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Frontier・Friend  作者: 黒木明
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第14話 新たな出会い?



「あの頃の私は良く言えば勇敢、悪く言えば無知で無謀だった……」


(当初の話ではレスカとの出会いって言ってた様な。それとなんだか昔のこの人は俺に似ている気が……)


「それで、その後はどうなったんだ?」


「その後は、その場で手合わせを申し込んだが受け入れてはもらえなかったな……しかし、時間が経つに連れて二人とは友と呼べる間柄になったな!ハッハッハッハ!!」


(手合わせに関して言えばただ面倒くさいから、相手をしたくなかっただけじゃないのか?)


「私を産んだと同時に亡くなったと聞かされていた母上がそんな方だったなんて……私も話を聞けて良かったです!」


「ああ、私には勿体ない位の素敵な女性だったよ……」


親子揃って少し悲しそうな表情が伺える……


(そうか、アーサーのお母さんはもう既に……)


「そう言えば、カイゼルは今聞いた話だと俺の姿に近い様だったけど。なんであんな所で光の玉の姿で門番みたい事してるんだ?それにその次元神は?」


一瞬、神妙な顔つきになったカイザーだったが口を動かし始める


「あ、ああ、カイゼルもオルグニストもルナが亡くなってからは会っていなくてな……まさかそんな所にいたとは、知りもしなかった。それにそれはきっと精神ソウルだろう。神が肉体を失うと稀にその様な姿を持つと迷信で聞いたことがある。だが、そんな姿だろうとも久しぶりに再会してみたいものだ。それに奴には結局一度も勝てないままだったな……」


「そうだったのか。でも少し安心したよカイゼルがそんな奴だったなんて……それにしてもレスカは相変わらずの姿なんだな」


「妾の種族は歳が見た目に出ないからの〜それにまだまだ人間の歳に換算したらアーサー位じゃぞ?」


(どんだけ長寿なんだよ。まぁ、俺もこの姿なら年齢なんて関係無い気がするが……)


「それと話は変わるが、その時の貸しを今回アーサーに合わせてくれると言う名目で取り引きしたのじゃ!勿論、次代の王の素質を見るのも込みでの!まぁ、結果としてはまだまだじゃったの〜」


カビーンとその言葉を聞いて項垂れる様に俯くアーサー


「おい!言い過ぎだぞレスカ!アーサーよ、父は気にしていないからな。それに技や魔法はもう既に随分と高い仕上がりにある。後は……そう!経験だ!!」


「……経験ですか?」


「ああ、私は昔からお前が大切で大切で国からは殆ど出した事がない。だが、今回のこの件でレスカに諭された。将来私が居なくなった後国を誰が守るのか……アーサーお前には私の唯一の娘として後継者となって貰う。その為に次代の王として世界を巡って貰う……心苦しいが……」



「……分かりました父上!!このアーサー・ナイツクラウン、前聖帝王の名に恥のない様全力を尽くします!」


「うむ……それでカナタよ、お前にも一つ頼みたい要件があってな」


「うん?なんだ?」


「ああ、アーサーと共に世界を旅してみないか?……どうだ?」


唐突に切り出された提案だったが……


「……勿論だ!それは願ってもない話だなこちらこそ是非よろしく頼みたい!(この世界について色々と知ることもできるし、それにアーサーとの二人旅で仲を深める事ができる可能性が……)」


