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少年Aの異世界漂流  作者: 樹実源峰
第一章 第二部 冒険者ヤンシング編
16/47

第十五話 少年Aとクッキー

クエスト名:クッキーを配達せよ!

クエスト内容:クッキーの配達

依頼者:ミセス・クリッククッキング

クエストランク:E


「・・・なあ、これって」

「流行したクッキーク◯ッカーを連想させるなあ、こりゃ」

「?この方がどうかなさったんですか?」

「ああ、いや、ちゃっとな・・・」


 クッキー◯リッカー、かつて俺が元の世界にいた時にあったゲームだ。ポチポチとクリックすることによりクッキーが生産されてそして・・・というゲームだ。懐かしいな・・・。


「クリックって名前だが、クリックしてる訳じゃねえよな?」

「・・・多分、な」


 半眼でクエスト用紙を見ながらそう呟く浩に俺はとりあえず頷く。・・・絶対そんなことはないはずだ。


「そもそも何をクリックするかって話だよな」

「ん〜、で、受ける?」

「Eだろ?」

「・・・クッキー美味しいかもしれな」

「よし受けるぞ、アンジェラ」

「あ、はーい」


 美味いものは食さねばなるまい。その一心で受注が決まった。


「でも、確かにこのクッキーは絶品なんですよね」

「ん?アンジェラ、知ってるのか?」


 何かを思い出すような顔をしていた彼女ははい、と頷いて


「故郷にいた時に人間界で一番美味しい者だ、と旅の人がくれたことがありました」


 ・・・一体何年前の話なのだろうか?


####


 そして、クエストを受けて工房に来てみると・・・


「アンタ達が今回の配達人かい?早速だけどこいつらを運んでくんな」


 そう言ってくいっと後ろに積まれたクッキーの詰まった袋を指差すグランマ。・・・マジで実写化したような感じだったので俺と浩は顔を見合わせた。

 そして、クッキー配達が始まるのだが、これが予想以上に大変な仕事だということに俺らは思い知らされることとなった。


####ケース①:浩の場合####


「・・・。マジかよ」


 俺ことイケメン、上野浩が見上げていたのは相当に大きい樹だった。具体的な大きさは分からないが、あれだ。「となりのト◯ロ」なんかで出て来た樹の数倍はあった。・・・正直、ここに住んでる奴なんていないような気がするのだが、コレもクエストなので仕方がない。

 ちなみに、ここに住んでいるのは、人間が敵対していない数少ない種族の妖精種フェアリーだ。その連中はどうやらこのクッキーが大好物らしい。・・・すべてグランマの話である。


「普通ならお供えって感じだと思うが・・・こりゃあすげえな、本当に」


 なんか◯トロが住めそうなサイズの洞もあるし、小型のドラゴンくらいなら乗っても平気そうな太い幹もあるそんな樹に、本当に住んでいるのか、と疑問に思うし、そもそも


「・・・あそこについているドアが入り口だよな・・・」


 その樹の・・・地上50mほどの所にドアがついていてとても人間は上れそうにない。これがEランクとか詐欺だろと思ってしまうが誰も離脱者はいないらしい。・・・以外とEランクはたくましいのかもしれない。


「ま、俺には関係ねえな」


 そう言って、俺はパンッと手を叩き一気に地面に手を合わせる。某錬金術士の真似事だ。ぶっちゃけ、この作業は要らないが、それだけであのドアへと続く土の階段が形成されていく。

 俺の特殊能力スキル、『等価交換フェアトレード』は簡単にいうと物々交換の能力だ。といっても、ただ単純に、大昔の人々のように食べ物同士を交換するとかそういうことではない。・・・というかソレが特殊能力スキルだったら泣ける。


 要は、某錬金術士の真似事ができるのだ。・・・流石に魂を戻したり、人を創ったり、「持ってかれた」をやったりはしないが・・・。


「ダ、ダ、ダメネ!!そんなことしないで欲シイノネ!!」


 という甲高い声とともにリカちゃんサイズ・・・おっとリ◯ちゃん人形サイズの光る物体が近づいて来た。そして、近づいて来たソレを見ると人間の形をしていた。ただ、少しだけ違うのは、それが背中から羽を生やしていたことと体が発光していたことだ。ティンカー◯ルみたい・・・ああ、これが妖精種フェアリーと、俺は納得した。


