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少年Aの異世界漂流  作者: 樹実源峰
第一章 第二部 冒険者ヤンシング編
12/47

第十一話 少年Aと伝説の英雄

おまたせしました。十話の続きです!

「いやっ、どういうことなんですかっっっっっっっっっっっっっっっっ!?」


 冒険者ギルド支部に受付嬢エリーナの叫び声が響く。そのあまりの音量に昼から飲み過ぎてデロンデロンとなっていた冒険者たちは頭を抱え込む。・・・そうとう来たのだろう。


 しかし、そんな彼らとておそらくは彼女が叫んだ理由を聞けば納得してくれるだろう。彼女は歴史的快挙(あるいは暴挙)を目撃してしまったのだから。あり得ない数のメルトスライムの討伐。今、本部や支部に詰めている『計測』という特殊能力スキル持ちのギルド員たちがどのくらいのメルトスライムが残っているのか調べている途中だが、その結果はおそらく・・・


「あっ、エリーナ来たわ!」

「見せてっ!」


 同僚の持って来た資料に一通り目を通し、そしてあぜんとする。


「そ、そんな・・・」


 力なくうなだれる彼女の手から落ちた資料を見て、俺、雨川慎也は固まった。


「シンヤ様!!メルトスライム全滅です!!すごいです!!」


 そう横でアンジェラが騒いでいる。・・・そう、資料に書かれていたのは次のことだ。


 〜支部・メルトスライム反応なし

 〜支部・メルトスライム反応なし


 と、そんな感じの文字がかなり続いたあと、最後の締めに


 以上の結果より、メルトスライムは絶滅したと予想される  ギルド長 セルベスタ・ビート印


 と書かれていた。


 その頃あたりにギルド中がざわざわと騒ぎ始めた。俺は、呆然としたままのエリーナが少し可哀想になって声をかける。


「・・・あー、別に一括じゃなくていいぞ?」

「金の方ですか!?少し可哀想になったなら謝罪の言葉とか慰めとかじゃないんですか!?だいたい勝手に魔物を全滅させないでください!!生態系が乱れるかも・・・」

「悪い、あれ、そんなに重要だったのか」

「いえ、別にあれは生態系を壊滅させるだけなんですから結果的に今回は良かったとも言えなくはないですが・・・」

「なら、いいな?」

「ええ!!今回に限っては、ですが!!というかそもそもどうやったんですか!?めちゃくちゃ遠いクレリンの地のメルトスライムまで消えちゃってるじゃないですか!!」


 開き直りかけた俺をそう簡単に許してくれないらしい受付嬢に俺は言葉を返す。


「いや、それは特殊能力スキルに関するから詳しい事はいえん」


 その答えは、この世界においては当たり前のものだったらしい。途端にピタリと口を止める受付嬢。


「・・・まあ、以後はこんなことしないと誓う。これでいいだろ?」

「当たり前です!!二度としないでください!!というか、問題はまだあります!!これです!!」


 そう言って彼女が指差したのは机の上に置かれたままの俺のギルドカードである。一部が金色でほぼ全体は銀と言うおかしな構成をしている。


「なんですか、この銀と金が混ざったギルドカード!?私こんなもの見た事ないですよ!?」

「俺に言うな。寧ろ俺が聞きたい」


 俺が分かるはずがない。普通、製作に関わっているそっちが知っているもんだろう。


「・・・まあ、だいたい示したい事は分かるんですよ?貴方の実力がBランク以上Aランク未満とかそういうことなんでしょう?ですけどそれじゃ困るんですよ!!BなのかAなのかはっきりしてもらわないと!!」

「・・・俺にキレるな」

「・・・で、これからまた(・・)やるんですか?」


 そのとき彼女が向けていた目は、諦観と絶望と無気力がやどったなんとも言え無い瞳だった。


「・・・いや、今日はもうやめよう。疲れたからな」


 その目にやられた訳ではないのだが、俺は今日はもうやらないことを決める。実際、HPとPPが空っぽになる感覚は回復したからって拭える者ではない。・・・なんというか気怠いのだ。


