ゼロド
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ゼロドとなった彼は、これからの事を
それから六ヶ月、ジャンから機神人類のゼロドになった男は、機神伯爵フィアンマの邸宅で調節を終えていた。
ゼロドは、機神を取り出す。
右腕から機神が出現、それは白い装甲の翼を備える鎧の巨人、機神だ。
自在に機神を出せるようになったゼロドの隣に、機神伯爵フィアンマこと、ナカタは拍手して
「素晴らしい…そこまで制御できるなら、心配はない」
ゼロドを自分が具現化させた機神を背に
「しかし、信じられません。自分の…その…王国と帝国は、緊張関係で。それが…」
機神伯爵フィアンマは肩を竦めて
「国とは一長一短ではないのだよ」
そこへ、一人の女性が近付く。フィアンマの妻アリシアだ。
「アナタ…お父様が…」
アリシアが向いて示すテラスのテーブルに、アリシアの父親の帝国陸軍少将のガジリットの姿があった。
「行こう」とフィアンマはゼロドに妻アリシアと伴って、ガジリットのテーブルに来る。
ガジリットは立ち上がり
「見事な機神だ。先程から見せて貰って、その実力を確認させて貰ったよ」
フィアンマはお辞儀して
「ありがとうございます。義父様」
ゼロドがガジリットを見つめて
「信じられません。帝国の少将が…王国の平和を…」
ガジリットはフッと笑み
「軍人だからといって戦争を好むのは、大きな間違いだ。何時だって戦争を好むのは、愚かな支配欲と強欲に取り憑かれた者達が始めるのだよ」
ゼロドが不安な顔で
「でも、自分にそんな大役が務まるのでしょうか?」
ガジリットは、肩を竦めて
「君には、それを成し得る力が宿った。それには意味がある」
ゼロドは頭を掻いて渋い顔で
「前まで、ただのポーション職人が、いきなり、世界を動かす影の仕立て屋になれって…」
フィアンマが首を傾げ
「そうかな…君には、その素養がある気がするよ。勤勉だし慎重だ。見極めようとする姿勢がある。それは一番大事な長所だと思うよ」
ゼロドは渋い顔で
「生兵法ですよ。一人でそういう政治や科学に、魔法技術、心理学と、色んな本をかじった門外漢です」
ガジリットが
「どちらにせよ。君は王国側の人間だ。都合が良い…それだけだ」
ゼロドが溜息を漏らして
「過度な期待をされても答えられませんからね」
フィアンマが
「その冷静な判断が出来るだけ十分だ。では…現状の報告だ」
と、ポケットから縮小させた魔法地図を取り出してテーブルに広げる。
その地図は、帝国と王国の堺を示したモノだ。
ガジリットが、王国側を指差し
「現在、帝国のとある貴族の私兵が、王国に侵入。王国を装って、帝国に侵攻するプランが始まろうとしている」
ゼロドが
「それを自分が防ぐのですね」
フィアンマが
「いいや、違う。君は、その偽装した帝国貴族の私兵に、君の機神を提供して、ある程度、この山まで、侵攻を成功させろ」
と、その侵攻先にある帝国領地の山を示す。
ゼロドは顔を引き攣らせて
「えええ…そんな、でも、えええ?」
ガジリットは
「まずは、君を王国内部に食い込ませないといけない。無論、侵攻した領土は、帝国が全力を持って取り返しにくる。その時は、直ぐに撤退しろ」
フィアンマが
「そこでの領土争いはそれで、一時的に収まるが…王国は、機神を作れる君を必要とするだろう。そこが狙い目だ。まずは、帝国独自の兵器、機神が…王国でも作れるようにする事が、最初のステップだ」
ゼロドは肯き
「分かりました。で…利用した私兵達は…?」
ガジリットが
「君の一存に託す。偽装の私兵達は…十代後半の若造達らしいからな」
ゼロドは、腕を組み渋い顔で
「使い捨てるも、使い残すのも好きにせよ…ですか…」
フィアンマが
「残して使えば、帝国にとっても面白い事になるから…良いんじゃないかね」
ゼロドは「はぁ…全く…」と溜息を漏らした。
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