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異世界転生

 

 ……ここは何処だ?

 見渡す限り真っ白な空間。宙に浮いているような感覚。身体を動かせないため目だけを動かし周りを確認する。

 手には先ほど買ったポテトチップと飲み物が入った慣れ親しんだコンビニの名前が書いてあるビニール袋を持っている。何故この意味不明な空間にいるのか。それは神社に行った時の事だった。


 俺、西城誠は深夜小腹が空いてコンビニへ行き、いくつか好きなポテトチップスと飲み物を買った後帰り道を歩いていた。季節は秋になり夏の暑さなど嘘だったかのような肌寒さ。


「うー、さぶい」

 もう少し着込んでくれば良かった。歩いて15分の所だから散歩がてらと舐めてた。着替える手間を省いた事に後悔をしていた。

 真っ暗で虫の鳴き声しか聞こえない慣れた道。周りには畑や山があり田舎である。この時間は車通りもほとんどなく、歩いている人もいない。

改めて田舎だなと実感する。最近家の近くにコンビニが出来たことは幸運だった。

 娯楽といえば田舎の味方ジャ○コ。それも車で30分くらいかかるのだが。田舎は嫌いではないがもっとどうにかならんのかと役所に申し出たくなる。

 やはり遊びに来て自然を満喫するのは良いかもしれないが、住むとなると大変だよなーと歩きながら考えていると道の左側に鳥居が見えてくる。


「あれ。こんな所に鳥居?」

 鳥居の前に立つ。何十回何百回と歩いた慣れた道。気付かない訳が無い。鳥居の先には急な階段がある。

 これを上がるのは疲れそうだ。早く帰って暖まろう、と登るのを諦め改めて歩きだそうとした瞬間、太陽が上がったかのように周辺が明るくなる。


「な、なんだ?」

 上を見上げると階段を上がりきった所、本殿があると思われる場所から辺りを照らす凄まじい光を放っていた。

 少し様子を見ていたが今も尚、光は収まらない。こんな夜中にいつの間にか出来ていた神社。謎の光。


「おいおい、よくあるファンタジー展開だったりしないよな?」

 まさか、と苦笑するも淡い期待を胸に恐る恐る階段を上がり始める。

頭一個出る所まで上がると、そこは広い敷地だった。真ん中にはその広い敷地には不釣り合いな小さな祠。他には何もない。

 光源はその祠からだった。今のところ眩しいだけで危害はない。もう少し近づいてみるか、と上がりきる。

 その場で警戒しながら様子を見る。祠は何年も放ってかれていたのかボロボロで所々朽ちていて敷地も整備されず草が生えっぱなし。

うーん、どうするか。近づいて祠を開けてみるか、放置して帰るか、悩んでいた。

 危ない気もするが、興味はある。明るさからして開けたらただの懐中電灯の光でしたー、なんて事はないだろう。

 ただのいたずらの可能性もあるがこんな田舎でこんな変なことやっても意味はない。ていうかそうであって欲しくないと考えてしまうのはこういう展開のラノベが好きな人にはわかるだろう。

 そう思い祠に近づく事を決心する。近づくにつれてどんどん明るくなっていく。やっぱりヤバイかなと冷や汗をかくが、既に手は祠の取っ手に添えてある。

よし、いくぞおおお! と心の中で叫び勢いよく扉を開く。瞬間、視界がホワイトアウトした。


 そして今に至るわけである。

 今だ身動きが取れずにいる。そろそろ何か起きろ、とこの空間にも飽きが来ていた。どれくらい時間が経っただろうか。真っ白な空間に終わりがくる。

最初小さな切れ目のような物が出来たと思ったら徐々に広がっていき、草原が見えるようになってきた。どうなってるんだこれ? とじっと観察する。

すると後ろから女性の声が聞こえた。


「西城誠。お前に使命を下す。これから行く世界で生きろ」

 突然の声に後ろを振り向こうとするが動けない。声を発せられない。


「口に出さなくても我には聞こえる。時間はあまりないが聞きたい事が山ほどあるだろう。何個か答えてやろう」

 思考が読めるってわけですか。テンプレ通り神様登場?


「ではまずその質問に答えよう。お前が言う神であると思ってくれて構わない。地球でそう呼ばれている存在に近いことは確かだ」

 どんな顔してるのか拝みたいものだ。


「我は作ることも出来るが実体を持つ必要はない。概念其の物だと言ったらわかりやすいだろうか」

 よくわからんが変幻自在ってことか? 取り敢えずそれは置いといて何故俺を異世界に連れて行く?


