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「──んで、俺が呼ばれたと」


 数時間の拮抗状態が続いた後、ヴォルス君がぼやくように男達にそう言って現れると男達は此方に不敵な笑みを浮かべた。


「そうなんですよ、ヴォルスさん。こいつらは払うモンも払わないで好き勝手やっている連中でして・・・ちょっくら痛い目を見させた方が良いかと思いましてねえ」


 ゴマを擦りながら寄ってくる下っ端らしい男に裏拳を喰らわせ、ヴォルス君は私を見ながら溜め息を一つ吐く。


「──本当に面倒臭い事になったな、ネコ?」


 ヴォルス君はそうボヤくと周囲にいた男達を殴り倒してから服についた埃を手で払う。

 そして、呻く男達を冷ややかな視線で見下ろす。


「・・・な、なんで?」

「俺は勇者だ。借金取りでもなんでもないし、そもそもネコは俺のダチだ。

 当然、どちらにつくかは決まってんだろ?」


 ヴォルス君はそう告げるともう一度、溜め息を吐いてから此方へと身構える。


「──とは言え、見逃してやりたいところだが、街中で起こっちまった騒動だ。ダチだからって見逃すと、この街の長に目を付けられちまう。ネコ達には悪いが出すもんだけでも出してくれ」

「・・・断れば?」

「俺だって戦いたくはねえから、断るって選択肢だけは一番最後にしてくれないか?」


 私はしばし、ヴォルス君を見据えてから稼いだ金銭を差し出す。

 ヴォルス君はそれを受け取ると呻いていた男に渡す。


「税金は確かに義務だがよ・・・流石に全部を支払えって訳じゃねえよな?」

「も、勿論です!収入の3割っすから銅貨242枚になります!」

「ギルドで登録した際に計算してなかったのは落ち度だよな?」

「へ、へい。まさか、こんな短期間で収入が増えるとも思ってなかったんで・・・げふっ!」


 ヴォルス君は男が言い終わる前に蹴りを入れ、頭痛でもしているかのように天を仰ぎ見る。


「たかだか、銅貨242枚の為に取り立てまがいな事して恥ずかしくねえのか?」

「も、申し訳ない!」

「まったく・・・次は気を付けておけよ。こんな事の為に勇者はいる訳じゃないんだからな」


 ヴォルス君はそう言ってから頭を掻いて此方へと向く。


「ワリィな、ネコ。完全にコイツらが悪いわ。

 今回は俺に免じて許してくれ」

「スミレちゃんに危害を加えないと約束して頂ければ・・・」

「ああ。約束する」


 私は頷くヴォルス君をしばらく見てから臨戦体勢を解除する。

 そんな私にヴォルス君は近付くと裏手で私の胸部ボディーを軽く叩く。


「初歩の依頼を失敗したって聞いていたが・・・なんだよ、お前。やる時はやるタイプだったのか」

「私はスミレちゃんが酷い目に合っていたので、つい怒りが買ってしまって・・・」

「ロリコンかよ、お前?」

「そう言う訳ではありませんよ。ヴォルス君達が酷い目に合っていたとしても助けます」

「へへっ。ありがとうよ」


 ヴォルス君はそう言って先程の事などなかったかのように私達に接して来る。


「金銭については返金分は必ず返させる。それまでは俺が面倒見てやるさ」


 こうして、私の嵐のような朝ははじまりを迎えた。

 しかし、この時の私はまだ知らない。この出来事がほんのはじまりに過ぎないと言う事に・・・。

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