生け贄の子供達
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作戦が決行されようと…
彼らは、王国内の変哲もない何処からともなく来た少年少女達。
だからこそ使い勝手がいい。
20名近い彼ら彼女達には、後ろ盾がある。
帝国が機神という巨大な力を持ち出して、向こう岸にその巨大な存在を見せて威圧している。
これぞ、王国の危機、未来を憂う者達よ、今こそ立ち上がるべき。
そんな何処にでも転がっている安い大義に、この子達は集まってしまった。
ハッキリ言って浅慮だ。
それでも彼ら彼女達は、王国の未来を救うのは私達だと…本気で思っていた。
それが裏から帝国が回しているとも知らずに。
一隻の船が用意される。
この船には大量の魔法弾薬と、魔法装備が乗っている。
魔力を込めた魔導鎧、そして様々な効果を放つ魔法弾薬。
20名の彼ら彼女達は、これから帝国領土へ入って、町に向けてある機神を破壊する算段だ。
決行は嵐の夜。
その前夜祭にとある倉庫が使われる。
そこに集まった20名の純真な彼ら彼女達、少年少女。
その正面に3人の男達が立ち鼓舞する。
「君達の勇気と気概に、乾杯!」
と、彼ら彼女達を祝福している。
彼ら彼女達も、軽めの飲み物を口にして
「やったるぞーーー」
「アタシ達の力、見せてやる!」
「えいえい、おーーーー」
盛り上がっている彼ら彼女達を見て、支援者である男達が微笑んでいる。いや、ほくそ笑んでいる。
使い易い捨て駒であると…。
彼ら彼女達、王国少年騎士隊の突撃によって、帝国側が混乱。
それによって、帝国は王国に報復しなければなくなり、王国と帝国は戦争へ突入する。
おあつらえ向きに、王国は軍備拡張の為に貴族達から税を徴収している。
帝国と王国が、戦争する理由は十分に揃っている。
支援者の男達は、少年少女達を煽り、そして…嵐の夜の船に乗せる。
この程度の嵐では、この特殊装甲船舶は破壊されない。
戦争の火蓋にされようとしている船が川の中腹に到達した瞬間、少年少女達と武装を乗せた装甲船が何か、川から浮上した存在にぶつかり、そして絡め取られて何処かへ運ばれる。
男達は度肝を抜かれた。
それは黒い巨大な大蛇が、装甲船を締め上げて何処かへ運んだのだ。
夢か幻か? とにかく、作戦は失敗した事に変わりない。それだけだ。
戦争の火蓋になるはずだった少年少女達が乗る装甲船は、黒鋼の大蛇ならぬ、大蛇型の機神に捕縛され、帝国の基地より上流の対岸に打ち上げられる。
装甲船はボロボロになり、少年少女達は船から下りると、所々に締め上げられた跡がある装甲船を見て困惑していると
「大丈夫かね?」
と、呼び掛ける人物がいた。
白銀の髪、鋼の右腕、顔を白い仮面で隠す者、ゼロドである。
少年少女達は警戒で、纏っている魔導鎧の剣を抜くと、ゼロドが両手を前に出して
「おいおい、落ち着いてくれ…連絡を受けていなかったのか? 帝国側の対岸にいる協力者の事を?」
少年少女達は剣を収めて、そのリーダーらしき少女が
「貴方が…聞いていた風貌とは違いますが…」
ゼロドはわざとらしく額を擦り
「その…怪しまれて、本来…接触する者達が捕まったんだよ」
そう…ガジリットの派遣した陸軍によって押さえられた。
少年少女達は戸惑いを見せていると、ゼロドが
「そこでだ。計画が変更になった。こっちに来たまえ」
と、少年少女達を誘導する。
誘導したそこには5機の機神達がスタンバイしていた。
リーダーの娘が
「これは…」
ゼロドが
「これで帝国領内の一部を押さえる作戦になった。使い方は心配ない。君達の思考を読んで動いてくれる。乗っていればいい」
リーダーの娘が全長20メートルの機神に近付き触れて
「スゴイ、これがあれば…本当に帝国に一矢報いる事が出来る」
ゼロドがリーダーの娘に近付き
「やってくれるよね」
リーダーの娘は肯き
「はい!」
それはとても嬉しそうだった。
5機の機神に男子二人、女子三人、と任せられる者達が乗り、機神が立ち上がって王国の国旗を靡かせて帝国領土へ進軍した。
それをゼロドは見守る。
進軍する彼ら彼女達を見て
「さて…助けるべきか? それとも…」
最初の計画では、王国に偽装したとある帝国の貴族の私兵だったはずが…王国で使い易い王国民の生け贄を仕組んできた。
当初の通りの帝国貴族の私兵だったら、汚い話を組んで、こちらの思惑通りになる筈だったのに…。
本物の王国の犠牲者が生まれる。
ゼロドは考える。
そして…残酷な結論を出した。
「何人、生き残るのだろうなぁ…」
と、告げた背後の川から、ゼロドが作り出した巨大な大蛇の機神が出現して、ゼロドはその操縦室に入った。
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