会話
召喚日時の当日間近、その日が来るまで、俺は、身の周りの整理整頓をしていた。物質的なものから、事務的なことまで、怪しまれない程度に、そしてその日の午前零時を告げる時計の音が鳴ったと同時に、俺の足元に召喚陣が浮かんでいた。それと同時に意識もブラックアウトした。
「やぁ。」
目が覚めると、いつぞやの真っ白な空間にいるみたいだ。そこにはあのエセ女神ではなく、子供のような、男の子がいた。
「この間はごめんね。うちのエセ女神が君に迷惑をかけて。」
「えっと、あなたは?」
「オリアス。一応君の行く世界の最高神だよ。」
「はぁ。」
「ところで君は、僕の世界に来て何かをしたいかい?」
「いえ、特にはありません。」
「そうかぁ。困ったなぁ。」
「どうしてです?何もない方がいいんじゃないですか?」
「いや、何もない方が怖いよ。そういう人の方が何かを決めたときの頑固さは、夢を持っている人より根深く執着するから。」
「そうなんですか?自分は、そこまで根深いですかね?」
「まぁね。だからそこで僕からのアドバイス。もっと自分を大切にしなさい。」
「自分をか.....まぁ、自分の命を惜しいと思ったことはありません。せめて両親いる間は、元気ではいたいと思いますが。だから、それは難しいと思います。でも自殺なんかはしませんよ。死ににいくことはするかも知れませんが。」
「そっか、実を言うと、君に僕たちの力を受け取って欲しかったんだ。でも君が望んだのは、料理の才能。それは、君は本来出来る筈の力を引き出しただけだから、実のところ出来てないんだ。
だから、何か無い?」
「そう言われてもないんですよね。でも、どうして平凡な俺にそんなに力を与えたいのですか?」
「実を言うとね。この力を与えた人に対して軽く意志操作が出来るんだ。つまり、手駒が欲しいんだ。」
「随分とストレートですね。ですが、俺は、あんな部下がいる人の手駒にはなりたくありません。」
「そうだよね~頑固な君こそ僕らの信者にしたかったけどうちのエセ女神がやらかしたかからね。
でも、友好関係位は築くのはいいかな?」
「要するに友達ですか?いいですよ。でも、会話出来るんですか?オリアスは、最高神なのに、」
「出来るよ~まぁ暫くしてからだけど。そんな友達からのお願い。君にとって大切なものを見つけて、そして僕の世界を好きになって。」
「いいよ。でも、もう一つ出来たよ。」
「何?」
「オリアスという友達が。これからも宜しくね。」
「そっか。だから僕は、君を手に入れたかったんだ。じゃあこれからの生活頑張ってね。」
「んじゃ。行ってきます。」
そう言って意識は再びブラックアウトした。
召喚に干渉を終えオリアスは一人にぼやいていた。
「友達かそういえばそんなのいなかったよね。全面的に俺を信頼して見てくれそれも初対面で、あの子のコミュ力高いね。だからこそ気に入っちゃた。でも周りは、うるさいだろうな。たかが人間と、でも、あれに気に入られる素質をあの子は持っている。そしたら周りは黙るどころか畏れるのだろうな。あの子の友達になれて良かったなー。結果的にだけど。こんな利己的な考えでも。あの子なら、君ならそう思うだろうと言うんだろうな。せめてあの子の人生に幸あらんことを。」
そう呟き。オリアスは、自分の居場所へ帰って言った。