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少年Aの異世界漂流  作者: 樹実源峰
第一章 第二部 冒険者ヤンシング編
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第九話 勇者たちの課題

「はぁっ!!!」

「ぬんっ!!」


 木刀と木刀。撃ち合わされた二振りのうちの片方が砕散った。それを、折れた木刀の持ち主のガレスは特に驚く事なくみつめ、すぐさまバックステップで後退する。さらに、地面に落ちている木刀を拾い上げて構える。

 それと相対しているのは、勇者の天ヶ崎憲成だ。整ったその顔は汗にまみれ水もしたたる良い男、と言った風情だった。肩で息をする位疲れているらしく、体もフラフラとしていた。


「・・・全く、お前の戦王ウォーロードにも困ったものだ」


 苦笑しながらガレスは当たりを見渡すと、そこかしこに砕けた木刀が転がっていた。だいたいは半ばで折られているのだが、一部はバラバラなものもある。すべて、この二人の『特訓』によって生産されたものだ。


 憲成の特殊能力スキル戦王ウォーロード』は、武器を最高レベルまで強化し、かつそれを完全に扱う事のできる能力だ。その武器の範疇には木刀も収まっており、彼の持つ木刀は普通の剣で切り掛かっても寧ろこちらが折られてしまうくらいに頑丈なのだ。

 つまり、ガレスにしてみれば、剣術の天才で伝説の武器をもっているような存在に、生身で木刀をもって挑んでいるようなものだが、『特訓』ではガレスが憲成を圧倒していた。


 というのも、憲成のチート臭い能力は実のところ諸刃の剣だったのだ。

 武器を持てば、自身のMPを削り取ってその武器を最高品質にしあげるのだが、これに武器がついて行けない事もあり途中で、壊れる事もしばしばある。しかも、その度に新しい木刀が勝手に強化されて行きMPは削られて行く始末なのだ。


 しかし、もう一つの理由も存在する。それはガレスの戦闘技術だ。

 彼の持つ特殊能力は『肉の鎧(ボディ・アーム)』と言って、肉体の強靭さが鋼なみになり、脚力や腕力が強くなるものなのだ。だが、それだけでは王を護る近衛になどなれる訳が無い。そもそも、『肉の鎧』事体、たいした能力ではないのだ。その能力は5人に1人という位にはざらにいる能力であるし、戦闘技術などがついている訳でもない。

 なら、なぜ彼は近衛兵団の、いかも団長なのか?それは彼の戦い方による。彼は剣の訓練をひたすらやったことにより、並の『剣士ソードマン』の特殊能力スキルの保持者と張り合えるくらいの技術は身につけている。だが、そんなのでは足りない。まだ足りないとばかりに今度は剣を振るって油断した相手の足を引っかけ転ばせる技術や、剣を振る相手の懐に入り込み動きを止めるなどという『武器の扱う「剣士ソードマン」では得られない』技術などを磨いて行った結果、この国にはもはや彼に勝てる兵士はいなくなっていた。そこを王に買われたのだ。壁としても優秀であるし。


 そして、この二人の『特訓』において彼はその技術を十全に発揮していた。そのため、この試合は彼のペースで進んだと言っていいだろう。

 もちろん、憲成も負けっぱなしではなく、ガレスの技術を真似して勝とうと頑張るのだが、やはり年季が違った、ということだろう。


 さて、今回も足をかけようとした憲成を逆にかけ返して転ばせたガレスが、憲成の首に木刀を当てる事によって、今回の『特訓』もガレスの勝利に終わった。


「あー、クソッ!また負けてもうたわ!!」


 ガンッ、と思いっきり拳を地面に叩き付ける憲成はとても悔しそうだが、それは上を目指すものなら何度も通る道だ。ガレスはそれを懐かしいものでも見るかのような目でみて、口を開く。


