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少年Aの異世界漂流  作者: 樹実源峰
第一章 第二部 冒険者ヤンシング編
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第十七話 少年たちの別れ 前編

いよいよ第一章第二部クライマックスが始まりました。

 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。おごれる者も久しからず、唯春の夜の夢の如し。猛き者もついには滅びぬ、偏に風の前の塵に同じ。

 言わずとしれた世にも有名な平家物語の冒頭部分である。俺はこれを一種の虚無主義でも無いかと思っているのだが、その辺の論争は今は置いておこう。


 幾ら強くとも、いつかは廃れてしまう。そのような意味もあるので、俺にはあまり関係ないかと思っていたのだが不思議と胸に残った言葉だった。・・・まあ、当時は目立たないことをモットーにしてたし、目立つ技能などなかったからな。そして、俺はこの言葉をついぞ、この世界で大切なものを失うまで思い出すことはなかったのだ。


 それを幾ら怨もうと、悔やもうと、失ったものは戻ってこない。それを自覚するのはいつもなくしてしまった後だ。


 あの時、俺は自分の立場を弁えておけばどうにかなったのか。それともどうにもならなかったのか。

 いつも、俺はそれを考えて、その度に頭を振る。どうやっても失われたものは戻ってこないのだから。歴史にはもしもが通じないのだから。


 幾ら神ともてはやされても時一つ、自在に操れない身である俺がすべきことはやはり・・・後悔、なのだろう。そして反省をして、後に活かす。二度とこういうことが起こらないように。起こさないように。


####


 大火山サーテリン、絶えず溶岩が山の周りに流れ込み、夏には花火のような噴火をすることで有名な山だ。とはいえ、溶岩がごろごろ流れるのでこの近くに住んでいる人は皆無。冒険者も、ベテランしか訪れない程危険なエリアである。周りを探索するのも山登りするのも危険だが、その山にある洞窟は珍しい鉱石を取れる所として有名である。


 そして今回、俺、雨川慎也と上野浩とアンジェラの三人は、クエストでこの山にある珍しい鉱石の『火生みの石』を取る為に訪れていた。


クエストランクはA。というのもこの火山は外見からもの凄く危険そうだというのに、その内部もCランクのモンスターが闊歩する超危険地帯なのである。しかも、その『火生みの石』を拾える最奥部にはAランクのモンスターが出るというのも理由の一つだ。とはいえ、かなり報酬金も高く、普通のランクのパーティーでも受けるかどうか迷うような場所であることは間違いないが。


 ちなみに、その最奥部のモンスターといのがフレア・ドラゴンという炎属性を持つモンスターである。このモンスターの厄介な所は、生半可な炎属性攻撃に対しては逆に吸い取られるという能力があることと、弱点属性の水属性に対する対抗策も備えている。

 通常、炎属性は水属性に弱いのだがこのモンスターは、外皮に溶岩の鎧を纏うことにより水属性に耐性のある土属性をも兼ね備えているのだ。


 つまるところ、このモンスターは一回溶岩の鎧を砕いた後に水攻めをするのが効果的なのだが、その溶岩の鎧にしても生半可な水属性攻撃は効果がないと来ている為、難易度はAランクのモンスターの中でも最上位なのだとか。


 まあ、俺には関係ないか、そう思って目の前をみる。そこにはフレア・ドラゴン、溶岩を纏ったドラゴンがいた。その口からはあまりに高温すぎてプラズマと化した青い息が出ておりパチパチとした音が俺の耳にも届いてくる。そして、フレア・ドラゴンは何の前触れもなくその息を俺に向かって吐き出す。電光石火、なんて威力で突っ込んでくるプラズマのドラゴンブレスはしかし俺の目の前で見えない壁に阻まれる。スロット6に設定された能力の『致死威力の攻撃の威力を0にする障壁を形成する』が発動したのだ。


 速度を0にすれば物体の振動は止まる。つまり温度が伝わらなくなるのでこちらには全く影響はないのだった。


 さて、と俺は右手に持つ刀を一瞥する。そこには綺麗に細工されたかの用な美しい、氷の刀身を持つ刀がある。透き通ったガラスのような刀身はまるでそれ自身が宝石のように荘厳な雰囲気を醸し出している。氷刀アイシア。先日俺が手に入れた新しい武器にして、黒刀ノワール、白刀ブランに並ぶ最高希少度を誇る刀だ。

 コイツの固有能力は、切った相手を凍り付かせて殺す『氷結斬撃コキュートス』。効果時間中の三分間は切ったものは全て凍り付く凶悪な能力だ。冷却クール時間タイムは一分と割と長いが。


 しかし、そんな刀の弱点は、水属性に耐性のある的には効かないということなのでまずはあのドラゴンの鎧を壊さないといけないのだ。


「さて、行こうぜ」


 赤いポンチョのようなものを纏った浩がそう言う。この赤いポンチョは彼が、先ほど狩ったサラマンダーたちの皮を『等価交換フェアトレード』により作り替えたもので炎属性にたいしての抵抗にボーナスを持つアイテムらしい。俺もアンジェラも被っている。とはいえ、飽くまで耐火である防火ではないため過信はしないが。


 そして、今回の作戦だが、コレは実に簡単だ。セオリー通りと言ってもいいかもしれない。まず、浩の特殊能力スキルを用いて土や岩でできた弾丸を俺が投擲する、というものだ。そして、鎧を剥がした後に俺が特攻し氷刀アイシアの『氷結斬撃』によってとどめを刺す。それだけだ。


 ちなみに、アイツを殺すだけなら無限大の重力をかけるだけでぺしゃんこになるのだが、そうすると一切の素材が剥ぎ取れないためその手段はいざというときまでとらない。流石にAランクの素材は惜しいのだ。

