第三十話 少年Aと人獣戦争1日目2
不定期ドーン!!
前回のあらすじ:戦争が始まる模様です!!
600人ずつ乗れる大型船三十艘を引き連れて獣人たちは戦場に上陸する。
その場は、木は生えておらず、視界に入る緑は足下の雑草のみであった。つまり、隠れることの出来ない場所で、身体能力に秀でた獣人種には有利だが、どちらかといえば器用さに秀でている人間種には不利な場所。だが、それでも獣人種を打ち倒し多額の報償を得ようとする冒険者の目はギラギラと輝いていた。
人間種の中でも戦闘力に秀でたものは獣人種を何人相手にしても傷一つ負わずに相手を殺し切ることの出来るものが居る。それは冒険者にこそ数が多い。故に彼らは遊撃手でありながら同時に最大戦力ともなり得る。そのため、目はもはや金のことしか考えていないものも存在する。
だが、そんな戦闘に秀でた人間種でも一握りしか勝ち得ない獣人種ももちろん存在する。それが、最上位強食者を代表とする強食者だ。彼らは弱肉強食という自然界の法則に従った強い故に地位も高い者たちだ。今回の戦争には一騎当千の最上位強食者二名動員されるているが、無論それより弱いが、それでも強食者の名を名乗れるほどに強い者たちが何十人も動員されている。それに加え獣人種最強と名高い獣人王もやって来て、かつ戦争に参加するのだ。その戦力は単に頭数の一万八千というものではない。
だから、四捨五入しても二万の獣人軍と、十万の人間軍、数こそ五倍の差があるがこの程度では優位性は、人間種側には無い。
物量と質。どちらが勝るのか。それが今回の戦争の肝でもあった。
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「いいか、お前ら!!この戦争には我ら人間種の誇りに賭けて負ける訳にはいかん!!心して敵将の首を取ってこい!!」
冒険者が集まる前で、甲冑に身を包んだ騎士然とした男はそう声を荒げて今回の戦争の重要性を伝え、冒険者たちのやる気を引き出そうとしていた。そこに、一人の冒険者が話しかけて行った。その冒険者は少年と言って差し支えないような年齢のようだったが、男に物怖じしていなかった。
「なあなあ」
「・・・なんだ、そこの若造」
「あんた、戦争は初めてなんじゃないのか?あんまり気負うと死ぬぜ?」
別に少年もこの甲冑の男を心配した訳ではない。ただ、何となく気になっただけだ。単純に一人でやってやるぞと燃えているのなら分かるが、こちらを巻き込むような言動をした理由が分からないから。
「敵を殺して死ぬのなら本望!!むしろ、死に際に多くを道連れにしてやるわ!!」
「あ・・・亜人種排斥側の方でしたか」
そして彼は納得した。これは面倒臭い方の人間だと。
「フン、貴様も人間種なら、どれだけ奴らを殺せるかに情熱を燃やすのだな!!」
「・・・んー、まあ、確かに多くを殺したら金貰えそうだけどねー」
そして、彼は冒険者らしかった。やはり、冒険者は家を継げなかった三男だとか、家が潰された貴族などが成ることが多いのでやはり金を一番に考える連中が多いのだ。
「金だと?そんなものはいらん!!いるのは敵の血だけだ!!!!!!」
「・・・ダメだこりゃ」
その結果、彼と甲冑の男が分かり合うことが不可能であると少年は悟り、そこから立ち去った。
そして、物陰で胸元のペンダントを開き、中にある絵を覗き込む。そこに描かれているのは笑顔の少女だった。
「・・・待ってろ、アリシャ。金を少し稼いだらちゃんと生きて戻るからな。結婚式は豪華にやらないとな」
「貴様ら、出撃だ!!!!!!!!!!!!」
「「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」
その時、遂に出撃の時間になったらしく金に目のくらんだ冒険者たちの雄叫びが地面をふるわせ、次いでの大移動で地面が揺れた。そして、少年は自分が乗り遅れたことに気付き急いで出て行って、そして上級から堕ちてくる眩しいものを見る。
「なんだ、あれ・・・?太陽か・・・?」
そして、少年はこの世から姿を消した。
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「報告です!!獣人種側の魔法使いによる、『サン・セット』により多数の冒険者の死亡が確認されました!!!」
「・・・全滅か?」
「いえ、腕利きの冒険者や有名どころはキチンと防ぎ殺された以上の獣人を殺しています!!」
「なら。よかろう」
「あ、あと!もう一つ報告が・・・」
「なんじゃ?」
「・・・本日出撃した第一徴兵隊が全滅しました」
「・・・そうか、やはり徴兵では敵わぬか」