「当たり前だ。いくらお前とはいえそう簡単に負けては近衛兵団長の名が泣く」

「クッ!!何がダメやっちゅうんや!何で追いつけないんや!!」

「ふむ、一つアドバイスをするのであれば、だ」

「・・・何や」

「ひたすら修練、しかあるまいて」

「そうかいな」

「ああ、私もそうだったからな」

「え?ガレスはんもそうだったんでっか?」

「もちろんだ。私には才能が無かったからな。人一倍に努力を重ね、ここまで来た。無論今も努力は怠っておらんぞ。成功にあぐらをかくのは愚者のやることであるからな」


 そう言って遠くを見るようなガレスに憲成は不思議そうな目を向ける。ひたすらに訓練を重ねたと言う男だとは思えない静けさがガレスにはあったからだ。そこに何故か憲成は無意識に敬意を払っていたのだった。


####


 その夜、勇者たちは四人で一部屋に集まった。場所は憲成と将平の部屋だ。ここで、女子二人は椅子にすわり、野郎二人はベッドに腰掛けていた。・・・流石に男のベッドに女が座っては色々まずいだろうと言う配慮の結果だった。

 今回集まったのは、明日より始まるゴブリン討伐任務の不安から仲間内で集まり励まし合う・・・という名目の戦力の確認だった。


 それによると、どうやら春香はすでに宮中の魔法使いを上回る高威力の魔法をあつかえる魔法使い(マジック・ユーザー)に、静音は回復役ヒーラーの中でも中級程の存在へ、そして将平に至っては従えている魔物がそろそろ二桁というところまできているらしい。


「僕だけ、たいした成果あげてへんやん・・・」


 そう言って、落ち込む憲成に春香は声をかける。


「まぁ、天ヶ崎君の場合は私たちとちょっと具合が違うからね」

「?どういうことや?」


 春香の言う事がいまいち理解できなかったらしい憲成はそう尋ねる。


「だって、天ヶ崎君は『特殊能力スキルを使わない方向』の訓練をしているじゃない。私たちは逆に『特殊能力スキルを使いこなす方向』の訓練をしているのよ?逆方向に進んでいるのに比べるのは間違っているわ」

「な、なるほどな・・・」

「たしかに、MPが切れてしまっては何もできないわ。天ヶ崎君は武器を強化できなくなるし、私は魔法が使えなくなるし、静音は回復できなくなるし、桐原君はそれ以上の魔物を支配できなくなる。だからこそ、そう言った状況でも戦えるように特殊能力スキルではない技術を磨かせようとしているんじゃないのかしら?」

「・・・そうかもな」

「それに、私たちも武器を扱えるようにならないといけないかもしれないわね」

「えぇ?!私あんなの重くて持てそうにないですよ〜!」

「静音、少しは我慢よ。生き残るために」

「むぅ・・・」


 生き残るため。その為の会合なのだ。正直、この世界では何度も勇者召還した形跡があるのに他の勇者がいないということは、恐らく全員が死んでしまっている可能性があるのだ。そのため、いつか逃げ出すため、つまり生き残る為に彼らは努力をしている。敵であるはずの王の技術を盗み、それが生きる糧に繋がるから、と。


「ま、とりあえず、ステータス確認と行きましょうか」


 そう言って、一斉に全員がギルドカードを出す。実は、ギルドカードは公開範囲を設定する事もでき、その場合は限られた人間にのみステータスを晒す事ができるようだった。



名前:ハルミ・キタミ

性別:女性

種族:人間種ヒューマン

年齢:17歳

出身地:不明

職業:魔法使い

所持金:500C

登録称号:勇者


Lv.7

HP:94/94

MP:310/310

ATK:64

DEF:48(82)

AGI:32


装備品:守護のアミュレット(DEF+34)


特殊能力スキル】:『全知オーナー


称号:勇者・異世界人・マジックユーザー・マジックマスター・一途なるもの・全知




名前:シズネ・タチミネ

性別:女性

種族:人間種ヒューマン

年齢:16歳

出身地:不明

職業:癒し手(ヒーラー)