「自然は汚シチャイケナイ!!用ガアルナラ上がってくるね!!」


 そう言ってぷんぷん怒る妖精種フェアリーに、クッキーの袋を見せると一瞬で表情を笑顔にした。


「何ダネ、くっきーのでりばりーならそう言ッテ欲しかったね!!早とちりしちゃったね!!」


 言って欲しかったって、聞く耳もたなさそうだったろ、とは流石の俺も言わないことにした。そして文字通り舞い上がってる妖精種フェアリーに一枚の紙と小さい炭の欠片を渡す。


「じゃ、受け取りのサインをよろしく」


 と、言うと


「ほいほ〜い」


 と鼻歌でも歌いそうな態度でさささっと何かを紙に書いた。・・・しかし、ミミズ文字のようで読めない。


 これが魔法に愛される種族か・・・とそう思ってみて見るとこっちの視線に気付いたのか少し首をかしげる。が、それになんでもないと手を振って俺は帰ることとした。


 妖精種は人間種ヒューマンを合わせた人型の者の中で最も物理的力がない種族だ。中学生の子供ですら握りつぶせる位にその体は脆い。

 しかし、その代わりにその体のどこにそんな力があるのかという程に強力な魔法を操れる種族である。・・・一般に、魔法系の能力を持たない者でも努力と才能次第で学べる習得魔法までは使えるのだが、ソレより上の、それこそ強大な敵に使うような『必殺』級の魔法は使えない。しかし、この種族だけは、魔法系の特殊能力でなくとも、その魔法の一部を使うことができるのだ。しかも、ちゃんとした魔法系特殊能力の保持者は同レベルで他の種族の同じ特殊能力を持つ連中の中で二倍も三倍も威力のある魔法を放てる、まさに『魔法に愛される種族』。


 だが、しかし彼らは殺し合いを嫌っている為に戦場に立つことはない。もっとも、勝った所で魔法しか使えない彼らに勝ち目などないのかもしれないが・・・。


 ま、今日は面白いものを見れたと思った所でようやくクッキーに思いを馳せた。そんな妖精種が好むクッキー、どんなに絶品なのだろうかと。


####ケース②:アンジェラの場合####


 バサバサバサッ


「でぅっ!?」


 洞窟の中で飛び立ったコウモリの群れにビクリとアンジェラは反応した。その身は既にボロボロ・・・ではなかったが、服はところどころほつれていた。


「うぅ・・・なんで私が・・・」


 彼女は泣いていた。というのも彼女は洞窟は嫌いだ。コウモリは出るし場所によっては幽霊族ゴーストが出てくる所もあるからだ。まあ、要するに怖いのだ。

 じゃあ、何故彼女はここにいるかと言うとこれは厳選な抽選の結果だった。誰がドコに行くということを決めるのを面倒くさがった慎也が『じゃあ、クジでいいんじゃないか?』と言ってしまったのが原因だ。

 彼女は慎也の従者であるから反対できないし(そもそも反対するなどという考えが浮かばなかった)、自分が嫌だという理由で抽選の結果をねじ曲げるのを彼女は良しとしなかったからだった。それと、もう一つ


『あの子はね、日の光を浴びることができないから友達がいないのさ・・・』


 とグランマが寂しげに言ったのも理由の一つだった。


「そうです!!その為に私はここに来たんです!!」


 そう叫ぶとコウモリが飛ぶので再び怯える・・・というループを繰り返していたのだが彼女は学ばなかったようだ。しかし、今回に限って言えば、コウモリが飛ぶことは無かった。代わりにゴーレムが現れた。


「ゴガァァァ・・・」

「フンス!!」


 だが、そのゴーレムの顎を殴って一撃で倒し


「グァァァァ!!!」

「フンス!!」


 その後に出て来た黒い犬を倒すのはただ事ではないと思うが、彼女が持つ、人を助ける為なら奇跡も起こすとされる特殊能力の『神の導き(ガイダンス)』力の前には、ほとんどのモンスターは無力だった。


 コウモリ以外に怯えること無くばったばったと敵をなぎ倒した彼女はやがて洞窟の奥でドアを見つけた。木造のドアでまだ、ドアノブが真新しく綺麗だった。彼女はそのドアの前に立ちノックをした。


