第二十七話 勇者たちの人探しと新たな影
前回のあらすじ
慎也に迫る勇者の魔の手。はたして勇者は、慎也を見つけることができるのでしょうか
ガヤガヤとした独特の喧噪に包まれた冒険者ギルドへと私と静音が足を踏み入れると、その瞬間、店内は水を打ったかのようにシンと静まり返った。
「え?・・・ええ???」
静音驚いているが、私はこういったことは想定済みだったのでとっとと入り、机を一つ確保し、静かになったギルドで声を上げる。
「すみません、情報屋さんいますかー?」
「え、あ、はーい」
そう言って私の呼びかけに答えたのは、お団子ヘアの背の低い女の子だった。・・・中学生くらいだろうか?
情報屋というのは、確かに身体能力さえあれば自力で情報をかき集められるかもしれないが、それ以前にいくつもの筋から情報を得て正しい情報を流してほしいと思うのだ。・・・それからすると彼女はとてもそのような情報屋には見えないのだが・・・。
「ど、どんな情報をお求めですか?」
「・・・んー、あなた、自分で情報を集めるタイプ?それともあらゆる筋から情報を集めるタイプ?」
おどおどとした様子で話しかけて来た少女の目の色とそして雰囲気が一瞬で変わった。それを見て、私はああ、こういうタイプかと納得した。
これもシンに聞いた話なのだが、情報と言うのは時には自分を護る為の命綱となることもあるらしい。そのため、一部の情報屋は自分が情報屋であることを公表せず、信用できる人間にだけ情報を売る、という人物もいるのだとか。・・・で、たまに、酒場でこういう風に『情報屋さんいますか?』などという素人がいて、それに反応して情報を売りにくる素人の情報屋もいるのだとか。で、素人ってことはやっぱり伝手とかパイプとかないからほぼ自力で情報を集めてくるのだが、困ったことにそれが当たり前だと思っている者も多いらしく、素人同士いつの間にか変な情報をつかみ闇へ消えて行くことも多々あるのだとか。
だが、その『素人』の中には偽の情報を敢えてつかませ、その人間を動かして自分は多大な利益を得るものも居るがそれは、素人に対しての警告の意味合いもある行動らしい。・・・つまり、こちらが『素人』でないと分かれば交渉次第ですごい情報をちゃんと売ってくれる人物だということだ。
・・・と、こう情報を大切にする精神を教えてくれたシンは見事に騙されて俗にいう『死にゲー』の偽の攻略方法によって道中で死にまくり、ボスでも死にまくりという大変ストレス溜まる経験をした直後だった。
「・・・あー、なるほど。素人じゃないのねえ。はいはい、じゃあ真面目にやりましょうか。どんな情報をお求めで?」
そう彼女は、おどおどした態度を幻のように消し去って普通に会話をし始めた。それを見て私はにっこりとする。そして、口を開いた。
「シェーテルの英雄について出来る限り本物の情報が欲しいんです」
そう言った瞬間、彼女は何か納得したような「あー」というような顔を浮かべた。
「うわさ話レベルは・・・」
「もう聞き飽きてるわね」
「・・・んー、じゃあ一つくらいしか無いかな」
「・・・あるんだ?」
「情報屋舐めないでよ?」
ふふんといって胸を張る彼女を感心したような顔をしてみる私。・・・まあ、リップサービスみたいなものだ。一つくらい情報が無いと困る。
「ま、期待しといてよ。それが、前にその英雄が居た所なんだけど、どうする?」
そう言って彼女は三本指を立てる。それを見た私は即座に一本指を立て、相手が二本指を立てた所で金貨を二枚払った。
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そうして訪れたのは、慎也が冒険者登録をした町だった。・・・もちろん、そのシェーテルの英雄の本名は知られてないので、その事実を春香が知ることは無いのだが。
そして、情報屋の話の通りの宿屋にいた宿の主人に話を聞くと
「あー、あいつか。え?特徴?・・・・んー、まあ、教えてもいいか。背は170cmくらいで黒髪黒目って珍しい組み合わせで、・・・・・・・他に特徴はねえなあ。・・・ん?あんたも黒髪黒目だな?兄弟か?」
「いえ、それはいいです。・・・他には?」
「ん〜、そうだな。まあ、別嬪なシスターを連れてたな」
「シスター、ですか」
シスターと言う情報は町のうわさ話でもあった。・・・まあ、高確率で本人とみて間違いないだろう。
「おう。とても中が良いようでな毎日部屋が騒がしかったな」
何故だろうか、目の前の宿主を殴りたくなった。・・・あれ、私疲れてるのかな?
