え、180度方向転換して逃げ出した。俺は顔を赤くした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「テメエ!ビビらせやがって、ぶち殺してやる、ゲッヘン!!」

「やっぱりダメじゃねえか、このガッカリス!」

「ごめんなさい、あの時はボクの気が動転していましたああああああああ!!!」


 レンタが素直に謝ってはいるが、俺も契約に同意したので、非はどちらにもある。とにかく、この第3ラウンドを逃げ切らねえと――


「逃さねエって言ったよな、ゲッヘン」


 突然、背中からバットで殴られたような衝撃が走り、俺は意思とは関係なく5メートル前方に吹っ飛ばされた。すると、脚に焼けるような痛み。右のふくらはぎの皮膚が断裂し、鮮血が流れ出していた。骨が折れているわけではないので走れなくはないが、痛みで大きく走力が失われるのは明白だ。


 俺は、体育館の外、昇降口前の通りに倒れ込んだ。奴とはまだ十分に距離があったはずだが、なぜ……


「うぐっ……くそ、足が痛え……」

「大丈夫か、流星!……あああ、ゴメン、ボクのせいで……」

「謝る暇があったら、この状況を打開する策を考えろ!俺も考えるから!」

「ゲハハ……往生せエや、ゲッヘン」


 その時、昇降口から見慣れた人影が現れた。


「流星、流星ッ!」

「ハ、ハルカ!?き、奇跡だ、じゃなくて、来るのが遅えよバカ!」


 もうちょっと早く来てくれれば救世主として祭り上げただろうが、今出てくるのは、標的として狙われるという結果になる、自殺行為でしかない。その予感通りに、ライオン頭は女性であるハルカに狙いを定める。


「人間の女か……『ミリス』になる可能性のあるヤツは皆殺しだ、ゲッヘン」

「逃げろ、ハルカああああああああ!!!」


 鋭い爪と暴力的な筋肉を持ったライオネルが、まだ膝が微かに震えるハルカに向かって走り出す。すると意外にも、ハルカは奴に向かって走り出したのだ!


「おいバカやめろ!敵うわけがない!」

「ゲハハ、死にたがりかア?」


 すると、ハルカは怪物の遥か手前でスライディング。同時に、怪物が信じられないようなスピードで飛びかかっていた。


 ハルカは、空中に飛んでいるライオネルの下をすり抜ける。奴の一撃はハルカのわずか後ろに当たり、コンクリの地面を穿つ。直撃は免れたが、やはり破壊的な威力の一撃により、ハルカは俺の方へ吹っ飛んで行った。俺は痛みを堪えて走り、なんとかハルカの着地点に到達してキャッチした。そのおかげか、ハルカに目立った大きな外傷はない。


「このアマ、俺様の攻撃を読んでやがったのか、ゲッヘン」


 違う、今のは偶然だ。奇跡だ。恐らくハルカは、奴に近づく瞬間にスライディングですり抜けようとしたのだが、目測を誤り、それが偶々奴の超速の攻撃とタイミングが合致しただけだ。次は避けられない。


「大丈夫、流星!?……やだ、脚怪我してるじゃない!」

「お前は、逃げろ……ハルカ。ここは俺が食い止める……」

「アンタバカなの!?そんなことしたら、アンタが確実に死ぬってことぐらい、私にだってわかるんだから!私に任せて!大丈夫、ヒーローは、いやヒロインは遅れてやってくるんだから!」


 遅れてきたせいで、お前はヒロインになれないんだよ!そう言いかけた時、ハルカがレンタの存在に気づく。


「ねえ流星、この黄色いリスみたいなカワイイ動物なーに?」

「ボクの名前はレンタだよ、ハルカ。……君がもう少し早く来ていれば」

「キャッ、しゃべった!?……ああわかったわ、あなたは少女に力を与えて私は魔法少女に変身する系ね!!」


 なんで分かるんだよ!分かるんならどうして早く来ないんだよ!


