第二十八話 少年Aたちの再会
前回のあらすじ
勇者が人探ししたり、謎の人物たちがあらわれたり、魔王らしき人物もあらわれた。
歴史上、最も長く続く王朝を知っているだろうか?
それは、日本の天皇家である。
一時期、政治の発言力を失った時代もあったが、どの時代においても天皇家はやはり、何かしらの形を後世に残している。
そして、その他にそのような長い歴史を持つ王朝は存在しない。それは、この世界も同様で、天皇家のような何十年、や何百年、ときかない年数を統治していた国家はない。今、俺のいるこの国、『人間王国ケラトニック』は偶々日本と同じ形をした列島に存在して東京辺りを首都・・・でなく、王都としている。
もちろん、たどった歴史も違い、平和主義への路線を進んでは居ないし、そもそも太平洋戦争のようなキッカケも無い。・・・強いて言うなら今度の獣人種との戦争がそれに当たりそうだが負けたら単純に隷属させられるだけだろう。
とはいえ、全く違う、というわけでもないのだが。
「・・・まさか、異世界に来てまでたこ焼きを食えるとは思わなかった」
「何か言いました、シンヤ様?」
「いや、なんでもない」
ハフハフ言いながらたこ焼きを美味しそうに食べるアンを尻目に俺は異世界では初めてとなるたこ焼きを食す。・・・ふむ、ソースもマヨネーズも鰹節もいい感じだな。お祭りの屋台だから仕方ないとも言えるが。ちなみに、となりでエルがたこ焼きを食べている筈・・・だが、ハフハフは聞こえない。まさか、熱を感じていない訳ではないだろうが、如何せん無表情なので分からん。・・・湯気は出てるんだがなあ。
「ハイ、リーダー、あーん」
「あ、ずるい!わたしも!!」
「ほら、あーんしなさい!!はやく!!」
「み、皆!もうちょっと落ち着いて!!そんな一気になんて・・・熱っ!!」
一方、一応少しの間だけ行動をとる斎藤たち『世界の漂流者たち』と言う名の自分のハーレムに囲まれて、たこ焼きあーんによる波状攻撃を受けていた。・・・ふん、ざまあ。
「あ、あの・・・シンヤ様、お顔が恐いですよ?」
「気のせいだ」
「で、ですが・・・」
「気のせいだ」
アンを黙殺して周りを見渡す。木から木へ、屋台から屋台へと糸が伸ばされて提灯がぶら下がっている。・・・そう、今日はお祭りなのであった。
屋台から立ち上る様々な香りが俺の鼻を蹂躙し、否が応にも食欲が刺激され、腹が鳴った。・・・まあ、いい。今日は楽しむとしよう。
「よし、お前ら、なんか喰いたのがあれば買ってやろう」
「あ、じゃあ、私、あれがいいです!あれ!!」
俺の言葉に目を輝かせたアンが指差したのは・・・りんご飴だ。
「ふむ、まあ、定番か」
アンに金を渡し自分で買いに行かせる。・・・買ってやるとは言ったが買ってくるとは言ってないしな。まあ、アンも俺が立とうとすれば自分で動こうとしていたが。
「あ、シンヤ様、一口要りますか?」
「おう」
そしてアンは戻って来た時にそう言ったので俺は遠慮なくりんご飴をかじらせてもらった。・・・ふむ、異世界でもあまり味は変わらないようだな。マズくないからいいが。
「あ?どうしたアン?そんなに顔を真っ赤にして」
「ふぇ!?あ、い、い、いえ!!なんでもないです!!!」
味をみながらふむふむと頷いているとアンが立ったままだったので座るよう促そうとそう言ったら、アンはそう言うなりどこかへ走り去った。・・・迷子にならなければいいが。
「で、エル?お前はなんかあったか?」
「ワタクシでございますか?そうですね・・・あの平らな焼きものがよさそうでございます」