「一つ返事とは気前が良いな!……こちらから頼んでおいて失礼かもしれないが、何やらいやらしい事なんて考えてはいないな?」


「本当に失礼!少しは信用しろよ!(聖帝王だけあって鋭いな……)」


「うむ……まぁ、よろしく頼む!」


「本当にいいのか?カナタ?」


アーサーは少し自信無しげに尋ねてくるが俺はそんな不安を払拭する様に返事をした


「そうか……なら、私からも礼を言うぞ、これからよろしく頼むな!」


「そうと決まれば最初は中央大陸……シュナインテインを目指すが良い!あそこには色々なものが集まるから良い経験を積めるだろう!」


「はい!父上!それでは暫しの別れとなりますが、早速参りたいと思いま……!?」


ガシッと娘を抱き寄せ力強く抱きしめる父親の姿がそこにはあった


「父上!?いきなりどうしたんですか?」


「久々に会うのに、これからまた暫く我が子に会えないと思うとな……」

「く、苦しいです父上!」


「おお、すまんすまん。よし!それでは次に会う時を楽しみにしているぞ!それとカナタ!娘を頼んだぞ!」


「おう!当たり前だ!」


そうして俺達はカイザー達に別れを告げナインテイル城を後にしたのだった




レスカはカイザーを横目で見ている


「……何故あの事を話さなかったのじゃ?」


「何のことだ?」


「妾には誤魔化さんで良い……まさか長年恨んでいた彼奴の事を許したのか?」


唐突にレスカが話を切り出す


カイザーの表情は曇るが、込み上げて来た感情を押し殺す様に話す


「そうでは無い、今でもカイゼルの事は決して許せん……しかし、あの事を話せばアーサーがせっかく作った関係を壊してしまう……無粋な事はしたくは無い。それにあの時何も出来なかった私が今更何かを言う資格はない……だからあいつを、カナタを恨むのは筋違いというもの」


カイザーがふと瞼を閉じると、カイゼルとカイザーがお互いに凄まじい魔力を纏いながら対面しており、カイゼルの腕の中には死んだ様に眠るルナの描写が思い描かれている


「レスカよこの事はあいつらには……」


「妾の事を何だと思っている、友の秘密をわざわざ告げる訳が無かろう?」


「……そこに関しては信用はしていないからな」


「主人様……失礼を承知で申しますが、そこに至っては私もフォローし兼ねます」


カイザーだけでなくギリエルまでもが苦言を呈する……それによって話は思いもよらぬ方へ飛躍する羽目になる



「分かったわい……そこまで言うなら妾もあやつらについて世界を回り、その間に秘密を守り通せれば妾の勝ち、負ければ其方には妾の取って置きのお仕置きじゃ用心するんじゃな」


レスカはプンプンしながら、カナタ達の後を追う様に城を出る



「なっ!レスカ!待て!!」

「レスカ様冗談です!!お戻り下さい!!」


ーーガキン!!


すると追いかけられるのを見越してかレスカは、人知れず二人の足を強力な魔力マナの込められた鎖で繋いでいた


「「な、なんだこれは!?」」




(……まさか、レスカの奴!)


(クックック、今頃気づいたか!秘密は追うための大義名分に使わせて貰うかの〜、カイザーよ妾は最初からこのつもりじゃったのじゃ!!城に籠っているより面白そうじゃしな!待っておれよ二人共直ぐに追いついてみせるぞ!)


喜色を顔に浮かべつつレスカの追跡は始まるのであった




ーー数時間後、魔界ホラギニウス内カルア村にて


「なっ!?俺達ウルフ兄弟に歯向かうとは、貴様等一体何者だ!?」


「あえて言うなら弱い者の味方?」




ーー時間は少し前に遡り、街道を散策する場面へ


ーーiさん?


〈何デスカ?〉


ーーギリエルとの闘いで俺の身体はアップデートされたって言ってたよな?


〈エエ、言イマシタガ?〉


ーーじゃあ、iさんが使ってるみたいに俺も魔法を使えるのか?人が操るってどうにも爽快感が……


〈いえ、それはありません〉


ーーえ、そうなの!?


〈主ガ使用出来デキルノハ、残念ナガラ頑丈ナ身体ノミデ魔法ハ私ノ方デシカ発動デキマセン〉

ーー本当にこれはアップデートされてるのか?


〈純粋ニ”力”ノ方ガ増シテオリマスノデ、肉弾戦ニオイテ脅威的ナ真価を発揮スルデショウ。ソレ以外ハ本当ガラクt……〉


ーーおいいいい!言わなくていい事まで出ちゃってる!


〈モシカシタラ、何カノキッカケデ発動デキル可能性モアリマスガ……希望ハ薄イデショウネ〉


(知らない方が幸せなことって本当にあるんだな……あ、もしかして!)


「なぁ、アーサー!」


「どうしたんだ?歩き疲れたのか?」


「そこに関しては大丈夫だ!自分で言うのもなんだがきっと俺には肉体的疲労はあまり無い気がする……そうじゃなくて、アーサーは魔法を使えるのかな〜と思って」


「なんだいきなり、唐突だしそれに愚問だな。そう言えば一度も見せたことが無かったな、私の魔法。試しに出してみようか?」


「おお!?良いのか!?」


「そんなに反応が良いと照れるな……じゃあ、簡単な奴を……光之弾砲ホーリーカノン


アーサーが掌を道端へと向けると直線的な光の波動が、生えてる木を手前から奥の方へと広範囲に渡って薙ぎ払い更地へと変えてしまった


「いや、ちょ、アーサーさん?簡単って言ったよね?」


「……すまんカナタ、実は昔から魔法は少し苦手で加減が下手なのだ……父上からもお墨付きでな」


(成る程、この子に魔法は使わせたらいかん。流石、神と王とのハイブリッドだ)