「そ、そうですか」


 その俺の内心を知ってか知らずか、受付嬢は明らかにほっとした顔で思わずイラッとしたが、大人しく宿へでも帰ろうと思い、ギルドを後にする。


 ・・・というか、所持金がもの凄いことになっているのでたぶんこの世界一番の宿に泊まっても一生暮らせるかもしれない。アンジェラも「エルフリア王国の国家予算何年分でしょうか・・・」とか言っていたし。ただ、


「もう一ヶ月、家賃を先払いしてあるからな」


 別に金は腐る程あるが、日本にいた時は一人暮らしをしていたので金にかんしては結構まじめに考える。悪く言えば、貧乏性だろう。


「ま、あそこの宿の飯は旨いし、ベッドもそこそこ良いから問題は無いが」

「むむ!?シンヤ様は私とアチラの食事、どちらがお好みなんですか!?」

「ん?僅差であっちか?」


 俺の独り言に反応したアンジェラの質問に俺はきわめて冷静に返し、アンジェラはダメージを受けていた。「私どうしたら、いいんでしょう・・・」とか呟いているが聞こえなかったものとする。


「そういえば、腹が減ったな。アンジェラ、なんか食いたいのはあるか?」


 と、その時俺は極めて重大な事案に気付きアンジェラに声をかける。なぜこいつの意見を聞くかと言うと、こいつのほうがここらに詳しいからである。

 まあ、要はオススメの店を紹介しろという意思を込めたのだが、アンジェラはジト目でこちらを見ていた。


「・・・食べ物で釣る気ですか?」

「そんなわけあるか。俺が腹減っただけだ。この辺りに詳しそうなお前の意見を聞きたい」

「ふーん、それなら街の人に聞けば良いじゃないですかー」

「おい、アンジェラ、こっちを見ろ」


 いじけたようにそっぽを向くアンジェラを、頬を掴んで強制的にこちらへと向かせる。その瞬間、アンジェラがゆでだこのように顔を赤くするが緊急事態の手前、どうでも良い。


「いいか?ここは俺のあまり知らない所だ。もしかしたら、俺の味の感性と違う店ばかりかもしれん。だがな、お前の飯を食わせてもらった事があるから分かるが、お前の味に関する完成はほとんど俺と同じで信用できる。今はお前だけが便りだ」


 敢えて、『だけ』を強調する。・・・昔春香に同じ手を使って食事を作らせた事があったな。あれは、確かに美味しかった。小学生のころの話だが、すでに才能の片鱗を見せていたという事だろう。


「・・・私『だけ』が便りなんですね?」

「ああ、その通りだ」


 予想通りかかったアンジェラが同じく『だけ』を強調するので俺は頷く。チョロ・・・おっと、『神の導き(ガイダンス)』などという人助けに特化した特殊能力スキルを持った者らしく、優しい心を持っているようだ。


 そして、ヨロヨロと歩き始めたアンジェラについていった先にあったのは、一件の廃墟寸前の小屋だった。

 窓は割れ、屋根から草が生える程にぼろぼろな家。どう見ても人などいなさそうだし、間違っても店には見えない。


 そんな俺の感想とは裏腹に、アンジェラはその如何にも一回叩けば倒れますとでも言うようなドアをノックする。


「ガ・・・ガンさーん、私です!」

「じゃかしいわい!そんな怒鳴らんでも聞こえるわ!!」


 怒鳴り声とともに家の主らしきじいさんが一人飛び出して来た。薄汚れたシャツによれたズボンをはいた、どこにでもいそうな雷ジジイとでも評されそうな老人。


「そもそも私とは誰じゃい!!コンコンチキ!!」

「わ、私です!!アンジェラです!!」

「・・・あぁ、おっぱいたゆんたゆんのアンジェラちゃんか」

「どういう判断基準ですか!?」

「んで、そっちのは誰じゃい?」


 そう言った老人はこちらをジロリと睨みつけて言う。その言い方が、腹が空いて少し気が立ってる俺の不機嫌メーターを上昇させる。


「人の名前を聞く時は自分からだろうが」

「・・・ほう、押し掛けて来たのはそっちじゃから主たちが名乗るが筋だと思うんじゃが・・・・のっ!」


 そう言って老人は目に留まらない。レベル96でアンジェラも近くにいる最高状態の俺の目にすら負えないスピードで拳を、脳天めがけて突き出す、が、その前に若干の疲労感とともに目の前に不可視の壁が形成される。


