生け贄
「おぉ!!ついに召喚に成功したぞ。我らが望みし、生け贄を。もうこの村で生け贄は、不要なのだ。」
竹本祐太。どうやら召喚されたようです。しかも魔王を倒してください。というものではなく、何かの供物にされるようです。この時点で半ば俺の人生も詰んでますね。言語の方は、日本語ではないのに、脳内で勝手に日本語に変換される当たり、唯一の召喚特典のようですね。
―んとまぁ、なんとなく十分程前の状況を整理してみたけど、あの後、部屋に連れていかれて、そのまま放置。周りには、水回りとベットがあるだけだ。そして、新鮮な食品の数々。さぁ、最後の晩餐になる可能性大だから、腕を奮って作ろう。
「あのぉ生け贄さん。起きてください。」
目が覚めると、そこには、一人の少女がモーニングコールをしにきたようだ。
「お早うございます。そのぉ......」
「レナです。」
「レナさん。どんなご用件ですか?」
「これから一緒に来て下さい。」
「分かりました。」
そう言って、着いていこうとすると、
「疑わないのですか?」
「何をですか?」
「いきなりこんな場所に呼び出されて、これから自分がどうなるか。気にならないんですか?」
「生け贄にされるからですか?」
「それを知ってて何故、逃げようとしないのですか?神によればあなたは、何かしらの能力を貰っていると聞いたのですが。」
「断ったんです。」
「はっ?」
「因みに女神ですか?」
「えっと..そうですが?」
「元々欲しくないのに、強要するので、召喚日だけ聞いて、お別れしました。」
「.....」
「行くんでしょう?場所教えて下さい。」
「....はい。此方です。」
折角の生け贄なのになんで喜ばないのだろうか?
辿り着いた場所は、霊感の鈍い俺でも、何かヤバイのがあると感じる程の洞窟だ。
「ここを道なりにいけば、辿り着きます。」
「分かりました。道案内、有り難うございました。」
「あなたは、怖くないのですか?これから死ぬかもしれないのに。」
「まぁ、生きたいと願うほどの物をここに来る前から無くしたし、自殺する勇気も、他人に迷惑をかけてまでそうするほどの厚顔でもない。だから、これは俺にとってチャンス何だ。この方法なら誰の迷惑をかけずに死ねるからな。それじゃぁな。」
呆然とする彼女を背にして、俺は、死に場所に一歩一歩着実に進んでいく。