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ギルド

 

 鐘がついている建物、ギルドにたどり着く。


「そういえば、なんで鐘を鳴らしてるんだ?」

 今更ながら疑問に思い、フィオナに問う。


「おおよその時間を知らせています。何かあった場合警報にもなるそうです。」

 時間だったか。目覚まし程度にしか考えてなかった。


「へぇ。そんな意味だったんだな。とりあえず早速登録してもらうぞ」

 そう言い、俺はギルドに入る。昨日教えてもらった登録窓口に向かう。


「登録ですか?」


「はい」


「では、こちらの用紙に記入ください」

 登録窓口の受付嬢が用紙を取り出し、黒いインクの付いた筆と一緒にカウンターに置く。


「フィオナ、書いてくれ」


「はい。」

 フィオナは項目毎に分けられている用紙にすらすらと筆を滑らす。


「出来ました」

 受付嬢に用紙を渡す。


「失礼ですが、登録はあなたなんですか?」

 受付嬢は用紙に目を通した後、視線をフィオナに向ける。やっぱり突っ込まれるか。俺はそれに割り込む。


「そうなんです。僕、部屋から出たくないし、働きたくないんで、この子に全て任せようと思いまして」

 ははは、と笑いながら話す。受付嬢が俺を目を細め蔑むような目で見つめる。


「……奴隷でも登録は出来ますし、良いんじゃないでしょうか」

 完全に屑を見る目。

 コホン、と咳払いをして仕切り直す受付嬢。


「ギルドの説明は必要ですか?」

 俺に目もくれず、フィオナしか見ていない。フィオナは一瞬俺を見てからコクりと首を縦に振る。


「それでは、説明させて頂きます。ギルドは人々の依頼を仲介する事がメインとしており、依頼内容は、魔物退治、盗賊退治、護衛、偵察、雑用まで様々な依頼を受け持っております。依頼を完遂し、依頼主に完遂証明書を貰いましたら、ギルドでそれを見せて頂ければ報酬をお渡しします。ギルドが依頼している物もありますのでその時は完遂証明書は要りません。基準として、ギルドでは依頼内容によってクラス分けしており、F~Sクラスまであります。難しくなるほどSに近付く仕組みです」

 おお、凄い。まさにテンプレ。


「確実に完遂して頂くために、登録者の皆様にもランクを付けて依頼受付に制限を設けさせて頂いてます。 依頼はご自身の次のランクまでなら受けられます。最初はFランクから始まるので、Eまでの依頼を受けてください。依頼は掲示板に全て掲載していますので、受ける場合は受付にて申し出てください。ここまでで、ご質問はございますか?」


「いえ。」

 フィオナは首を横に振る。


「では、次の説明です。まずギルドカードをお渡しします」

 受付嬢はフィオナにカードを渡すと話を続ける。


「これは身分を証明する物で、用紙に書いて頂いた登録者の情報が埋め込まれています。大事に保管してください。依頼の中には、なかなか人の集まらない物もありますので、書いて頂いた用紙はこちらで適正のある登録者を推薦する時に参考にします。推薦は勿論拒否出来ますが、推薦を受けて下さった方は通常より報酬が上がります」


「その他ギルドでは、魔物、薬草等の買い取りをしています。魔物を持参する場合は必要な部位だけを持ち帰って来てください。細かい事は魔物書がありますので、そちらを参照してください。以上になります。質問はありますか?」


「大丈夫です」


「そうですか。今後のご活躍をお祈りしています」

 受付嬢は微笑み、フィオナを送り出す。俺達はカウンターから少し離れた、邪魔にならない所に移動する。


「これで登録完了か。簡単なんだな」


「そうですね。それで、どうしますか?」


「早速依頼を受けよう。あまり金もないからな。日帰り出来て、簡単なやつを探してくれ」


「わかりました」

 フィオナは掲示板に掲載された依頼を見に行く。その間俺は壁に寄りかかり待つことにする。

 ギルド内はそれなりに人がいて、立ち話をしていたり、誰かを待っているのか俺のように壁に寄りかかっている人もいる。 フィオナを見ると、掲示板に掲載されている複数の依頼を順に読んでいるよう。

 すると近くで立ち話をしている小声で話す一組の会話が耳に入る。


「領主の奴隷が一人いなくなったらしいぞ。最近領主の兵隊が探してるようだ」


「まじかよ。逃げたのか? 何人目だ?どうせすぐ捕まるだろうに」


「だろうな。これが結構複雑そうでな。一人いなくなったという事はほぼ確定しているんだが、噂が何とも曖昧なんだ。いなくなった奴隷に手を貸した奴がいるとか手引きした奴がいるとか誘拐されたとか」


「まさか。それがもし本当なら命知らず過ぎるだろ。どうせ、噂が噂を呼んで飛躍しただけだろ?」


「俺も信じがたい話だとは思う。まあ、本当だったとしたら領主がそろそろそいつを指名手配をするだろうさ。あの人が自分の所有物をとられて静かにしてる訳がねえ」


「図体はあんなでかいのに器は小さいからな」


「違いねえ」

 そう言って笑みを浮かべる。


 領主の奴隷がいなくなった? 服屋の前で見たあの奴隷の一人だろうか。いや、奴隷市場を経営している領主ならば自分専用の奴隷をたくさん持ってるか。

 噂が本当ならばこの街には領主のやり方に口を出そうとする正統派主人公がいるらしい。自分から厄介事に突っ込んでいくとは。素晴らしい人格の持ち主だ。奴隷とどうにか逃げ仰せるか、いや、ここは逃げる訳では無く領主と直接対決をして、成敗する所か? とにかくハッピーエンドになる事を俺は細やかながら願うことにしよう。


「ーート様! マコト様!」

 気付くとフィオナが俺の所へ戻ってきていた。どうやら考える事に没頭していたらしい。


「どうかされましたか?」


「いや、なんでもない」


「そうですか。依頼なんですが、ゴブリンの討伐なんてどうでしょうか。この近くの森に生息していますし日帰り出来るかと思います。報酬は一体につき銅貨三枚で、ゴブリンの耳を持って帰ってくれば良いみたいです。」


「じゃあ、それで」


「わかりました。受付に言ってきますね」


 ゴブリンか、ホワイトウルフ以外の魔物は初めてだな。多分この街まで飛んできてしまったから気付かなかったんだろう。暗かったしな。


 一体につき、串焼き三本分か。一応こちらは命を張るのに安いんだな。

 最初だし、スラ○ム程度の強さなんだろうか、それとも人間を脅かす魔物も数多く居るだろうし比較してしまってるのか。まあ、魔法っていう魔物に対抗できる物も備わっているし、ギルドに登録した時点で覚悟している事なんだろう。


 フィオナが戻ってきたので、早速ゴブリンとやらが生息している森へ行くことにする。



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