第二十八話
日々の雑務お疲れ様です( ´ ▽ ` )
「何が出てくるか分らないけど、気を引き締めていくぞ!」
「おっけー! 今のうちにみんなにプロテクションかけとくね!」
「頑張るのじゃぞ、儂は本当にどうしようもなくなった時に手を貸すからな」
俺達は魔法陣の前で休憩を取った後、最後の確認をする。
そして気持ちを整え魔法陣に飛び込む。
次の瞬間、瞼の上から光を感じる。
今回は事前に楓と打ち合わせをして、目を瞑りながら入ったおかげで、俺達は光に目が眩むことなくすぐ周りを確認する。
移動した先は、1番最初にドアから入ってきた場所の様な木々に囲まれ、半径20m程ぽっかり開けた草原だった。
その真ん中に奴はいた。
【グリーングリズリー】
鑑定を使うとグリーングリズリーという名前だと分かる。
二足歩行で立った姿は2m程あり、あの太い両手から繰り出される攻撃はとても威力が高そうだ。
「楓、あのモンスターはグリーングリズリーという名前みたいだ、まずは俺がチェインを使って動きを封じるから、動けないところを攻撃してくれ。奴の攻撃はヤバそうだから気を付けよう」
楓は「おっけー!」と答えると先に走り出す。
俺はすぐにチェインを発動し、グリーングリズリーの動きを鎖で封じる。
上手くグリーングリズリーの右手を巻き込みながら胴体に鎖を巻き付ける。
その間に楓はすぐ熊の右側に回り込み、右足に一撃を入れすぐ距離を取る。
「解! この剣でもしっかり踏み込まないとあんまり刃が通らないみたい! あのグリグリ見かけによらず固いよ!」
グリグリって……グリーングリズリーの略ね。
確かにグリーングリズリーって名前長いしグリグリでいいか。
「分かった、次は俺も攻撃に参加するからさっさとケリをつけよう!」
そう言い攻撃に移ろうとした時、バキン!と音を立ててグリグリを封じていた鎖が解かれる。
グリグリの顔は怒りに満ち、今にも襲い掛かってくる寸前だ。
「おいおい…グリグリクラスのモンスターにはチェインで長い時間は拘束できないのか」
俺はもう一度チェインを発動しようとした瞬間、グリグリは俺に狙いを定め、四足歩行でこちらに突進してきた!
俺は寸でのところで回避し、避けざまに剣で熊の胴体を切りつける。
(こええええええええええ!!!!!)
めちゃくちゃ怖い! さっきのビッグボアでも普通に怖かったのに、あの突進してくる巨体の恐怖たるや……てかよく今の避けれたな! すごいぞ俺!
「危なかったね、解」
「ああ、あの突進を喰らわなくて助かったよ」
そう会話を交わし、すぐチェインを発動する。
グリグリはチェインを警戒していたらしく、先程のように胴体まで拘束は出来なかったが左手は封じる事ができた。
そう思ったのも束の間、グリグリは左手を思い切り自分の方へ引き、俺とグリグリで綱引きのような引き合いが始まる。
「おいおいおいおい! まずい、こっちが引きずられるぞ……!」
「少しだけ耐えて!」
楓はそう言い、引っ張る事に夢中になってるグリグリ目掛け走り一気に距離を詰める。
左手が拘束され塞がっているグリグリの体の左側に陣取り、左足を何度も斬りつける。
「楓、一度離れてくれ! そろそろ限界だ!」
俺の言葉を聞くと、楓はグリグリから大きく離れ、距離を取る。
しっかりと離れた事を確認し俺はチェインを解除した。
グリグリを良く見てみると、楓が重点的に足を攻撃してくれたおかげでかなり動きづらそうだ。
「もう少しだ……足を潰せば勝てる!」
「一気に叩こー!」
そう言い俺達はすぐグリグリとの距離を詰める。
俺と楓は大きな腕から繰り出される大振りな攻撃を躱しつつ、2方向から何度も何度も斬りつけて、ようやくグリグリは片膝をつく。
「これで終わってくれ!」
俺は渾身の力を込めて片膝をついているグリグリの胴体に刃を通す。
グリグリは「グオオオオオ……」と次第に弱くなる雄叫びを上げながら地面に倒れた。
「倒したの? あんなにでっかいモンスターを私たちが倒した……?」
「ああ……キツかったけど倒せてよかっ……楓! まだだ!」
倒れたと思った筈のグリグリが最後の力を振り絞って、楓に横薙ぎの一撃を与えてくる。
「くそっ! 間に合え!」
俺は無我夢中でグリグリと楓の間に入り、剣で攻撃を防ごうとする。
が、俺は防ぐことが出来ず思い切り勢いのついた横薙ぎの一撃を喰らう。
「がっ……!」
俺は10m程吹き飛ばされ、その場に崩れる。
「解!? このおおお!」
楓は剣を両手に持ち、グリグリの首元に刃を突き立てる。
暫くして、やっとグリグリの体が消滅した。
「解! 早く治癒を!」
楓が駆け寄ってきて治癒を使う。
結構な痛みだったが、楓が治癒してくれたことによりすぐに痛みは引いた。
「ありがと楓。いやぁ、びっくりしたぁ……あの一撃でプロテクションの上からボディプロテクターと防刃ベストが一発でだめになったよ……」
もちろん、ポケ○ンパーカーもズタズタだ。
「解、ごめん。私が……」
「いや、気にすんな。位置が逆だったら俺が狙われてたしな」
