兄弟
「家族?」
「そうだ。家族だ。」
我は、器になりえる人間を遂に見つけた。異世界の人間のようだがそんなことはどうでもいい。名をユウタと言った。そいつに入ったとき、ユウタが欲しがっているのがそれだった。珍しかった。我に興味のある人間は、大体、金や異性等程度の低い浅ましいものばかりだったが、ユウタは違う。過去を見たわけではないので、ハッキリとしなかったが、顔を見る限り、今までのおっとした反応と打って変わった。さて、どうなる?
「ねぇ、デュランダは、死ぬことはあるの?」
「いや、そもそも死ぬこと事態無理だ。」
「ねぇ。デュランダは、僕を一人にしない?」
「ああ。遂に見つけた器だ。逃すなんてするはずがない。」
突然どうしたんだ。口調が子供のような幼くなり自分を僕と言った。一人称がアヤフヤになるとは、どれだけ動揺しているのだ?
「もう......もう僕は、ひとりじゃない無いんだよね。」
そう言うと彼の眼から涙が一粒零れていた。
「もう......あんな、寂しくて、辛くて、虚無を感じることは無いんだよね。っくヒック。」
ユウタは、嗚咽と共に無数の涙が零れ落ちた。我は焦った。分からなかったのだ。ユウタが泣く理由を。気付けば、我の二股の舌が涙を拭うと同時にユウタの頭を覗いた。そして驚愕した。彼がどれだけ、家族に執着しているか。だが、同時にこれを利用すれば、ユウタは、我に依存する。離れなくなる。永遠にだ。ただ、嘘は許されない、本音で言わなければ、ユウタの家族にはなれない。
「ただ、我は家族と言うものは知らないのだ。今まで本当に独りだったからな。」
「......」
泣いて真っ赤になった目で我を見るユウタ。真剣に話を聞いているようだ。
「ただ、我はユウタに入ったとき、ユウタがそれを求めるのを知ったのだ。我はそれをユウタに与えたい。」
「デュランダ。」
「どうした?」
「家族は、与える物じゃなくてつくるもの。でも、君の気持ちは、とても嬉しい。だから僕も言う。僕をあなたの家族にしてください。」
「勿論だ。」
「ありがとう。これから宜しくね。デュランダお兄ちゃん。」
「!!?」
その言葉に我は、衝撃を受けた。何て心地のいい言葉だろう。
「お兄ちゃん。僕、眠たくなった。寝てもいい?」
「ああ......」
「おやすみ。」
そして我の手の中で眠りについた。何とも、こんなに可愛いものなのか。さて、お兄ちゃん、ユウタを強くしてやるからな。寝て待ってろ