第06話 偉大なお方
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暗い闇の中に今にも消えかけそうな精神体が浮いている
ーーここは……?俺は……ああ、さっきやられたのか、あれはやばかったな、女の子を助けるとか慣れない事はするもんじゃないな、と言うかこれはなんだ?夢オチか?なら早く覚めてくれ……
〈此処ハ黒鎧ノ次元スペース黒穴デス〉
ーーうん?なんだ今の?
〈モウ一度オ伝エシマス、此処ハ黒鎧ノ次元スペース黒穴デス〉
ーーさっきから何だ?それにこの無機質な感じの声の元は一体?
〈ワタシハ我ガ主カラアナタニ贈ラレタ全能ナルモノ'i,デス〉
ーー全能ということはあの神様三兄弟の長男って事?
〈ドノ神ヲ指シテイルノカ解リマセンガ、ソンナ物ト一緒ニシナイデ下サイ〉
ーー成る程、随分な自信家だ
〈我ガ主ノ命ニヨリ、コレカラハアナタガ主デス、ワタシノ主デアルカラニハ敗北ハアリエマセン〉
ーーやはり相当な自信家の様だ
ーー敗北も何も既に体は粉々で再起不能なんですが……
〈問題アリマセン、黒鎧ノ再生ヲ先程ノ世界ヘオコナイマス〉
ーーWhat?
〈サラニ、黒鎧ノアップデート、元々備ワッテイル能力ノ再生モ同時進行デ行イマス〉
〈Now Loading……〉
〈Now Loading……〉
〈Now Loading……〉
〈再生開始〉
ーーちょ、え、言っていることが異次元過ぎて付いていけない
会話を遮断する様に黒い世界に光が満ちていき、宙に浮く精神体も包まれていくーー
♢
「では此処を見張る部下を呼ぶとするか……むっ?何だこの禍々しい魔力は?」
突如次元に黒穴が開き、粉々になった鎧の破片を黒い渦が吸い込む、吸い込んだかと思えば黒穴から黒い稲妻により先程、無残にも粉々にされた黒鎧が形成されていくーー
ーーうわっ、何もかも元どおりだな本当に、チートかよ……
「カ、カナタなのか?」
先程まで泣き崩れていたアーサーが信じられないと言わんばかりの表情でこちらを眺めている
「おう、久しぶりだな……少し老けたか?」
「世迷言を!一体何なのだあなたは?」
「えっと……」
ーーおいiさんとやら説明してやってくれ
〈私ハ主ノ意識下ノ中デシカ意思ヲ伝エラレナイノデ却下シマス〉
なるほどそう言う設定か、大事なところで使えんな
〈設定トハ何デスカ?ソレニ命ノ恩人ニ向ッテ失礼デスネ、先程ヲ超エル程ニ粉々ニシテヨロシイデスカ?〉
ーーごめんなさい!!てか、何で思っただけなのに聞こえているんだ!?プライバシーの侵害!
〈主ノ思考、意思、意識ハ全テコノiへ、シェアサレマス、ソノ内慣レマス〉
ーーいや、怖いは!迂闊に物事を考えられない体に……
「アーサー少し待ってくれ後で説明するから」
「あ、ああ……いや、説明はいい……それよりも生きながらえたのだから今度は本当に逃げてくれ頼む、もうあんな思いはたくさんだ……」
アーサーはこちらを見ない……先ほどの悲惨な現場を思い出すかの様に少々悲しそうに俯いている……こういう時女性に何と言って声を掛けたら良いのか分からないが……
「説得力はないけど今度は大丈夫だ!もうお前にそんな顔はさせないよ、約束だ!」
「……その約束違えてでもみろ、今度は私がお前を粉々にしてやるからな!」
「あ、ああ、任せろ!」
疑いの眼差しとほんの少しの笑顔を向けられたので、プラスマイナス0ではない様だ……しかし、本日会った人たちだけがそうなのか、この世界共通でそうなのか、皆さんの趣味は俺の体を粉々にすることらしい……と頭の中で考えながらも引きつった笑顔(鎧越しなので表情は分からない)で返事を返した
〈……楽シイオ喋リモ此処マデデス、アチラノ方ハ待ッテハクレナイソウデス〉
ーーよし、第2ラウンドといきますか!
新たな仲間を加え、再度俺は覚悟を決めた




