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THE TOWER OF PRINCESS タワーオブプリンセス  作者: 池田瑛
7章 THE TOWER OF PRINCESS
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64 世界の危機は去ったことですし、保守派と改革派の争いを再開しましょう

 俺たちが最上階まで駆けあがった。繁茂した茨を切り落とし、魔物を倒し、螺旋階段を登った。


 そして、たどり着いた最上階。


 そこには2人の人影があった。


「いやよ。あんなつまらない。あんな世界に戻りたくはないわ!!」と魔法の鎖で全身巻かれ、動けなくなった赤の女王だった。

 そしてもう一人は、オズヴァルトさんだった。


「な、賢者。どうしてお前がここにいる?」とシンデレラさんも訝しげにオズヴァルトさんに問う。


「私はずっとこのチャンスを待っていました。ノンノピルツの女王イザベラ。いえ、もう一人の観察者を、居るべき世界へ連れ帰るチャンスを」


「それはどういうことかしら? 貴方は敵ということ?」とアンネローゼさんが言う。杖には魔力が込められていた。


「それを私は語ることはできません。1つだけお伝えできるのは、この世界は物語が生まれる世界であるということ。私達観察者は、この世界から生まれ出た物語を読むだけの存在。アンネローゼさん。貴方は、毒りんごを食べる。それを観察者が止めることは許されない」とオズヴァルトさんは、メガネを触りながら静かに言う。


「ルチコル村の林檎には、毒なんて入っていないよ! 新鮮で、蜜がたっぷりな美味しい林檎だもん!」と、リーゼロッテさんは、アンネローゼさんを庇うようにオズヴァルトと対面し、ファイティング・ポーズを取った。


「リーゼロッテさん。あなたの祖母であるマリアンヌさんが狼に食べられることも。アナタが狼に食べられてしまうことも。観察者は止めることはできない」


「おばあちゃんを傷つける奴は、許さない!」


「私たちが物語を紡ぐことはできません。私たちはあくまで観察者。物語を紡ぐ者たちをただ眺めるだけ。さぁ、私たちの居るべき場所へと戻りましょう」とオズヴァルトは言って、魔法陣を展開させていく。

 オズヴァルトと赤の女王の周りを複雑な魔方陣が幾層も重なっていく。玉ねぎの皮のように何十もの魔法陣が重なる。魔法陣に詳しくない俺でも、それが相当高度な魔法陣であることは分かる。


「た、多層性魔法陣…… 次元転移型!?」とアリスさんは信じられないものを見ているかのように驚いている。


「それではこの世界のみなさん、お別れです。私たちは居るべき世界へと帰ります……。そうだ、デジレさん。貴方の曇り無き眼で、貴方が真実を見つけ出せることを願っていますよ」

 聞き覚えのある言葉……。


「そ、それはどういう意味だっ!」と俺は叫ぶ。しかし、オズヴァルトと赤の女王を魔方陣が包み込み、そして一瞬の眩しい光。二人の姿は消えていた。二人がいたところを中心として、床の石版も球体状に抉れている。空間ごと、切り取られたようだった。


 ・


 オズヴァルト、そして赤の女王が消えた跡をしばらく俺たちは眺めていた。


「終わったんだね」と一番最初に口を開いたのは、リーゼロッテさんだった。


「そうだな。これで、世界を覆う呪いは消えた。ルクレティア様も暫くすれば目覚めるのだな?」とシンデレラさんは雪の女王ヴィルジナルに問う。


「もちろんだ。ルクレティアは目覚めるだろう。ルクレティアはこの上に眠っている」とヴィルジナルは答えた。


 俺たちがいたピリシカフルーフの最上階だったはずだが、搭の壁面の一部が消え、最上階の上へと登る階段が現れた。


「ここが最上階ではなかったのか?」と俺は驚く。


「なるほどね。いくら捜しても見つからない訳だわ。最上階のさらに上の階があるのだなんて」とアンネローゼさんは頤に手を置き、何か納得が言った表情だった。


「行こう!」とシンデレラさんが階段へと向かう。


「残念だけど、この先へは貴方達を行かせたりはしないわ」とアンネローゼさんが現れた階段の前に立ち、そして杖を構え、シンデレラさんを睨んでいた。

 

「どういうつもりだ? お前の姉が目覚めるのだぞ?」とシンデレラさんも負けずにアンネローゼさんを睨み返す。


「忘れたのかしら? 私達改革派の目的は、聖女に頼らない世界を作ること。その目的は絶対です」とアンネローゼさんは杖に魔力を込めながら言う。


「どうしてだ! 一緒にここまで戦ってきたのは、世界を守るたであろう!」とシンデレラさんが叫ぶ。


「世界を覆う呪いから私が守りたい人を守るため。あの呪いがあのままだったら、みんな死んじゃうからね。でも、それとこれとは別だと思うな。私は、アンネローゼを応援したい。友達がやりたいことを応援してあげるのも、私は大事な人を守ることの一つだと思うんだよね」とリーゼロッテさんが言う。


「アタシは姉さんについていくって決めたんだ! 姉さんの目的を果たすのを邪魔させはしないぜ!」


 リーゼロッテさんとラプンツェルさんは、アンネローゼさん側に立ち、シンデレラさんに向かい立つ。


「わ、わたしは、シンデレラを守るの。その為なら…… 泡になってもいい……」とルーティアさんは、シンデレラさん側に立った。


「聖女システム。それはこの世界の平和を保つ上で極めて有用なシステムです。アンネローゼさんがどんな平和を実現するかも興味を惹かれますが、アンネローゼさん! あなたもやがては年老いて死にます。あなたが作った平和のシステムが有効に機能し続ける保証は無い。しかし、聖女システムは2000年の実績がある。アンネローゼさん、無用なリスクを世界に負わせることに賛成出来かねます」とアリスさんはシンデレラさんの側に立った。


 元々の、プリンセスの保守派、改革派の立ち位置は動かない。


「妾は友を守るだけだ」と雪の女王は言う。


「さぁ、世界の危機は去ったことですし、保守派と改革派の争いを再開しましょう」とアンネローゼさんは冷たく言った。

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