第1話
僕の初恋は、「恋」と呼べるほど綺麗なものじゃなかった・・・。
彼女と出会ったのは、僕がまだ大人になりきれていない、微妙な年齢だった。
そのころの僕といえば、親に反抗しては家を飛び出して・・・。
そのまま学校へ通うなんてことは、しょっちゅうあった。
ある夜だった。
僕はいつものようにコンビニで晩飯を買おうと、弁当売り場を物色してた。
「ちょっと、お客さん?」
それは突然だった。
ビックリして振り返ると、店員と万引き犯が出口でもめていた。
僕も他の客達に混ざって、遠巻きに見ていた。
次の瞬間、僕は万引き犯にクギヅケになった。
彼女が振り返りざまにみせた強い眼差しに惹かれた・・・。
「それ、僕が頼んだやつなんです・・・。僕が見当たらないので、外を覗こうとしたのかもしれません。すいません僕が払いますので。」
店員も彼女も言葉を挟まないように、僕はマシンガンのようにしゃべった。
店員は少々疑いをもったままの視線だったが、会計をすまさせてくれた。
外に出てみると、逃げたと思っていた彼女が僕を待っていた。
「バカだね・・・。」
彼女は僕をにらみつけたまま言った。
けれどその視線には、さっきのような強さが見られなかった。
むしろ、彼女の瞳は優しくなっていた。
「でも、ありがと・・・。」
思いがけない言葉に困惑した。
僕は買い物袋を彼女に渡して、その場を去ろうと考えた。
「これ、やるよ。」
突き出した袋を彼女は見つめる。
「いらない。」
彼女の返答に戸惑った。
「なら、どうして・・・?」
「1人で食べてもおいしくないから・・・。いらない。」
僕は何も言わずに彼女の手を引いて、「いつもの場所」に向かうことにした。
「いつもの場所」・・・。
それは、古いアパートだった。
今はそのアパートに住んでいる人間はいない。
まぁ不法侵入にはなるが、しょっちゅうここで夜を過ごさせてもらっている。
―204号室―
2階にあるその部屋こそ、僕の居場所だった。
何回もきてるために、僕の私物も少々ある。
だれが払ってるのかは知らないが、なぜか水道とガスも使えた。
無断で使っても怒りに来ないということは、相当心の広い人だろう・・・。
なんて、勝手に思っては使っている。
「立派な犯罪者ね。」
家の説明を終えた直後に彼女は言った。
「よく言うよ・・・。万引きしたくせに。」
僕の言葉に彼女はいたずらっぽく笑った。
「それのお礼はするつもり。」
そう言うと、彼女は僕に軽いキスをした。
何が起こったのか訳がわからないまま、僕は立ち尽くしてしまった。