所持金:500C

称号:勇者


Lv.4

HP:112/56(112)

MP:78/78

ATK:28

DEF:26(52)

AGI:25


装備品:ミノタウロスの指輪(HP×2)

   :守護の指輪(DEF×2)


特殊能力スキル】:『神恵マーシー』-{祈祷}


称号:勇者・異世界人・大和撫子・癒し手



名前:ショウヘイ・キリハラ

性別:男

種族:人間種ヒューマン

年齢:17歳

出身地:不明

職業:怪物使い(テイマー)

所持金:500C

称号:勇者


Lv.12

HP:216/216

MP:268/208(268)

ATK:81

DEF:151

AGI:56


装備品:知能の腕輪(MP+30)


特殊能力スキル】:『操者ルーラー


称号:勇者・異世界人・怪物使い



名前:ケンセイ・アマガサキ

性別:男

種族:人間種ヒューマン

年齢:17歳

出身地:不明

職業:剣士

所持金:500C

称号:勇者


Lv.9

HP:181/181

MP:194/194

ATK:126(378)

DEF:141(201)

AGI:85


装備品:勇者の剣(ATK×3)

   :強化・初級の盾(DEF+60)


特殊能力スキル】:『戦王ウォーロード


称号:勇者・異世界人・ウェポンマスター・王女に愛されし者・天然ジゴロ・ハーレム王



 ・・・どうして僕ン称号にひどいンが混ざっとるんやろか?なんらかの悪意すら感じるで・・・。皆も見て見ぬ振りしとるやん。

 そう思って憲成は涙を流す。最近メンタルが弱いのだ。称号の所為で。


「ところで天ヶ崎君」

「なんや?」

「リリーはどうするの?」


 ケラトニック王国の第二王女、リリー・ケラトニックは憲成に恋をしていた。本人は必死に隠しているようだが、無論周りの皆は気付いている。・・・例外は本人と国王だけ、なのが何とも言えないが。

 普段は冷静でいて少し脆いような所もある彼女は広く国民に愛されているが、そんな彼女が憲成の前では年頃になってしまう様子を見れば誰でも気付きそうなものだが国王は全然気付いていない。そして、これまた憲成に心寄せているメイドたちはその様子を見るたびにソワソワしているのだが、それを姫は気付いていない。だけど、少し微妙な空気が流れる・・・というのが最近の王城の様子である。正直、無関係のものにとってはとりあえず、誰かとくっついて空気を落ち着けてほしいがその願いは聞き入れられる様子は無いようだ。


「・・・あ〜、え〜と、その、だな」

「なになに、なんかあったの?」

「・・・来週、城下町に行かないかって誘われてるんや」

「進みそうですね」

「ただな、同じ日にメイドのアラリナさんにもさそわれてな・・・」

「修羅場だな・・・」

「他人事やと思って・・・」

「他人事だし(ですし)(だからな)」


 そうあっさり返されるものの本当に困っているらしき天ヶ崎は普段ならそこで終わる話を延々と話し続け助けをこうのであった。

いや、すみません。天ヶ崎君の名前が凄い事になっている事に今更ながらに気付きました。城が峰やら山ヶ崎やらなんやらと・・・。一体彼は何者なんだ・・・。いえ、作者のミスですけども。


彼の本名は天ヶ崎憲成です。さんざん作者に名前を間違えられると言う薄幸な少年ですが(リア充消し飛べ)、仲良くしてもらえれば幸いです。


 前回はサラマンダーと戦うとか言いながら結局三行くらいで終わったという大して役に立たなかったような次回予告〜(今回は真面目にやります)

 サラマンダー退治が終わった慎也たちが次に戦うのはまさかのあの生物!?しかもその結果が笑うしかないようなもので・・・!?

 次回『少年Aとスライム』、乞うご期待!


 ・・・あれ?ばらしてね?


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