 もう一つ理由があるのだが、それはステータスがあまり上がらないということにも起因している。冒険者の間には常識なのだが、ステータスの上がり方には傾向があるのだ。


 例えば、俺の場合は『近神者パーフェクト』により、MPやHPが大量に削られて行くため大幅にアップしているし、よく走ったりするのでAGIもそこそこ上がっているのだが、肉弾戦を全くしないためATKとDEFは伸びが良くない。

 一方でアンジェラは、『神の導き(ガイダンス)』により身体能力が上がるのでATKやDEFも高いし、また森妖種エルフであるためMPやAGIもやや高い。と、このように酷使される能力が上がりやすい他、種族ごとにボーナスがあるのだ。人間種ヒューマン?・・・過不足なしって感じか。


 まあ、そのような理由で今回は俺の足りないATKやDEFを上昇させるための計画である。体は資本とか言うしな。・・・とはいえレベルの所為で、俺のATKやDEFは一般人から見ると化物レベルなのだが。


「ほれ、出来たぞ」


 そう言って浩が投げて来た銃弾を受け取り、一発をためし投げる。浩の能力により密度をかなり上げ、強度を上げられた一品は・・・フレア・ドラゴンの左足にに大きな穴をあけた。フレア・ドラゴンは倒れた▼


「「え?」」


 とはいえ、流石に足一本でやられるドラゴンではないのだが、足の重要な腱でもぶち抜いたのかよろよろと立ち上がろうにも再び倒れる。そのままゆっくりと俺は近づき、背中にアイシアを突き刺す。


「『氷結斬撃』」


 そう言った瞬間、傷口からパキパキと音を立ててフレア・ドラゴンが凍っていき、かつ周りの気温が下がって行く。この刀の能力の一つだが、抜いた瞬間から全てを凍らせるかのように周りの温度を下げてくるのだ。持ち主には効果はないが・・・アンジェラ達の体に悪いため、すぐに仕舞う。そして、フレア・ドラゴンは内から体を凍らせて絶命したらしい。


 ・・・目の前が真っ暗になりそうだった。


そこでギルドカードを取り出しステータスを見るとレベルが上がっていた。


名前:ヤンシング

性別:男

種族:人間

年齢:17歳

出身地:不明

職業:冒険者

所持金:730,206,809,000C

登録称号:メルトスライムデストロイヤー


Lv.156

HP:6844/7048(9784)

MP:7796/8896(19687)

ATK:860(2580)

DEF:754

AGI:5963


装備品:氷刀アイシア(ATK×3,HP+1000,MP+1000)

   :賢者の首飾り(MP+1500)


特殊能力スキル】:『近神者パーフェクト』-{スロット1}{スロット2}{スロット3}{スロット4}{スロット5}{スロット6}{スロット7}{スロット8}


称号:異世界人・人殺し・シスターの御主人様・近神者・悪魔・サラマンダーキラー・メルトスライムデストロイヤー・黒刀ノワールに選ばれし者・白刀ブランに祝福されし者・氷刀アイシアの所持者・ドラゴンスレイヤー・超人


 新しく称号が二つ増えたようだ。とはいえ、ドラゴンスレイヤーか。なにか補正でもあるのだろうか、と思って見ると俺は後悔した。


『ドラゴンスレイヤー』・・・ドラゴン退治を成功させた者の称号。全ての攻撃に対ドラゴン属性が付加される。


『超人』・・・150レベルを超えた証。全てのステータスに強化補正が掛かる。


「おう、お疲れ」


 そう言って肩を叩かれ俺は現実に復帰する。浩の声には疲労の色が現れていた。彼の能力もまたMP消費するタイプだろうから仕方のないことだとも言えるが。


 そんな浩の肩を叩き返して、先ほどポケットに入れた銃弾を見る。どれもこれも形がよくできていて本物と見分けがつかない位精巧だった。・・・最も、本物は見たことがないのだが。


「浩、これを貰っていいか?」

「ん?ああ、いいぞ。別に銃創れるって訳じゃないからな・・・」

「創れないのか?」

「部品と組み立て方をしってりゃ創れたが生憎とそういう知識はなくてね。まあ、飛び道具として使うならお前のほかに使える奴はいないと思うしな」


 なんでも、彼の能力は飽くまでものを作り替えるだけであり、絡繰りとかが作動して動くものは直接創れないのだそうだ。たとえば、時計を創ろうと思っても時計の形をした何かが出来上がるだけで動きはしないらしい。だが、仕組みを知っていると、その部品を全て作り上げることによって組み立ててからちゃんと動くものが出来るのだとか。


 しかし、俺の場合、銃がなくてもちゃんと投げればちゃんと能力による補正が掛かって相手の方に飛んで行くのだが。・・・ひどいチートだ。


「しかし、あっさり終わったなあ」

「・・・『近神者』が絡むと一瞬で終わるな」

「まあ、無限大までの力を出せるからなあ。やろうと思えば小石でできたんじゃねえか?」

「変な圧力がかかって途中で砕ける可能性のもあるけどな」


 そんな無駄話をしつつ、解凍したフレア・ドラゴンから素材を剥ぎ取っていると、戦闘中に遠くに避難させておいたアンジェラが戻ってくる。それを見て俺は言った。


「さて、帰るか」

次回で第一章第二部は終わり、第三部の戦争編へ入って行きます。どうして慎也は巻き込まれたか、勇者達はどうなったか、国王の陰謀は・・・・そんな感じで書き上げて行きたいと思います。


 次回、第二部最終話『少年達の別れ2』、タイトルの意味は何なのか。楽しみにして次回をお待ちしてください。また、更新日時は未定です。

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