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少年Aの異世界漂流  作者: 樹実源峰
第一章 第一部 少年Aと異世界漂流
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第五話 少年Aの目覚め

注意!今回の話にはやや過激な部分がありますのでグロいの苦手なかたや心臓の弱い方は控えたほうが良いと思います。そうでない人には、そこまでグロくなくね?っていう点を注意します。


読みましたね?OKならばどうぞ!

「え・・・?」


「なんの冗談だ、これは・・・」


 村人に、正体がばれたと報告しにきたアンジェラと、その付添い(あるいは原因)の俺が目撃したのは、昨日まで存在していたはずの村の焼き払われた姿だった。その村にあった、たくさんの建物は焼け落ち、わずか数軒の一部のみが燃えずに残っていた。俺も気に入っていた、花のような清涼な香りも無く、その代わりに何か、肉のようなものが焼きこげたような、そんな匂いがこの村を覆っていた。


「くそ・・・どういうことだ・・・」


 そういいつつも俺の頭の中では最悪の予想がすでに展開されていた。だが、それを認めるのは嫌だったので目をそらし、そして誰かが生き残っていることを期待して、村の中央の井戸へ向かった。危険な何かが(・・・・・・)いる可能性もあるので腰にある鉄の剣を構えつつ進む。


 そして、たどり着いた村の中心の井戸で俺は最悪の予想が的中した。思った通りの最悪な現実が俺の前に立ちはだかる。

 いつもは村人が集まりにぎやかな井戸の周りには何十もの死体が積み重ねられていた。焼きただれた中にも少しは生前の姿を保っているものもいて、俺とアンジェラは容易にここに死んでいるのは村人たちなのだと分かった。


「そんな・・・ひどいです・・・」


 その場で崩れ落ちて泣き始めるアンジェラ。どうやら気丈にもここまで涙をこらえていた彼女の限界を超えてしまったようだった。

 そんな彼女の肩を抱き寄せると彼女は少しビクリとしたが、すぐに俺の胸元で泣き始めた。

 よくよく、死体を見ると何かで滅多指しにされたり、胴体だけだったり、内蔵が飛び出ていたりするものが多数有り、俺は確信した。これが人の仕業だということに。


「ヒヒ・・ヒ、お涙頂戴のところ悪いけどさぁ、ヒヒ、その森妖種エルフ渡してくんない?」


 突如聞こえたその声にアンジェラは機敏に反応してビクリと体を震わせ、俺は声の主を見た。

 歳は中年くらいだろうか、腹に少し脂がのっていて頭が禿げ上がっている、下衆のような笑みを浮かべた男。その後ろには男の配下なのだろうか、同じような下衆のような笑みを浮かべた男が三十人弱いた。


「誰だ、アンタ?」

「ヒヒ・・・しがない奴隷商だよ。ヒヒ・・世にも珍しい森妖種エルフが、こんなところにいると聞いてね、ッヒヒ、ちょいと遠征にきたのさ・・・」

「そうか」

「・・・ヒヒ、で、それくれるの?ヒヒ」


 その男は顎でアンジェラをしゃくった。その男の、泥のように濁った目を見返しながら口を開く。


「断る、と言ったら?」

「ヒヒ・・・答える必要があるのかい?」


 予想していた答えを引き出したので俺は次の質問に移った。


「じゃあ、これをやったのはアンタらか?」


 そう言って村人の死体の山を指さした俺に、男は首肯する。


「ヒヒ・・・お前もその一部になりたくないんなら、ヒヒ・・・そいつをわたすんだな。亜人種を匿ってたそいつらと一緒に始末してやってもよかったが、ヒヒ・・・そいつさえわたせばお前は逃がしても良い・・・ヒヒ」

「そうか・・・」

「ヒヒ・・・亜人種を匿ってたのは掃除対象だが、ヒヒ・・・お前みたいなゴミでも命が惜しいだろ?ヒヒ・・・選ぶこった、お前の命か、森妖種エルフか」

「そうか、こいつを渡せば俺は助かるのか」

 

 その時、俺の胸元のアンジェラが反応して震える。男はそれを見てニヤリとし


「ヒヒ、そぉぉぉだ、そいつさえ差し出せば・・・」

「だが断る」


 瞬間、胸の中のアンジェラも男たちも固まった。一体こいつは何を言っているんだと言う視線を向けてくるが、俺は気にしない。


「な、なにを言っているんですか!?彼らの狙いは私だけ・・・」

「だから断ると言ってる。俺の最も好きな事の一つが自分が優位に立っていると思い込んでいるやつに『NO』と断ってやる・・・というわけではないが」


 そこで、俺はアンジェラに呆れた目を向ける。そして、続けた。


「お前は馬鹿か?俺の仕事はお前を護る護衛なんだよ。ならば、俺が絶対に手出しさせねえよ」


 それにな、と俺は怒りをこめて男たちを睨みながら更に付け加える。


「この村の連中の仇討ちたいからな」


俺の睨みをまともに受けた男は二三歩あとずさって、仲間に命令する。


「ひ、怯むんじゃねえよ、ヒヒ!しょ、初戦的は一人、ヒヒ・・・皆で襲えば勝てる!!」


 そう言って、奮い立った男たちが突っ込んでくるとき、俺の口が勝手に開く。指も勝手に動き、命令した男を人差し指で指差しながら。


「物理現象に介入。あの男にかかる大気圧を無限倍に」


 次の瞬間、|ベチャリという何かが潰れるような音とともに《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》命令してた男の姿が消えた。男の立っている所には黒い染みだけが残った。


