表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/72

9 いばらの塔1階

 いばらの塔ピリシカフルーフの扉の前に俺とエインセールは到着した。


「門番さん、門番さん。この人は、新しく騎士になったデジレさんです」と普通に鎧を着た人間の姿の兵士にエインセールは話しかけている。


「わかった。ちゃんと胸に騎士の証をつけているからな。よし。通っていいぞ。あと、今は騎士の体制の立て直しということで、お前たち以外には塔に入っていない。進めど進めど、茨が道をふさぎ、そして魔物もどんどん強くなっていくそうだ」と門番が俺の胸元に付けていたバッチを確認しながら言った。


「大丈夫です。デジレさんは強い騎士ですから!! さぁ、デジレさん。いざ、いばらの塔、ピリシカフルーフへ。この光があなたを導きます!!」

 エインセールが持っていた導きのランタンが優しいオレンジ色に光始めて、暗い塔の中を明るく照らし出す。どうやらいばらの塔の周りを取り巻いていた茨は、塔の内部にまで侵入しているようで、塔の天井や壁、床にも茨の蔓が張り巡らされていた。まるでその茨の棘は、俺たちを進ませまいとしているようにさえ思える。


 茨を切っては進み、切っては進む。遅々として進まない。


「エインセール。この塔は、昔からこんなに茨の蔓が蔓延っていて、しかもこんなに暗いのか?」と俺は道中で尋ねた。


「私も、実はこの塔の中に入るのは初めてなんです。ですが、入ったことのある騎士の方の話では、茨はもともと塔の中にまで生えていましたが、その棘は決して人を傷つけるようなことは無かったそうです。それに、人が近くによれば、茨が独りでに動き始めて、道を空けてくれると言っていました。それに、塔の中は、魔法で宝石が輝き、いつでも明るかったそうです」


「じゃあ、この状況は、いばら姫が眠りについてしまったことか、呪いによってこうなってしまったということだな」

 俺は剣で俺たちの前に立ちふさがる茨を切り払いながら道を進んだ。鋭い棘がある茨が繁茂し、暗く、魔物までいる。また、魔物を倒すのに気をとられていると、いつのまにかまた茨が道を塞いでしまっている。


 俺たちは、いばらの塔の中を進んでいきながら、茨や灯り以外の異変を肌で感じ取っていた。茨の塔の中を徘徊している魔物と出会った時にそれはわかる。通常、陽当たりの悪い湿地や洞窟の中などにしかいないはずの、でかいキノコの魔物であるマシュロンが塔の中を歩いている。塔の中の明かりが消えてしまっているからマシュロンが発生してしまったのかもしれない。ただ、いばら姫が眠りについてから、3週間程度しか過ぎていない。そんな中で、たった3週間で1メートルほどのキノコが育ち、魔物マシュロンとなるだろうか。

 また、通常であれば川の近くや沼地やジメジメとした森にしか生息できない、体のほとんどが水で構成されているゼリルーがこの塔を闊歩している。茨の蔓からしみ出す水から生まれて来ているのかもしれない。しかし、限られた水しかないように思える。それに、このいばらの塔は石造りである。水があったとしても、石と石の間の隙間から水は流れ出ていってしまうだろう。そんな状況のなかで、ゼリルーが生まれてしまっている。これは明らかに異常事態だった。この塔は何かがおかしい。この塔で何かが起こっているという確信を俺は持った。俺は、2階への階段へと辿り着く前に、そんな結論に辿り着いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