表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/5

プロローグ

「この採取依頼を受けたいんだが」

「あ、ウィードさん。かしこまりました」


 冒険者ギルドの受付嬢に依頼票を持って行って受注をする。



「おい見ろよ。また“草むしりおじさん”が採取依頼を受けてるぜ」

「もう四十近いのに、いまだにDランクだもんな。俺なら恥ずかしくてとっくに冒険者やめてるぜ」

「はは、言えてるわ~!」



 掲示板のそばで依頼票を選んでいる若い冒険者たちが、俺を見てバカにしたような声を上げる。


「その……ウィードさん、元気を出してください。人気のない採取依頼を受けていただいて、我々冒険者ギルドはとても助かっていますので」

「そう言ってもらえると助かるよ」


 気遣うような受付嬢の言葉に俺は苦笑した。

 まあ、こういうことを言われるのは慣れっこだ。

 今さら気になんてしない。

 というか彼らの言っていることは正しいしな。


 冒険者ギルドを出て近くの山に向かう。


 さあ、今日も採取だ。


「今日の目当てはヒラギ草だったな……」


 ヒラギ草は解呪薬の材料になる。


 ただし探すのが難しいうえ、魔力の濃い――言い換えると、魔物が棲んでいるような森にしか生えないので冒険者ギルドに依頼が来るのだ。


 日陰を中心に探していく。


「よし、見つけた」


 サクサクとヒラギ草を見つけていく。

 昔はこれを見つけるのも一苦労したっけなあ……


『ガルゥウウ!』


 ヒラギ草を探していると、途中で狼型の魔物“グレイウルフ”に遭遇した。


 ランクはE。

 冒険者ギルドでは雑魚とされる相手だが、俺は必死に戦って何とか勝てた。


『ギャウン……』

「はあ、はあ、はあ……! ああ、疲れた。もう年だな……」


 グレイウルフの亡骸のそばに腰を下ろす。


 休憩しよう。





 俺――ウィード・グライスは、冴えないおっさん冒険者だ。


 ギルドカードに示されるステータスはこんな感じ。



――――――


ウィード・グライス

▶レベル:49

▶種族:人間

▶スキル

なし

▶魔術

なし

▶称号

“緑の知者”


――――――



 ギルドカードは何でも高名な魔術師が作ったものらしく、登録した人間の魂の状態を読み取り、強さを表示しているんだとか。


 魂を読み取って、とか言われてもよくわからん。

 俺には学もないしな。

 だが、まあ、そういうもんだと納得している。


 この年になっても“スキル”や“魔術”はなし。


 レベルだけは高いが、レベルによる腕力なんかの上がり幅には個人差がある。俺の一レベル当たりの上昇値は相当低いらしく、レベル49ながら平均的な冒険者に換算して、20~30程度の能力しかないらしい。


