第二十話 エオウプレス邪神教団の来襲2
あけましておめでとうございます!
「な、なんだありゃあ・・・・」
Cランクのベテラン冒険者で、今回の『エオウプレス邪神教団撃退作戦』というクエストの司令のような役割を与えられているガイスは、目の前の光景に度肝を抜かれてそう呟いた。
とはいえ、そんな彼の驚きも無理からぬことだろう。なにせ、自分より年下の少年がいきなり剣を海に突き立てたと同時に海を凍らせ、何百という数の敵が待ち受ける船のもとへと単身突撃し、しかも攻撃を受けないままに相手に被害を与えているのだ。これが夢であると言われても彼はすんなりと受け入れられるような気持ちだった。
これが夢ではないとして、それじゃあ俺は英雄譚の一端でも見ているのか?
そう思った彼の目の前で信じられないことがあった。
なんと、敵船からボロボロのローブを纏った骸骨の集団が出て来たからだ。そう、魔骸族である。彼らはその身体的特徴上、打撃に弱いのだが、それを補ってあまりある程に魔法を扱うことが上手い。しかも、そのせいで個体によってAランクと認定される個体も非常に多い。まず、Cランクの自分一人では叶わない上に、それが数体。絶望的だった。
しかし、彼は数年前に似たような状況に出会ったことがあった。数年前、当時まだEランクの駆け出しだった頃にとある町に飛竜が数体襲来したことがあった。飛竜はドラゴンよりは弱いとはいえそのランクはAランク以上。・・・DランクやEランクが束になった所で勝てるべくもなくその町は壊滅するかと思われたその時、彼は出会ったのだ、『ヒーロー』に。
数少ないAランクの中でも有名なパーティー『サイクロン』に所属し、かつ『最硬』と謳われたランドがたまたま町を通りかかったのだ。
その後は凄まじかった。
そのあまりの強さを感じたのだろう飛竜たちが彼だけを狙いに定め襲ってくるの端から、ダイアモンドより堅いに違いないと言われている拳で頭を割り、鱗を剥いで剣を突き刺したり、または飛竜を地面に叩き付けたりする彼の姿は圧巻の一言につきた。
その光景に似ていると思った彼は次の瞬間、ゾクリとした気配に反応し後ろを振り返った。すると、そこには女の姿があった。
スラリとした長身で、出るとこは出ているスタイルであり男を惑わすような色香を放ちながらも両腰に差した二振りの剣が邪悪な雰囲気をまき散らしていてかえって女を美しく見せた。浅黒い褐色の肌に金の右目と赤の左目を持ち、こめかみからは山羊を思わせるような漆黒の角を生やしたその顔を見た時、彼は我に返った。
「な・・・悪魔族だと・・・?」
獣人種にも角を生やす者は数多いるが、彼女のように黒い角を生やすのはたった一種族を於いて他にいなかった。それは悪魔族。この世界で最も戦闘に特化した特殊能力に恵まれている人類が最も警戒すべき相手だ。
また、特化しているのは特殊能力だけではない。彼らの戦闘力、基本スペック、寿命どれをとっても人類に敵う者はない・・・どころか悪魔種全体を見ても敵う者はない。正真正銘最強種族、それが彼らである。
「・・・ん〜、そろそろ終焉でございますね。やや、来るのが遅すぎた、ということでございましょうか?」
そう呟いて女はこちらを向く。その目の冷たさに心臓を鷲掴みされたかのような感覚になるが、彼は震えることより剣を抜くことを選んだ。そして、彼が剣を抜いたのを確認すると彼女は目をスッと細くして言った。
「おや、ワタクシに挑むのでございますか?ワタクシ、雑魚には構わない主義でございますが剣を抜き殺し合いを望むというのであれば容赦なく殺しにかかる所存でございますよ?」
その圧倒的な殺意と存在感に打ちのめされそうになりながらも彼は言葉を紡いだ。・・・女にではなく冒険者たちに。
「やれ!!こいつも討伐対象だ!!」
そういって走り出した俺の体の感覚がなくなり地面に倒れる。・・・あれ?と思っていると誰かが倒れたのか俺の前にどさりと誰かの体が倒れて来た。・・・ん?こいつの手にしてる指輪・・・俺の結婚指輪に似て・・・・ててて・・・・がががががが・・・。
そして、Cランク冒険者のガイス以下、十数人の冒険者はこの世を去った。
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「やっぱり雑魚でございましたね。・・・やれやれ、剣に付いた血を拭くのも楽ではないのでございますが」
その時、悪魔族の女はアンジェラに気付いた。が、彼女が何を持ってないのに気がつくとあっさりと剣を戻す。そして微笑んで言った。
「安心するとよいでございます。ワタクシ、敵には容赦ないのでございますが一般人を手にかける程血に飢えている者ではないのでございます故」
「あ、ありがとうございます・・・?」
何故か礼を言うアンジェラに首を傾げた。その所作にアンジェラは思わず安心して尋ねた。
「あの、お名前は・・・?」