「ところで何故今魔法を?カナタもレスカの所でいくつか使っていただろう?」


「あ、ああ、あれは……火事場の馬鹿力みたいなもんで偶然出せたんだ。もし良かったら魔法のコツなんかを教えて貰おうかと……」


「すまんなカナタ、私では力になれそうにない……」


(なんか悪いことしたな……)


お互い気まずい空気を出しながらもそんな話をして歩いていると、前方に村らしきものが見えて来る


「カナタ!今日はあそこの村で宿泊しないか?夜になれば視界も狭くなり危険だ」


「そうだな、あそこで世話になるか……」


「きゃーーーーーー!!!!」


「叫び声!?あの村からか!?」


俺とアーサーが急いで村まで駆け寄ると、村は怪しい獣人グループによって占拠されていた。村人は村の中央に集められ一人一人金目の物を回収されている


「おらーー!早く次々持って来い!!出し惜しみしていると痛い目を見るからなーー!!」


すると一人の中学生位の少女が転んだ拍子に、胸元にしまって置いた指輪を落してしまい急いで隠すが、グループのリーダーらしき狼男の様な人物に一部始終を見られてしまう


「おい!そこのお前!今何をしていた?」


「ふ、服のボタンが取れてしまったので、そ、それを拾ってたんです……」


「ほほ〜……だったらこれはなんだ!!!」


ーービリベリッビリッ!!


少女は服を破られ裸と共に隠していた指輪も露わになり奪われてしまう


「返して!!それはお母さんの形見なの!!それだけは絶対にダメ!!!」


羞恥心に耐えながらも少女は反抗する


「……立場が分かってない様だな!おい!ダース!!お前好みの若い女だ……好きにしろ!」

「ぐっへへへ、流石ラース兄ちゃん!金品の回収に丁度飽き飽きしてきたところだったんだがす、おら!女!こっちに来いがす!!」


「い、嫌、離して!だ、誰か!」


少女の悲鳴に対し誰も反応しない。否、できないのであった。もし、ここで彼女の助けに入ろうものなら今度の標的は自分自身になってしまうのは至極当然の事だから。虚しくも少女は狼男の一人に腕を引っ張られ納屋へ連れて行かれてしまう……


「くそっ!あいつら!あんな年端もいかない女の子を!アーサーあの子をどうにかして助けないと……アーサー?」


「こんな若い娘は久々で興奮が収まらないがす〜……犯した(楽しんだ)後は骨の髄までシャブってやるから楽しみにしてろがす、ぐっへへ」


「お、お願い、や、やめてーーー!」


泣き叫ぶ少女の肩に狼男が腕を掛けた瞬間の事である


ーーボトッッ


「ぐぎゃああああ!い、痛い!痛い!痛いがす〜!」


死角より放たれた斬撃によりダースの片腕は地面へ落下し切り口からは大量の血液が飛び散り、その痛さにのたうち回る


「外道めがっ!これ以上の狼藉はこの私が許さん!」


「ダース!!どうかしたのかーー!?……!?」


「お前の相手は俺だ」


ーーそして、現在へ


「俺の弟に何をした!?」


そう言うとラースは鋭い両爪を剥き出しにして襲いかかってくるが……

遅い、遅すぎる……ギリエルの洗礼を受けた俺に対してこれはあまりにもスローに感じる


〈主ヨ、洗礼ヲ受ケタカラデハナク、アップデートヲ行ッタカラデス〉


(そっちか!まぁ、細かい話は抜きにしてこっちからも一発)

この軽はずみな行動により、この後俺は思いもよらぬ後悔をする羽目になる


「そりゃ!」


「ぐっっっ!くおっ」



ーードッ!


そこには膝から崩れ落ちるラースの姿があった

ラースに向かって放った俺の右ストレートは見事に腹部を……貫いてしまった……グロい!なんだこれ!?