 特定条件下で特殊能力スキルが勝手に発動するようにできる『近神者パーフェクト』の派生スキル『スロット』。レベルが劇的にあがり、スロットが5まで解放されている俺は、その2つ目に設定した効果『俺の避けられない或いは知覚できない攻撃に対し、触れるとその攻撃の速度を消す不可視の壁を形成する』が発動したのだ。・・・自分でも思ったがかなりチートだ。


 だが、俺の関心はそれより目の前の老人にあった。この世界においてはそんなにいないと言われるAランクのものくらいしか至っていないと言う『超人』に足をかけている、比較的俊敏力が高い俺の知覚速度を超える攻撃を仕掛けて来たのだ、この老人は。


「ほう・・・、儂の攻撃を初見で防ぐか。将来有望な若者じゃな」


 呵々・・・と笑って老人は言った。


「その実力に免じて儂から名乗ろう。ガンテツじゃ。よろしうのう、坊主」

「・・・坊主じゃねえ、慎也だ」

「そうかそうか」


 その後突き出された老人の手を握り握手をした。・・・その手は長年鍛えられているかの要にたこができて、かつ堅かった。


####


「・・・なんだ、この肉は。食った事がないぞ?」

「それはな、シン坊、大翼牛という、こっちではあまりお目にかかれぬ牛の肉じゃ。口にまるで水のように溶ける食感がたまらんでな、なんども取りにいっとるのじゃよ」

「取りにいってる?討伐でもしてんのか?」

「そうじゃな」

「・・・アンタ、何者だよ、ガン爺」


 そういうとガン爺は一瞬俺の顔を見てキョトンとした後、笑い出す。普段なら許さんが、美味い肉を提供したので許す。


「呵々、儂の名はかつてこの大陸中に轟いとったが知らんか。時も経ったのう」

「あ、ガンさん、この方は記憶喪失なんです。英雄ガンテツの武勇伝なら今でも語り継がれてますよ?」

「ほう。記憶喪失か。大変な事じゃのう。しかし焦る事はない。焦れば焦る程ハマってくもんじゃろう」

「おい、アンジェラ。武勇伝ってなんだよ」

「はい。ガンさんはかつて魔王を倒した事のある人です」

「・・・何?」


 そこで俺は改めてガン爺を見る。すると、ガン爺はこっちを見てニカッと笑っていった。


「ま、昔の話じゃな」

「またまた〜、そうせこの肉を取って来たという事はドライグさんと戦って来たんですよね?」

「まあの。じゃが、アイツも儂も歳じゃから、戦闘より昔話に花が咲いたわい」


 ドライグ、誰だそれは?そう俺が思ったのが分かったか、ガン爺は昔を懐かしむような目をして語り始めた。

 というわけで英雄のガン爺さん(爺をカタカナ読みはするなよ!?)登場です。彼がどんな特殊能力スキルを持っているのか、それは・・・作者も決めてない。


 ところで、英雄やら勇者やらと言う肩書きがこの作品に登場してますが、2者の違いはこの作品の中では、異世界からやって来た英雄的人物が『勇者』で、純この世界産の英雄的人物が『英雄』です。要は異世界人か否かということですね。


 まあ、ひっじょうに曖昧ですが、肩書きなんざそんなもんです(多分)。


 さて、次回はガン爺さん・・・の出番は終わり、ついに慎也君がクラスメートと再会するようです。第十二話『少年Aと再会』。お楽しみに!


 ご意見感想質問誤字訂正なんでも受け付けています。確認でき次第順に返していきたいと思います。

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