11話 在人間界の魔界人
我が名はスピンドロフ…。
一年前、苛烈な上下関係に嫌気がさし、逃げるように、否!魔界の人間界侵略の布石として独断で人間界へ降りてきた。
今は人間の盗賊どもの首領に収まっている。
しかし此奴は何者なんだ?
部下が、新しい奴隷の紹介だというから、挨拶してやったのに、よりによって失脚した愚か者の代名詞といえど魔界人の大帝王ガルファンドを騙る究極の愚か者だった。
ガルファンドのニュースは、昨日、在人間界の魔界人のネットワークを光の速さで駆け巡り知らぬ者のない最新の衝撃ニュースだった。
我を情報オンチと思ったのか、偉そうな不届き者だったので、ボコボコにしてやった。
しばらくすると、急に途中から右側頭部と右腕が刺々しい漆黒になったのを境にパンチを無闇に繰り出してくるようになった。
所詮、下半身が伴っていないパンチなど全部躱して熨斗を付けて返してやったら動かなくなった。
ところがここでハプニングが起こった。
先週、折角捕まえた捕虜の天使の子供が、部屋に乱入してきたところを彼奴に捕まえられたうえ、彼奴の体に吸い込んでしまったのだ。
なにか様子がおかしい。
彼奴は血だらけで跪き、俯いた状態でコッチを虚ろに見ている。
どうみても瀕死にも関わらず、強い存在感を感じる…。
そう思った瞬間、彼奴の背中の左側から羽が生えてきた。
なんだコイツは?
人間じゃないのか?
右腕と右半分近くが刺々しい漆黒に覆われ、左の背中に純白の羽…
ガルファンドは、決して人間にまで知られる存在ではない。
なのに騙るということは、最新情報に精通していない魔界人なのか?
いや、決して魔界人ではない。
何故なら、魔界人の力と天使人の力は相反するので、魔界人の体では共存できないからだ。
であれば、一体…
彼奴の目に光が宿るのを感じる。
『貴様何者だ!!』スピンドロフは叫んだ!
しかし、彼奴は何も答えなかった。