「999点だ。でも、足りない1点が致命的なんだ。ボクたちは恐怖に負け、『ミリス』になれない流星とボクは契約してしまったんだ!」

「…………。……はああああああああ!!?あんたたち、なーんなの!?バカなの、死ぬの!?」

「「ゴ、ゴメンナサイ……」」

「おいテメエら、いつまでも俺様を無視してんじゃねエ、ゲッヘン!」


 今まで律儀に待ってくれていたライオネルが痺れを切らし、こちらに向かってきた。しかし、その顔には薄汚い笑みが浮かんでいる。あれは敵が万策尽きたとわかり、一方的な虐殺を心待ちにしているというような顔だ。


 くそっ、どうする、策が思いつかねえ。時間があれば、思いつくかもしれないが……


 ……時間を作る策なら思いついた。後は頭をフル回転させるだけだ。


「ーーハルカ、俺とキスしてくれ」

「……はあ?えっ、ちょっ、どーいうこと……」

「これが最期かもしれない。だから、せめてキスしよう」


 ハルカも、レンタも、そしてライオネルさえもポカンとしていた。よし、時間が出来た。キスというのは時間を稼ぐためだけの策で、その他に意味は全くない。……この時間を無駄にしない、早く策を考えなければ……


「ゲハハ、恐怖で頭がおかしくなっちまったようだな!いいぜ、俺様は優しいからな、寂しくねエ様、恋人同士まとめて地獄に送ってやるぜ、ゲッヘン」


 奴が何かノリのいい性格でよかった。俺は雑念を振り払うために目を閉じ、生き残る方法を考える。


 取り敢えず校舎に逃げていや脚が怪我をしているし血の匂いは消せないならば体育館だあそこなら2階があるから奴は来れないいや奴がジャンプしてきたら終わりだバレーの鉄柱を持ってきて奴がジャンプしたところをダメだあんな大きいもの上手く扱えないしそもそも鉄柱さえも折れ曲がってしまいそうだやっぱり泣いて謝るフリをして隙を見て逃げるでも奴は油断してない確実に俺たちを殺しにくるあああダメだ何も思いつかねえ諦めるな諦めたらコイツら二人が死ぬ早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く……


 ――暗闇の中、柔らかい感触が口先に生じる。震えていて、温かい。何か穏やかなものが注ぐ込まれた様な感覚によって、俺の思考は止まった。


 目を開けると、微笑みながら目に涙を浮かべる少女。その少女が、喉から声を絞り出す様に俺に語りかける。


「――流星、私は……」

「ゲハハ、では死ね!」


 残酷な一撃が降り注ぐ。死ぬのか、俺は。


 ――その時、『起動器(デモクリト)が光り始めた!


「な、何だッ、この光は、ゲッヘン!?」

「なっ、なーんなのよ!?」

「ボクは何もしていない!どういうことだ!?」

「よ、よく分からないが、うおおおおおおおお!!!」


 俺は赤色に収束する左肘上の光を、右拳で強く握りしめた。


 ――すると、突然ハルカが立って浮き上がり、さらに強く赤い光沢に包まれた!


「げっ、眩しっ!」

「まさか、この光は!」

「マジかよ、ゲッヘン!」


 レンタとあの怪物には、心当たりのあるらしい光。その光が弾けてから、光源であった少女に目をやるとーー


 ――ヒラヒラのスカートに、白に赤のアクセントをつけたブーツとブレスレット。アイドルの様な衣装に、胸に輝くは正八面体のクリスタルとそれを中心とした赤リボン。髪型は膝まで伸びていながら、実に派手にまとめられていて、その色は燃え上がる様に赤みがかっていた。右頭前方には赤い花がついており、反対側にはいつも着けている髪留めが。


