プロローグ 裏切り
「標的を中心に包囲しろ!」
夕日が彼方で輝く中、金髪で長髪の女性騎士の声が草原の平地で響き、部下の鎧で身を固めた10人程の兵士たちはその指示に従っている
包囲網の中には、二頭を持ち黒い表皮でその身を包む犬の様な大型の魔獣が威嚇する様に遠吠えを放つーー
「グルル…ワオーーーーーーン!」
「一斉に掛かれーー!この人数なら例え相手がケルベロスでも遅れは取らない!」
多数の兵士たちが決死の覚悟で切りかかっていき優勢に見える
「何を偉そうに…現王の娘だからと言って…魔法が使えるならそれで仕留めれば良いものを、毎度毎度懲りもせずに一般兵の強化遠征とは…」
「おい、今は作戦中だ最低限従ってるフリはしろ、もうすぐ約束の時間だ」
草原近くの草木が荒々しく揺れる
「ほら、奴らが来たぞ」
茶色のローブを纏い鮮やかな仮面で顔を覆っている連中が颯爽と近づいて、剣を振りかざす
魔獣と戦闘中の兵士へ向かって
「うああああああ⁉︎」
「何なんだこいつらはーーー!?」
次々に兵士達は切られ包囲網は崩れケルベロスは息を吹き返し始める
「ーー何事だこれは!?」
指揮官の女性はその状況に呆気を取られているがそれも束の間、先ほどまで自軍の兵士達に向けられてた矛先は自身に向き始め剣を交える
カキイーーン!
「貴様らの狙いは何だ!?」
「…」
「そうか、分かった…その沈黙、力づくで答えさせてやろう!」
重なり合った剣を弾き、敵と距離を置き魔法を行使しようとする
「光之雨…」
その間際、ローブを被っている者の一人が瞬く間に近づいて来て片腕を掴む、それは近付くと言うよりは瞬間移動に近かった
「なっ⁉︎」
「そう驚くでない、魔封鎖」
気品のある口調で女性が耳元で囁いてくる、と同時に次元の穴から出現した鎖によって両腕を拘束される
「なんだこれは⁉︎」
「大人しくしておれ、まぁ、もう魔法も使えんしその状態なら剣も振れぬがな…其方に危害は加えんよ…其方にはな」
ローブの連中は殺戮を繰り返し残り兵士達の残存数は三人…二人となる
「作戦通り上手く言ったな…流石は魔族だ、これで姫様もでかい顔をできまい、今どんな気分だ?王国最高峰の一角を担う騎士ともあろう者が手も足も出せず自軍の兵士を無惨に殺された気分は?」
この状況を仄めかしていた兵士達が挑発してくる
「魔族だと…そう言うことか…貴様はそれでも一国を背負う兵士か⁉︎宿敵の力を借り、国を裏切り仲間を裏切り剰え(あまつさえ)過去の自分を裏切る様な行為をするとは、恥を知れ恥…⁉︎」
ーーゴッ
謀反を起こした兵士が女性騎士の頬を裏拳で殴る
「うっ…」
「こんなものでは無い…私達の同士が受けた痛みはな!」
「なに?…何の事だ?」
呆れた表情と溜め息を漏らし兵士は語り出す
「やはりその程度…強化遠征で怪我を負い前線に参加出来ない者達の事など既に記憶に無いと?流石は騎士の中の騎士、目の前の戦ばかりで過去の事など気にも留めないときた。その者達はその後どうなったと思う?働き口も無く、家族も養えず、飢える者まで出る始末、中には負傷した体でクエスト(討伐以来)を受け死んだ者までいる…私の友だった者もその一人だ。国は只ひたすら武力ばかりを求め軍事強化に努めている…」
「そんな…そんなはずは…」
「もう沢山だ、その様な政治しか出来ぬ輩に国は任せておけぬ、貴女を斬殺して国家転覆の狼煙を上げる!魔族よそこを退け!」
兵士は腰に掛けている剣を振り上げる、溢れる殺意をその手に込めて
「あの世で同志達の無念を償うがいい!」
「…くっ」
女性騎士は覚悟を決め目を瞑る
「ぐはっっ!何をす…かはっ」
もう一人の兵士が魔族に襲われ、
抵抗しようとするがそれも虚しく絶命する
バタッ
「貴様等、何の真似だ⁉︎」
「妾は未練たらしい男は好まぬ…千之鎖!!」
突如次元の穴が開き、そこから先が鋭利な無数の鎖が兵士の方へ伸びていく
「なっ、くっがああああああ」
体中に鋭利な鎖が突き刺さり、瀕死の状態だがまだ彼には意識があった
ヒュー、ヒューと呼吸音が聴こえる
「なで…こんな…こと…を…」
不敵な笑みを浮かべ魔族の女は応える
「フフフ、決まっておろう、まぁ、其方に答える義理はないがの〜ケルベロス食え」
「…魔族め」
片目から涙を流しながら、大きな口から涎を垂れ流した二頭に頭から喰いつかれる
ゴリッ、ガリ、クチャクチャクチャクチャ
女性騎士は唾をゴクリと飲みその光景に恐怖する
そんな女性騎士の方を見て魔族の女は呟く
「真の目的は其方よ、今迄見てきたどんな娘よりも美しい、美しいものは全て妾の物じゃ」
「そんな…そんな理由の為に彼等を殺したのか⁉︎」
「まぁ、助かったのだから不問とせい、其方は命拾いしたのじゃぞ?もう少し喜べ…それから今の立場を弁える事じゃな、じゃないと」
ーーバキッ、グッ
女性騎士の胸に手を伸ばし、鎧を破り乳を揉む
「くっ、騎士となった我が身に恥じらいなど……」
「奥ゆかしいの〜、その堅物をゆっくり剥いでいくのもまた一興」
「貴様は一体?」
その問いに応える様に魔族の女性はフードを下ろす
「妾は他の者と違ごうて親切じゃからの〜教えてやろう。妾は魔界を支配する魔帝王が一人レスカ……レスカ・ナインテイル様じゃ、この先其方の主人となる者じゃ」
美しい銀色の長髪に獣耳を生やした魔族の女性は高らかにそう応える
本日から投稿を開始致します。
ご意見・感想等随時お待ちしておりますのでよろしくお願い致します。
できるだけは投稿を続けられるように頑張りたいです!