 それと同時に、俺の特殊能力スキルの情報が頭の中になだれ込んでくる。何ができるのか、どう命令するのか、そう言った情報が全部詰め込められる。


 そして、俺は次に適当に一人を指差す。


「物理現象に介入。あの男にかかる圧力を0にする」


 そう言った瞬間男の体にふくれあがり破裂する。まき散らされる肉片や血からアンジェラを庇いつつ俺はチッと舌打ちする。だが、周りの連中はそれに驚き突撃をやめた。一様に間抜けな顔を浮かべ何があったのかと言う表情をする。

 それをみて俺は口を開く。


「物理現象に介入。あいつらの足にかかる摩擦を0にする」


 その瞬間、ツルッと全員がなにも無い所で滑り(・・)したたかに頭や背中を打ち付ける。いそいで立ち上がろうとするが、足が地面についた時ツルリとして、再びこける。


 足に掛かる摩擦を0にする。つまるところ、地面を蹴ったり歩いたりする時に感じる抵抗、もしくは確かな感覚がなくなるのだ。立とうにも、そこはまるで氷のように滑ってしまうし、転ぶまいと踏ん張ろうとしても、踏ん張れない。


 今や、彼らにできるのは這って逃げるか、膝立ちで移動するかである。無論、それは慎也に逃がす意思があればの話だが、残念ながら、と言うべきか、当然の事ながら、と言うべきか、この時の慎也には復讐のことしか頭に無かった。


 動けない彼らに向けて、速度を第一宇宙速度まで上げた小石を投げつけたり、小石の重さをトン単位にまで増やして落としたり、重力を無限大にかけてみたり、酸素濃度を100%にしてみたり、逆に0にしてみたり、一酸化炭素だけを吸わせたり、塩素で埋め尽くしてみたり、色々な方法を試した。


 斬殺、刺殺、撲殺、射殺、脳の負傷、栄養不足、一酸化炭素中毒、窒息、ショック死、心臓マヒ、破裂、墜落死、熱中症、焼死、溺死、凍死、衰弱死、老衰、などなど上げてみれば限り無さそうなキリのなさそうな方法で死んだ死体が量産された。


「・・・グッ、終わったか・・・」


 そして、終わった時、彼は体にもの凄い倦怠感を覚え、意識を失う。復讐しか頭に無かった彼は気付かなかったのだ。この力の代償に。

 しかし、彼にとって運のいいことに、アンジェラがいた。彼女の能力の『神の導き(ガイダンス)』は、人を救う為なら不可能をも可能に転じさせる特殊能力スキル。しかも、その思いが強い程に起こせる奇跡も大きいと言うものだ。かつて、英雄の仲間だったシスターが所持していた能力で、英雄譚にも紹介される程有名な、神業級ゴッズ特殊能力(過去)。彼は代償に見合わない早めの復活ができるだろう。


 そして、後にこの村に訪れた冒険者が、恐怖の表情を浮かべている、多数の死因の死体を見て『悪魔の仕業』だとギルドに報告した事から、この奴隷商大量殺人事件はこう呼ばれる、『悪魔事件』と。


####


 そんな『悪魔事件』から三日たったある日、王都では


「聞きました、『悪魔事件』のこと?」


 この国の第ニ王女であり、勇者を召還すると言う大役を果たしたリリーは、私たちにティータイムの時にそう口を開いた。


「『悪魔?』それって悪魔族デビルのこと?」


 紅茶を飲みながら私、北見春香はそう問う。すると、リリーは頭を横に振っていった。


「いえ、そうではなく、なにか・・・こう、すごいのが・・・」

「どういうこと?」

「実は、とある村で亜人種を匿っていると言う情報が入って、奴隷商団がそこへ向かったそうなのですが、逆に全滅してしまったらしいのです」

「ふーん、それって珍しいの?」

「いえ、奴隷商団が壊滅する事は・・・まあ、交渉とかに失敗したときとかによくありますが、ただ、死因が・・・」


 そこで、一旦言葉を切ったリリーを見て、私はスコールを食べっぱなしの静音をとめて、先を促す。やがて、決心したのか、重々しく口を開く。


「どの死体にも一貫とした死に方がなかったのですよ」

「?どういうことかしら?」

「つまり、全員が全員違う方法で死んだのです、凍死とか、窒息死とか。ただ、共通するのが、一つ。どの死体もかなり恐ろしい形相で死んでいたらしいのです。それで、報告した冒険者が『悪魔』だっと言って」

「ちょ、ちょっと待って?凍死?そこってそんなに寒いの?」

「いえ、そうではなく、その村のあったのも南の方でこちらより気温も高いと思います。ただ、凍傷と見られるような死に方らしかったのです」

「・・・お茶請け食べれそうにないよう」


 静音が横でなんか言ったが、関係なかったので無視した。


「・・・へえ、本当に悪魔みたいね」

「ええ、悪魔族ですらこんなことはしないでしょうからこう呼ばれるのです、『悪魔』と」


 その言葉を聞いて春香はシンがそいつに会わなければいいのだけれど、と思った。

 その彼こそが『悪魔』なのだとも知らず。

というわけで、今回は慎也くんの虐殺回でした。

さらっと、殺しのシーンは省きましたがお楽しみいただけましたでしょうか。

正直、炎ドーン、とかバーンとかないですね。あっても破裂ですね。パーンと。

・・あ、追記すると、小石の早さを宇宙速度まで上げると書きましたが、つまるところ、スナイパーライフルの超強化版をぶっ放したような威力が出てます。怖いですね。


さて、ほんの少しだけ出ました彼の能力、詳しい性能や名前なんかは次回明らかにする予定です。次回の更新日は恐らく土曜日!お楽しみに〜。


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