一日目の結果は悲惨なものだった。あちらは五千、こちらは二万の兵力で挑んだのに結果はこちらが一万と二千ちょっとの兵と冒険者を失い、あちらは三百ほどが死傷者である。割に合わないように思えるのも当然であろう。これでは士気も下がるだろうことが予想されたが・・・
「冒険者は逆に景気付いているようですね。華々しい戦果を上げた者もおりますから」
「まあ、そちらが良いならどうにかなろう」
たしかに、人数的には徴兵された農民や王国兵の方が数が多いがその質的には冒険者の方に偏っている。だからこそ冒険者の士気が高いのはいいことなのだが・・・
「・・・ふむ。これでは王国兵が弱いという民衆の不満が出そうじゃな」
「・・・特にガルラ子爵が五月蝿そうですね」
ガルラ子爵とは、この業界では有名なクレーマーである。あらゆることに難癖を付けるし、しかも、それで金を稼ぐ嫌われ者だが、金を持っているが故に表立って敵対する者は少ないというとても厄介な人物である。その外見は細長い顔にニヤニヤとした表情がのるのが平常である。
「しかし、主力はまだ、入れてないのだな?」
「はい。輝黄剣のザルガフ、簒奪槍のグルググ、強欲張りのサンバなどのAランク冒険者を始め、王国兵団長シルヴァ、王国兵副団長オータックも出撃しておりません」
「・・・・だが、ここまで差がつくものなのか」
「ええ。彼奴らは身内同士で殺し合うという血まみれた文化をもつ野蛮なものどもですから、こと対人に於いては慣れ腐ってるんでしょう」
「ふむ、ならば・・・明日は冒険者のBランクも人数を増やすか」
「はい、ソレがよろしいかと」
この2人はこのような会話をしているが、実は冒険者たちも王国兵も抽選によって本日戦場に出るものが決まっているのである。・・・もちろん、細工はしているので今日はAランク冒険者は一人も戦場に出ず、Bランクは僅か二パーティーのみが出ていた。王国兵の方も意図的に操作されており、そこそこ強い部隊が出撃していた。・・・これは、王と軍務卿の2人しか知らないことだ。
「・・・ふむ、勇者を少し戦場に出すのもいいかもしれんな」
「いえ、王よ。それは三日目にしてはどうでしょうか?」
「・・・どういうことだ?」
「私が見た所、相手側も主力を出していません。そんな中勇者が彼らに遭遇し死んでしまっては・・・召還が面倒臭いでしょう。その際には他のもまとめて処分せねばいけませんし」
「・・・そうだな、じゃあ明日の様子をみてそしてどうするか決めるか」
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「・・・明後日ってこと?早すぎじゃない」
唇を噛み締めつつその話を盗聴していたのは遥かだ。今日も、城の高い塔の天辺に座って話を聞いていた。
実は今日は勇者たちは出入りを制限されていたが、彼女はこの日、冒険者たちの元ヘ行き慎也を探していた。が見つからなかった。
そのことを彼女嫌に冷静に受け止めて、そして彼女の脳は自分の中で嫌な結論をたたき出した。それは、敵側に彼がいることだ。
この前の彼との会話からして少なくとも自分たちのように王の元に付かないことは分かっていたが、それならそれで冒険者として参加するのでは、と考えた。しかし、それも否定される形と成った彼女は考えまいと思っていた結論を考えてしまったのだ。
「私、どうすればいいのよ・・・」
彼女のつぶやきを聞くものは誰もいなかった。
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「クソッ、足を失ったのは痛いな」
馬を乱戦で殺された慎也たちは現在走りと徒歩で移動していた。最寄りの村はなく最寄りの町は既に王都。馬を調達した直後に殺されるとは・・・と彼は思った。
彼らは人外なほど敏捷力があったがそれとて馬より少し早いだけでしかも体力が保つ訳ではない。だあら、こうして休み休み移動をしていた。
「このペースだと恐らくあと一日は移動に費やします」
「これを休憩無しに維持すれば到着は早まるというのが私の考えでございますが?」
アンとエルが心配そうに顔を覗き込むのを邪魔だとでも言うように慎也は手を振って、告げた。
「黙れ。ここで休息する。それは最初から決めていたことだろ」
「ですが・・・」
「ですがもへったくれもない。急いてはことを為損じるともいう。焦るな、焦るんじゃない」
「しかし」
「休め。これは命令だ。戦場ではたっぷり働いてもらうからその時にストレスは発散しろ、分かったな」
慎也はそう強く断じ、寝袋を敷いてそして寝入った。
「・・・・わかりました」
「了解でございます」
そして、三人は横に並び川の字に寝るのだった。
・・・えっと、戦争期待してた皆さんごめんなさい。説明会です。・・・・。あ、明日更新するのはちゃんと戦いの話です。本気ですみませんでした!!あしたも昼頃に更新する予定です!!




