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婚活の男

作者: 苺大福

婚活の男



 新潟県某所にて。今から40年後の未来


 冬も終わり雪も溶け始め春を迎えようとしていた頃、

 30代後半の男は真剣に結婚を考えていた。

 近頃独り身の孤独さが辛く思えるようになった。

 1Kの家賃3万のアパートに住み、仕事と家の往復の

 毎日。気が付いたらもう40歳になろうとしていた。


 男にはこれといった出会いもなく彼女を紹介してくれ

 る甲斐性のある友人もいない。

 かと言ってお見合いには抵抗があった。だがもうそん

 な事も言っていられない状況に陥っていた。

 

 そんなある日いつものように仕事から帰って来て自分

 のポストを覗いて見ると1枚のチラシが入っていた。


 :婚活パーティーのご案内 年齢不問男性のみ。

  参加費用は無料。きっと貴方に素敵な出会い

  があります。



 と書かれていた。男は願ってもないチャンスだと思い

 部屋に戻るなり携帯電話を取り出しチラシにかかれた

 電話番号にかけた。

 するとすぐに女性の担当者がでた。


 「はい。こちら〇〇結婚サービスです。婚活パーティー

 のご予約ですか?」

 

 男は言った。


 「え、はい。是非参加させてください。」


 その後担当者の女性に初婚の有無や年収など様々な事を

 聞かれた。男は質問に淡々と答えた。そして最後に

 予約の段取りも無事に済み、電話を切った。

 

 男は期待に胸を踊らせていた。


 そして時は過ぎ婚活パーティーの当日。


 新潟県市内某ホテルの婚活パーティー会場に男の姿は

 あった。男はめいっぱいのお洒落な服装をして気合い

 十分といった感じである。

 会場には他にも10人程の男性がいた。歳は様々だ、

 20代前半らしき人から50代くらいの人まで皆少し

 緊張気味といった感じに見えた。

 

 そして婚活パーティーの開始時間になった時、ひとりの

 スーツ姿の司会者らしき男が出てきた。


 「今日は皆様我が社の婚活パーティーにご出席いただき

 まことにありがとうございます。今から20人の女性

 が入場いたします。ひとりにつき10分ずつの会話を

 全員の女性としていただきます。その後にフリータイム

 時間を30分用意してあるのでお好きな女性とお話し

 てください。最後にチャイムがなったら終了となりま

 す。今から私が皆様に紙をお配りするのでそちらに

 お気に入りの女性を3名までご記入していただきます。

 もし他の男性とご希望が重なる場合は女性の側に選択

 権が与えられますのでご理解お願いします。では只今

 からスタートします。」


 男は司会者から記入用紙をもらい席についた。すると

 女性たちが入場してきた。女性のほうもそれぞれ

 各テーブルに座りさっそく会話が始まった。

 男は緊張のピークに達していた。

 ここ何年も一対一で女性とちゃんと話をした事がない、

 不安だった。

 すると男の席にひとりの女が座った。女のほうから

 明るい声で話かけてきた。

 

 「〇〇です。こんにちは。素敵なシャツですね?」


 見た目は20代前半の物凄く綺麗な子だ。髪はショート

 ヘアで少し茶色かかっている。清潔感がただよい痩せ形

 で身長は160くらいだろうか。洋服もお洒落に着こ

 なしている。

 男はその子の明るい性格に助けられ会話も弾み楽しい

 時間を過ごした。

 

 10分という時間はあっという間に流れた、男は次々と

 入れ替わっていく女性と会話を続けるうちに次第に

 会場の空気にも慣れていった。

 そして全員の女性との会話も終わりフリートークの

 時間がきた。 

 

 男は一番最初に会話をしたショートカットの女の子に

 近寄り声をかけた。女の子も嬉しそうに会釈をした。

  