〈ダカラ、”アップデート”シマシタトサッキカラ申シテマス〉


アップデートしたからと言って、相手の腹部を軽いぐーパンで貫けるなんて誰が思うのか……そんな常識があったなら誰か教えて欲しい。が、今はそれを置いといて事態を収拾しなければ


「えーと……次にこいつの様になりたい奴は前へ出ろ!」


目の前の悲惨な現場が抑止力となったのか獣人グループは逃げる様に村から出て行った。ただ、村人にまで若干引く様に距離を置かれているのはなぜだろう……


「カナタ!!」


呼ばれた方向に目を向けるとアーサーの方も無事女の子を救出している様子で、片腕を失った狼男は腕を一応止血され正座させられている


「に、に、兄ちゃん?兄ちゃん?……返事をしてくれ!お、おでを置いてかないでくれでがす!ラース兄ちゃーーーーん!」


「カナタ、流石に命を取る事まではしなくても……」


「いや、そんなつもりじゃ!」


出るはずのない汗が俺の頬を伝う様な感覚に襲われる


(村人どころか身内にまで引かれているーーーー!!)


〈主ヨ、マダ辛ウジテ息ガアリマスガ回復サセマスカ?〉


ーーき、奇跡だーー!頼む!流石相棒!!!恩に着る!


〈貸シデスネ、ソレデハ……黒祝息吹ダークブレイジングス


ラースの体が黒い霧に包まれ覆われていき見る見る傷を負った部分が元の姿へと再生されていく、霧が晴れると何事もなかったかの様に傷口が塞がっている。ついでにダースの片腕も直す様にiさんにお願いする


「うっ、お、俺は一体!?確か黒い鎧の攻撃で気を失って……!!」

「に、兄ちゃーーん!生きてるでがす!生きてるでがす〜〜!」


「おい!」

「お、お前はさっきの!!?」


「お前らこれに懲りたら、盗賊みたいな真似は辞めて真っ当に生きろよな……じゃないと次はないからな?それと今後お前らみたいな輩がこの村に現れた時に、お前らが償いとしてこの村を守れ!」


「なっ!?い、いきなりそんな事を言われても……それに、さっきまで俺たちはこの村を襲っていたんだぞ?そんな事を言ったってこの村の連中が納得する筈……」


村人たちはガヤガヤしている……それもそうだ、つい先程まで酷い扱いを受けていたのだから

そんな中先ほどの少女が前に出て話をし始める


「き、騎士のお姉さんがどうしてもって言うならこの狼さん達を許しても良いよ……」


「私がか!?うーん、まぁ、カナタもそう言っているし。私が信じるカナタを信じてくれ!」


「鎧のお兄さんはちょっと怖いけどお姉さんがそう言うなら分かったよ!」


「そうか!ならそれで決まりだ!他の者たちも異論はないな?」


「ま、まぁ、もう悪さをしないと約束をしてくれるなら……それとこの村を救ってくれたあんた達がそう言うなら……なぁ?皆もそれで良いか?」


他の村人達も誰一人として否定はせず納得してくれている様だ、ラース達は動揺しアワアワしている


「おい!お前らも、もう悪さをしないって約束できるか?どうなんだ!?」


「あ、ああ、もうあんな目にあうのは御免だ約束するよ」


(随分さっきのことが効いてるな……これも俺のおかげか)


〈コレガ本当ノ、ラッキーパンチ☆デスネ〉


ーーいや、上手くないよ?


その後、ラース達が取り上げた金品を各々に返却し、村人達の好意で宿屋へ宿泊することになる


「あ〜、一時はどうなることかと思ったが上手くいって良かったよ」


「ああ、カナタの手腕には私も驚かされた、それに今後はあの獣人達がこの村を守ってくれるから安心だな」


「いや、あれはアーサーが村の人達をまとめ上げてくれたからであって……」


「いやいや、カナタが!」


「「…………」」


(それにしてもアーサーと同じ部屋か……何を喋ったら良いのか……いや、ここは男の俺がリードするのがセオリー!)


「ア、アーサー疲れてないか?」


「まだまだこれしきの事なら大丈夫だ!それに中央大陸まではまだ長いしな!」


「それにしても中央には何があるんだろうな?」


「私も行ったことは無いから分からないが、世界の中央だけあって色々なもので溢れているらしい!それに強者も集うと聞いたからな、手合わせをする機会もあるかもしれない」


「そうだな、先ずはカイザーが言ってた様に強くならないとな!」


「妾は美味なる物を口にしたいがの〜」


「そうだよな!やっぱり食も重要……!?レスカーーーー!?なんでお前がここに!?」


「其方達と一緒に行動した方が今後面白そうでな〜つい、城から出てきてしまったわい。と言うわけで妾もこの旅に同行させて貰うぞ!」




レスカの加入により俺の中での幸せな旅の時間は、音を立てて崩れていった





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