そう言ってエルが指差したのはお好み焼きだった。・・・どうも具材をまぜるだけの混ぜ焼きなので恐らくは関西風お好み焼きだ。個人的には、そばやうどん、とか豚肉も重ねて焼く、重ね焼きの広島風も好きなのだがこの辺りでは見当たらない。・・・やれやれ。
「まあ、どっちもいいんだがな」
「?どっちとはなんでございますか?」
「ああ、気にするな、こっちの話だ」
そして、俺はお好み焼きを胃中におさめたのだった。
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「さぁて、一日くらい楽しまないとね!!」
「そやなあ。一日くらい許してくれるやろ」
「・・・焼きそばあるかな」
「たこ焼きはありましたね」
勇者四人は王都への帰り道の途中で見つけたお祭りに、懐かしさを感じて密かに紛れ込んだ。・・・とはいえ、今代の勇者は未だ活躍をしていないため、顔で分かるものなどいないのだが。だが、楽しもうとする勇者たちと裏腹に・・・
「あ、金ない・・・」
「う〜ん、ちょっと心もとないなあ・・・」
すぐさま金銭不足という問題が発覚し各自、どれを食べるかで悩むこととなった。勇者は数多くのクエストをクリアしていたが(クリア数で言えば勇者の方が慎也より多い)、装備やらなんやらにお金をつぎ込む必要があるのであまり財政的余裕はなかった。・・・反対に慎也は特殊能力による防御のお陰で防具は要らないし、黒刀ノワールなどは無料で、かつ手入れ要らずなので全く金はかからず溜まる一方であった。まあ、勇者の方は王城にいる時は食事代はかかってないのだが。
「・・・あんま遊べへんわ」
「・・・まあ、ちょっとだけでもリラックスするのは大切よ。とりあえず、明日の朝、さっきの目印を付けた木の下で待ち合わせでどう?」
「異議無ーし」
「同じく」
「そうやな」
「じゃ、かいさーん。静音、行こっか」
「あ、待って。春ちゃ・・・きゃっ!」
だが、しかし走り始めた春香を負おうとした静音はすぐにこけ、誰かにぶつかり尻餅をついた。そこで、そのぶつかった誰かが手を差し伸ばす。
「あー、すまん。よく見てなかった。・・・けど、アンタも周りを良く見とけ・・・って、ん?お前立峰か?」
いきなり自分の名前を呼ばれてびっくりしてその誰かの顔をみた静音は驚いた。それは彼女の知己だったからだ。
「え・・・、雨川くん?」
「ああ、やっぱりか。相変わらずドジだな、お前」
そして直球の感想を落とした。
「なっ、ド、ドジって・・・」
「おーい、静音。はーやーくー、誰と話・・・え?」
「あ?」
そこへ静音を迎えにきた春香と慎也がバッタリとあい、お互いに相手を見て硬直する。
「・・・春香か。どういう偶然だ、一体」
「・・・シン、その2人は誰?」
「は?」
春香の言ったことの意味が一瞬理解できなかった慎也だが次の瞬間正常に思考は働き後ろを振り向いてアンとエルを見る。
「現状の俺のパーティーメンバーって所だ。・・・ん?何だ、俺の顔に何かついているか?」
じとーっとした目で慎也を見た春香だが、慎也はその視線の意味を理解できず困惑する。ただ、静音は2人とも久々に会ったと思えないほど自然な会話をしていると思った。
「ねえ、シン。そっちの人、悪魔族よね?」
「ん?ああ、そうだな」
「なんで・・・」
「悪魔族・・・覚悟!!」
春香が慎也にエルのことを聞こうとした時突如、春香の後ろから剣を持った人物が襲いかかる。そして、その手に持つ剣はエルの首を・・・
ガキンッ!!
