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10 螺旋階段

 2階へと続く螺旋階段を登る。2階から容赦なく冷たい風が吹き下ろしてくる。エインセールは突如吹き下ろす突風に振り回され、俺のマントの裾を必死に掴んで飛ばされないように耐えている。

「しっかりとランタンで前を照らしてくれよ。前が見えないで、転んでしまうじゃないか」と俺は不満を言う。

「か、風が冷たくて、それに強くて、上手く飛べないのです。デジレさん。今日はもう帰りましょうよ——」とエインセールは目に涙を浮かべながら言い始めた。ランタンは揺れる揺れる。俺の視界が、光と闇を置き時計の振り子のように、交互に行き来する。


「もう無理です。失礼しちゃいま——す」と言って、エインセールは俺の服と胸の間に入り込んだ。


「お、おい。どこに入っているんだよ!」


「暖かくて気持ちいいです。デジレさん、胸の筋肉ありますね——。着痩せするタイプですか? エインセールは、この場所も気に入りました!!」


「あまり動かないでくれ。くすぐったい。じっとしていてくれ」と俺は言う。

 エインセールは、俺の服の胸元の潜り込みながらも頭を出し、ランタンを両手で支えて前を照らしてくれている。この強風の中で不安定にランタンを照らされるよりは、温和おとなしくしていてもらったほうが進むべき道が照らし出されて進みやすい。俺は、むず痒いのを我慢して進むことにした。


 螺旋階段を登り切り、2階の扉が見えた時、突然、さっきまでの冷たい風ではなく、凍ってしまいそうな風が吹き荒れ始めた。


 そして、信じられないことに雪の結晶が辺り一面に現れ始めた。六花の花びらがゆっくりと宙を舞いながら落ちていく。空気が凍り付いていき、俺の吐く吐息も白くなっている。


「この塔を登ろうとする愚か者がいる。だれも、ルクレィティアの元に辿り着けはしないというのに」


 突然、俺とエインセールの前に、氷のような鋭い目付きをした女性が立ちはだかった。

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