 ――こ、この姿は、まるで……


「キャーーーーーッ、まるで『プリセラ』みたい!可愛いーーーっ!!」


 ハルカが日曜朝8時30分の少女戦士の様な姿になり、赤い瞳を輝かせていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「流星!今の私、何でもできる気がするわ!情けないアンタを、守ってあげるんだから!」

「お願いします!」

「アンタ、男のプライドってもんがないの!?」


 命とプライドでは、どう考えても命の方が大切です。


 ――さて、敵の方に目をやると、苦虫を噛み潰した様な表情をしている。


「あのアトマは、男と契約したはず……ありゃどう見ても『ミリス』だよな……他にアトマの姿も見えねエし……ああクソ、とにかくぶっ殺す、ゲッヘン!」

「させないわ!」


 ハルカが、大地を蹴り出す。すると、ライオネルとの距離が一瞬で縮まる。


「ゲヘ、速……」

「くらいなさい、ハルカパーンチ!」


 幼稚園児並みにシンプルな名前のパンチを、とっさにガードしたにもかかわらず、ライオネルは校舎の壁まで吹っ飛んでいた。壁が崩れ、奴は瓦礫に埋もれる。


「すごい攻撃力だ!やはりボクの見立てに狂いは無かった!」


 さっきまでの死にそうな顔はどこへやら、レンタは希望に満ちた顔をしていた。


「へへん、どうよ流星、この私に感謝しなさい、ブイブイ!」

「バカッ、敵に背を向けんな!」


 ハルカが振り向くと、その目の前に飛びかかるライオネルの姿。奴の血管の浮き出た太い腕による攻撃は、ガードしたハルカを吹っ飛ばした。俺はまたも足の痛みを堪え、吹っ飛んだハルカのところに走り、受け止めた。


「うぐっ……ちょっとちょっと、なーにしてるのよ!アンタまでくらってどうするの!」

「うるせえ、これぐらいはさせろ!」

「ぼ、防御力の方は、あまり上がっていない様だ……」

「ダメじゃねえか!おいハルカ、次からはあのライオン頭の攻撃は避けろ!」


 ハルカがなんとか立ち上がると、ライオネルも左腕を抑えて立ち上がっていた。


「ゲハハ、か、かなり効いたぜエ……痛みが残ってなけりゃ、全力の一撃を叩き込めたのによオ、ゲッヘン」


 そういうと、奴は右脚に何やら力を込める。何かを察知したのか、ハルカは右脇に俺を、左脇にレンタを抱える。次の瞬間、奴は目に見えない様なスピードで俺達の方に飛びかかってきた!


 ハルカが俺達を抱えて上空に飛び上がって避難すると、奴は一瞬前に俺達がいた場所に攻撃し、そこの地面を陥没させた。俺達は体育館の屋根に着地し、一息ついた。


「ヤバっ、危ねえ!サンキューハルカ!」

「もっと真面目に感謝しなさい」

「――なあリス、あれって……」

「多分、奴はガルムによる身体強化を脚に集中させ、超スピードで踏み込んでいるんだ」


 なるほど、それが奴の機動力の正体か……厄介だな。


「ねえねえ、なーんか魔法とか使えないの?必殺技とか!」

「うん、『ミリス』は個別に違う『固有魔法(ファンデル・ワールス)』が使えるんだ。どんな能力かは『ミリス』になってみないとわからないけど、胸の『精石(ハパール)』に手を当てれば、なんとなく能力が分かるから!」

「なるほど、胸か、じゃあ俺が調べてやべろッ!?」

「このエロ流星!……わかったわ、やってみる!」


 『ミリスシステム』で強化されたハルカに引っ叩かれた俺は、しばらく体育館の屋根で転がっていた。先ほどクリスタルに手を当てていたハルカは、両手を前に突き出しそこに力を貯めている様だった。その約5メートル前方に、ジャンプして屋根に乗ってきたライオネルが現れる。


「すばしっこいヤツだ、次は首根っこ捕まえてやる、ゲッヘン」

「いいえ、次はないわ、アンタは私の炎に焼き尽くされるのよ!」


 すると、ハルカの突き出した両手の前に炎の塊が現れる。その塊は赤く燃え上がり、モノクロがかった世界を照らしていた。


「ゲヘ、炎かッ!」

「くらいなさい、『遥かなる炎(ハルカ・バーニング)』!」


 その炎の塊が弾け、火炎放射器の様な炎熱が放出され……!