はねなかった。
一瞬で召還した黒い大剣がその人物の大剣を破壊して逆に、襲いかかった人物の首が・・・
「待て、エル。殺るな」
飛ばなかった。
慎也の静止にエルはちゃんと応じて寸止めでその大剣を止めた。
「今は祭りだ。余計な騒ぎは起こすな」
「了解でございます、マスター」
そう答えて黒い大剣を仕舞うエルを見てから、慎也は、襲いかかった人物、天ヶ崎憲成に向かって口を開いた。
「・・・で、天ヶ崎。いきなり俺の仲間に切り掛かりやがったがどういうことだ?理由次第では殺すぞ?」
「な・・・何やて!?悪魔族が仲間!?そこまで堕ちたんか!?」
「堕ちたとはご挨拶だな。そんなことより、俺はなぜコイツを襲ったと聞いているんだが?」
その時空気の圧力が増した。だが、天ヶ崎はそれに萎縮されながらも言葉を返した。
「亜人種は悪や!!なら殺さなあかんやろっ!!」
そういって、また剣を取り出し襲いかかってくる天ヶ崎の剣を今度は俺が黒刀ノワールを召還して弾く。そして、最高速度を持って首を刈り取るかの用に動かし、寸止めではないが当たる前に止める。
「亜人種が悪だと?それは経験に基づいた意見なんだろうな、天ヶ崎」
その状態で慎也は悪意と殺意込めた視線を天ヶ崎に送る。彼はビクリと体を震わせた。
「はいはい、そこまで!シン、暴れ過ぎ」
「正当防衛だろ、春香」
「それはあておき、剣を下ろしなさい」
フン、と鼻を鳴らして慎也は刀を下ろす。その瞬間、天ヶ崎は糸が切れた操り人形の用にどさりと膝をついた。
「ま、亜人種が悪とまで言わないけど・・・」
「な、なんやて・・・」
「天ヶ崎君は黙ってて。でも、悪魔族はあまりいい噂を聞かないわ?どうして一緒にいるのかしら?」
「成り行きだ。ああ、そうそう、春香、お前に言っとかないといけないことがあった」
「え?何?」
「俺の所へ来い」
キョトンとする春香。だが、それを気にせず慎也は続ける。雰囲気が雰囲気ならプロポーズだな、とか静音は考えた。
「これから戦争が起きるんだろ?この世界にしがらみなんてない。余計なものに首を突っ込む必要はないだろ?」
「・・・ごめん、シン。頷けない。私はやらなきゃいけないことがあるから」
「遅かったか」
「・・・違うよ。しがらみも何もこの世界にはあるよ?シンだって、その娘たちにあるでしょ?」
そう言って慎也は再度アンとエルを見る。
「そうかもな」
「あ、でもシンがこっちにくれば」
「お断りだ。・・・こっちってのは王族の下ってことだろ?」
「まあ、そうね。理由は聞いていい?」
「俺たちを捨て駒のように使う奴らには俺は従えない」
それを聞いて春香はやっぱりか・・・という顔をして頷く。
「分かったわ。・・・でも」
「春香、お前がこっちに来たい時はいつでも歓迎してやる。そのときは、王族に体するしがらみは捨ててこい。・・・その日が早く来ることを祈る」
そう言って踵を返す俺を「待って」と、春香が止める。振り返るとなにかを決心したような顔で春香は言った。
「・・・ねえ、シェーテルって町を知ってる?」
「ああ、港町だろ。邪神教団が襲って来た町でもあるな」
「・・・まさかだけど」
そう言ってその後の言葉を言わない春香だったが、付き合いの長い慎也はその後に続く言葉を完全に把握して返した。
「邪神教団を殲滅したのは俺だ。復讐の為にな」
「復讐?いったいなんの・・・」
「浩が死んだ」
その瞬間、その場の空気は完全に凍った。春香は目を見開き、静音はドクドクと心音が早くなった。
「邪神教団に殺された。だから、その報復をしたまでだ」
「・・・でも、慎也争いは何も生まないって前に」
「ああ。言ったな。だから、これは飽くまで俺の自己満足だ。誇ることの出来ない行為だ。・・・だが、俺は報復の為に殺す」
そして完全にだまった遥かに背を向けてたった一言だけ最後に言う。
「じゃあな」
そして、慎也は去った。それはあたかも、人間種と亜人種の隔たる壁をあらわしているかのようだった。
不意打ちドーン!
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