 まさに冴えないおっさんである。


 最後に称号について。


 称号というのは、その人間が行った功績をたたえて神が魂に刻むものだそうだ。

 それを得ることで、後天的に腕力やら敏捷やらといった能力が上がったりする。


 で、俺の場合はというと――まったく変化なし。


 “緑の知者”。


 なんでも冒険者の中でも俺しか持っていないらしい。

 俺がどんな功績を基準に“緑の知者”になったのか……おそらく、採取依頼ばかり受けていたからだろうなと思っている。


 採取はいい。

 安全だし、植物は好きだしな。

 冒険者を引退したら、緑豊かな自然でのんびり過ごそうと考えているくらいだ。


「さて、そろそろ戻るか……ん?」


 街に戻ろうとしたら、小さな女の子が茂みをかき分けているのが見えた。


 おいおい、こんなところで何してんだ。魔物も出るってのに。


「そこの子ども! こんなところで何してる!?」

「!」


 慌てて駆け寄ると、女の子は半泣きで言った。


「や、薬草を採りたくて……」

「薬草?」

「お母さん、病気だから……でも、うち、お金がないから、だから」


 あー……

 服装を見ると、近くの村にでも住んでいる子だと予想がついた。

 薬草採りか。


「わかった。じゃあ、おじさんが一緒に探すよ。お母さんはどんな病気だい?」

「アカセキ病、って言ってた」


 アカセキ病か。となるとソウレンの花がいるな。


 これを見つけるにはコツが必要で、まず周囲にこいつと共生関係にあるセキレン草がいるから、そっちを探す。

 セキレン草は一か所にまとまって育つので見つけやすいのだ。

 しばらく探すと赤い花の咲く一帯を見つけた。

 その近くを注意深く探っていくと……あった。


「はい、これだな」

「! すごい! おじさん、どうやって見つけたの!? 私がどれだけ探しても見つからなかったのに!」

「まあ、長年の経験ってやつだな。おじさんは植物の知識だけは凄いんだ」


 何せ採取依頼ばかりやってたからな。

 無駄に“草むしりおじさん”と呼ばれているわけではないのだよ。


「ありがとう。これでお母さんも元気になると思う!」


 女の子がにっこりと笑う。

 いい顔だ。


 俺は弱くて、討伐系の依頼が受けられないからと採取専門になった。

 けど、こんな表情が見られるんだから採取依頼も悪くないよな。


 ――と。



「「うわぁあああああああああああああっ!!」」



 見覚えのある冒険者二人が遠くから駆け出してきた。

 あれは……さっき冒険者ギルドで俺に陰口を言っていた若手冒険者たちか?

 何かに追い立てられるように、必死の形相でこっちに走ってくる。


「おい、どうした! 何があった!」


 俺は叫ぶが、答えは聞く前にわかった。


『ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!』


 木々をなぎ倒しながら現れたのは、見上げるほどの巨躯を持つ大蛇の魔物。


 “ティタノサーペント”だ。


 というか……でか過ぎるだろ!

 頭部が周囲の木々よりも上にあるぞ……!?

 こんな魔物がいるなんて情報は聞いてない!


「ひっ……!」

「……大丈夫、大丈夫だ。いい子だから落ち着け」


 女の子の手を握って安心させるように言う。

 今パニックを起こされたらまずい。

 見捨てるしかなくなってしまう。


「――! ウィード・グライス……お前、丁度いいところにいたなぁ!」


 若い冒険者たちが俺に気付いた。

 ティタノサーペントに追われながらこっちに走ってくる。

 ……おい、まさか。

 そのまさかだった。


 ドンッ!


「――ッ!?」

「はははははははははっ! 悪いな、俺たちが逃げるための囮になってくれ!」


 通り過ぎざまに背中を押され、俺は女の子の手を引いたまま前に出された。


 やられた……!

 あいつら、俺たちを囮にして逃げ切るつもりだ!


「これは冒険者ギルドのためでもあるんだ! 俺たちみたいな若くて有望な冒険者が残ったほうがいいに決まってる!」

「そうだ! “草むしりおじさん”のお前なんかが生き残っても仕方ねえんだよッ!」


 背後で遠ざかっていく気配とともに、そんな捨て台詞が聞こえてくる。

 何が“若くて有望な冒険者”だ! こっちには子どももいるんだぞ!?

 まずい。

 どうする。


「あ、ああ、あああっ……」


 女の子はパニックを起こす寸前だ。

 ティタノサーペントまでの距離はもうわずかしかない。


 ……わかった。


 もういい。ここで終わりにしよう。


「きゃっ!」


 俺は女の子を後ろに突き飛ばした。


「逃げろ! 絶対に振り返るなよ!」

「で、でも」

「俺一人ならなんとかなる!」


 嘘だ。

 あの子がいるよりは一人のほうが動きやすいというだけである。


「だぁああああああああああああああああ!」


 腰から使い古した剣を抜き、ティタノサーペントをすれ違いざまに斬りつける。

 ……ちくしょう、全然効いてねえ!


