第三十三話 少年Aと人獣戦争2日目3
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前回のあらすじ:Bランク冒険者パーティー『自由の鳥』と第二位強食者サイクロスの死闘。
二日目の戦争は以下のような結果に終わった。
人間種側被害:徴兵4000死亡、3000負傷、内重傷者500、軽傷者2500、冒険者50死傷。
獣人種側被害:一般兵240死亡、200負傷、内重傷者40、軽傷者160。内、第三位強食者三人死亡、一人重傷、五人軽傷。第二位強食者一人死亡。
死者数だけで見ると人間軍が押されているようだが、人材的損失で見ると、やはり一般人などいない獣人軍の側が押されていた。それに、人間軍は後先さえ考えなければこの国のほぼ全員が戦力として動員することも出来るのに対し、獣人軍は連れて来た兵のみが戦力である。
だが、もちろん獣人軍はむざむざ骸を晒す為に攻めて来たのではない。獣人種と人間種には確かなステータスの差があるのだ。故に、同じ一般兵士と言えど獣人種と人間種のそれでは当然ながら能力差も出てくる。とはいえ、数人で囲めば拮抗できる為そこまでの戦力差がない限りは負けはしない・・・というのが獣人軍の見解であった。
流石に、第二位強食者を殺す輩がいたとは思わなかったが。だが、彼らにとって幸運なのは、勝者は命を捨てての攻撃、つまり相打ちで第二位強食者を討ち果たしたので、お互い痛み分けという形になったことだろう。ただでさえ、数が少ないのに味方の主戦力が殺され相手に痛手はないとか悪夢でしかない。もっとも、それは人間軍にも言えることであろうが。
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「そうか、サイクロスは逝ったか」
「はっ、報告によりますと、四人パーティーのBランク冒険者たちと相打ちのようです」
「・・・ならば、その四人の勇敢なものどもとサイクロスの冥福を祈ろう」
獣人種は力ある者を尊ぶ。それがたとえ自分たちの敵であってもだ。だから、彼らは強さに対して純粋に強欲で、それ故に強力な人材が育つのだ。敵だから、それだけで強者の強さの秘訣を捨て置かないのだから。
逆に言えば、味方でも弱ければ扱いがぞんざいなのだが。
そして、黙祷のために静まった部屋に、しばらくして王の言葉が響き渡る。
「しかし、サイクロスが四人とはいえ人間種に負けるとはな」
「・・・Bランクであるだけで、実際はAランク相当の実力をもったパーティーだったのかもしれませんね」
「そうだな。しかし、『石化の魔眼』が果てたとなると、少し気も軽くなるか」
サイクロスと『自由の鳥』の戦いは既に獣人軍側には末端兵士まで広がっていた。それほどまでに激戦とも呼べるものだったからだ。そして、その最後も皆が知っている。
エリーンという少女の持つ二つ目の特殊能力『石化の魔眼』がサイクロスを倒したと言うことを。
この『石化の魔眼』というのは超越級というレア度の上から三番目(下からも三番目)の特殊能力だ。しかも、そのレア度の特殊能力の中ではトップクラスに強力である。特殊能力としては、目を合わせるだけで効果を発動できるという簡易、かつ初見の者はまず避けられないというおまけ付きだ。効果は、目の合った相手を任意で石化できるのだが、エリーンは敢えて過剰使用したため、視界・・・ではなく自身から一定距離までのものを全て石化させるという効果を発動した。・・・そのため、彼らの戦った場所には完全に石化しておりどこか神話の一ページを彫像化したような、荘厳な雰囲気を放っていた。
「しかし、その『石化の魔眼』使いは上級魔法を使えましたからまず『二重保持者』ですか。・・・それで『石化の魔眼』とはとんでもなく恐ろしい者です。もう一人の魔法使いは味方を一掃する強力な魔法を行使しましたし」
「そして、槍の男は『ケルゼス・ランス』持ちだからな。・・・あの槍もそうだが、魔法武器は使用者を選ぶからな・・・」
魔法武器、それは数多くの英雄伝説に置いて、英雄やその仲間が使用した普通では考えられないほど強力な能力を有した武器だ。一応、慎也の黒刀ブランなどもここに分類される。そして、これらの武器はどういった条件かは未だ知られては居ないが、自身の所有者を選ぶ武器でもあった。もし、資格無き者が持つとその者が狂乱する、死ぬ、手が腐れ堕ちるなどと・・・様々な拒否反応を起こす。
だが、そのリスクを背負ってでもこれらの武器を求める者は多い。なぜなら、それはやはりこれらの武器が強力な物であるからだ。
たとえば、ジャーキーの槍、『ケルゼス・ランス』は相手を貫くことに特化した槍で、いかなる防御をしようと、『弾かない』限り、貫いてしまうのだ。
