第三十九話 少年Aと人獣戦争4日目2
本当に長らくお待たせしました。最新話です!!
前回のあらすじ:勇者VS慎也。
「・・・かかってこないので、ございますか?」
慎也と勇者たちが戦ってる後方では、獣人軍を任されたエルが獣人軍とにらみ合っていた。そして、彼女は全く動きのない獣人軍にいら立ちの声を上げる。
「おいおい、お前状況を分かってんのか?」
「・・・状況でございますか?」
「多対一っていう、この状況をよ!!」
その言葉にエルは首を傾げた後、それが、数の有利で押しつぶすという主張であることに気づき、「ああ」と声をあげてから言葉を発した。
「なるほど、確かに雑魚が大発生しているようでございますが、所詮はワタクシの敵ではございません」
「な・・・!」
「そこで吠えている貴方も例外ではございません。とっとと散るというのはいかがでしょう?」
「ぐっ、言わせておけば・・・!!」
エルの見え透いた挑発(と獣人軍は思っているが実際は彼女の本心なのだが)に獣人軍は憤り剣を抜きかけるが、命令がかかってないのでぐっとこらえた。その様子を見たエルは全く意味が分からなかったが、その意味をすぐ理解することとなった。
「準備できました!!隊長!!」
「おっ、よしよし、じゃああの女に打ち込んでやれぇっ!!!」
そう、彼らは時間稼ぎをしていただけなのだった。そんな彼らをエルは不審げな様子で見ていると、兵の群れが左右に割れていく。話に聞く聖者の海割とはこのようなものなのか、と感想を抱いたエルは敵の準備していたものを発見した。
それは大砲。火薬を詰めて砲丸を発射するというもとは人類種が生み出した兵器であったが森妖種には魔法で潰され、獣人種には当たらないという結果放棄されたものであったが、人間種相手には恐ろしい兵器であるのは変わらないため、今回は彼らが使っているのだ。
だが、彼らはこれを必殺の兵器と信じているのだが、生憎と目の前にいるのは人間種ではなく、この世に生ける種の中で最強という名を関する悪魔族のエルである。普段の彼らなら、こんな選択はしないだろうが、このようなところで悪魔族を見る羽目になると思わなかった彼らはわずかな可能性を願った。
もちろん、エルとて直撃すればただではすまない。場合によっては死ぬだろう。だが・・・
「準備とはこれのことでございますか」
「ははは・・・これで貴様も・・・」
「正しく、期待外れというやつでございますね」
「なにっ・・・!?」
大砲を向けられてもなお、動じないエルに獣人軍の面々は怒りと恐怖をあらわにした。だが、同時に背中を向ければ助からないと分かっているため立ち向かうしかないと自信を慰めて彼らは・・・
「撃てっ!!!」
ドンッと音をたててエルに迫る砲丸。だが、
「本当に、他愛もございません」
エルがおもむろに抜いた漆黒の剣で砲弾を切ろうとしていることに気づいた隊長は、笑みを浮かべエルの死ぬ瞬間を想像したが、次の瞬間彼は目を丸くした。
砲丸がまるで、野球のボールのように打ち返されて大砲の穴に戻っていったのだ。そして、物凄い音とともに大砲がはじけ飛んだ。
「な・・・に・・・!?」
実はあの砲丸はただの砲丸ではない。少し衝撃が加わればその瞬間爆殺するような仕組みとなっていたのだ。しかし、その中には毒ガスも詰められており吸えば一瞬で死を迎える代物だった。こちらは風上であるから毒の霧はこちらに飛んでくることはなかったのだが、実際は剣ではじき返されれ、自陣が被害をこうむっていた。その事実に彼の脳は理解ができなかった。
「・・・これで、終わりでございますか?」
いつの間にか移動したのかエルは、隊長の目の前にいた。毒ガスが蔓延した中をである。
「この程度、耐毒装備の必要すらございませんが、なるほど、普通の者なら即死でございますか。・・・と、もう聞こえていないようでございますか」
そこでエルは周りを見渡す。だが、一面に毒ガスを吸って倒れたものばかりで生きている者はいなかった。そのことに彼女は嘆息してつぶやく。
「どうやらマスターの命令は遂行できたようでございますが、些か、暇でございます」
「・・・なら、俺と遊ぼうぜ?」
その声がエルの耳に届いた瞬間、突如男がエルの背後に現れてエルを切りつける・・・だが、彼女はまるでそうなることが分かっていたかのように後ろへと振り返り、切りつけられた刃を漆黒の剣ではじき返し、男の喉笛を狙う。だが、男はそれに気づき、交代することによって事なきを得た。
そして、二人は互いを見た。
あらたな敵は男であることはその鍛え上げて、空気にさらされている上半身から明らかであった。だが、人間種ではなかった。彼の口と鼻に当たる場所からくちばしが生えて、さらに背中からは一対の雄々しい翼が生えていたからだ。だが、その羽を見てエルはふと、とある生物を思い浮かべた。