『――』

「ほら、ムカついただろう? こっちに来い! 俺が相手してやる!」


 ティタノサーペントを挑発して女の子のいる方向から引き離す。


 ちなみにこの時点で俺の死が確定した。


 当たり前だろ。

 ティタノサーペントっていえばAランクの中でも上位の魔物だぞ。俺みたいな冴えないおっさんが勝つどころか、逃げ切ることすら不可能だ。


 あの状況になった時点でとれる選択肢は三つ。

 諦めて女の子と一緒に食われるか、女の子を囮に使って自分だけ助かるか。

 どっちもごめんだ。

 だからせめて、俺が敵を引きつけて女の子だけでも残してやる。


 Dランク冒険者のせめてもの意地だ。


「ぬらぁああああああああああああ!」


 ドスッ――ゴガッッ!!


「げほっ!」


 ティタノサーペントの尾に吹き飛ばされる。

 だが、その寸前に剣で一刺ししてやった。


『シュウウウ……』


 不愉快そうにするティタノサーペント。

 倒すには至らないが……せめてもの反撃だ。

 これで終わり。

 武器もないし、これで終わりだと――



『レベルが上昇しました』



 脳内に響く声。

 いわゆる“神の声”というやつだ。

 さっきティタノサーペントに与えたダメージが経験値として評価され、俺の魂が進化したらしい。

 今さらレベルが一つ上がったところでどうもならんとは思うけどな。



『レベル50となったことで、魂の強度が一定を超えました。封印されていた魔術が解放されます』



 ……ん? 封印されていた魔術?



『【植物魔術(初級)】を獲得しました』

『【植物魔術(中級)】を獲得しました』

『【植物魔術(上級)】を獲得しました』

『【植物魔術(準特級)】を獲得しました』

『【植物魔術(特級)】を獲得しました』

『【植物魔術(極級)】を獲得しました』



「うおっ……!?」


 何だ。

 何だこれ。

 体の奥が熱い。

 というか神の声、聞こえすぎだろ! どうなってるんだよこれは……!


『シャアアアアアアアアアア……!』


 ティタノサーペントが獲物をいたぶるように、ゆっくりと迫ってくる。

 くそ、こうなったら――やってやる。

 ギルドカードをすばやく確認。

 本当に【植物魔術(極級)】の文字を確認した俺は、見よう見まねで魔術を使うことにした。

 植物魔術は見たことがある。

 あいつらは確か……こんな感じで……


「【スタブルート】ッ!」


 俺が手を前にかざして唱えた瞬間。


 ズドドドドドドドドドドッッ!! 


「……は?」


 おいおい、何だよこれ。


 俺が唱えた途端に周囲が地響きを立てて揺れたかと思うと、地面から数百本に及ぶぶっとい木の根が突き出してきた。視界一面に渡ってだ。


『ジャアッ!?』


 大量の木の根はティタノサーペントを串刺しにした。

 巨体を誇るティタノサーペントは天高く吊り上げられ、真っ赤な血をドバドバと流している。


『ァ……アア……』


 ティタノサーペントは抜け出せず、そのまま絶命。


 いや……いやいや。

 ない。これはないよ。

 夢か?

 だって――有り得ないだろ、この規模の魔術!?


 俺は再度ギルドカードを確認する。



――――――


ウィード・グライス

▶レベル:50

▶種族:人間

▶スキル

なし

▶魔術

・【植物魔術(極級)】

▶称号

“緑の知者”

“樹神ユグドラシルの加護”


――――――



「何だよ“樹神ユグドラシルの加護”って……」


 もうわけわからん。

 おじさんにあんまり難しいことを言わんでくれ。

【大切なお願い】


ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります!


少しでも『面白くなりそう』、『続きが気になる』と思っていただけましたら、

ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けると嬉しいです!


お好きな★を入れてください!


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