第二十三話 少年Aと元勇者
短めです。
「俺たちの前に召還された勇者・・・だと?」
若干の驚きを持ってそう返すと、その人物はニコニコしながら頷いた。
「そう。順番的に言えば、僕たちが三十五代目。君たちが三十六代目だね」
「・・・三十六、結構召還されているんだな」
「まあ、あくまでも記録に残っている礼が三十五・・・君たちを会わせて三十六だけどね。三十六代目勇者君」
「ふうん。・・・まあ、俺は勇者じゃないがな」
そう還した俺の言葉に先代勇者様はキョトンとした表情をしたが、そのあとにチラリとアンの方を見た。恐らくアンのことを勇者だと疑っているんだろうが・・・。
「そいつは森妖種だ。もちろん勇者じゃないしエルも勇者じゃない」
「なっ、亜人種!?」
森妖種と聞いて反応したのだろうか身構えようとする先代勇者様に殺意を込めた目で睨みつけると、ゴクリという生唾を飲み込むような音が聞こえた。俺の視線の意味が分かったのだろう。
「まあ、そんなことはどうでもいい。それでなんのようなんだ、先輩?」
「あ、ああ。まだ、自己紹介していなかったね。僕は斎藤竜成。『世界の漂流者たち』のリーダーをやらせてもらっているんだ」
「そうか。俺は雨川慎也。フリーの冒険者だ」
俺の言葉に斎藤はふむふむと頷きそちらは?と若干の警戒心とともにアンたちの方を見るので名前だけ紹介しておく。・・・と。
「お前、そういえば悪魔族だっとよな?」
「はい、そうでございます」
悪魔族。所謂悪魔の姿を持つ種族である。おおざっぱなくくりでは悪魔種という種の中の悪魔族という一族のもの・・・という風に俺は認識している。というのも一口に悪魔種といってもじつに色んな一族がいるのだ。たとえば、緑色の肌に子供のような短躯の小鬼族。いつぞやのモモタリューヌが戦った大鬼族。そして先ほど打ち倒した骸骨族や魔骸族などである。そして、中でも悪魔族は最強と名高い一族である・・・と俺は聞いた。
若干一名がその悪魔族というところに反応を示したがそれはもちろん斎藤である。
「それで、先輩。まさか、自己紹介だけしに来た訳ではないんだろ?」
「す、鋭いね・・・」
「この位普通だ」
俺のすげない言葉にアハハと苦笑いをする斎藤。
「まあ、率直な話、僕と組まないって話なんだけどね?ここらへんにいるってことはどうせ王族のやり方に気に食わなくて逃げて来たって所じゃないのかい?」
「ふうん。だとしたら?」
「僕たちと一緒に現王権を打倒しよう」
自分の目的をあっさりと白状する斎藤だったが、笑っている顔の表情とは裏腹にその瞳は全く笑っていなかった。ソレに対して俺の返事はもちろん
「断る」
の一言だけだった。それにまたしてもキョトンとする斎藤。
「え?で、でもここにいるってことは・・・」
「一応言っておくが先輩、俺はこの世界に召還された訳じゃあない。・・・そりゃあ勇者として召還された奴も中にはいたが、俺は道に倒れていた所を助けてもらった。王族とは会ってすらいないし、会うつもりは毛頭ない」
「で、でもギルドに張られている召集に応じないのは・・・」
「単純に王族って奴に興味がないからだ。豊かな生活?城の生活?・・・そんなもの、俺は望んでいない。それにそもそも、だ」
俺は一旦そこで言葉を切る。次に言う言葉は印象的にしなければならないと無意識で悟ったからだ。
「現王権の打倒程度、俺一人でできるだろうしな」
「なっ・・・・?!」
俺の言葉に斎藤は息を飲み、顔から血の気が引いた。その斎藤に対して踵を返そうとする俺の前にエルが俺を庇うように出て来て剣を一閃した。金属音とともにトサリ、と地面に何かが堕ちる。・・・どうやら武器のようだった。
どこから来たかは分からないがエルは分かったらしい。距離を詰めようとする彼女に俺は待ったをかける。
「エル、殺すな」
その言葉を告げた瞬間、エルの姿は一瞬で消え去った。そしてすぐに側の茂みから忍者復のようなものを来た人物の首根っこを掴んで連れて来た。
「あ、アリサ!どうして、こんなことを!?」
「竜成、甘いわ!!こいつはここで・・・・!!」
ぴっちりとしている忍者服なのにとくに凹凸がないのは男だからだろうかと思ったが、どう聞いても声が女なので俺は別の可能性を考えた。・・・ああ、そうかまな板か。
その心を読んだのか、キッと睨みつけてくるくのいち。
「殺すのか?まだこの世界にも慣れていない後輩を?」
ギロリと、くのいちを睨むと彼女はおびえたような表情をして震え始めた。
「・・・で、先輩。これは先輩の差し金か?」
「・・・・・・・・ああ。僕の差し金だ。・・・だが、彼女は従っただけだ。罰するなら僕だけに・・・」
「先輩、嘘だと分かる嘘はやめた方がいいと思う。・・・んで、勝手な主張だな。とはいえ生憎だが俺は裁く気も殺す気もないんだが」
そういってエルに手を離させるとくのいちはへなへなと座り込んだ。と、エルは俺に耳打ちをして来た。
「で、先輩。ここらは囲まれているらしいが先輩の手先ならやめさせたほうがいいぞ。降り掛かった火の粉は払う、ではなく消し去るぞ?」
「なっ、アリサ!他の人も連れて来たのか!?」
「き、気付かれてたの!?で、でもいいわ!全員かかりなさいっ!」
その瞬間前後左右の茂みからたくさんの人影が飛び出してきたが、誰も彼もエルの敵ではないと一瞬で分かった。
「エル・・・全員気絶させろ」
そして風が吹いたと思ったら斎藤とくのいちと、俺とアンとエル以外の全員が糸の切れた人形のように崩れる。襲撃は失敗だ。
そして、いつの間にか隣に控えているエルに「よくやった」と声をかける。こいつは予想外に強いことが分かった。ふむ。
「なっ、なんで!?貴方一体何者なのよ!?」
くのいちがエルにヒステリックに叫ぶがエルは全くに気にしない。それが返って彼女の感情を逆撫でしたようだが。
「さて、先輩。これはどういうことですかね?」
俺も彼女の叫びは無視して、先輩に問いかける。先輩の顔が目に見えて青くなった。
ご愛読ありがとうございます。作者です。
次回も更新は未定ですが、一ヶ月開けることはありませんのでご容赦ください。