「ヘリンさ〜ん、クッキーですよー」


 ギィィィ・・・と新品っぽいドアのはずなのに古びた館のような音を出して開くドア。そこにいたのは青白い顔をしていながら目はギラギラと赤く光っている、尖った牙を持つ少年だった。


「吸血鬼です!?ヘリンさんをどこへ?!」

「・・・あの、僕がヘリンです・・・」

「え?そうなんですか?」

「・・・はい・・・」


 そこで彼女はグランマの言葉を思い出した。そう彼女は言っていたのだ『日光に当たるとダメだ』と。・・・まさに吸血鬼を表す言葉だった。


「なら、一緒にお茶しましょう!クッキーとお茶を持ってきました!!」

「・・・へ?」


 そして、その日ヘリン少年は初めて出来た友達と騒がしくも愉快なお茶会を楽しんだのだとか。その際にまた遊ぶ約束をするのだがそれはまた別の話である。


####ケース③:慎也の場合####


「ひ、怯むな!!かかれっ!!」

「物理現象に介入。この部屋にいる俺以外の生き物の足の裏の摩擦力を0に」


 つるんっとすべる黒服の集団を見て俺はこれ見よがしにため息をつく。なおも立ち上がろうとするが足の裏、もしくは靴の裏が地面にくっついた瞬間に滑稽にもつるんっと何度も競る奴らをみて呆れたのだ。


「別にアンタらを殺しに来た訳じゃない。俺はアンタらのボスに届け物があるだけだ。さっさとボスの部屋を教えろ」

「だっ、誰がお前のようなガキに!!というかお前、どこの組織の!!!!」

「あ?俺は誰のものでもない。俺は俺のものだ。早く答えてくれないとこの屋敷中を散策するハメになるんだが」


 そう言って、俺は目の前のどでかい屋敷を見る。まさしく豪邸とでも呼ぶべきソレは、侵入者を阻むための門があり、門番もいた。・・・今、目の前で転がってる連中がそうである。

 とはいえ、


「壊すとめんどくさそうだから飛ぶか」


 そう呟き俺は、パンパンと、手を二回叩く。するとふわっと体が浮き上がって高い門の上までたどり着いてしまう。侵入者を阻む為の門はその役目を果たしていなかった。

 そして、俺は門の上に立ってパンパンと、手を二回叩く。すると俺は急に、落とされた玉の用に落下して、地面に着地した。門の内側に。


「止まれ」


 そして黒服の集団に囲まれた。全員が全員弓をつがえており一斉に放てるようだ。


「何しに来た」


 その集団の中で唯一弓を構えていない男がそう言う。


「だから、ボスに届け物だっての」

「そうか。だが、ボスに毒を渡す訳にいかない」

「あ?毒?何言ってんだ、これはクッキーだぞ?」

「ふん、暗殺者の言うことなど信じられるか」

「・・・チッ、めんどくせえ」


 どうやら話が通じない連中らしいと俺は判断し、行動を始める。


「距離概念に干渉。俺の一歩を150mにする」


 そう言って俺は一歩を踏み出した時


「うごくなっ!!」


 とその男は言うが既に遅い。

 俺は一歩で屋敷の入り口にたどり着いた。

 ただしこのままだと俺は更に一歩で150m進んでしまうのでその前に『改変終了』と呟いてから一歩を踏み出す。さて、


「ボスはドコだ?」


 屋敷の入り口の両隣にいる警備兵のような黒服に声をかける。


「ま、真っ直ぐいってダンディなボスの肖像画が飾ってあるつきあたりを左に曲がって奥にあるドアをくぐってさらに右に曲がるとボスの部屋だって誰が言うか!!」


 頭の悪いツンデレみたいなやつだった。

 そいつの隣をかけ去り先程言っていた道筋を行くと、ドアを潜って右に曲がる直前に銃弾が俺を迎えてくれたが、俺に当たる前にスロット2の『認識外からの攻撃の速度を0にする』障壁で止められる。

 ソレを呆然と見る二人を白刀ブラン(鞘イン)でなぎ倒して奥のドアにたどり着く。そして、ノックをする。


「届け物だ」

次回もお楽しみに〜

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