 ーーライオネルの遥か上空へと、放出された。


「「「…………………………は?」」」

「……あれ、おっかしいわね、もう一回!」


 ライオネルの左に大きく逸れる。


「もう一回!」


 ライオネルの右に大きく逸れる。


「もう一回!」

「もういい、当たりそうもねえ!大体、敵との距離はたった5メートルほどしかねえんだぞ!?あんなにデカい炎なのに、何で当たらねえんだよ、バカ!」

「な、なーんで……?」

「ゲハハ、お嬢ちゃん、どれだけ強力な炎でも、当たらなきゃ意味ねエなア!今度はこっちの番だ、ゲッヘン!」


 ライオネルは先ほどから貯めていた右足のエネルギーを放出し、距離を一瞬で詰め、困惑していたハルカの細い首を大きい左手で掴んだ。ハルカが苦しんでいる隙に、右手で致命の一撃を与えようとしている。


「うっ……くぅ……」

「ゲハハ、オマエは細切れにして、サイコロステーキにして食ってやるぜ、ゲッヘン」

「やめろおおおおおおおお!!!」


 ライオネルが一撃を与えようとした刹那、ハルカは自分ごと奴を左に大きく振り回した。そして、二人は屋根から落ち、バラバラになって転がって行った。


「――ケホッ、ケホッ、危なかったわね……」

「チィ、だが寿命がほんの少し伸びただけだぜ、ゲッヘン」


 両者が立ち上がり、睨み合う。


 奴に有効なダメージを与えるには、やはりあの炎だ。しかし、なぜかあの炎は奴に当たらない。奴が何かした様には見えなかったし、ハルカにも問題は……


 ……「方向」音痴が、ここでも足を引っ張った!!?


 くそっ、どうする。ゼロ距離で当てるべきか。いや、ハルカは炎を放出するまでに少し時間をかけていたし、それでは奴の攻撃の方が速い。奴のパンチの方が……


 ――パンチ?これだ!


「おいハルカ、お前炎を手に纏わせることができるか!?それで奴を殴れ!」

「……!わかったわ、はあああああああああ!!!」


 ハルカが気合を入れると、両手に炎が宿った。メラメラと燃え盛り、髪が揺れている。ハルカは左半身を前に突き出して構えた。


「ゲハハ!面白エ!」

「来なさい!」


 ライオネルはまたもや右脚に力を込める。ここで勝負を決める気だ。


「ハルカ、奴が来たら避けて、カウンターだ!」

「そんなまどろっこしい事してられないわ!真正面から迎え撃つ!」

「バカヤロウ、死ぬ気か!奴はスピードに乗って攻撃するから、威力が段違いだ!」


 俺の忠告を無視したハルカだが、昔からスイッチが入ったら人の話を聞かないタイプなのだ。ここは、アイツに任せるしかない。


 俺は屋根の上から、全力でハルカの勝利を祈る。


 ライオネルが地面を蹴り出し、一直線に標的へと向かう。ハルカの拳の炎が、より一層輝きを増した。


「終わりだ、ゲッヘン!くらえええええええええい!!!!」

「いっけええええええええ!!!『炎の一撃(バーニング・バースト)』ッ!!」


 二人の拳がぶつかった瞬間、大気が震えた。両者の命をかけた一撃が、もう片方の一撃を砕くためにぶつかり……


 ――ライオン頭の怪物が、何十メートルも先に吹っ飛ばされた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 奴は起きない。完全にハルカの勝利だ。