「ワタクシでございますか?ワタクシはエルセリアでございます・・・っと、それではあちらも決着がついたようでございますのでさらば、でございます」
「え?あ、ちょっ」
ちょっと待ってと言うアンジェラの言葉を聞く前にエルセリアは去って行った。ただし、去って行ったのは他ならぬ彼女の主がいる所だった。
「・・・嘘、シンヤ様」
バッと慎也の方を見るとそこにはエルセリアが嬉々とした表情で剣を慎也に振り下ろすのが見えた。
「シンヤ様っ!!」
嫌な予感がしたアンジェラはそう叫ぶが、彼女の声は戦場にいる主には届かなかった。そして、彼にエルセリアの剣が・・・
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虫の知らせというものがあるらしい。たとえば親族が無くなった時、茶碗などが割れて何か嫌なことが起こったような気がすると言うアレである。
正直、すでに両親を亡くし春香とその家族、そして今は亡き浩を除いて親しい人間などいない俺にとってそんなことがあったとしても、俺には起こり得まいと思っていた。
他にも俺は信じていない者があった。幽霊や妖怪や、霊魂とかのあやしきものと、五感とは異なる知覚手段、即ち第六感。
しかし、俺はそれを今撤回する必要があるのかもしれない。なぜならこのとき、俺は今まで感じたことのない嫌な予感を感じて後ろを振り向いた。するとそこに褐色で金と赤の目を持つ角の生えた女が立っていてその両手で持った幅広の西洋剣を振り下ろしているのを見たからだ。・・・紛れも無く直感と言う名の第六感が働いたのかもしれない。
そして、振り下ろす速度は、かなり高レベルになっている俺の目にも留まらないスピードで、そのためスロット2が発動し、いつも通り攻撃を完全に防ぐ筈だった。
「・・・な・・・に・・・?」
だが、その剣はスロット2の障壁を突破は出来なかったもののひびを入れていたのだ。・・・物体の速度を完全に0にするはずなのに。
呆然とする俺の目の前で女は剣を振るう。二回、三回、四回・・・それが五回になってスロット2の障壁が破られた瞬間、俺は我に返った。
「『秩序無き世界』!!
ドクン、と脈打つような音と同時に俺のMPが空っぽになって俺の体を倦怠感が支配するとともに世界の時が止まる。・・・俺のスロット6に込められた『秩序無き世界』が発動した。・・・これは単純な能力だ。俺の周りの時間の速度を極めてゆっくりにすると言うものだ。だが、これを使うとかなりMPを消費して継戦能力がなくなるのだがそんなことをいっている場合ではない。俺は剣の軌道から避けて女の後ろに回り召還した黒刀ノワールを突きつける。そうしたところで十秒が経ち遅延した時間は元に戻った。
「フッ!」
動き出した時間に彼女はその剣を振り切った。俺がいたなら間違いなく一刀両断されただろう一撃だ。あまりの威力に衝撃波さえ発生し、俺の目の前にあった獣人族の死体が切り裂かれた。だが、この勝負は・・・
「動くな。動けばこの首・・・何っ!?」
首に突きつけた筈の黒刀ノワールが弾かれた。咄嗟に召還した白刀ブランも弾かれる。丸腰になった俺に漆黒の剣が迫るが・・・・。
ガキン!!
寸でのところでスロット2が再発動する。・・・が、再びひびが入った。だが、それだけでも時間が稼げれば十分だ。俺は速度がなくなり空中に留まったままの漆黒の剣に、左手に持っていた氷刀アイシアをぶつけて、叫んだ。
「『氷結波動』!!」
その瞬間氷刀アイシアの二つ目の固有能力が発動した。氷刀アイシアの纏う冷気が一斉に目の前の女を襲う。
「くっ!」
女は剣を手放して後退するが、下半身は凍っていた。だが、何か策があるのだろう。なにかをしようとする女にしっかりと狙いを定めたまま、俺は右手で指を鳴らした。
こんにちわわー。作者ですお久々ですあけましておめでとうございます(2回目)。本当は冬休み入った所だし更新しまくろうかと思っていたのですがここで重要なことに気付きました。
・・・この話血みどろだよ、と。いや、戦争なんで仕方ないんですが聖夜とか正月とか言うおめでたいときにこれを更新するのは如何なものかと思いました。・・・いや、聖夜とかに血みどろな話読みたくないですよね?だって聖夜ですよ?確かにリア充爆散しろとかは思いますがそれとこれとは話が違います。
というわけで(言い訳じゃないですよ!)俺は更新せず書き貯めておくことにしたのでしたー。とはいえ、毎日更新しているとストックがすぐ切れるので新しい話が一話で来たらふるいの更新という形で暫くは行きたいと思います。まあ、最低二週間に一回は更新します。あくまで最低ですよ、ええ。
こほん、では今回はここで終わります。
誤字訂正、感想、評価、ブクマ登録orお気に入り登録、気が向いたらどしどしお願いします。あると次回更新が早く・・・(なるかもしれない)。ま、まあ、すべてはリアルでの忙しさによるんですけどね。
さてさてでは最後になりましたが、皆さんよいお年を!