「それはお前に興味を持ったからだ。我の暇潰しと言ったら怒るか?」

 いいや。実はこういうの憧れてたんだ。興味を持ったってことは勿論俺の望む世界へ連れてってくれるんだろう?


「興味……な。そうだ。お前が好きな魔法と剣の世界だ。精々我の暇潰しに協力してくれ」

 興味をもたれた理由もどう楽しませれば良いのかもわからんのだが。


「地球の時と同じようにしていれば良い。そろそろ時間だ。では健闘を祈る」


 目の前にあった草原が見える空間が視界を埋め尽くす。

 気付くと草原に横たわっていた。心地良い風が吹いていてここで寝たら気持ちよさそうだなと呑気に考えるも、立ち上がり周りを見渡す。少し離れた所に森が見える。

 他には何もない。身体の変化もなく服装も地球の時と一緒。ビニール袋も傍らに落ちていた。

 もう少し転生場所を考慮出来なかったのかあの神は。ここで犬死したら暇潰しにも… まさかあいつすごいドSで俺を追い詰めて苦しむ姿を見て楽しむのが目的!? 等と一頻り、神を悪党化する妄想をしたところで我に返り今後の行動を決める。

 まずは街を目指すしかないだろう。どのくらい離れているかもわからないため食料の調達、水の確保が必須。取り敢えず森でも探索するかとビニール袋を拾い歩き出す。


 神はドSではなかったらしく森に入ってすぐに川が通っていた。水も澄んでいて小魚が泳いでいる。

 これで水は大丈夫そうだな。食料も腹の足しになるかはわからないが最悪小魚を食べようとどちらもすぐ確保出来た事にホッとする。

川を辿っていけば街に着けるだろうがやっておきたい事もあるし少しだけ森に滞在することにした。

 あの神様は魔法と剣の世界と言っていた。ならばまず魔法を使ってみたい。自分がどれくらい使えるか、使えるにしても何を使えるのかを把握しとかなきゃな。そう考えて掌を前にだし集中する。

 身体の中で何かが手に向かって流れていくのを感じる。これが魔力ってやつだな。それに火をイメージして放出っと。すると手から火が灯る。

 地球の時には感じられなかった感覚に満足すると同時に少し拍子抜けする。思ったより簡単だったな。詠唱とかもあるんだろうか。と疑問が生まれるが、まあ今考えてもわからないことだしと頭を切り替え次の魔法に挑む。


 自分が知っている限りの魔法をやってみる。

 今のところ出来たのは、火・水・風・雷・転移である。回復魔法は無傷のため機会があれば試して見ることにした。

 水魔法成功時に水魔法で水分補給すりゃいいじゃん! と思い飲んでみたが、不味すぎて飲めるものじゃない。自然の力ってすごいと実感する。

気に入ってるのは風と転移で、風は魔力消費をし続ければ空を飛ぶことも可能。

 転移は瞬間移動というわけではなく、未来のひみつ道具通り抜け○ープに近い。魔力を使って無理やり空間をこじ空けフープ代わりにする形だ。

 正直どちらも魔力消費が高すぎると実感したためあまり使わないようにする事にした。疲れもなく魔力の底は今だに見えないが、魔力切れになったらどうなるのかわからないし、魔力を回復する方法、この世界の人間の普通がわからないからだ。

 俺の知っているテンプレなら底なしの魔力を持っているということになるだろうが、推測だけで安易に使用できない。化物扱いされてこの世界を楽しめなくなるのは避けたい。


 まあ魔法はこんなものか、と次に移ることにする。

 次は身体強化。元から強化されている場合もあるため何もせず本気でジャンプしてみるが、地球の時と変わらない。

 それなら、これでどうだ? と足に少しだけ魔力を流し、停滞させてから再度ジャンプする。すると先ほどの二倍ほど高く飛べる。

 おおっ! と思った以上に飛べたため玉ヒュンしたが成功。着地時ジーンと足から身体を突き抜ける痛み。

 どうやら、飛んだ時に足に溜めてた魔力を放出してしまったみたいだ、気をつけなければ。痛みが引くまで暫く動けなかった。


 痛みが引いたところで小腹が空いて来たため、地球から持ってきてしまったポテトチップスを食べる。

 これが最後のポテチか……。 感傷に浸りながら大事に食べる。食べ終わり袋の再利用ができるかもしれないと川で洗いビニール袋に入れて取っておく。


「さて、実践でもしてみますか」


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