そう楓と話していると……。
「良く2人でグリーングリズリーを倒したの。 じゃが……お主らが油断したせいで要らぬ怪我を負うことになったんじゃぞ……。まあ、お主らも分かってると思うしこれ以上は言うまい」
「ごめんね。解、ルキちゃん、これからはモンスターが消えるまで絶対気を抜かないから……!」
「俺もすまなかった……これに懲りて次からは抜からない様にする」
「分かればいいんじゃ、ほれ……宝箱が出たようじゃぞ」
「「宝箱!」」
俺と楓、2人の声が重なる。
あんなに強いボスだったんだから、きっと良いアイテムが出るはずだろ。
俺達は宝箱に近寄りバコッ!と宝箱を開ける。
そこには、これまでより一際輝く〈天啓〉のオーブがあった。
「ほう、これはなかなかのもんじゃな」
ルキが驚いたような顔をしている。
俺は鑑定を使ってそのオーブを確かめると……。
【天啓のオーブ(風神)】
「このオーブを使えば風神の〈天啓〉が貰えるみたいだな」
「風神!? なんかかっこいいね!」
風神てことは風を操るとか? なんにせよかなりのパワーアップが出来るな。
「どうせ私は使えないし、このビー玉は解が使えばいいよー」
楓はどうぞどうぞと俺に譲ってくれる。
「ちょっと待つのじゃ、楓。近い将来〈天啓〉のオーブを使える様になるかもしれん、それは一旦儂が預かろう」
「えっ? 私も使えるようになるの!?」
「かもしれんの」
ルキは意味有りげな顔で答える。
「俺はそれで大丈夫だぞ、楓も強くなれるんならそれが一番いい」
そう3人で話をしながら帰還用の魔法陣に乗り、最初に入ってきたドアのある草原に戻ってきた。
「「おおー」」
そこには森を一気に照らしながら昇るとても綺麗な朝日が見えた。
「お主らが頑張ったおかげで、この“明けゆく森”という世界に変化をもたらしたんじゃ。この変化は大きなうねりとなって、また新たな世界を作って行くんじゃ。誇って良い、よくやったの」
俺は不意に目頭が熱くなる。
何故だ? と戸惑ったがその疑問はすぐに自分の中で解決した。
ああ……そうだ、俺はやっと誰かの為になる何かをする事が出来た、そんな気がする。
これまでの人生、何も与えることが出来なかった俺が、ほんの少しでも何かの役に立つ、助けになる、そういう事が出来た。
自己満足かもしれない、無駄かもしれない。
ただその喜びをルキを通して今、俺の中で感じる事ができたんだ。
この気持ちは大切にしなくちゃいけない。
力強く昇る太陽を見つめながら、俺はそう思ったんだ。
「さあ、そろそろいくぞ。儂は腹が減った、早う楓の飯を食わせるんじゃ」
楓は笑いながら「はいはい」といってドアに向かう。
さあ帰ろう、俺達の世界へ。
……
……………
…………………………
「ふうー、帰ってきたね」
「ああ、今回は中々タフなダンジョン攻略だったな」
「何を言う! こんなものまだまだ序の口じゃぞ! お主らの冒険は始まったばかりじゃ!」
「おいおい、ルキは厳しいな……」
ドンッ!
それはまた突然起こった。
あの時と同じ始まりの合図。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……。
「!? 凄い地震だぞ、早くテーブルの下に隠れろ!」
「あわあわ」
「……何故じゃ!? まだ早すぎる、こんな予定では無かった筈じゃぞ!? まさか、儂が干渉したからか……?」
あのルキが声を震わせて狼狽している。
「おいルキ! 危ないから早くテーブルにっ……」
『全人類にダンジョンが開放されました』
!?
「全人類……ダンジョンが開放……?」
「解、これって……」
2020年7月13日、この日を境に世界は大きく変貌した。
後に人々はこの日を“始まりの日”と呼ぶ事となる。
〜始まりの日編〜完。
■作者コメント
今回でとりあえず1章は終わりです|ω・)
それで前々から感想でちらほら言われていた楓のホームページの件なんですが、作者自身最初は軽いノリで「10話続いたし、200PVも見に来てくれる方たちがいる嬉しい!」て書き始めたのですが、まさかこんなことになるなんて…(´ ・ω・`)(笑)
確かに前々からどうしようかなぁと思ってたので、この1章終了という節目に内容を修正しようと思います。
これからのネタバレになるので詳しい事は言えませんが(多分大体の人が予想出来てると思うけど)、まずは楓のネットリテラシーの向上をします|ω・)
これも全て作者の実力不足であって楓は悪くありません、恨むなら素人の作者を恨んでください(;△;)
しかし皆さんの意見を取り入れつつ、より良い小説に出来るこのシステムは本当に素敵なものだと思いますし(勿論取捨選択はしますが…)、沢山の方々からアドバイスを頂ける事を本当にありがたく思っています。
これからも頑張りますので何卒キーメイカーのダンジョン攻略をよろしくお願いします<(*_ _)>
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あとは特に無し!(乂・ω・)