8話 癒着
すぐにそのまま白い部屋のソファに寝かされた。
『オレ様に任せておけ!まぁ大家さんは、ここから高みの見物をするが良い!』
ガルはそう言い、部屋のカーテンを開けた瞬間、明るい光が差し込んできた。
そして外の景色も一緒に…ニタニタした蟷螂顔が見下ろしている姿が…
『ぎゃぁぁぁーっ!』ってあれ?
外の音が聞こえない。まるで静止画みたいだ。
『ここは大丈夫だ。あと数分はな。』
そうか…僕は自分の目の中から見ているのか…。
『おっしゃー!行くってくるぜ!!』
ガルは部屋の橋にあるはしごを上って行った。
『はしご!?』
よく見るとロフトの様な作りになっている。
おいおいコイツいつの間に俺の体を改造したんだ?ちょっと登って覗いてみると、2階は黒い部屋になっており、中央のコックピットのような椅子に座っていた。
うん!何も見なかったことしよう。そそくさと白い部屋に戻る。
『うぉぉぉー!!何も見えねー!!』
叫び声が聞こえた。
ドタドタドタッ
慌てて凄い勢いで降りて来た。
『ダメだ!見えねー!力が足りないせいで操れるのは、体の一部分位だけだ。どうする!?』
おいおい勇ましく行った割にもう詰みかよ!
ドゴッ
部屋中が揺れる。
地震か!!二人は壁に吹き飛ばされる。
窓を見ると、外で体が地面とキスをしていた。
やばい!このままだと確実に死ぬ!!
『しゃあぁねぇ!!!魔核の力が落ちるが、仕方ねぇ!!!』
えっと思った瞬間、ガルは右目の頬骨あたりに左手を掛け、ビキビキと自分の顔を引き裂き始めた。
なんと右目を含む顔の三分の一を切り離してしまった!えぇー!!!
驚きは止まらない!そのままそれを僕に頭の右側に被せてきた!ジュワァァァまるでミミズと癒着していくような感覚が続く…。
うげぇ気持ち悪いよ!!
『人が命を賭けて昏核を分けてんだ!文句言うな!!』
ある一瞬を境に違和感を何も感じなくなった。
何度も瞬きをしていると、馴染んできたのか今までよりも視力が格段に良くなったようだ。
ただし右目だけ…。
これじゃ完全なガチャ目じゃないか…。
『左目を閉じろ。よしっ閉じたな!』
急にガルが指示を飛ばしてくるのに、応じる。
『よし、こっちの左目と繋がった。』
どういう原理だ?どうやらガルの左右の目は、連動しているようだ。
というか、ガルは顔が三分の二しかない状態だが大丈夫なのか?
『これで戦えるぞ!!』
本人は元気そうだから、大丈夫なのだろう。
ドゴォォォン!!前回よりデカイ地震がやってきた。僕は天井に叩きつけられてるのに、ガルはよろめきながらも身軽に2階に登って行った。
窓の景色が今度は天井だ…。
白い部屋の壁も大きなヒビがいくつも入っている。
やべっ!もしかしてこのままだと体が持たずに、死ぬんじゃないか?
下手したら、勝っても死ぬ…。
このままでも死ぬ…。
『カス魔界人!よぉく見とけ!!』
僕の絶望も知らずに、ガルは今までで一番楽しそうに叫んでいた。