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 俺はまさかの臨時収入にご機嫌である。

 一つ目ゴブリンのランクミスによるギルドからの臨時報酬銀貨五枚。

 馬車の所有者である商人はやはりあの一つ目ゴブリンに襲われ死亡していたらしい。

 こういう場合、家族に相続するのが普通じゃないかと思うが、正当性が認められれば第一発見者、第一通報者に所有権が移るそうで、 持ち主を失った商人の持ち物が俺に移り、それを売り払った金、金貨五枚。

 一つ目ゴブリンの報酬と合わせれば約金貨六枚が手に入ったわけだ。


 持って帰ったりしなくて良かった。フィオナもこの事を教えてくれれば俺もあんな事を言わなかったのに。

 しかし、これでしばらくは金に困らない。次の街に行くチャンスだ。


 という事で、俺は仮面を買いに来ている。前に値段だけ聞いた装飾品が並んでいる店。フィオナには次の街に行くための必需品である保存食と蝋燭を買いに行かせているため、別行動をしている。


 色んな種類の仮面が並ぶ中、付け心地を確認していく。

 派手な物や顔全体が隠れない物は論外。別にお洒落が目的で使うわけでも無いし、やはりシンプルな物が良いだろうか。金貨一枚らしい、白塗りの仮面。うーん、シンプルすぎてもつまらない。

 他に無いかと探すと、見たことのある模様を見付ける。上半分が白、下半分が黒。そして、どちらも勾玉のような形に色塗りされている。

 地球で言う陰と陽のマークに似ていて、目の部分のみ穴が開いている。これならシンプルすぎず良いかもしれない。これ買おう。

 店主の老婆に値段を聞くと金貨一枚と銀貨五枚。少し高いが、今後のための出費だ。仕方ないだろう。

 仮面を購入し、その場で付け店を出る。黒い服にこの仮面、フードを被ればこれで変装は完璧だ。


 フィオナが何処に買いに行っているかわからないが、仮面を付けたまま歩いた場合、周りの人の反応がどんなものかも含め、フィオナを探しに行くとするか。


 しばらく歩いていたが、 王都なので当然人も多い、俺の他にも仮面をつけている人もいるんだろう、そこまで注目を惹くって訳でも無さそう。堂々と歩けば怪しまれる事もないだろう。


 すると、人混みの中、フィオナの後ろ姿を発見する。全身白の服、金髪ロング、すぐわかる。


「おーい、フィオナ」

 俺はフィオナの後ろから肩に叩く。


「……フィオナ?」

 ん? 声が少し違う?

 振り向く。その人はフィオナのそっくりさんだった。後ろ姿も似ていて、顔まで似ているとは驚きだ。


「すみません、人違いでした」

 俺は謝り、踵を返し来た道を戻ろうとすると、肩を掴まれる。力一杯に掴まれているのか、すごい痛い。


「なんですか?」


「……今、フィオナって言った?」


「いえ、フィオラと」

 すごく面倒な事になりそうな予感。俺の第六感がそう言っている。どうにか逃げるためにも、知らばっくれる事にする。


「フィオラという人は私に似ているの?」


「いえ、まったく。俺、目が悪いんですよ」


「そう。取り敢えずその人に会わせてくれない?」

 人の話聞いちゃいねえ……。


「申し訳ないですけど、何処にいるのかもわかりませんし、今忙しいんで無理です」


「じゃあ、あなたについていく事にする。邪魔はしないわよ」

 強引すぎるだろ。


「迷惑なんでやめてもらえます?」


「無理。私の会いたい人かもしれないし。人違いだったらすぐ帰るわ」

 フィオナに顔が似てるから、タメ語で話されると凄い違和感があるな。

 フィオナってもしかして姉妹がいるんじゃないか? と思うほどに似ている。なんとなく会わせちゃいけない気がするんだが、どうにも逃げられなさそう。

 俺は歩きながらどうしようか悩む。俺から距離を空け、ついてくるフィオナのそっくりさん。確かに邪魔にはならないけども。


 ……まさかのこのタイミングで人混みの中、少し離れた所にフィオナを見つけてしまった。

 仮面を被っているしきっと気付かれない。いや、こちらに気付くな。そう思いながら歩を進めるが、フィオナの視線がこちらに向く。俺という事がバレたのか、こちらに向かって歩いてくるではないか。