 話も弾み30分のフリートークも終了のチャイムが鳴り、

 終わりを告げる。すると奥に身を潜めて会場を見守って

 いた司会者が部屋の前方に出てきた。


 「皆様楽しんでいただけたでしょうか?これでフリー

 トークを終了します。ではさっそく今から用紙を回収

 していよいよ結果発表です。」


 スタッフと思われる男性が数人出てきて男性達から

 お気に入りの女性の名前が書かれた用紙を回収して

 まわる。

 そして10分程の時間が過ぎて司会者が再び出てきた。


 「お待たせしました。集計が終わりましたので只今

 から結果発表です。本日8組のカップルが誕生

 しました!ひと組めからお呼びしますので呼ばれた

 男性と女性の方は前に出てください。」

 

 司会者は次々と名前を読み上げていく。7組めまで読み

 あげた頃、男は再び緊張のピークに達していた。

 

 (どうか呼ばれますように。)

 男は心から願った。


 そして司会者が最後のカップルを読み上げた。


 「では最後のカップルの発表です。男性〇〇さん。

  女性〇〇さん。前にどうぞ!」

 

 男は最後に自分の名前を呼ばれた。相手の女性はそう

 言うまでもないがショートカットの女の子だ。

 

 婚活パーティーは幕を閉じた。だが話はまだ終わらない


 しばらくしてから男と女は男性スタッフに連れられて

別室に行く。スタッフを正面に男と女が席についた。

 スタッフは書類をテーブルに置き話を始めた。


 「この度はおめでとうございます。さっそくですが

 今後のご説明を致します。こちらの女性型ロボットの

 お値段は200万円です。優れた人口知能を搭載して

 おり貴方の好みを学習していきます。基本機能として

 料理は和食、中華、洋食、計1000種類の料理を

 作れるソフトをインストール済みです。あと只今サー

 ビス期間でして、他にも掃除や洗濯家事全般が出来る、

 ロボット用ソフト、なんでもできる君2050年度版

 を無料でインストールできますがどうしますか?」

  

 男は答えた。

 

 「いやけっこうです。初めから何でも出来てしまうと、

 なんかいかにもロボットっぽくて嫌なんです。

 今のままの彼女がいいです。家事は少しづつ僕が教えて

 いきます。」


 スタッフは関心関心といった表情で話を続けた。

 

 「そうですか。いまどき珍しいですね。だいたいの方

 はほぼ完璧な状態にしてお帰りになるもんですから。

 たしかに教えるたびに知識を増やして成長していくのが

 人間ですから、会話も増えるし楽しいかもしれませんね。

 では結婚用に彼女の戸籍謄本に住民票、あと婚姻届です。

 お支払いですが本日より1週間以内に最寄りの銀行口座

 にご入金お願いします。保証期間は本日より10年間

 となっていますので何かありましたら当社までご連絡

 下さい。」

 

 男は必要な書類を鞄につめた。

 この婚活パーティー実は女性型ロボットの即売会で

 あった。

 2050年の世界では離婚の増加が深刻化していて

 およそ結婚して1年以内に離婚率50%。2年だと

 80%にまで達していた。

 政府はこの状況を重く受け止め、人型ロボットと

 の結婚承諾法案が出された。各メーカーは競い合い

 人型ロボットの製産を行い。晩婚化も手伝い現代に

 おいては2組に1組がロボットと結婚している。


 ロボットは人間の言うとおりに動き、けして逆らわない


 男は人型ロボットの彼女の手を強く握りしめ嬉しそうな

 表情で帰っていった



読んでくれてありがとうございます。

貴方のご意見お待ちしています。


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― 新着の感想 ―
[一言] 拝読しましたが、作品の根本的な設定で分からないところがあるので質問させてください。 作品世界では離婚の増加が深刻化しているとのことですが、具体的に離婚が増えてどういった問題になっているのでし…
[良い点] 婚活、キャッチーな話題です。リアリティーがあるなぁと思っていた序盤から、現代人が抱える問題に迫る終盤にかけての展開がいいです。良い意味で裏切ってくれます。私が好きなのは、最初に男性のシャツ…
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