 俺とレンタはハルカに屋根から降ろしてもらい、激闘の跡を眺めていた。


「……なあ、これ本当に元の世界に影響が出ないのか?」

「うん、オルタナ界で壊れた物はフォロウ界での形相に引っ張られて、ゆっくりと元に戻っていくんだよ」

「そうか。まあ、元の世界に物理的影響が出ないから『サタンガルド』の連中が悪さしてるんだろうしな」


 ――と、赤髪の戦士が少し怒ったような表情を見せている。まあ、急展開が続いて頭の中が整理できないだろうし、無理もない。


「ねえ流星、あとでちゃんとこの状況を説明しなさいよ」

「わかったよハルカ……っ!?」


 何気なくライオン頭の方に目をやると、奴が足をぐらつかせながら起き上がっているのが見えた。ただし、奴の右腕、右胸は完全に焼け焦げ、ぐちゃぐちゃになって原型を留めていない。


 グロいな。あれをやった当の本人がドン引きしてるぞ。もう戦うのはゴメンなので、奴には撤退してもらおう。


「おい、その状態じゃもう戦えないだろ。尻尾巻いて逃げた方がいいぜ」

「ゲハハ……悔しいがその通りだな、今日は引かせてもらうぜ、ゲッヘン」

「あ、待ちなさい!」


 ハルカの制止を無視し、ライオネルは左手で右腕だった何かを抑えながら、ジャンプして逃げていった。


「ちょっと、逃げるの卑怯者!……どうしよう流星、逃げられちゃったわ!」

「いや、今はもう戦わない方がいい。……あのさ、今の今まで忘れてたんだけどさ、脚が痛いんだよね。……痛い、痛いよお母さーんッ!」


 緊張が解けたのか、ふくらはぎの痛みがぶり返してきた。


「もう、しょうがないわね。今傷口塞ぐから」

「待て待て、何で塞ぐ気だ!お前そこまで炎操れるのか!?なあ!?」


 怖いので、ズボンを破いて、布として患部に巻き付けた。


「はあ、ったく……お前そういえば、炎を出せたは良いが、全然コントロール出来てねーじゃんかよ」

「ミリムは生物の精神のエネルギー……だから、『固有魔法(ファンデル・ワールス)』も『ミリス』の精神を反映したものになっているんだ」

「なるほど、像がないス○ンドみたいなもんか。だから元気だけが取り柄の方向音痴の魔法は、ちょっと離れたところの敵にも当たらない炎になるのか」

「なーんか、心外な言い方なんですけど」


 やっぱり、いくら『ミリム』の保有量とやらが多くても、この女を『ミリス』にしたのは失敗だったんじゃないかな。


「――ねえ、こういうのって、戦いが終わったら元に戻るんじゃないの?私の姿も元に戻らないし……」

「……そういえば、この左腕の装置の光を掴んだら変身したよな」


 今まで戦いに気を取られていて気がつかなかったが、装置には赤色の光が点灯している。思い返すと、俺とハルカが確かキスをしたら、赤く光ったんだっけ。


「ポチッとな」

「うおい、何いきなり触ってんだ!?」

「もう一回押せば、元に戻れるかなーって。んーでも、元に戻らないわね」

「ボクが押しても反応しないな。やっぱり『起動器(デモクリト)』の装着者である流星が……」

「いつの間に……まあ、あとは俺しかいないわな」


 俺が点灯している光に触れると、ハルカが光り出し、元の服装と髪型、目の色へと戻った。


「こんな機能、『ミリスシステム』にはないはずなのに……どういうことか、ボクには全くわからないよ……」

「ねえつまり、私はこのエロ男に変身させられるってこと!?キャー、変態、エロガッパ!」

「知らねえよ!そして古いよ!」


 レンタが『鏡界転移(ガリ・レイヤー)』を使うまでの間、俺はハルカに罵声を浴びせられ続けた。


 ああ、脚が痛い。

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