適合
「遂に見つけた。我の半身。」
俺は、今生け贄の相手に優しく触られている。本来なら、あっさりと死ぬ筈だったのに、どうしてこうなった?
禍々しい洞窟を進んでいくと、広い空間に出た。そこに何もない筈はなく、禍々しい原因を見つけた。そこにいたのは、下手な高層ビルより高く、険しい岩壁のようにガッシリした体、人型ではあるものの、頭部にある角、鋭利な牙が、人を寄せ付けない風貌をしている。
「お前が、今回の生け贄か?」
「はい。そうです。」
「えらく、あっさりとしているな。」
「まぁ、人はいつかあっさりと死ぬので。ここで、喚いたり、泣きじゃくる理由も見当たらないので。」
「そうか.....まぁ、お前は、この世界の人間では無いからな。それでも変わった奴だな。」
「わかるんですね。齢18ですが、これからの人生悔いはないので、どうせなら何かの役に立って死にたいかなって。」
「お前は英雄になりたいのか?」
「いえ。英雄になれる程の力も、精神もないですし、崇拝もされたくありません。もしそうならあなたを攻撃して自滅してるでしょうし。」
「ふむ。おまえ、面白いな。いつもならここで、会話をすることもなく、生け贄は勝手に消えるからな。」
「その言い方だと、生け贄は、そもそもいらないみたいですね。」
「まぁ、この村がそう決めつけてるだけだからな。」
「では、俺の役目無いですね。これからどうしましょう?」
「どうして我に聞く?」
「ごめんなさい。つい、反射で。」
「ふむ。そうだな。お前、実験に付き合え。」
「分かりました。で、何をすれば?」
「簡単だ。これを飲め。」
そう言って目の前にグラスが現れ、何処からか液体が注がれた。それは、様々な色がごちゃ混ぜになったえげつない色だったものが、次第にコーラの色になってきた。それも炭酸でだ。これなら飲める。
「じゃぁ、いただきます。」
そう言って俺は、その液体を飲んだ。それはまさしくコーラで、俺の好きな飲み物だ。もう飲むことは出来ないと諦めていたので、嬉しさの余り一気に飲んでしまった。
「お、お前。あれをイッキ飲みした?」
「そうですけど。」
「何とも無いのか?」
「寧ろ美味しかったです。」
そう言うと、相手は、目を輝かせ。
「そしたらわれを、お前の体に入れてくれ。」
「いいですけど。その前に、名前を教えて下さい。」
「あ、あぁ。そうだな。我はデュランダ。お前は、」
「ユウタ。」
「そうか。では、早速。」
そう言うや否や。その鋭い爪が俺に突き刺さる。
事はなく、寧ろ俺に吸い込まれてくる。それが、腕、肩と吸い込まれ、遂には、全部無くなった。
あれだけの容量がおれの体に入ったのに何も感じないのだ。暫くするとデュランダが出てきた。
その目は、喜びと狂気の混じった眼だった。
「ふっ、はは..はははははは!!」
「どうしたの?」
「遂に見つけた。我の半身。」
そして、現在に至る。デュランダは、大切なものを扱うかにように優しく触れる。
そして
「なぁ。家族になろう。」