そして、そのまま宿屋を出てその町のギルドへ行く。
「え?ああ、ヤンシングさんですか!そういえば、最近見てませんねえ。・・・あ、聞いてくださいよ。彼ってば初日から・・・」
ギルドの受付員(背が小さく中学生っぽいがれっきとした成人女性らしい)に話を聞くとクドクドとヤンシングという人の愚痴を聞かされた。その快進撃にはスカッとしたが、シスターの話が出るたびに衝動的に殴りたくなるのは一体どうしてなのだろうか?・・・今夜はたっぷり休まねばと思った。
だが、長時間話を聞いて得られたのは、彼は既にここから去り戻ってないと言うことだ。その日付は『事変』の前。つまり、こっちには戻らず、寧ろ私たちは逆方面に来たのかもしれない。
「ただ、黒髪黒目って日本人っぽいよね」
「っちゅうとアレかいな?まだ合流してへん10人のうちの誰かがその『英雄』ってことかいな?」
「可能性は無きにしもあらずってね。黒髪黒目は珍しいみたいだし十中八九そうかもしれないわ」
「・・・でも、そうじゃない可能性もある、でしょ?」
「静音の言う通り、そうかもしれないわ。まあ、悪魔の証明ってことになるのかしら。尤も、この世界には悪魔の如き外見の悪魔族がいるけどね」
「・・・まあ、情報があつまったんなら帰ろうぜ?」
「まあ、見つからへんのは仕方あらへん。王様には行方不明ですってゆうとったらええやろ」
そして私たちは帰路につくのだった。
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「ああ、主よ!私はこの時を待ちわびました・・・」
「ようやくか・・・。全く、長いこと待たせる主だぜ」
「思えば、『神』がいなくなって大分経ったよねー」
「しかし、主は降臨なされた。それこそが重要だ」
「ええ、そうです。主は来れり。とても素晴らしいことですよ。それでは、しばらく我々は主の行く末を見守りましょう」
「・・・ん?意外だな。お前ならすぐにでも飛んで行きそうなのに」
「いえいえ。確かに今すぐ御前に馳せ参じたいのはやまやまですが、こういうのは焦りは禁物です。・・・ですが、ああ・・・早くこの身を捧げたい・・・」
「・・・通常運行だねー」
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「では、定期会議を始めるが・・・今回も魔王様はいらっしゃらないのかな?」
「みてーですなー」
「どーでもいいー。僕は早く寝たい・・・」
「とある場所で突如行われる『定例会議』。そこには普段、まったく顔を合わせない者同士が集まっていた」
「・・・いや、それ何さ」
「独り言だよっ!」
ガチャっ、ギィィィィィ・・・・・・
「む。この蝶番、軋んでおるな。今度変えておくか」
「「「「魔王様!?」」」」
「今日もかっこいいーねー」
「あん、来たのか?」
「ああ、そう畏まらんでもいい。我は会議に来ただけだ。魔王直属部隊よ」
「はい、魔王様。・・・いつも通りにすすめてよろしいのですか?」
「ああ、頼むぞ。ルシファー」
「では。・・・先日、国内でも問題となっている邪神教団が遂に人間国へと攻め込みました」
「奴ら、反人間種のクセしてこっちでも騒ぎをおこしやがるからな。そろそろ、潰そうかと思ってたが遂に攻め込んだか。・・・で、どんくらい人間が死んだんだ?」
「0です」
「・・・はあ?俺は地獄耳持ってる筈なんだが流石に今のは聞き違いかもしれん。もう一度言ってくれ」
「人間側の損失は、冒険者を除き、0人。で、邪神教団の先鋒部隊は全滅・・・という報告が入りました。しかも、たった一人を相手に・・・」
「ほう。それは騙されてるのではないか?」
「魔王様、それはありません。私の信頼の置ける部下が見張ってましたから」
「・・・え〜、なんだっってそんな面倒くさいことしてたのさ〜」
「それは単に、邪神教団の長でも出れば殺させようと思いまして。・・・まあ、長も居なかったし代わりに派遣されたらしい魔骸族もあっさりとやられていましたね」
「ほう、何を見たんだ?」
「とても強そうな人間種でしたよ。ええ、もしかすれば『英雄となるもの』かと」
「・・・それは楽しめそうだ」
「そうですね、魔王様。あとは、それと同じ位の力量のものがあと幾人か現れればいいんですがね」
「そうだな。・・・まあ、いい。しばらくは泳がせよう」
「あれ、魔王様、戦いなさらないので?」
「『英雄』じゃないのだろう?なればそこまで成長して戦うことが最上。それまで待つだけだ」
「あら、珍しいわね魔王様。そこまで他人に興味を示すなんて」
「フン、まあ『英雄』というやつはどいつもこいつも『魔王』を倒しにくるものだからな」
不定期更新だからこそ、こうした不意打ち!どうも、作者です。最近寒いっすね!
ところで、今日何の日か知ってます?え、知らない?今日は国公立大学前期です!・・・いやあ、後期もあるけど後期の方が科目数少なくて楽なんです!
とまあ、そんなわけでノリノリでかいた今話、いかがだったでしょうか?
え?少ない?・・・。そ、それはほら受験終わったら更新速度あげるから、ちょっと待ってください!まあ、今週末もアップする予定です。お楽しみに!