「タカ・・・いえ、鷲の獣人でございますね?」
「慧眼だな、悪魔族。如何にも俺はガルバダ・ホークル。お前は?」
「エルセリアでございます」
二人の剣士は互いに剣を握り合い名を告げる。それはまるで劇などで行われる英雄譚における戦いの前の1シーンのようであり、そして実際これは戦いの前の合図のようでもあった。挨拶、であるかもしれない。
「なら、互いに名を名乗ったところで」
「いざ、尋常に・・・」
「「勝負(でございます)」」
一瞬で互いに肉薄し合い剣を打ち込む。そして、互いの剣はともにはじかれ、周りには衝撃波が巻き起こった。それは周りのある死体を吹き飛ばし二人の戦場を更地へと変えた。
そして、剣がはじかれ合った後、再度切り付け、互いに弾かれた後、片方は空へ、片方は砲台のあったところへ後退する。
「これは、思わぬ収穫でございます」
「やるじゃねえか」
二人は強者との出会いに喜び、ニッと笑う。その笑みは、まさに肉食獣が飢えをしのげる獲物を見つけた時のそれだ。
「では、ワタクシも本気でございます」
そういったとき、エルの背中から蝙蝠のような翼が生える。この翼は悪魔族なら誰もが有するものであり、ちゃんと空を飛べるものであった。
「空中戦争は・・・兄との殺し合い以来でございますので、相当ブランクがございますが、この程度の不利、むしろスパイスとなるのでございましょう」
「安心しろよ、万全であろうとなかろうと俺が勝つのには変わりねえんだからな」
「いえ、いくらなんでも貴方程度は倒せるのでございますが」
そのような会話を交わして満足したのか、気を引き締めてガルバダはいった。
「行くぜっ!!」
再び掻き消える両者、次の瞬間には再び鍔迫り合いをしていた。だが、それにガルバダは笑みを浮かべた。
「喰らえっ!武器破壊!!」
「無効化の呪いでございます」
ガルバダの声とともに、彼の剣から黒いもやのようなものが噴出してエルの剣へと向かったが、直後にエルの剣から光が迸りもやは消え去った。
「何!?・・・今のは特殊能力無効化か!!」
「ええ、ですがこれは一日に原則一回しかつかえないのでございます」
「一度しか使えない・・・?残念だが、俺は何度でも使えるぜ、武器破壊!!」
再び黒いもやが発生しエルの剣に吸い込まれていった・・・が、彼女の剣は壊れなかった。
「なに!?」
「不壊の呪いでございます。どうしてもこの剣を折りたいのでございましたら、特殊能力や固有能力に頼らず、自力でやるのがよいでございます」
「・・・固有能力が二つ!?」
「いえ、三つであるかもでございます。さてさて答えは自身で解き明かすのがよろしいでございましょう」
憎々しげに睨むガルハダに対して涼しげなエル。これだけで見れば彼女が有利かと思えばそうでもない。と、ガルハダは推測する。だって、実際は固有能力は一つだ。自分の剣もそうであるし、目の前の女の剣もそうである。そうに違いないと彼は思った。武器破壊を防いだ方法は片方が特殊能力だろうと推測し、ならば奥の手を二つもさらした彼女は不利であった。自分はたった一つで、しかも特殊能力はまだ明かしてさえいないのだから。
だが、もう一つの手も存在することを彼は知っていた。
実は、固有能力を二つ使うことなど簡単である。固有能力を持つ武器を二つ持てばいいだけだ。それだけやればあとはMPを消費するだけで誰でも発動できる。だが、彼女は剣を一つしか持っていない。ならば・・・
(どこかに剣を隠し持っているとかな。だが、そうした場合・・・)
そうした場合、武器は実体化しているのが条件である。そして肌に触れていること(布越しでもいいが)。その二つがそろうと初めて固有能力は発動するのだが、ここには問題が存在する。隠し持った剣に足を引っ張られるのだ。剣を隠し持つということは余計な重量を背負うということであり、このような高度な戦いの中であってはむしろ邪魔だ。だからいつか彼女はバランスを崩す。その隙を狙い殺す。それが彼の考えた計画であった。
「フハハハ、なら行くぜ!!」
そして、己の勝利を確信したガルバダは相手の剣をはじき距離をとってから全速力で相手へと迫り剣を振り下ろす。ガキンッと互いの剣が当たり合う音を聞いて彼はこれでバランスが崩れたと思いほくそ笑んだが、次の瞬間、左の翼の感覚をなくした。
「は・・・?」
なじみのない感覚に呆気にとられた彼が最期に見たのは、ただただ目の前に迫ってくる地面だった。
長らくお待たせして申し訳ございませんでした!!今回は予約をミスってました・・・。七月・・・って長いなあ。なぜ最新話を三か月後に更新することになってたんだろうか・・・。
さて、次回こそ早めに更新したいです!!大学生活も普通に授業が始まりオリエンテーションとかあったころより時間はあくと思います。たぶん。では、近いうちにまた。




