第05話 懐かしい思い出
ーー昔はまっていたゲームで何気なく育てていたキャラクターがいた。四足歩行で人間と融合した見た目をした、世に言う人馬と言う奴だ、そいつは特殊なキャラで鎧の装備を全身に装着可能なキャラクターだった。武器もそれなりに良いものを与えていたステータスは見た目に伴い素早さが高い記憶を持っている……それに類似している奴が今まさに俺に向かってこう言っている
「侵入者を排除する」
「いやいや、おかしいだろ!なんでこんな序盤でエンディング手前に出て来そうな奴の相手をしないといけないんだよ。こっちはまだチュートリアルも始まっていないんだぞ!」
しかし、相手方はこちらの話をあっさりと聞き流し左右に持っている巨槍と盾を構え始める
「カナタあなたじゃ無理だ頼む逃げてくれ、聞いたことがある魔帝王の一人レスカの副将、刺殺のギリエル……奴と出くわした者ものは体を徐々にあの巨槍で貫かれ、最後にはあの槍に自分の頭部が刺さって終わりを迎えると…」
「恐っっ!でもなアーサー、人を見掛けで判断しちゃいけないぜ?俺だって意外と……意外と……」
「意外と何なんだ?逃げ足は速いとかか?」
「馬鹿にするなよ、こんな場所に女の子一人置いておいそれと逃げれる訳ねーだろ。それにここまで話した仲だ……これはもう友人と言っても過言ではない!」
ーーいや、友人は言い過ぎか?知人位か?過去に友達がいなかった事が悔やまれる……感覚が分からん
「友だと?……私はあなたの素性、素顔も知らないしついさっき会ったばかり……しかもこんな状態だが一国の主の娘なのだぞ?誰もが妬んだり、今回の件で私を陥れようとする者も現れた…それに今回捕まったのも私に対して恨みがある人物の手引きかもしれない、そんな嫌われ者の私とどうして友人になりたいと思える?」
彼女は自己嫌悪に陥った様にそう悲しげに話す……
「世の中綺麗なところもあれば汚いところもある。自分を自分で客観的に見れる奴に悪い奴はいないよ、それは自分の過ちに気づき正せることに繋がる。周りなんて気にしなくて良いんだ、信じたことを貫くことが大事なんだぜ?じゃないときっと先ですぐに迷っちまう。それに此処(この世界)に来て初めて気を許せる相手が出来たんだ!今はその娘を助け出す事が最優先事項でなにより大事な事だ!」
少し火照りながらも俯くアーサー
「あぁ、こんなに恥ずかしい事を恥ずかし気もなく言う奴がこの世にいるなんてな……耳が塞げない私は地獄にいるような気分だよ……でも、ありがとう」
それに水を刺す様に副将ギリエルは歩を進め近づいてくる
「人生最後の話は終わったか?なら、もうこの世に未練はないな?」
後ろ足の尋常ではない踏み込みで大理石の床にヒビが入り、瞬く間にあの巨体が祭壇上にいるカナタの背後を一瞬でとる。そのまま右手の巨槍でカナタは薙ぎ払われた……ガンッッッ!!!
「うっ!」
ーードキャン!!!
入り口の扉横の壁まで勢いよく吹っ飛び厚い壁に減り込む様に埋まるカナタ、粉砕された壁の破片と塵が舞う……
「カナターー!」
遠くから呼び声が聞こえる
ーー意識が朦朧とする……速すぎて見えなかったぞ……?って自分自身どんな体の構造をしているのか把握できてないから何とも言えないけど、とりあえず生きてるな……あんなの、人の生身の体で受けたら即死もんだぞ……これも元魔帝神から貰ったこの身体のおかげか?一応少し痛いだけで体に異常はなさそ……
ーーパキパキ……カシャン……カランカラン……
鎧の左腕肘から下が無残にも破壊され崩れ落ちてしまった
「……まじか」
ギリエルはまた歩を進め始め、巨槍の標準を再び此方へ合わせ始めている
「今のを受けてまだ動けるとは、だが次で塵にしてやろう」
それを目の当たりにし重いガラクタの様な身体へ力を振り絞り立ち上がる
「一撃喰らってこれって……笑うしかないな」
「推して参る」
礼儀正しい騎士の様な言葉を言い放ったギリエルは高速で此方へ接近する
「やってやらーーーー!」
それを迎え撃つ様に素人同然の様な拳を近付いてきたギリエルへ大きく振りかぶるが、いとも簡単に躱され流星群の様な槍捌きでカナタの全身を次々に、粉々に砕いていく……
ーーガッガガガガガガガガ
「あ、ああ、あああ」
目の前で起こっている事に言葉が出でこない様子のアーサー
ーーガガガガガガガガガガガガガガ
無情にも巨槍での蹂躙は続いていく
「…ろ、外れろ、外れろ外れろ外れろ外れろーーーー!!……頼むから、外れてくれ……」
か細い腕で力一杯縛られた鎖から抜け出そうとするが、手首は軋み流血し床に赤い血が溢れていく
しかし、アーサーの虚しい叫びとは裏腹に鎧はバラバラに砕かれた……どれがどこの部位に当たるのかもわからない程に……
「……い……嫌だ……嘘……嘘だ…カナタ……カナターーーーーーーーーーッ!!」
先程まで親しげに話していた黒鎧の姿は何処にもなく……それは無惨な破片へと変わり果てていた
「呆気なかったな、其方宛の客人かどうかは知らないが今後はこの様な輩が出入りを働かない様に此処にも部下を手配しておこう」
「この魔力封印の鎖さえ無ければ貴様など……」
涙の止まらない表情と憎悪を乗せた声でギリエルを罵る
「その通りかもしれんが、その鎖が解かれることは決してない。全てはレスカ様の御意思、其方が我に仇なす日など未来永劫訪れん、か弱き娘のままな、フッフッフ、ハァーハハハハハハ!」
無情にも優越感に浸る笑い声が鼓膜に響き渡る