 どうする? 監視されている中、下手に動けない。

 頼む。スルーしてくれ。


「……マコト様?」

 俺の願いは届かず。 俺の前に立ちはだかり小首を傾げるフィオナ。

 服装でバレてますよね。うん。わかってた。


「よう。フィオナ。買い出しは済んだか? そうだ。腹減ったから、こないだ食べた串焼き買ってきてくれ。今すぐ、一人で。」

 俺はマントを広げ必死に後ろを歩いているそっくりさんからフィオナの姿を隠そうとする。フィオナよ、察してくれ。


「……はい? 宿で食べたばっかりじゃないですか。……何をしてるんですか?」


「気にするな。良いから買ってきてくれ」


「……はあ」

 訳がわからない、といった表情のフィオナだったが、俺の頼みを受け踵を返した瞬間。


「あ、やっぱりお姉ちゃんだった」

 俺が広げているマントをくぐり、顔を出すそっくりさん。

 その声を聞き、そっくりさんを見たフィオナは驚きの表情に変わる。


「フィリオ!?」


「そうだよー!お姉ちゃん会いたかった!ひさしぶりー!」

 フィリオと呼ばれたそっくりさんはフィオナに抱きつく。


「え? え? こんな所で何をやっているのフィリオ?」

 突然の事で困惑するフィオナ。やっぱり姉妹だったか。こうなってしまったら面倒事にならないよう祈るしかない。


「んー? ヘールリッシュ様が殺されたらしくってねー。それで私が派遣されたってわけ! 休憩がてら王都に寄ったの!」


「……ヘールリッシュ様が? 誰に?」

 よし。良い返答だ。

 やはり、犯人探しのため人を派遣してきた。既に広まりつつあるという事か。少し長居しすぎたな。

 しかし、こんな重大になりそうな話なのに、こんな簡単に話して良いものなのか?

 ていうか、キャラ変わりすぎじゃない?


「わかんない。ヘールリッシュ様の私兵がほぼ全滅したらしいから、人の仕業ではないのかもって話だけどね。私もまだ詳しい事は聞かされてないんだー」

 魔物のせいになってくれれば丸く収まる。このまま順調に俺の存在は無かったことになってくれ。

 フィリオが派遣されたということはフィオナの家は偉い家系なのかもしれないな。それとも討伐に向いている家系か?


「それでね、お姉ちゃん、ヘールリッシュ様の奴隷市場に売られたって聞いたからお姉ちゃんに会えるかもしれないと思って、探してたんだ! そしたらこの人が私とお姉ちゃんを間違えたみたいでね! 偶然ってあるものなんだねー! で、この人が新しい主人……って訳でもなさそうね。お姉ちゃん、首輪ついてないし。奴隷になったって聞いてたけど、違ったんだね! 良かった!」

 俺を冷たい視線を向けながら話すフィリオ。

 嘘ついた事は謝るからそんな目で見つめないでくれ。


「この方はマコト様。私の主人です」


「……様? 主人? 首輪無いのに? しかも、マコトって……っ……変な名前!」

 フィリオは俺の名前を聞いて笑いやがる。この世界じゃ変かも知れんが笑うことはないだろうが。全国の誠に喧嘩を売ったな。


「……私は一生この方に遣える事にしたの。だから、首輪は無くとも私の主人なの」

 こらこら、顔が怖いぞフィオナ。お前が怒ってどうする。


「なんで? こんな変な人に遣える必要ないよ。折角、自由になったんだし、家に戻っておいでよ? 今なら私がお父様に口添えしてあげるからさ?」

 フィオナの顔を見ても動じず、話を続けるフィリオ。

 本人が目の前にいるのに、変な人呼ばわりとは失礼な奴だ。外見は変な人だと認めるが、人間、外見ではなく内面が大事なんだぞ。


「……もうあの家には戻らない。今の私の居場所はこの方の隣なの」


「……ふうん。そんな事言うんだ。で、あなたは、私のお姉ちゃんを返すつもりはないの?」

 俺に話を振るな。フィオナが俺に遣えるって言ってるんだから、返すも何もないじゃないか。


「そうだな。返すつもりはない。今は俺の者だ。」





「……そうなんだ。じゃあ力付くでもお姉ちゃんを返してもらうわね?」





活動報告にも書きましたが、仕事都合上不定期更新になってしまっています。

遅くなり申し訳ありません。

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