他にも、その相手のサイクロスが握った『カルバー・ケイン』は、どちらかといえば防御に特化した槍で、相手の攻撃をいなしたり弾いたりするのが得意であった。簡単に弾いても、相手にとっては槍を吹き飛ばされそうなほど強かったりする。・・・最も、受け止めるのは苦手なようであったが。
・・・と、これだけでもそれなりに求める意味はあるのだ。それに、冒険者などは強くないと魔物などに殺される可能性もあるし、そもそも魔法武器を持つのは一種のステータスでもあった。
「・・・だが、そのように強い連中が居るとなると、貴様の出撃は見送ることと成るか」
「・・・は、よろしいので?」
そして、獣王は、獣王国二位の実力者たるヴォルフを出撃させるのを見送った。
「他に居ては困るからな。そういうことは第二位強食者の数を増やすことによって対応しよう」
「はっ、ではそのように」
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「第二位強食者を打ち取ったぞ!!」
「「「オオオ!!!」」」
第二位強食者の死は、人間軍の士気を上げた。人間種側にとってはそれほどまでに絶望的な存在なのだ。もちろん、それは相打ちで『自由の鳥』が全滅したという情報は敢えて流さない。第二位強食者を倒しうる存在が自軍に存在する、それだけで人間は安心するのだ。・・・もちろん、中には『自由の鳥』全滅を知っている者も存在したが。
「あっりー?戦争始まっちゃったのにリーダーが来ない?なんで?」
そして、冒険者たちのためにあけられた場所で経営されているバーのなかで、女冒険者はそう呟いた。すると、その言葉を聞きつけたのか周りに男がよって来た。
「あん?なんだ、姉ちゃん?じゃあ、そんなリーダーなんかほっといて俺たちといいことしようぜ?」
「ガハハ、今日はめでたいからな〜、俺の頑張って夜の一戦やっちゃおうかな〜?」
下卑た目で見られたことに女は身震いし、立ち去ろうとする。すると、その手を掴まれた。
「おっと、ちょいと待ちな?どこにいくんだい?」
ニヤニヤとして男が尋ね・・・そしてひっくり返った。
「ぎゃふ!」
地面に叩き付けられてそんな情けない男を一瞥し、去ろうとしたとき、脳内に待ちわびたリーダーの声がかかる。
『・・・すまない、ナツキさん。連絡が遅れたよ』
「あ、リーダー。何かあったんですか?」
男に向けていた冷たい視線を一転、惚れた男に会う直前のようなふわふわした雰囲気を醸し出し、頭脳に響いた声に・・・もっといえば、『テレパシー』という魔法によって届けられた男の声に答えた。
この魔法は、スキル魔法使用者なら使える魔法で、遠距離にいる相手と連絡を取る時に主に使われる。・・・もちろん、距離と時間に比例し消費魔力も増えるのでそれなりに魔力を消費してしまうのだが。あと、この魔法は自分が見知っている相手にしか届かない。
『ちょっと、戦いがあってね。あ、でも・・・』
「え!?戦い!?大丈夫なんですか!?!?」
リーダーの口からポロリと『戦いがあった』と聞くと全力で心配しそう大声で叫ぶ少女。・・・だが、これは脳内にのみ響く声なので、彼女が叫んでも、急に叫びだした危ない人に見えるのだが。
『あ、ああ、うん、大丈夫。まあ、それでちょっと到着が遅れるって連絡をね』
「え?え〜。そんな〜」
そして、彼の苦笑いするかのような声を聞いてがっかりする彼女。周りに居た男たちは目を白黒させながらどうしようか考えあぐねていた。
『まあ、それはさておき、今日の報告。何かあったかい?」
「ああ。えーと・・・」
そして彼女はその日の戦争の結果をリーダーに報告するのだった。
こんばんは、作者です。今回の話は全話の後日談みたいな感じで・・・要は説明会☆です。といっても説明してるのは『石化の魔眼』、魔法武器・・・かな?あと、獣人種の慣習と。うん、読まなくても良さそうですね。文字数も少なめですし。
さて、実はこの作品、いつの間にか・・・三万PVを突破しておりました。・・・え?三万?って思われた方、まあ、そう思うかもしれませんが個人的には感慨深いものがあります。思えば見切り発車で始まったこの作品・・・まさか、ここまでくるとは。そんなこの作品ですが、ここまで続けられたのは読者の皆さんのお陰です。この場を借り手お礼申し上げます。
・・・え?堅苦しい?あ、はい、了解です。
さて、次回予告に入ります。
あ、次は主人公が来るみたいですね。ほうほう、下書きに書かれている主人公の台詞を一つ出しますか。
「ようこそ。俺の城へ」
・・・・・・・・・・・・・・全く意味分かりませんね。アハハ。次回はもちろん戦争三日目のお話です。自軍の実力者を倒され若干力を入れ始める獣人軍。逆に相手の主力級を倒せてますます力を入れる人間軍。そんな感じの話になるかと。たぶん。とりあえず、下書きの段階ではそんな感じです。
それでは皆さん。次回もお楽しみに(明日とは限りません)
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