ニ礼『こんにちわ』
※この物語は限りなく事実を元にしたフィクションです※
この教会は岡山県南部の山の中にあり
見渡せば森と遠くに海岸が見える。
森を少し抜ければ見知ったご近所さん達が住む住宅地に
大きな池溜まりに手付かずの獣道
緩やかな坂道だが 曲がりくねっているため
目的地に着が思ったより遠く車がないとかなり不便だ。
だけど 山の高い場所に有るため
見張らしは それなりに良い。
囲まれた森の先に見える 賑わっている駅周辺のお店に電車とそのレーン。
ここよりも更に広い住宅街。
海の境界線上にある 何処かの島にそれを繋ぐ橋や行き交う船。
周囲を眺める展望台も 微かに見える。
そして何よりも個人的に好きな
森の木よりも高くて大きな遊園地の観覧車が見えるのだ。
田舎と言っても 私的には思ったより悪くはない。
そんな場所にひっそり立つ教会。
その中でもお気に入りなのは 教会から出て目線端に見える大木。
他の木に比べると色が煤けて幹も太く背も高い。
未だに 何の木なのか知らないが
気にしたことはないかな?
木にだけに………すみません。
唯一 残念なのは
この大木に私がよく居る為か彼奴等の溜まり場になり
灰皿が設置され ベンチも何時のまにか置かれたせいで
喫煙所みたいに成っている所だ。
「おっせーぞ!シスター」
そう真っ先に飄々と声をかけたのは私を呼び出した元凶。
私が愛畜称(愛称のつもり)『ニック』と呼んでいる男。
30代後半の背が190近くもあり
体重も90はある正に巨人。
手入れされてない寝癖は何時もの事
性格は一言で表すなら【引き籠り短気クソツイニート】
家が教会の直ぐ側なので 毎日と言うぐらい
ここにはよく姿を見せるが信者ではない
よく「うるさい!」と教会に苦情を言うため
他のシスターや神父様には毛嫌いされてる。
野太い声に巨体 性格もクソ野郎ときたから救いようがない。
「うぃーすっ
昨日も遅くまでお疲れ」
続いて声をかけたのが
この4人の中でズバ抜けて容姿の良い男。
愛畜称は『ゼフ』
歳は40にも成るのに
そうは全く見えない 世間体に言うならイケメン。
縄文顔と言うのだろうか生粋の日本人だが
顔の堀が深く目も大きく二重で鼻も高い。
背も178と高く 鍛えてる為 体つきが良い。
だがそれ故か 俗に言うヒモ男に成っている………
「こんにちわ
今日は非番だから来たんだけど」
ニコリと笑むのは この中で唯一の常識者。
愛称『ポリケン』
歳はニックと同じで30代後半の男性。
正義感が強く 世の悪を正すために警察官に成った。
現在は【生活安全課】通称『生安』の巡査長として
非番の時は だいたい何時も此処へ来る。
昔から教会や家族共々お騒がせして世話に成っているので
ポリケンには頭が上がらない。
ポリケンにだけ軽く会釈してはチラッと
昨日も一言も喋らなかった男を見やる。
「…………(ペコリ)」
チラッと見た時に目が合えば会釈してくれ
思わず此方もまた会釈を返す。
ニックに『リカちゃん』と呼ばれ
そのまま皆から愛称『リカちゃん』で呼ばれる男。
歳は私と近く三十路に入ったばかりで
ニックと同じで実家で引き籠っていて基本喋らない。
おかげで出会って15年以上経つが誰も本名を知らない。
たまに「………シニタイ」とボソッと呟く。
コイツ等の詳細は また後々に語る時が来るじゃろう。
「いや『おっせーぞ』って こっちは仕事じゃっての」
「暇そうじゃったろうが」
「今度から金取るぞ クソツイニート」
「シスター!口!口!!」
私とニックの何時ものやり取りを
何時もの調子で止めに入るポリケン。
因みにポリケンが居なければ
その後 「あ?」「あ?」「あん?」と
互いに睨み付け合戦が お互い飽きるまで繰り広げられる。
この地獄絵図も何時もの事でゼフもリカちゃんも止めに入らず
この光景が終わるまでスマホを弄りだす。
たまに居た堪れなさで「止めに入れよ!!」と突っ込めば
「だりぃ」とゼフの ごもっともに何も言い返せない。
今日はポリケンが居るので あの地獄絵図は回避した。
「因みに いくら取るつもり?」
「ゼフ!」
せっかくポリケンが止めたはずの話を蒸し返す。
「え? あ………500円」
「やっすっ いや……高い のか?」
そんなの本気で考えてなかった為
思わず浮かんだ言葉を言えば
正に同じ事をニックも考えていた。
「微妙すぎてウケる。
なんで500円?」
「ワン!ワンコインだからだよ!!」
「ふっ ワンワンコイン 何それ爆笑」
「ワンコイン!」
「100円じゃ駄目?」
やめろーーーーー!
やめてぇえぇええよ!!
も!う! いいじゃろうが!!
「100円……駄目。
500円の方が大きいから」
「『大きい』って……何それウケるわ。
値段の話?面積の話?」
「お値段です」
「じゃあ何で万札じゃねえの?」
うるせぇえ。
「万札はワンコインじゃありません。
ワンコインが良いんです。
でも100円より500円の方が金額が高いです。
お札はノーワンコインです。
ワンコインが良いんです。」
後に引かなくなってしまった私の口が
カタカタカタと早口で呟く。
「プハッ コイン信者論でマジウケるっゴホッ
ーーーゴホゴホッ ゴホッ」
「ほら イジメルるから」
タバコが変な気管に入ったのかゼフは涙目で蒸せている。
「あーぁ」と冷ややかにポリケンがゼフを横目で見てと
リカちゃんがスッと水のペットボトルを差し出せば
「水は違うくね?」と言うニックの言葉に水をスッと引っ込める。
「いや 水っゴホッーーんんっゴホ
欲しいわ リカちゃんっゴホゴホ」
また再度 水をスッと差し出すリカちゃんが可愛くて
思わずクスッと笑ってしまえば
恥ずかしかったのかリカちゃんが また水をスッと引っ込めようとする。
「まてまてまてまて!!」
「ーーーーっ!」
水を引っ込めている途中で ゼフが無理やり取る。
そのせいでビックリしたのか 何処か痛めたのか
リカちゃんは勢いよく立ち上がると
スタスタと何処かへ歩きだしてしまった。
多分 怒って帰ったのだろう
「ゼフ ひでぇ」
「は?」
『酷い』とは思ってないだろう
ニックの顔はニヤニヤとしたいた。
「あーあ ゼフのせいだ」
「え?」
さっきの礼もあるため ニックの言葉に便乗する。
「まあ 怒って帰っただけだろうけど
水貰ってるし 謝っとけよゼフ」
「えぇぇぇ だりぃ。
ポリケン代わりに謝ってて」
「バカか。普通にヤじゃし」
因みにポリケンはニックとゼフの行い次第で
普通に口も態度も悪くなる。
「えぇぇぇ めんでぃ。
まぁ どうせ明日も来るだろうし今日はいいや」
ゼフはそう言いながら
リカちゃんから奪った形になった水を飲んでは
落ち着いたのか またタバコを吹かせば
ニックは隣で「サイテー」と笑うと
「お前には勝てんって」と笑いながら返した。
因みに何しに呼んだのか聞けば
「なんとなく」と言われ
「じゃろうな」としか返せなかった。
こんな感じのグダついた毎日を送っているーーー